【制度の概要】

 この制度は、特定支配関係がある内国法人間で行われる三角合併等のうち、軽課税国に所在する実体のない外国親法人の株式を対価とするものは、合併法人等に事業活動の実体が認められる等一定の要件を満たす場合を除き、適格合併等に該当しないこととする制度である(措法68の2の3)。

【新設】(名義株がある場合の特定支配関係の判定)

68の2の3(1)−1 措置法第68条の2の3第5項第2号の規定の適用上、一方の内国法人と他方の内国法人との間にいずれか一方の内国法人が他方の内国法人の株式を保有する関係があるかどうかは、株主名簿、社員名簿又は定款に記載又は記録されている株主等により判定するのであるが、その株主等が単なる名義人であって、当該株主等以外の者が実際の権利者である場合には、その実際の権利者が保有するものとして判定する。

【解説】

  • 1  平成19年度の税制改正により、特定支配関係がある内国法人間で行われる三角合併等のうち、軽課税国に所在する実体のない外国親法人の株式を対価とするものは、合併法人等に事業活動の実体が認められる等一定の要件を満たす場合を除いて、適格合併等に該当しないこととする制度が創設された(措法68の2の3)。
     なお、特定支配関係とは、次のいずれかの関係をいう(措法68の2の35二、措令39の34の310)。
    • (1) 二の内国法人のいずれか一方の内国法人が他方の内国法人の発行済株式等の総数又は総額の50%を超える数又は金額の株式を直接又は間接に保有する関係がある場合におけるその関係((2)に該当するものを除く。)
    • (2) 二の内国法人が同一の者によってそれぞれその発行済株式等の総数又は総額の50%を超える数又は金額の株式を直接又は間接に保有される関係がある場合におけるその二の内国法人の関係
  • 2  会社法上、株式会社が株式を発行した場合には、株主名簿に株主の氏名又は名称及び住所その他所要事項を記載又は記録することを要し(会社法121、1321一)、また、株式会社の株主に対する通知又は催告は株主名簿に記載又は記録された株主の住所又は株主が会社に通知した場所に宛てることをもって足りることとされている(会社法1261)。
     このため、本制度の適用上、上記1(1)の関係があるかどうかの判定は、原則として法人の株主名簿に記載又は記録された株主により行うこととなる。
     しかしながら、現実の問題としては株主名簿に記載又は記録されている株主が単なる名義人であって、真実の株主は他にいるという場合(すなわち名義株である場合)もある。このような場合には、特定支配関係の判定上、税法における実質主義などの観点から、当然、その名義人ではなく、真実の株主により株式の保有関係を判定することとなる。本通達では、このことを明らかにしている。
  • 3  なお、この取扱いは、その定款に社員の氏名又は名称及び住所を記載又は記録すべきこととされる持分会社(会社法5761四)や、社員の名簿に社員の商号、名称又は氏名及び住所又は居所を記載又は記録すべきこととされる保険会社(保険業法32の21、保険業法施行規則20の132)等において、名義人以外の真実の社員がある場合についても同様である。

【新設】(自ら事業の管理、支配等を行っていることの意義)

68の2の3(1)−2 措置法令第39条の34の3第1項第4号の規定の適用上、合併法人が合併前に我が国において、事業の管理、支配及び運営を自ら行っているかどうかは、当該合併法人の株主総会及び取締役会等の開催、役員としての職務執行、会計帳簿の作成及び保管等が行われている場所並びにその他の状況を勘案の上判定するものとする。この場合において、例えば、当該合併法人が、事業計画の策定等に当たり、その合併に係る被合併法人と協議し、その意見を求めていること等の事実があるとしても、そのことだけでは、当該合併法人が事業の管理、支配及び運営を自ら行っていないことにはならないことに留意する。
 同条第2項第4号の分割承継法人及び第4項第4号の株式交換完全親法人に係る判定についても、同様とする。

【解説】

  • 1  本制度の適用上、一定の要件(適用除外要件)を満たす合併は、特定グループ内合併から除かれており、適格性否認の対象としないこととされている(措法68の2の31かっこ書、措令39の34の31)。
  • 2  本通達においては、適用除外要件の一つである「合併法人が合併前に我が国において…その事業の管理、支配及び運営を自ら行っていること」(措令39の34の31四)における事業の管理、支配及び運営を自ら行っているかどうかの判定基準について、その合併法人の株主総会及び取締役会等の開催、役員としての職務執行、会計帳簿の作成及び保管等が行われている場所並びにその他の状況を勘案の上判定することを明らかにしている。
  • 3  このように事業の管理、支配等を自ら行っているかの判定は様々な要素を総合勘案する必要があることから、その合併法人が事業計画の策定等に当たって、その合併に係る被合併法人と協議し、その意見を求めていること等の事実があるだけでは、その合併法人が事業の管理、支配及び運営を自ら行っていないことにはならない。
  • 4  なお、このことは、特定グループ内分割及び特定グループ内株式交換における適用除外要件の一つである分割承継法人及び株式交換完全親法人が「その事業の管理、支配及び運営を自ら行っている」かどうかの判定についても同様である。

【新設】(特定軽課税外国法人に該当するかどうかの判定)

68の2の3(2)−1 外国法人が措置法令第39条の34の3第5項第2号に掲げる外国法人に該当するか否かの判定については、66の6−3から66の6−8までの取扱いに準じて取り扱う。

【解説】

  • 1  本制度の適用対象となる特定グループ内合併は、被合併法人の株主等に交付される合併親法人株式が特定軽課税外国法人に該当する外国法人の株式であることが前提とされている(措法68の2の31)。また、特定グループ内分割又は特定グループ内株式交換において交付される分割承継親法人株式又は株式交換完全支配親法人株式についても、その発行法人は、特定軽課税外国法人に該当する外国法人であることが前提とされている(措法68の2の323)。
     そして、これら場合の特定軽課税外国法人とは、次のいずれかの外国法人とされている(措令39の34の35)。
    • (1) 法人の所得に対して課される税が存在しない国又は地域に本店又は主たる事務所を有する外国法人
    • (2) 合併、分割、株式交換又は現物出資が行われる日を含むその外国法人の事業年度開始の日前2年以内に開始した各事業年度のうちいずれかの事業年度において、その事業年度の所得に対して課される租税の額がその所得の金額の25%以下であった外国法人
  • 2  ところで、上記1(2)の租税負担割合が25%以下であるかどうかの判定については、租税特別措置法施行令第39条の14第2項《特定外国子会社等の範囲》の規定を準用するものとされている(措令39の34の36)。すなわち、租税負担割合の計算要素である外国法人の所得の金額、租税の額や複数税率が適用される場合の取扱い等については、内国法人の特定外国子会社等に係る所得の課税の特例(措法66の6、いわゆる外国子会社合算税制)における取扱いに準じて取り扱うこととなる。
  • 3  本通達においては、このような法令の規定を踏まえ、外国法人が特定軽課税外国法人に該当するかどうかの判定については、いわゆる外国子会社合算税制に係る次に掲げる通達の取扱いに準じて取り扱うことを明らかにしている。
    • ・ 66の6−3《事業年度と課税年度とが異なる場合の特定外国子会社等の判定》
    • ・ 66の6−4《課税標準の計算がコストプラス方式による場合》
    • ・ 66の6−5《非課税所得の範囲》
    • ・ 66の6−6《外国法人税の額に加算される税額控除額》
    • ・ 66の6−7《複数税率の場合の特例の適用》
    • ・ 66の6−8《主たる事業の判定》

【新設】(船舶又は航空機の貸付けの意義)

68の2の3(2)−2 措置法令第39条の34の3第7項第1号に規定する「船舶若しくは航空機の貸付け」とは、いわゆる裸用船(機)契約に基づく船舶(又は航空機)の貸付けをいい、いわゆる定期用船(機)契約又は航海用船(機)契約に基づく船舶(又は航空機)の用船(機)は、これに該当しない。

【解説】

  • 1  本通達においては、外国法人が特定軽課税外国法人に該当しない要件(適用除外要件)の一つである「株式若しくは債券の保有、工業所有権その他の技術に関する権利若しくは特別の技術による生産方式若しくはこれらに準ずるもの(…)若しくは著作権(…)の提供又は船舶若しくは航空機の貸付けを主たる事業とするものでないこと」(措令39の34の37一)における「船舶若しくは航空機の貸付け」の意義を明らかにしている。
  • 2  すなわち、「船舶若しくは航空機の貸付け」とは、単なる船体又は機体の貸付契約であるいわゆる裸用船(機)契約に基づく船舶(又は航空機)の貸付けをいい、運行サービスの提供と一体となって行われる船体又は機体の貸付契約ないしは一種の再運送契約であるいわゆる定期用船(機)契約又は航海用船(機)契約に基づく船舶(又は航空機)の用船(機)は、これに該当しないこととなる。

【新設】(自ら事業の管理、支配等を行っていることの意義)

68の2の3(2)−3 措置法令第39条の34の3第7項第2号の規定の適用上、外国法人が、その本店又は主たる事務所の所在する国又は地域において、事業の管理、支配及び運営を自ら行っているかどうかは、当該外国法人の株主総会及び取締役会等の開催、役員としての職務執行、会計帳簿の作成及び保管等が行われている場所並びにその他の状況を勘案の上判定するものとする。この場合において、例えば、当該外国法人の株主総会の開催が本店所在地国等以外の場所で行われていること、当該外国法人が、現地における事業計画の策定等に当たり、株主等である法人と協議し、その意見を求めていること等の事実があるとしても、そのことだけでは、当該外国法人が事業の管理、支配及び運営を自ら行っていないことにはならないことに留意する。

【解説】

  • 1  本通達においては、外国法人が特定軽課税外国法人に該当しない要件(適用除外要件)の一つである「その本店又は主たる事務所の所在する国又は地域において…その事業の管理、支配及び運営を自ら行っていること」(措令39の34の37二)における事業の管理、支配及び運営を自ら行っているかどうかの判定基準について、その外国法人の株主総会及び取締役会等の開催、役員としての職務執行、会計帳簿の作成及び保管等が行われている場所並びにその他の状況を勘案の上判定することを明らかにしている。
  • 2  このように事業の管理、支配等を自ら行っているかの判定は様々な要素を総合勘案する必要があることから、例えば、その外国法人の株主総会の開催が本店所在地国等以外の場所で行われていること、その外国法人が現地における事業計画の策定等に当たって、株主等である法人と協議しその意見を求めていること等の事実があるとしても、そのことだけでは、その外国法人が事業の管理、支配及び運営を自ら行っていないことにはならない。

【新設】(事業の判定)

68の2の3(2)−4 外国法人の営む事業が措置法令第39条の34の3第7項第3号イ又は同号ロ(1)若しくは(2)に掲げる事業のいずれに該当するかどうかは、原則として日本標準産業分類(総務省)の分類を基準として判定する。

(注) 措置法令第39条の34の3第7項第3号の規定を適用する場合において、外国法人が2以上の事業を営んでいるときは、そのいずれの事業が主たる事業であるかどうかの判定については、66の6−8に準ずる。

【解説】

  • 1  本制度では、被合併法人と合併法人との間に特定支配関係があり、かつ、被合併法人の株主等に特定軽課税外国法人に該当する親法人の株式が交付される合併(特定グループ内合併)について、適格合併とされる合併の範囲から除外され、合併の適格性が否認されることとされており(措法68の2の31)、分割、株式交換又は現物出資についても同様とされている(措法68の2の3234)。
     ただし、次の基準のすべてに該当する外国法人は、特定軽課税外国法人に該当しないこととされている(措令39の34の37)。
    • (1) 事業基準
       株式・債券の保有、工業所有権等の無体財産の提供又は船舶・航空機の貸付けを主たる事業とするものでないこと(措令39の34の37一)。
    • (2) 実体基準・管理支配基準
       本店所在地国等においてその主たる事業を行うに必要な事務所等の固定施設を有し、かつ、その事業の管理、支配及び運営を自ら行っていること(措令39の34の37二)。
    • (3) 非関連者基準又は所在地国基準
      • 1 非関連者基準(その外国法人の行う主たる事業が卸売業、銀行業、信託業、証券業、保険業、水運業又は航空運送業である場合に適用)
         その合併が行われる日を含むその外国法人の事業年度開始の日前2年以内に開始した各事業年度のうちいずれかの事業年度において、関連者以外の者との取引が50%を超えていること(措令39の34の37三イ)。
         (注)「関連者」とは、次の者をいう(措令39の34の39)。
        • (イ) その外国法人と他の法人との間にいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式等の50%超を直接又は間接に保有する関係がある場合におけるその他の法人
        • (ロ) その外国法人と他の法人が同一の者によってそれぞれその発行済株式等の50%超を保有される関係がある場合におけるその他の法人
      • 2 所在地国基準(その外国法人が行う事業が上記1の7業種以外の事業である場合に適用)
         その外国法人の行う主たる事業の区分に応じ次の@Bに該当すること(措令39の34の37三ロ)。
        • @ 不動産業の場合
           主として本店所在地国にある不動産の売買・貸付け等を行っていること。
        • A 物品賃貸業の場合
           主として本店所在地国において使用に供される物品の貸付けを行っていること。
        • B その他の事業の場合
           主として本店所在地国において事業を行っていること。
  • 2  本通達の本文では、上記(3)における「主たる事業」の判定基準を示している。すなわち、外国法人の営む事業が上記(3)1又は2@若しくはAのいずれに該当するかどうかは、原則として日本標準産業分類(総務省)の分類を基準として判定することを明らかにしている。
  • 3  また、外国法人が2以上の事業を営んでいる場合において、そのいずれの事業が主たる事業であるかは、66の6−8《主たる事業の判定》に準じ、それぞれの事業に属する収入金額又は所得金額の状況、使用人の数、固定施設の状況等を総合的に勘案して判定することになる。本通達の注書では、このことを明らかにしている。

【新設】(証券業を営む外国法人が受けるいわゆる分与口銭)

68の2の3(2)−5 証券業を営む内国法人(措置法令第39条の34の3第9項に規定する関連者に該当する法人に限る。以下68の2の3(2)−5において同じ。)に係る同項に規定する外国法人で証券業を営むものが、その本店又は主たる事務所の所在する国又は地域においてその顧客から受けた有価証券の売買に係る注文(募集又は売出しに係る有価証券の取得の申込みを含む。以下68の2の3(2)−5において同じ。)を当該内国法人に取り次いだ場合において、その取り次いだことにより当該内国法人からその注文に係る売買等の手数料(手数料を含む価額で売買が行われた場合における売買価額のうち手数料に相当する部分を含む。)の一部をいわゆる分与口銭として受け取ったときは、その分与口銭は同条第7項第3号イ(4)に規定する関連者以外の者から受ける受入手数料に該当するものとして取り扱う。

【解説】

  • 1  外国法人が特定軽課税外国法人に該当しない要件(適用除外要件)の一つに「非関連者基準」がある。
     外国法人の行う主たる事業が証券業である場合において、合併、分割、株式交換又は現物出資が行われる日を含むその外国法人の事業年度開始の日前2年以内に開始した各事業年度のうちいずれかの事業年度の受入手数料(有価証券の売買による利益を含む。)の合計額のうちに関連者以外の者から受ける受入手数料の合計額の占める割合が50%を超えるときには、「非関連者基準」を満たすこととなる(措令39の34の37三イ(4))。
  • 2  ところで、軽課税国に所在する外国法人のうち証券会社であるものが現地の顧客から注文を受けた場合に、その注文が日本における有価証券の取得等であるときは、その注文を関連者に該当する子会社である日本の証券会社に取り次ぐこととしている。このようないわゆる「つなぎ取引」があった場合には子会社である日本の証券会社からその注文を取った現地の外国法人に対して、いわゆる「分与口銭」が支払われることになる。この分与口銭の収受はその形式を見る限り、本制度の適用除外要件の一つである「非関連者基準」の判定上、関連者からの収入ということになる。しかし、このような「分与口銭」の授受は相手方が親会社かどうかにかかわらず証券業界において一般的に行われていることであり、親子会社間に特有な取引ではないと認められる。
     そこで、このような現地からのつなぎ取引に基づく分与口銭の授受は、関連者以外の者との取引、すなわち「非関連者取引」に係る収入として認めることが相当であることから、本通達はそのことを明らかにしている。