【制度の概要】

 この制度は、農業経営基盤強化準備金の金額を有する法人が、農業経営基盤強化促進法に規定する認定計画等の定めるところにより農用地又は特定農業用機械等の取得等をし、農業の用に供した場合には、当該農用地又は特定農業用機械等について、準備金の取崩益など一定の金額の範囲内で圧縮記帳ができるというものである(措法61の3)。

  • 1 適用対象法人
     本制度の適用対象法人は、措置法第61条の2第1項の農業経営基盤強化準備金の金額を有する法人又は農業経営基盤強化準備金の積立てができる法人とされている(措法61の31)。
  • 2 対象資産
     農業経営基盤強化を図るための認定計画等の定めるところにより取得等をした農業経営基盤強化促進法第4条第1項第1号に規定する農用地又は特定農業用機械等が、本制度の対象資産とされている(措法61の31)。
     この農用地とは、農地又は農地以外の土地で主として耕作若しくは養畜の事業の用のための採草若しくは家畜の放牧の目的に供される土地をいい、農地とは、耕作の目的に供される土地をいう。また、特定農業用機械等とは、新品の農業用の機械その他の減価償却資産をいい、具体的には〔平成20年改正前の〕耐用年数省令別表七に掲げる減価償却資産のうち、農業用のものをいう。
     なお、これらの対象資産の取得からは、贈与、交換、出資、合併、分割又は適格事後設立による取得及び代物弁済としての取得が除かれるほか、平成20年4月1日以後に締結する所有権移転外リース取引による取得が除かれる(措法61の31、措令37の31)。
     なお、連結納税制度についても同様の規定が定められている。

【新設】(贈与による取得があったものとされる場合の適用除外)

61の3−1 措置法第61条の3第1項に規定する農用地(以下「農用地」という。)の贈与による取得は、同条の取得に該当しないのであるが、次に掲げる場合は、次によることに留意する。

  • (1) 農用地を著しく低い価額で譲り受けた場合において、その譲受価額と譲受の時における当該農用地の価額との差額に相当する金額について贈与を受けたものと認められるときは、同条の規定の適用に当たっては、当該譲受価額による取得があったものとする。
  • (2) 農用地を著しく高い価額で譲り受けた場合において、その譲受価額と譲受の時における当該農用地の価額との差額に相当する金額の贈与をしたものと認められるときは、同条の規定の適用に当たっては、当該農用地の価額による取得があったものとする。

【解説】

  • 1  本制度の適用対象資産の一つである農用地については、対価をもって取得したものにつき圧縮記帳を認める趣旨であるから、対価の授受を伴わない贈与による農用地の取得をしても本制度の適用はない。このことは、交換、出資、合併、分割又は適格事後設立による取得及び代物弁済としての取得についても同様である(措法61の31)。したがって、次に掲げる場合には、それぞれ次によることになる。
    • (1) 農用地を著しく低い価額で譲り受けた場合において、その譲受価額と譲受の時における当該農用地の価額との差額に相当する金額について贈与を受けたものと認められるときは、その取引を譲受対価の授受が行われた部分と贈与を受けたと認められる部分とに区分し、譲受対価の授受が行われた部分についてのみ圧縮記帳の特例を適用することになる。すなわち、対価を支払った部分のみが本制度における農用地となり、贈与を受けたと認められる部分については本制度における農用地として圧縮記帳の対象とすることはできない。
    • (2) 農用地を著しく高い価額で譲り受けた場合において、その譲受価額と譲受の時における当該農用地の価額との差額に相当する金額の贈与をしたものと認められるときは、当該農用地の時価による取得が行われたものとして、当該農用地の時価を基に圧縮記帳の特例を適用することになる。すなわち、当該農用地の時価をもってその農用地の取得価額とするから、実際に支払った金額のうち当該農用地の時価を超え、贈与をしたと認められる金額については当然本制度による圧縮記帳はできないのである。
      本通達において、このことを明らかにしている。
  • 2  連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の65《農用地等を取得した場合の課税の特例》についても、同様の通達(連措通68の65−1)を新たに定めている。

【新設】(事業の判定)

61の3−2 法人の営む事業が措置法第61条の3第1項に規定する農業に該当するかどうかは、おおむね日本標準産業分類(総務省)の分類を基準として判定する。

【解説】

  • 1  本制度の適用対象資産となる農用地又は特定農業用機械等は、それぞれ当該法人の農業の用に供することがその要件とされている。
     そこで、本通達において、法人の営む事業が農業に該当するかどうかは、おおむね日本標準産業分類(総務省)の分類を基準として判定する旨を明らかにしている。
  • 2  連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の65《農用地等を取得した場合の課税の特例》についても、同様の通達(連措通68の65−2)を新たに定めている。

【新設】(貸付けの用に供されているものに該当しない機械の貸与)

61の3−3 法人がその有する機械その他の減価償却資産を他に貸し付けている場合には、当該機械その他の減価償却資産について措置法第61条の3第1項の規定の適用はないのであるが、例えば農業用の機械を他の者に貸与した場合において、当該農業用の機械が専ら当該法人のためにする農畜産物の生産の用に供されているなど法人自らが使用しているものと同様の事情にあると認められる場合には、その貸し付けている農業用の機械は、当該法人の農業の用に供したものとして取り扱う。

【解説】

  • 1  本制度の適用対象資産である農用地又は特定農業用機械等は、それぞれ当該法人の農業の用に供することがその要件とされているため、他の者に貸し付けるような場合には、その適用がないこととなる(措法61の31)。
     しかし、一口に貸付けの用といっても、その貸付けをするに至った事情や貸付けの態様には様々なものがあり、これを一律に本制度の適用対象外とすることについては、やや問題があろう。特に、自己自身による生産能力の低い農業生産法人が、農作業の一部分に従事させている専属の小作農者に対して、その農畜産物の生産及び加工をさせるために貸与する機械その他の減価償却資産については、その実態は、当該農業生産法人が自ら農業の用に供しているものと見る余地があろう。
     そこで、本通達において、本制度の適用対象法人が、その取得等をした農用地又は特定農業用機械等に該当する機械その他の減価償却資産を他の者に貸与した場合においても、その機械その他の減価償却資産が専ら当該法人のためにする農畜産物の生産の用に供されているなど法人自らが使用しているものと同様の事情にあると認められる場合には、その貸し付けている農業用の機械その他の減価償却資産は、当該法人の農業の用に供したものとして、本制度の適用を認める旨を明らかにしている。
  • 2  連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の65《農用地等を取得した場合の課税の特例》についても、同様の通達(連措通68の65−3)を新たに定めている。

【新設】(農用地等の圧縮限度額の計算)

61の3−4 措置法第61条の3第1項に規定する農用地等が2以上ある場合において、同項に規定する圧縮限度額がいずれの農用地等から充てられたものとするかは、法人の計算によるものとする。

(注) 農用地等の取得価額が圧縮限度額を超える場合には、その超える部分に相当する金額につき当該事業年度後の事業年度(その事業年度が連結事業年度に該当する場合には、当該連結事業年度)に繰越しをすることができないことに留意する。

【解説】

  • 1  本制度の圧縮記帳は、措置法第61条の2第1項の農業経営基盤強化準備金の金額を有する法人が、措置法第61条の3第1項に規定する農用地又は特定農業用機械等の取得等をして農業の用に供した場合に、措置法第61条の2第2項又は第3項の規定により益金の額に算入された、又は算入されるものとされた同条第1項の農業経営基盤強化準備金の金額に相当する金額(以下「圧縮限度額」という。)の範囲内で当該農用地又は特定農業用機械等について適用される(措法61の31)。
     したがって、適用対象資産である個々の当該農用地又は特定農業用機械等の取得価額の合計額が圧縮限度額の範囲内である場合には、個々の当該農用地又は特定農業用機械等の取得価額について圧縮記帳をすることになる。しかし、個々の当該農用地又は特定農業用機械等の取得価額の合計額が圧縮限度額を超える場合には、当然のことながら圧縮限度額の範囲内の金額で圧縮記帳をすることになるが、いずれの農用地又は特定農業用機械等について圧縮記帳をすることになるのかといった疑問が生じる。
     この場合、圧縮限度額を個々の当該農用地又は特定農業用機械等の取得価額に平均的に配分して圧縮記帳をする方法又は個々の当該農用地又は特定農業用機械等の取得価額に順次充てんして圧縮記帳をする方法等が考えられるが、措置法第61条の3の規定上は、法人の選択によりいずれの方法を採ったとしても差し支えないと考えられる。
     そこで、本通達において、措置法第61条の3第1項に規定する農用地等が2以上ある場合に、同項に規定する圧縮限度額がいずれの農用地又は特定農業用機械等から充てられたものとするかは、法人の計算によるものとすることを明らかにしている。
  • 2  また、当該事業年度において取得等をした農用地又は特定農業用機械等の取得価額が圧縮限度額を超える場合に、翌事業年度以後の事業年度において圧縮限度額が生じたときは、当該翌事業年度以後の事業年度において生じた圧縮限度額の範囲内で、その超える部分に相当する金額につき当該農用地又は特定農業用機械等をさらに圧縮記帳できるかどうかの疑問が生ずる。
     この点、本制度は当該事業年度において取得等をした農用地又は特定農業用機械等に限り、当該事業年度の圧縮限度額の範囲内で圧縮記帳を認めるというものであり、翌事業年度以後の事業年度において生じた圧縮限度額の範囲も含めたところで圧縮記帳を認めるというものではない。
     そこで、本通達の注書きにおいて、農用地又は特定農業用機械等の取得価額が圧縮限度額を超える場合には、その超える部分に相当する金額につき翌事業年度以後の事業年度に繰越しをすることができないことを明らかにしている。
  • 3  連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の65《農用地等を取得した場合の課税の特例》についても、同様の通達(連措通68の65−4)を新たに定めている。