【制度の概要】

この制度は、青色申告書を提出する法人が、企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律(以下「地域産業活性化法」という。)に規定する同意基本計画に定められた集積区域内において、地域産業活性化法の施行の日(平成19年6月11日)から平成21年3月31日までの間に、集積産業用資産の取得又は製作若しくは建設をして、指定集積事業の用に供した場合において、その集積産業用資産が一定の要件を満たすものであるときは、取得価額の15%(建物等については、8%)の特別償却ができるというものである。
 この制度の適用対象設備は、その製作等の後事業の用に供されたことのない地域産業活性化法に規定する承認を受けた企業立地計画に定められた機械及び装置並びに工場用の建物及びその附属設備(集積産業用資産)で次の要件を満たすものをいう。

  • イ 機械及び装置にあっては、1台又は1基の取得価額が1千万円以上であり、かつ、その機械及び装置が定められた承認企業立地計画に記載された施設又は設備のうちの機械及び装置の取得価額の合計額が3億円以上であること
  • ロ 建物及びその附属設備にあっては、一の建物及びその附属設備の取得価額の合計額が5億円以上であること

 なお、連結納税制度についても同様の規定が定められている。

【新設】(圧縮記帳をした集積産業用資産の取得価額)

44の2−1 措置法第44条の2第1項に規定する集積産業用資産(以下「集積産業用資産」という。)の取得価額の合計額が措置法令第28条の5第1号ロに規定する3億円以上又は同条第2号に規定する5億円以上であるかどうかを判定する場合において、当該集積産業用資産が法又は措置法の規定による圧縮記帳の適用を受けたものであるときは、その圧縮記帳後の金額に基づいてその判定を行うものとする。

(注) 同条第1号ロに規定する機械及び装置の取得価額の合計額が3億円以上であるかどうかの判定は、同号ロに規定する承認企業立地計画に基づき取得又は製作をする機械及び装置の取得価額の合計額によることに留意する。

【解説】

  • 1  本制度の対象となる集積産業用資産は、その取得価額の合計額が、機械及び装置にあっては3億円以上、建物及びその附属装置にあっては5億円以上のものとされている(措令28の5一ロ、二)。そこで、本制度の適用に関して、その機械及び装置又は建物及びその附属設備につき法人税法又は措置法の規定による圧縮記帳の適用を受けた場合に、その取得価額の合計額が3億円以上又は5億円以上であるかどうかを圧縮記帳前の金額に基づいて判定するのか、それとも圧縮記帳後の金額に基づいて判定するのかということが問題になるが、これについては、措置法令第28条の5の規定振りからみて圧縮記帳後の金額によるべきものと解されるので、本通達において、このことを明らかにしている。
     本通達において、法人税法の規定による圧縮記帳の適用を受けた機械及び装置だけではなく、措置法の規定による圧縮記帳の適用を受けた機械及び装置についても定めているのは、この特別償却制度と措置法上の圧縮記帳制度とは重複適用ができないことになっているものの(措法646など)、機械及び装置の取得価額が3億円以上であるかどうかの規模判定は、措置法の規定による圧縮記帳の適用を受けた機械及び装置をも含めたところで行うことになるからである。
  • 2  なお、機械及び装置の取得価額の合計額が3億円以上であるかどうかの規模判定は、承認企業立地計画に記載された特定事業のための施設又は設備のうちの機械及び装置の取得価額の合計額により判定することとされている(措令28の5一ロ)。例えば、承認企業立地計画に記載された機械及び装置が複数あり、それらが2以上の事業年度にわたって取得等され、それぞれ取得等された事業年度において事業の用に供される場合において、最初の事業年度に取得等をした機械及び装置の取得価額の合計額は3億円に満たないが、その後の事業年度に取得等をする機械及び装置の取得価額を合わせた合計額が3億円以上となるときに、最初の事業年度に取得等をして事業供用した機械及び装置について、本制度の適用があるかという問題がある。
     この点について、本制度における規模判定は、事業年度ごとに行うのではなく、承認企業立地計画に基づき取得等をする機械及び装置の取得価額の合計額によるのであるから、最初の事業年度に取得等をした機械及び装置の取得価額が3億円に達していないとしても、その後の事業年度において確実に取得が見込まれる機械及び装置の取得価額との合計額が3億円以上である場合には、規模要件を満たすものとして本制度の適用があることになる。本通達の注書ではこのことを明らかにしている。
  • 3  なお、最初の事業年度において、規模要件を満たすものとして本制度の適用を受けた機械及び装置について、その後の事業年度において、計画どおりに機械及び装置の取得等が行われず、結果的に規模要件を満たさないこととなった場合には、最初の事業年度の特別償却は認められないこととなる。
  • 4  連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の20《集積区域における集積産業用資産の特別償却》についても、同様の通達(連措通68の20−1)を新たに定めている。

【新設】(機械及び装置の取得価額の判定単位)

44の2−2 措置法令第28条の5第1号イに規定する機械及び装置の1台又は1基の取得価額が1,000万円以上であるかどうかについては、通常1単位として取引される単位ごとに判定するのであるが、個々の機械及び装置の本体と同時に設置する自動調整装置又は原動機のような附属機器で当該本体と一体となって使用するものがある場合には、これらの附属機器を含めたところによりその判定を行うことができるものとする。

(注) 当該機械及び装置が法第42条から第49条までの規定による圧縮記帳の適用を受けたものであるときは、その圧縮記帳後の金額に基づいてその判定を行うものとする。

【解説】

  • 1  本制度の適用対象となる機械及び装置は、1台又は1基の取得価額が1,000万円以上のものとされている(措令28の5一イ)。この取得価額の判定に当たっては、通常1単位として取引される単位ごとに判定することを原則とするが、例えば、個々の機械及び装置の本体と同時に設置する自動調整装置又は原動機のような附属機器でその本体と一体となって使用されるものがある場合には、その取得価額の判定をどのように行うのか疑問が生ずる。そこで、本通達において、個々の機械及び装置の本体と同時に設置する自動調整装置又は原動機のような附属機器でその本体と一体となって使用するものがある場合には、これらの附属機器を含めたところでその取得価額が1,000万円以上であるかどうかの判定を行うことができることを明らかにしている。
  • 2  ところで、本制度と法人税法上の圧縮記帳制度とは重複適用が可能であることから、法人税法上の圧縮記帳の適用を受けた機械及び装置について本制度の適用を受けようとする場合に、その取得価額が1,000万円以上であるかどうかを圧縮記帳前又は圧縮記帳後のいずれの金額によって判定するのかが問題となる。この点、法人税法上の圧縮記帳の適用を受けた減価償却資産については、圧縮記帳後の金額を取得価額とするものとされており(法令543)、本制度の適用に当たっても措置法令第28条の5第1号イの規定振りからみて同様に取り扱うべきものと解される。
     そこで、本通達の注書において、機械及び装置の取得価額が1,000万円以上であるかどうかを判定する場合に、当該機械及び装置が法人税法上の圧縮記帳の適用を受けたものであるときは、その圧縮記帳後の金額に基づいてその判定を行うことを明らかにしている。
     なお、本制度と措置法上の圧縮記帳とは重複適用ができないこととされていることから(措法65の7など)、措置法上の圧縮記帳の適用を受けた機械及び装置については、このような問題は生じない。
  • 3  連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の20《集積区域における集積産業用資産の特別償却》についても、同様の通達(連措通68の20−2)を新たに定めている。

【新設】(工場用の建物及びその附属設備の意義)

44の2−3 集積産業用資産である工場用の建物及びその附属設備には、次に掲げる建物及びその附属設備が含まれるものとする。

  • (1) 工場の構内にある守衛所、詰所、自転車置場、浴場その他これらに類するもので工場用の建物としての耐用年数を適用するもの及びこれらの建物の附属設備
  • (2) 工場において使用する電力に係る発電所又は変電所の用に供する建物及びこれらの建物の附属設備

(注) 倉庫用の建物は、工場用の建物に該当しない。

【解説】

  • 1  この特別償却制度は、地域産業活性化法に規定する同意基本計画に定められた集積区域内において、承認企業立地計画に定められた機械及び装置並びに工場用の建物及びその附属設備(集積産業用資産)について適用があるのであるが(措法44の21)、その工場用の建物及びその附属設備の範囲は、本通達に例示されているような建物及びその附属設備、すなわち工場用の建物と機能的に一体となっているものが含まれる。
     なお、倉庫用の建物は、工場用の建物に該当しないので、本制度の対象とならないことに留意する必要がある。
  • 2  連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の20《集積区域における集積産業用資産の特別償却》についても、同様の通達(連措通68の20−3)を新たに定めている。

【新設】(特別償却の対象となる工場用の建物の附属設備)

44の2−4 集積産業用資産である工場用の建物の附属設備は、当該建物とともに取得する場合における建物附属設備に限られることに留意する。

【解説】

  • 1  本制度は、工場用の建物のほか、その建物の附属設備についても適用がある(措法44の21)。
     そこで、この場合の工場用の建物の附属設備とは、建物本体とは別に取得した附属設備であってもよいのか、それとも工場用の建物と同時に取得したものに限られるのかということが問題になるが、建物の附属設備は、それ自体独立して使用される性質のものではないので、その附属設備だけを取得しても、本制度の適用の対象とならない。本通達では、このことを明らかにしている。
  • 2  連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の20《集積区域における集積産業用資産の特別償却》についても、同様の通達(連措通68の20−4)を新たに定めている。

【新設】(工場用とその他の用に共用されている建物の判定)

44の2−5 一の建物が工場用とその他の用に共用されている場合には、原則としてその用途の異なるごとに区分し、工場用に供されている部分について措置法第44条の2第1項の規定を適用するのであるが、次の場合には、次によることとする。

  • (1) 工場用とその他の用に供されている部分を区分することが困難であるときは、当該建物が主としていずれの用に供されているかにより判定する。
  • (2) その他の用に供されている部分が極めて小部分であるときは、その全部が工場用に供されているものとすることができる。

【解説】

  • 1  一の建物が工場用とその他の用とに共用されている場合には、原則としてその建物を用途の異なるごとに区分し、工場用として使用されている部分についてのみ本制度を適用することになるが、その区分をすることが困難であるときは、その建物が主としていずれの用に供されているかにより本制度の適用の有無を判定する。したがってその建物が主として工場の用に供されている場合には、その全部が本制度の適用の対象となるということである。
     また、その区分が可能な場合においても、工場以外の用に供されている部分が極めて小部分であるときは、その全部が工場用に供されているものとして本制度の適用対象とすることが認められる。本通達において、このことを明らかにしている。
  • 2  なお、連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の20《集積区域における集積産業用資産の特別償却》についても、同様の通達(連措通68の20−5)を新たに定めている。

【新設】(指定集積事業の用に供しているかどうかの判定)

44の2−6 法人が措置法第44条の2第1項に規定する集積区域内において行う事業が指定集積事業に該当するかどうかは、当該区域内にある事業所ごとに判定する。

(注) 協同組合等が当該区域内において指定集積事業を営むその組合員の共同的施設として集積産業用資産の取得等をして事業の用に供したときは、当該集積産業用資産は当該協同組合等の営む指定集積事業の用に供したものとして取り扱う。

【解説】

  • 1  この特別償却制度は、地域産業活性化法に規定する同意基本計画に定められた集積区域内において、集積産業用資産を地域産業活性化法第19条に規定する指定集積業種に属する事業の用に供した場合に適用がある(措法44の21)。
     この指定集積業種は、次のとおりとされている(企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律施行令3)。
    • 1 繊維工業
    • 2 衣服その他の繊維製品製造業
    • 3 化学工業
    • 4 鉄鋼業
    • 5 非鉄金属製造業
    • 6 一般機械器具製造業
    • 7 電気機械器具製造業
    • 8 情報通信機械器具製造業
    • 9 電子部品・デバイス製造業
    • 10 輸送用機械器具製造業
    • 11 精密機械器具製造業
    法人が集積区域内において行う事業がこの指定集積業種に属する事業(指定集積事業)に該当するかどうかの判定は、その集積区域内にある事業所ごとに判定することを本通達において明らかにしている。例えば、指定集積業種の一つとして「情報通信機械器具製造業」が指定されているが、OA機器等の電子機器の販売業を営む法人が集積区域内の工場(作業場)において電子計算機を製造し、これを商品化して販売しているような場合には、その販売が集積区域以外の地域で行われていても、その法人の集積区域内において行う電子計算機を製造する行為は「情報通信機械器具製造業」として指定集積事業に該当する。すなわち、その集積区域内の集積産業用資産を事業の用に供している工場(作業場)における電子計算機の製造行為を一つの事業とみて、指定集積事業に該当するかどうかを判定するということである。
  • 2  なお、協同組合等が、集積区域内において指定集積事業を営む組合員のための共同的施設として集積産業用資産の取得等をして事業の用に供した場合には、その集積産業用資産は、その協同組合等が営む指定集積事業の用に供したものとして取り扱われる。協同組合等はその構成員である組合員の共同事業体としての性格を有しているから、協同組合等がその組合員が共同で利用する設備を取得し、各組合員の営む指定集積事業の用に供した場合には、その設備は、協同組合等自らが事業の用に供したものとして取り扱う趣旨である。この場合、その共同的施設が集積区域内において事業の用に供されるものでなければならないことはもちろんであるが、その組合員が集積区域内において指定集積事業を営んでいなければならないことにも留意する必要がある。
  • 3  なお、連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の20《集積区域における集積産業用資産の特別償却》についても、同様の通達(連措通68の20−6)を新たに定めている。

【新設】(事業の用に供したものとされる資産の貸与)

44の2−7 法人が、自己の下請業者で措置法第44条の2第1項に規定する集積区域内において指定集積事業を営むものに対し、当該事業の用に供する集積産業用資産を貸し付けている場合において、当該集積産業用資産が専ら当該法人の製造する製品の加工等の用に供されるものであるときは、その貸し付けている集積産業用資産は当該法人の営む指定集積事業の用に供したものとして取り扱う。

(注) 自己の計算において原材料等を購入し、これをあらかじめ指示した条件に従って下請加工させて完成品とするいわゆる製造問屋の事業は、指定集積事業に該当しない。

【解説】

  • 1  この特別償却制度は、集積区域内において、集積産業用資産をその法人が営む指定集積業種に属する事業(指定集積事業)の用に供した場合、すなわち法人自らその営む指定集積事業の用に供した場合に適用があるのであるが、形式的には資産の貸与であっても、実質的に自己の営む指定集積事業の用に供されたものと認められる場合には、その実質に応じた取扱いがなされることになっている。すなわち、法人が、自己の下請業者で集積区域内において指定集積事業を営むものに対し、その事業の用に供する集積産業用資産を貸し付けている場合において、その設備が専らその法人の製造する製品の加工等の用に供されるものであるときは、その貸し付けている設備は、貸与法人の営む指定集積事業の用に供したものとして取り扱われる。本通達において、このことを明らかにしている。
  • 2  なお、自己の計算において原材料等を購入し、これをあらかじめ指示した条件に従って下請加工させて完成品とする製造問屋の事業は、事業の種類のいかんを問わず指定集積事業には該当しないことに注意する必要がある。
  • 3  連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の20《集積区域における集積産業用資産の特別償却》についても、同様の通達(連措通68の20−7)を新たに定めている。