第2 租税特別措置法関係通達(法人税編)関係
1 第42条の5〜第48条((共通事項))関係

【新設】 (信託財産に属する減価償却資産の特別償却等に係る証明書類等の添付)

42の5〜48(共)−6 受益者等課税信託(法第12条第1項に規定する受益者(同条第2項の規定により同条第1項に規定する受益者とみなされる者を含む。以下42の5〜48(共)−6において「受益者等」という。)がその信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなされる信託をいう。)の受益者等である法人が、その信託財産に属する減価償却資産について措置法第3章第1節の規定による特別償却等の適用を受ける場合において、これらの規定に関する規定により、所定の証明書類等をその確定申告書等に添付する必要があるときには、その添付に当たっては、これらの書類が当該法人の有する信託財産に属する減価償却資産に係るものである旨の受託者の証明を受けるものとする。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1 受益者等課税信託においては、その信託の受益者等は、当該信託の信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなし、かつ、当該信託財産に帰せられる収益及び費用は当該受益者等の収益及び費用とみなして、法人税法の規定を適用することとされている(法12)。
 したがって、受益者等課税信託の信託財産に属する減価償却資産について、措置法に規定する特別償却等の適用を受けようとする場合には、当該受益者等課税信託の受益者等において、その適用を受けることとなる。

2 ところで、措置法の規定による特別償却等の適用を受ける場合には、確定申告書に明細書を添付するとともに、所定の証明書類等の添付を要件とするものが少なくない(措法43丸1表一、措令28丸2丸3等)。
 したがって、受益者等課税信託の受益者等である法人が、その信託財産に属する減価償却資産について証明書類等の添付要件が付されている特別償却等の適用を受ける場合には、対象資産である当該信託財産に属する減価償却資産について所定の証明書類等の添付を要することとなるのであるが、ここで若干の問題が生ずる。
 すなわち、信託の法形式上、信託財産に属する資産は信託により受託者の所有に帰し、当該受託者がその資産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をする権限を有することとされていることから(新信託法26)、受益者等課税信託の信託財産に属する減価償却資産について取得する証明書類等は、受託者名義で発行されるものと考えられる。
 このため、受益者等課税信託の信託財産に属する減価償却資産について受益者等が特別償却等の規定の適用を受けるに当たって、受託者名義の証明書類等を添付することとなり、適用を受けようとする法人名(受益者等)と証明書類等に記載されている法人名(受託者)が異なるという問題が生じることとなるのである。

3 これについては、信託の法形式上はともかく、法人税法上は、受益者等課税信託の信託財産に属する減価償却資産の特別償却等の規定はあくまでも受益者等において適用されることとなるのであるから、その適用に当たって受益者等が有する減価償却資産であることが証明書類等により明らかにされている場合には、信託財産に属する減価償却資産の信託の法形式上の所有者と法人税法上の所有者が異なるといった特殊性に鑑みて、この添付要件を満たすものとして取り扱って差し支えないものと考えられる。
すなわち、所定の証明書類等が受益者等である法人の有する信託財産に属する減価償却資産に係るものである旨の受託者の証明を受けることにより、受益者等に帰属するその減価償却資産について、受益者等において特別償却等の規定の適用があるものとしているのである。本通達はこのことを明らかにしている。

4 この場合の所定の証明書類等は特別償却等の規定ごとに異なり、証明書、関係書類のほか、申請書の写し等が含まれているところであるが、その添付に当たって受けることとなる「当該法人の有する信託財産に属する減価償却資産に係るものである旨の受託者の証明」とは、例えば、受託者が「この減価償却資産は、受益者○○○に係る信託財産に属するものである」旨を記載した書面を作成・添付する方法によるなど、当該減価償却資産が受益者等に帰属することを受託者が明らかにすることが必要となる。

5 なお、連結納税制度においても、同様の通達(連措通68の10〜68の36(共)−6)を定めている。

 2 第62条の3((土地の譲渡等がある場合の特別税率))関係

【新設】 (信託財産に属する土地等の譲渡に係る証明書類の添付)

62の3(6)−13 受益者等課税信託(法第12条第1項に規定する受益者(同条第2項の規定により同条第1項に規定する受益者とみなされる者を含む。以下62の3(6)−13において「受益者等」という。)がその信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなされる信託をいう。)の受益者等である法人が、信託財産に属する土地等の譲渡について措置法第62条の3第4項又は第5項の規定の適用を受ける場合には、これらの項の規定により、措置法規則第21条の19第2項各号又は第9項各号に掲げる書類をその法人税申告書(修正申告書を除く。)に添付する必要があるのであるが、その添付に当たっては、これらの書類が当該法人の有する信託財産に属する土地等の譲渡に係るものである旨の受託者の証明を受けるものとする。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1 受益者等課税信託においては、その信託の受益者等は、当該信託の信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなし、かつ、当該信託財産に帰せられる収益及び費用は当該受益者等の収益及び費用とみなして、法人税法の規定を適用することとされている(法12)。
したがって、受益者等課税信託の信託財産に属する資産の譲渡等のうち措置法第62条の3第2項第1号((土地の譲渡等がある場合の特別税率))に規定する土地の譲渡等があった場合には、当該受益者等課税信託の受益者等がその土地の譲渡等を行ったものとみなされ、受益者等において同条の規定の適用があることとなり、その場合、同条第4項又は第5項の適用除外の規定を適用する場面もあり得よう。

2 この適用除外の規定の適用に当たっては、措置法規則第21条の19第2項各号又は第9項各号に掲げる書類の法人税申告書(修正申告書を除く。)への添付が要件とされている。この場合、信託の法形式上、信託財産に属する資産は信託により受託者の所有に帰し、当該受託者がその資産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をする権限を有することとされていることから(新信託法26)、受益者等課税信託の信託財産に属する土地等の譲渡により取得する書類は、受託者名義で発行されるものと考えられる。
結果として、受益者等課税信託の信託財産に属する土地等の譲渡について受益者等がこの適用除外の規定の適用を受けるに当たって、受託者名義の書類を添付することとなり、適用を受けようとする法人名(受益者等)と書類に記載されている法人名(受託者)が異なるという問題が生じることとなるのである。

3 これについては、信託の法形式上はともかく、法人税法上は、受益者等課税信託の信託財産に属する土地の譲渡等につき措置法第62条の3の規定はあくまでも受益者等において適用されることとなるのであるから、同条第4項又は第5項の適用除外の規定を適用するに当たって受益者等が有する土地等の譲渡であることが書類等により明らかにされている場合には、信託財産に属する土地等の信託の法形式上の所有者と法人税法上の所有者が異なるといった特殊性に鑑みて、この添付要件を満たすものとして取り扱って差し支えないものと考えられる。
すなわち、当該書類が受益者等である法人の有する信託財産に属する土地等の譲渡に係るものである旨の受託者の証明を受けることにより、受益者等に帰属するその土地等の譲渡について、受益者等において土地等の譲渡がある場合の特別税率の適用除外の規定の適用があるものとしているのである。本通達はこのことを明らかにしている。

4 当該書類の添付に当たって受けることとなる「当該法人の有する信託財産に属する土地等の譲渡に係るものである旨の受託者の証明」とは、例えば、受託者が「譲渡された土地は、受益者○○○に係る信託財産に属するものである」旨を記載した書面を作成・添付する方法によるなど、当該土地等が受益者等に帰属することを受託者が明らかにすることが必要となる。

5 なお、連結納税制度においても、同様の通達(連措通68の68(6)−13)を定めている。

(注) 措置法第62条の3の規定は、平成10年1月1日から平成20年12月31日までの間にした土地の譲渡等については、適用が停止されている(措法62の3丸13)。

 3 第65条の2 ((収用換地等の場合の所得の特別控除))関係

【新設】 (信託財産に属する資産の譲渡への適用)

65の2−11 受益者等課税信託(法第12条第1項に規定する受益者(同条第2項の規定により同条第1項に規定する受益者とみなされる者を含む。以下65の2−11において「受益者等」という。)がその信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなされる信託をいう。)の信託財産に属する資産について措置法第65条の2第1項に規定する収用換地等による譲渡があった場合における同条の規定の適用に当たっては、次に掲げる事項は、それぞれ次によることに留意する。

(1) 同条第3項第1号に掲げる「最初に当該申出のあった日」とは、当該受益者等課税信託の受託者が、同号の公共事業施行者から当該資産につき最初に買取り等の申出を受けた日をいう。

(2) 同項第2号に規定する「一の収用換地等に係る事業につき前二項に規定する資産の収用換地等による譲渡が二以上あった場合」に該当するかどうかは、当該受益者等課税信託の受益者等である法人が有するものとみなされる当該信託財産に属する資産の譲渡とそれ以外の資産の譲渡とを通じて判定する。

(3) 当該収用換地等による譲渡の時における当該信託財産に属する資産の譲渡をした当該法人が、当該信託財産に属する資産につき最初に買取り等の申出を受けた時における当該受益者等課税信託の受益者等以外の者である場合(同項第3号イ又はロに掲げる場合に該当するときを除く。)には、同号の規定に該当することとなる。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1 受益者等課税信託においては、その信託の受益者等は、当該信託の信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなし、かつ、当該信託財産に帰せられる収益及び費用は当該受益者等の収益及び費用とみなして、法人税法の規定を適用することとされている(法12)。
したがって、受益者等課税信託の信託財産に属する資産につき収用換地等による譲渡があった場合は、当該受益者等課税信託の受益者等が当該収用換地等による資産の譲渡等を行ったものとみなされ、受益者等において措置法第65条の2第1項に規定する収用換地等による譲渡の特例の規定の適用を受ける場合があり得よう。
ところで、信託の法形式上、信託財産に属する資産は信託により受託者の所有に帰し、当該受託者がその資産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をする権限を有することとされていることから(新信託法26)、収用等を行う公共事業施行者は、信託財産に属する資産について買取り等を行う場合には、その信託の受託者を相手方として行うこととなるのであるが、この特例制度の適用を受けるに当たって若干の疑義が生ずる。

2 まず、この特例制度は、その収用換地等による資産の譲渡が、公共事業施行者から当該資産につき最初に買取り等の申出があった日から6か月を経過した日までにされなかった場合には、適用がないこととされている(措法65の2丸3一)。
公共事業施行者が行う事業用地の買取り等の申出はその土地の所有者に対して行うのであるから、その土地が受益者等課税信託の信託財産に属する土地である場合は、名義人である当該信託の受託者に対して申出を行うこととなる。
しかしながら、法人税法上、受益者等課税信託の信託財産に属する土地は受益者等が有するものとみなされることから、信託の法形式上の所有者と法人税法上の所有者が異なることとなるため、土地の収用換地等による譲渡が買取り等の最初の申出から6か月を経過した日までに行われたものであるかの判定上、その起算日を受託者が買取り等の申出を受けた日とするか、それとも法人税法上の所有者である受益者等がそのことを知った日とするかという点について問題となる。
この点については、受益者等課税信託の信託財産に属する資産の収用換地等による譲渡は受託者名義で受託者の名と計算により行われるものであること、当該受託者は財産の管理運用処分に関する権限を有するとともに受益者のために忠実に信託事務の処理その他の行為をしなければならないこととされていることを踏まえれば(新信託法26、30)、その受託者の行為は受益者等の行為そのものとも捉えることができることから、公共事業施行者から受託者が信託財産に属する資産について最初に買取り等の申出を受けた日をもってこの6か月の期間計算の起算日とすることが相当であろう。本通達の(1)では、このことを明らかにしている。

3 次に、この特例制度は、一の収用換地等に係る事業につき資産の収用換地等による譲渡が二以上あった場合において、これらの譲渡が二以上の年にわたってされたときには、最初の年に譲渡した資産に限り適用があることとされている(措法65の2丸3二)。そこで、問題となるのが、受益者等課税信託の受益者等が同一の収用換地等の事業の用に供するため、例えば最初の年に信託財産でない土地等を譲渡し、その翌年に信託財産に属する土地等を譲渡することとなった場合には、2年目の譲渡についてこの特例制度の適用を受けられるかどうかという点である。
 この点については、法人税法上、受益者等課税信託の信託財産に属する資産はその受益者等が有するものとみなされることから、法人が受益者等である当該信託財産に属する土地と当該法人が所有者である信託財産でない土地とはいずれも当該法人が有する土地とみることからすれば、同条第3項第2号に規定する「一の収用換地等に係る事業につき前二項に規定する資産の収用換地等による譲渡が二以上あった場合」に該当するかどうかは、その有する信託財産に属する資産の譲渡と信託財産でない資産の譲渡のいずれをも判定対象とすることとし、これらの譲渡が二以上の年にわたってされているものかどうかによりこの特例制度の適用の有無を判定することとなる。本通達の(2)では、このことを明らかにしている。

4 更に、この特例制度では、収用換地等による資産の譲渡が最初に買取り等の申出を受けた者以外の者からされた場合には、原則として、その資産の譲渡について特例の適用を認めないこととされている(措法65の2丸3三)。そこで、問題となるのは、受益者等課税信託の信託財産に属する資産について収用換地等による譲渡があった場合において、公共事業施行者から買取り等の申出があった後に受益権の譲渡等によって当該信託の受益者等が変わっているときの本制度の適用についてである。すなわち、法人税法上の所有者である受益者等に変更がなされているにもかかわらず、名義人は依然として信託の法形式上の所有者である受託者のままであるため、この特例制度を適用できるかどうかにつき疑義が生ずるのである。
 この点については、法人税法上、受益者等課税信託の信託財産に属する資産はその受益者等が有するものとみなされるのであるから、当該資産について最初に買取り等の申出を受けた後にその資産の受益者等に変更が生じた場合には、その変更が措置法第65条の2第3項第三号イ又はロに掲げる場合に該当するときを除き、新たに受益者等となった者のその買取り等の申出に係る信託財産に属する資産の譲渡に係る所得の計算上、この特例制度を適用することはできない。本通達の(3)では、このことを明らかにしている。

5 本通達は、平成19年6月22日付課審1−16ほか5課共同「「土地信託に関する所得税、法人税並びに相続税及び贈与税の取扱いについて」及び「信託受益権が分割される土地信託に関する所得税、法人税、消費税並びに相続税及び贈与税の取扱いについて」の廃止について」(法令解釈通達)により廃止された昭和61年7月9日付直審5−6ほか4課共同「土地信託に関する所得税、法人税並びに相続税及び贈与税の取扱いについて」(法令解釈通達)における「第3法人税に関する取扱い」の3−30(1)から(3)まで((収用換地等の場合の所得の特別控除の適用))において定められていたものと同趣旨のものであり、平成19年度税制改正後も同様の取扱いとなる旨を明らかにしているものである。

6 なお、連結納税制度においても、同様の通達(連措通68の73−15)を定めている。