2 法人課税信託に係る所得の金額の計算

【新設】 (公益法人等の法人課税信託に係る課税所得の範囲)

12の6−2−1 公益法人等が法人課税信託の受託者となった場合には、当該法人課税信託に係る受託法人は当該公益法人等とは別の会社とみなされることから、当該法人課税信託に係る法人税の課税所得の範囲は、収益事業から生じた所得に限られないことに留意する。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

法人税法上、公益法人等は、収益事業から生じた所得についてのみ法人税が課されることとされている(法7)。
 ところで、法人課税信託の受託者は、各法人課税信託の信託資産等及び信託資産等以外の固有資産等ごとにそれぞれ別の者とみなして法人税法の規定が適用され(法4の6)、この場合、法人課税信託に係る受託法人のうち会社でないものは、会社とみなすこととされている(法4の7三)。このように会社でない受託法人を会社とみなすのは、法人税法が対象とする典型的な組織形態である会社に対する課税と同様の課税となるようにするためであり、このことにより特定同族会社に対する留保金課税や同族会社等の行為計算の否認規定なども適用があるとされている(法4の7六)。
 したがって、公益法人等が法人課税信託の受託者になった場合には、当該法人課税信託に係る受託法人は会社とみなされることから、当該受託法人たる公益法人等の当該法人課税信託に係る法人税の課税所得の範囲は、収益事業から生じた所得に限らず、普通法人の課税所得の範囲と同一となる。本通達はこのことを明らかにしている。

【新設】 (受益者等が存しない信託に係る清算所得に対する法人税の課税関係)

12の6−2−2 法人課税信託のうち、法第2条第29号の2ロ((法人課税信託))に掲げる信託に係る受託法人は、受益者が存することなく信託の終了があった場合に限り、清算所得に対する法人税が課されることに留意する。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1 新信託法において、受益者の定め(受益者を定める方法の定めを含む。)のない信託は、契約又は遺言による方法によってすることができることが定められた(新信託法258丸1)。

2 法人税法において、「受益者」を受益者としての権利を現に有するものに限り、また、信託の変更をする一定の権限を現に有し、かつ、その信託の信託財産の給付を受けることとされている者を「みなし受益者」とした上で、受益者及びみなし受益者(以下「受益者等」という。)は当該信託の信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなし、かつ、当該信託財産に帰せられる収益及び費用は当該受益者等の収益及び費用とみなして法人税法の規定を適用することとされている(法12丸1丸2)。
 他方、受益者等が存しない信託については、法人課税信託に係る受託法人に対して各事業年度の所得に対する法人税を課するものとされている(法2二十九の二ロ)。

3 法人課税信託に係る受託法人に法人税法の規定を適用する場合においては、当該法人課税信託の効力が生ずる日に設立されたものとされ(法4の7七)、また、その信託の終了があった場合又は受益者等が存しないものについて受益者等が存することとなった場合には、当該受託法人の解散があったものとされている(法4の7八)。そして、法人課税信託に係る受託法人の解散があったものとされた場合には、受託法人に対する清算所得の課税関係が生ずることとなる。ただし、これらの解散事由のうち、受益者等が存しない法人課税信託について受益者等が存することとなった場合については、信託自体が終了するものではなく、その後は受益者等課税信託として法人税又は所得税の課税が行われることから、法令上、「信託特定解散」として他の解散とは区別して、この信託特定解散をした場合における清算所得に対しては、法人税を課さないこととされている(法92丸1)。
 したがって、受益者等が存しない信託について解散したものとして清算所得に対する法人税が課されるのは、受益者等が存することなく信託が終了した場合に限られるのである。このことは、法令の規定上明らかであるが、本通達において念のため明らかにしている。

【新設】 (法人課税信託の収益の分配における受取配当等の益金不算入の適用)

12の6−2−3 法人課税信託の収益の分配は、資本剰余金の減少に伴わない剰余金の配当とみなされることから、法第23条((受取配当等の益金不算入))の規定の適用があることに留意する。

(注) 法人課税信託の収益の分配を受けた受益者が同条の規定を適用する場合における同条第5項に規定する関係法人株式等の判定に当たっては、たとえ当該受益者が当該法人課税信託の受託者である法人の株式又は出資を有していたとしても、当該受益者が有する当該法人課税信託に係る受益権のみによりその判定を行うこととなる。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1 法人課税信託の受益権は株式又は出資とみなされ、その受益者は株主等に含まれるものとされている(法4の7六)。また、法人課税信託の収益の分配は資本剰余金の減少に伴わない剰余金の配当と、法人課税信託の元本の払戻しは、資本剰余金の減少に伴う剰余金の配当とみなされている(法4の7十)。したがって、法人課税信託の収益の分配は、法人税法第23条第1項第1号((受取配当等の益金不算入))の剰余金の配当に該当することから、受取配当等の益金不算入の規定の適用があるのである。

2 ところで、法人課税信託の受託者である法人の株式又は出資は当該法人課税信託に係る受託法人の株式又は出資でないものとみなし、当該受託者である法人の株主等は当該受託法人の株主等でないものとされている(法4の7六)。すなわち、受託者にとっては、法人の立場からみれば当該法人の株式又は出資を有する株主等がいる一方で、受託法人の立場からみれば受益権が株式又は出資とみなされることにより株主等に含まれるものとされる受益者が存することとなるが、当該法人と受託法人はそれぞれ別の者とみなされることから、法人課税信託に係る受託法人の所得計算上は、受託者である法人の株式又は出資を有する株主等を当該受託法人の株主等でないものとされているのである。このことから、法人税法第23条第5項に規定する関係法人株式等の判定を行う場合において、たとえ当該受益者が当該法人課税信託に係る受益権と当該受託者である法人の株式又は出資とを有していたとしても、当該受益権のその信託に係るすべての受益権に対する割合のみにより当該判定を行うこととなる。本通達の注書においてこのことを留意的に明らかにしている。

3 なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通15の2−2−1)を定めている。