第1 法人税基本通達関係
 1 法人課税信託に係る所得の金額の計算の通則

【新設】 (受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託の範囲)

12の6−1−1 法第2条第29号の2イ((法人課税信託))に規定する受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託には、信託法第185条第3項((受益証券の発行に関する信託行為の定め))に規定する受益証券発行信託のほか、例えば、外国法を準拠法とする信託で受益権を表示する証券を発行する旨の定めのあるものが含まれることに留意する。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1 本通達は、法人税法第2条第29号の2イ((法人課税信託))に規定する「受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託」の範囲を明らかにしている。
 信託法(平成18年法律第108号)(以下「新信託法」という。)においては、これまで貸付信託法などの特別法に基づく貸付信託、投資信託等に限られていた受益権の証券化が一般的に認められることとされ、信託行為において1又は2以上の受益権を表示する証券(以下「受益証券」という。)を発行する旨の定めのある信託(以下「受益証券発行信託」という。)に関する規定が設けられた(新信託法185)。
 また、法人税法においては、法人課税信託として受託法人に法人税が課される信託の一つとして、受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託(集団投資信託を除く。以下同じ。)が規定された(法2二十九の二イ)。

2 ところで、法人税法においては、上述のように新信託法の規定を直接引用せずに「受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託」と定義されていることから、その範囲が新信託法に規定されている受益証券発行信託と必ずしも一致する規定振りとなっていない。これは、法人税法における「受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託」には、我が国の新信託法に規定する受益証券発行信託のほか、例えば、外国法を準拠法とする信託で受益権を表示する証券を発行する旨の定めのあるものが含まれることによるのである。本通達はこのことを留意的に明らかにしている。

3 なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通15の2−1−1)を定めている。

(注) 外国法を準拠法とする信託で受益権を表示する証券を発行する旨の定めのあるものであっても、投資信託及び投資法人に関する法律(昭和26年法律第198号)第2条第2項((定義))に規定する委託者非指図型投資信託に類する外国投資信託に該当する場合には、その信託は集団投資信託に該当し、当該信託に係る信託収益を受領した時に受益者に課税することとなる。したがって、実務上、外国法を準拠法とする信託で受益権を表示する証券を発行する旨の定めのあるものは、一義的に法人課税信託に該当するというものではなく、むしろ集団投資信託に該当するケースが多いと考えられる。

《参考》

○ 新信託法(抄)
((受益証券の発行に関する信託行為の定め))

第185条 信託行為においては、この章の定めるところにより、一又は二以上の受益権を表示する証券(以下「受益証券」という。)を発行する旨を定めることができる。

2 前項の規定は、当該信託行為において特定の内容の受益権については受益証券を発行しない旨を定めることを妨げない。

3 第一項の定めのある信託(以下「受益証券発行信託」という。)においては、信託の変更によって前二項の定めを変更することはできない。

4 第一項の定めのない信託においては、信託の変更によって同項又は第二項の定めを設けることはできない。

【新設】 (信託財産に属する資産のみを信託する場合の課税関係)

12の6−1−2 法人が委託者となる信託のうち、受託者の信託財産に属する資産のみを信託するもの(以下12の6−1−2において「再信託」という。)については、当該受託者において法第2条第29号の2ハ((法人課税信託))に掲げる信託に該当しないのであるが、当該再信託の類型や契約内容等により、集団投資信託、受益者等課税信託又は法人課税信託(同号ハに掲げるものを除く。)のいずれかに該当することとなることに留意する。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1 平成19年度税制改正後の法人税法においては、受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託、受益者等が存しない信託及び法人が委託者となる信託で一定のものは、法人課税信託として定義され、その信託の受託者を納税義務者としてその信託財産に帰せられる所得につき当該受託者の固有財産に帰せられる所得とは区別して法人税が課されることとされた(法2二十九の二ハ、法4の6丸1)。このうち、「法人が委託者となる信託で一定のもの」として、租税回避のおそれがある典型的な次の3つの類型に係る規定が設けられた(法2二十九の2ハ)。

  1. 丸1 事業の重要部分の信託で委託者の株主等を受益者とするもの
  2. 丸2 委託者である法人又はその特殊関係者が受託者である信託(以下「自己信託等」という。)で存続期間が20年を超えるもの
  3. 丸3 自己信託等で収益の分配割合が変更可能であるもの

2 ところで、法人が委託者となる信託であっても、信託財産に属する資産のみを信託するものは、法人課税信託の範囲から除かれている(法2二十九の二ハかっこ書)。この「信託財産に属する資産のみを信託するもの」とは、いわゆる再信託のことを示しているのであるが、再信託については租税回避のおそれがあるとはいえないと考えられるため、「法人が委託者となる信託で一定のもの」には該当しないこととされている。

3 したがって、再信託については、当該再信託が法人が委託者となる信託であっても、法人税法第2条第29号の2ハの規定によって法人課税信託とされることはないが、当該再信託の類型や契約内容等により、集団投資信託、受益者等課税信託又は法人課税信託(同号イ、ロ、ニ又はホに掲げるものに限る。)のいずれかに該当することとなる。
 このことは法令の規定上明らかであるが、「法人が委託者となる信託で一定のもの」から除かれた再信託の取扱いについて疑義を抱く向きも見受けられるので、本通達において念のため明らかにしている。

4 なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通15の2−1−2)を定めている。

【新設】 (法人の事業の全部又は重要な一部の信託)

12の6−1−3 法第2条第29号の2ハ(1) ((法人課税信託))の株主総会の決議を要するものとは、法人の事業の全部又は重要な一部の譲渡を行う場合において、当該法人の株主総会の決議(これに準ずるものを含む。)によって、当該譲渡に係る契約の承認を受けなければならないこととされる行為をいうのであるから、現にその決議が行われたかどうかは問わないことに留意する。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1 新信託法においては、受託者が信託目的の達成のために必要な一切の行為をすることができることが明確化され、これにより信託財産の管理・処分行為とはいえないような債務負担行為等も信託として行うことができることとなった(新信託法2丸1)。また、信託の受託者による引受け時において、委託者の債務を受託者が信託財産によって履行する責任を負う債務とすることが明文化され、いわゆる事業信託が可能となった(新信託法21丸1三)。

2 このような事業信託について、法人税法においては、法人が委託者となる信託で当該法人の事業の全部又は重要な一部を信託するものであって委託者の株主等を受益者とするものは、法人課税信託に該当することとされている。具体的には、法人(公共法人及び公益法人等を除く。)が委託者となる信託(再信託を除く。)で、当該法人の事業の全部又は重要な一部を信託し、かつ、その信託の効力が生じた時において、当該法人の株主等が取得する受益権のその信託に係るすべての受益権に対する割合が100分の50を超えるものに該当することが見込まれていたものは、法人課税信託に該当することとされている。
 そして、この場合の「当該法人の事業の全部又は重要な一部」とは、その譲渡につき会社法第467条第1項((事業譲渡等の承認等))(次の丸1及び丸2に係る部分に限る。)の株主総会の決議(これに準ずるものを含む。以下同じ。)を要するものがこれに該当するものとされている(法2二十九の二ハ(1))。

  1. 丸1 事業の全部の譲渡
  2. 丸2 事業の重要な一部の譲渡(当該譲渡により譲り渡す資産の帳簿価額が当該株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の5分の1(これを下回る割合を定款で定めた場合にはその割合)を超えないものを除く。)

なお、この株主総会の決議は、同法第309条第2項第11号((株主総会の決議))の規定により、原則として、特別決議を要するものである。

3 ところで、この場合の株主総会の決議については、法令の規定上は「株主総会の決議(これに準ずるものを含む。)を要するもの」とされている。
 この点、事業信託は、信託の法形式上は事業の譲渡に該当することから、法人の事業の全部又は事業の重要な一部を信託した場合には、その信託につき、特別決議によって当該譲渡に係る契約の承認を受けなければならないこととなる。
 しかしながら、特別決議を行う必要があるにもかかわらず、これを行っていない事業信託が存する場合には、当該事業信託は、「株主総会の決議」を行っていないから法人課税信託に該当しないのではないかとの疑義が生じるやもしれないが、法令上は上述のとおり、「株主総会の決議(……)を要するもの」が法人課税信託の対象となることが規定されているのであり、実際にその特別決議が行われたかどうかまでを要件としているのではないのである。
 本通達は、このことを留意的に明らかにしている。

4 なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通15の2−1−3)を定めている。

【新設】 (受益者、委託者、受託者その他の者がその裁量により決定することができる場合)

12の6−1−4 令第14条の5第6項((法人が委託者となる法人課税信託))に掲げる「受益者、委託者、受託者その他の者がその裁量により決定することができる場合」には、例えば、信託行為において受益者である特殊関係者に対する収益の分配の割合が確定的に定められている場合であっても、信託の効力発生時において、信託行為に受益者、委託者、受託者その他の者のいずれかが信託の変更によりその定めの内容の変更を単独で行う権限を有する旨の信託法第149条第4項((関係当事者の合意等))に規定する別段の定めがある場合が含まれるのであるから、留意する。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1 新信託法により、特定の者が一定の目的に従い自己の有する一定の財産の管理又は処分及びその他の当該目的達成のために必要な行為を自らすべき旨の意思表示を公正証書その他の書面又は電磁的記録で行う方法により、委託者が自ら受託者となる信託として「自己信託」が認められることとなった(新信託法3三)。

2 法人税法においては、法人が委託者となる信託で、この「自己信託」に該当する信託又は委託者である法人の特殊関係者が受託者となる信託であって、その法人の特殊関係者をその受益者とし、かつ、信託の効力発生時において当該特殊関係者に対する収益の分配の割合の変更が可能である場合には、これらの信託は法人課税信託に該当することとされている(法2二十九の二ハ(3))。この場合の「収益の分配の割合の変更が可能である場合」とは、その特殊関係者に対する収益の分配の割合につき受益者、委託者、受託者その他の者がその裁量により決定することができる場合とされている(令14の5丸6)。

3 具体的にどのような場合がこれに当たるかは、信託行為の内容等により様々であろうが、信託の効力発生時において、これらの者のうちの特定の者が受益者である特殊関係者に対する収益の分配の割合を裁量により決定することができる旨が信託行為に定められている場合は、当然これに当たるところである。
 また、このように信託行為に特定の者が収益の分配の割合を裁量により決定することができる旨を定めておらず、受益者である特殊関係者に対する収益の分配の割合が確定的に定められている場合であっても、その信託の変更につき新信託法第149条第4項((関係当事者の合意等))の規定による信託行為に別段の定めがあることにより、収益の分配の割合の変更を特定の者が単独で行う権限を有することとなっているときにはこれに当たるところである。本通達はこのことを例示的に明らかにしている。

4 なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通15の2−1−4)を定めている。

(注) 新信託法第149条第1項の規定による委託者、受託者及び受益者の合意によってすることができる信託の変更においても収益の分配の割合が変更可能と考えられるが、この規定による信託の変更は、これら三者間の合意が必要となることから、通常は、「受益者、委託者、受託者その他の者がその裁量により決定することができる場合」に含まれないものと考えられる。

《参考》

○ 新信託法(抄)
((関係当事者の合意等))

第149条 信託の変更は、委託者、受託者及び受益者の合意によってすることができる。この場合においては、変更後の信託行為の内容を明らかにしなければならない。

2・3 省略

4 前三項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

以下省略

【新設】 (法人課税信託に係る受託法人の内外判定と納税地)

12の6−1−5 法人課税信託の受託者である法人又は個人の当該法人課税信託に係る納税地は、法第1編第6章((納税地))に定めるところによるのであるから、例えば、法第4条の7第1号又は第2号((受託法人等に関するこの法律の適用))の規定により当該法人課税信託に係る受託法人が内国法人又は外国法人のいずれに該当するかにかかわらないことに留意する。

(注) 法人課税信託の受託者である内国法人について、同号の規定によりその法人課税信託に係る受託法人が外国法人とされた場合における法人税の課税標準は、法第141条((外国法人に係る各事業年度の所得に対する法人税の課税標準))に定めるところによる。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1 法人課税信託の受託者は、各法人課税信託の信託資産等(信託財産に属する資産及び負債並びに当該信託財産に帰せられる収益及び費用をいう。以下同じ。)及び固有資産等(法人課税信託の信託資産等以外の資産及び負債並びに収益及び費用をいう。以下同じ。)ごとに、それぞれ別の者とみなして法人税法(同法第4条((納税義務者))、第6章((納税地))等の一定の規定を除く。)の規定を適用することとされている(法4の6丸1)。この場合において、各法人課税信託の信託資産等及び固有資産等は、これら各別の者にそれぞれ帰属するものとされている(法4の6丸2)。そして、法人課税信託に係る信託資産等が帰属する者として固有資産等が帰属する者と別の者とみなして法人税法の規定を適用する場合における受託者である法人(受託者が個人である場合には、その個人)を「受託法人」と規定している(法4の7)。

2 受託法人に対する法人税法の適用に当たっては、そもそも信託制度は財産管理制度であり、会社法などの組織法とは異なる制度であることなどから、受託法人に一般事業法人を前提とした法人税法上の規定と同様の規定をそのまま適用することには限界があることなどを理由として、様々な調整規定が設けられているところであり、その一つとして受託法人が内国法人又は外国法人のいずれであるかは次のとおり判定することとされている(法4の7一、二)。

  1. 丸1 法人課税信託の信託された営業所、事務所その他これらに準ずるもの(以下「営業所」という。)が国内にある場合には、当該法人課税信託に係る受託法人は、内国法人とする。
  2. 丸2 法人課税信託の信託された営業所が国内にない場合には、当該法人課税信託に係る受託法人は、外国法人とする。

3 このことから、内国法人である受託者について、その法人課税信託の信託された営業所が国内にないため受託法人としては外国法人とされた場合において、当該外国法人たる受託法人の納税地はどこになるのか、という疑問を抱く向きもあろう。
 この点、法人課税信託の受託者について、その信託資産等及び固有資産等ごとに各別の者として適用される法人税法の規定には、納税義務者に係る規定とともに納税地に係る規定は含まれないのである(法4の6丸1)。したがって、上記事例のように内国法人であるその法人が受託法人としては外国法人に該当する場合であっても、その納税地が当該内国法人と別個の納税地となることはない。
 これにより、法人課税信託に係る受託法人が内国法人又は外国法人のいずれに該当するかにかかわらず、その受託法人の納税地は受託者である当該法人の納税地(受託者が個人の場合にあっては、当該個人の納税地(所法15))となるのである。
 本通達の本文においては、このことを明らかにしている。

4 また、受託者である内国法人について、法人税法第4条の7第2号の規定によりその法人課税信託の受託法人が外国法人とされた場合における各事業年度の法人税の課税標準は、各事業年度の所得の金額のうち同法第141条各号((外国法人に係る各事業年度の所得に対する法人税の課税標準))に掲げる外国法人の区分に応じ当該各号に掲げる国内源泉所得に係る所得の金額となる。本通達の注書においてこのことを留意的に明らかにしている。

【新設】 (信託の効力が生じた時)

12の6−1−6 法第4条の7第7号((受託法人等に関するこの法律の適用))の規定により、受託法人が設立されたものとされる当該受託法人に係る法人課税信託の効力が生ずる日の判定に当たっては、次に掲げる信託の方法に応じ、それぞれ次によることに留意する。

(1) 信託法第3条第1号((信託の方法))に掲げる信託契約を締結する方法 当該信託契約の締結時

(2) 同条第2号に掲げる遺言をする方法 当該遺言の効力発生時

(3) 同条第3号に掲げる意思表示を公正証書その他の書面又は一定の電磁的記録によってする方法 次のいずれかの時

  1.  公正証書又は公証人の認証を受けた書面若しくは電磁的記録(以下12の6−1−6において「公正証書等」という。)によってされる場合 当該公正証書等の作成時
  2.  公正証書等以外の書面又は電磁的記録によってされる場合 受益者となるべき者として指定された第三者(当該第三者が2人以上ある場合にあっては、その1人)に対する確定日付のある証書による当該信託がされた旨及びその内容の通知時
(注)

1 本文のいずれの方法による場合であっても、信託行為に停止条件又は始期が付されているときは、当該停止条件の成就又は当該始期の到来により、効果が生ずる時となることに留意する。

2 法人課税信託のうち法第2条第29号の2ハ((法人課税信託))に掲げるもの及び令第14条の2((委託者が実質的に多数でない信託))に掲げる信託における効力が生じた時の判定についても、同様とする。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1 法人課税信託に係る信託資産等が帰属する者として固有資産等が帰属する者とは別の者とみなして法人税法の規定が適用されることとなる受託法人は、当該受託法人に係る法人課税信託の効力が生ずる日に設立されたものとされ(法4の7七)、一般の法人と同様に、同日から2月以内に所轄税務署長への設立の届出を要し(法148)、また、同日から事業年度が開始することとなる(法13)。このため、法人課税信託の効力が生ずる日がいつであるかが重要となるのである。本通達では、この点について、新信託法の規定に基づき具体的にその時期を明らかにしている。

2 新信託法において信託の方法は次の3つに区分され、それぞれ次に掲げる事由により信託の効力を生ずることとされている(新信託法3、4)。

(1) 特定の者との間で、当該特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨等の契約(以下「信託契約」という。)を締結する方法 信託契約の締結

(2) 特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨等の遺言をする方法 遺言の効力の発生

(3) 特定の者が一定の目的に従い自己の有する一定の財産の管理又は処分等を自らすべき旨の意思表示を公正証書その他の書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)で当該目的、当該財産の特定に必要な事項等を記載し又は記録したものによってする方法 次のいずれかの事由

イ 公正証書又は公証人の認証を受けた書面若しくは電磁的記録(以下「公正証書等」という。)によってされる場合 当該公正証書等の作成

ロ 公正証書等以外の書面又は電磁的記録によってされる場合 受益者となるべき者として指定された第三者(当該第三者が2人以上ある場合にあっては、その1人)に対する確定日付のある証書による当該信託がされた旨及びその内容の通知

ただし、(1)から(3)までの効力の発生事由にかかわらず、信託は、信託行為に停止条件又は始期が付されているときは、当該停止条件の成就又は当該始期の到来によってその効力が生ずることとされている。

3 法人税法においても、信託の効力がいつ生じたものかについては新信託法の規定と取扱いを異にする理由はないことから、受託法人の設立の日となる「法人課税信託の効力が生ずる日」は、上記2(1)から(3)までの方法に応じてそれぞれ定められた効力発生事由に基づき判定することとなる。本通達の本文では、このことを明らかにしている。

4 また、2のただし書にあるとおり、法人課税信託の信託行為に停止条件又は始期が付されているときは、当該停止条件の成就又は当該始期の到来により、法人の設立の日となる。本通達の(注)1では、このことを明らかにしている。

5 ところで、法人課税信託のうち、法人税法第2条第29号の2ハ((法人課税信託))に掲げるものには、法人が委託者となる信託で一定の要件を満たすものが該当するが、この場合の要件の一つとして、当該法人の特殊関係者をその受益者とし、かつ、当該特殊関係者に対する収益の分配の割合につき、受益者、委託者、受託者等がその裁量により決定することができる場合に該当したことが規定されている(同号ハ(3))。また、集団投資信託のうち、合同運用信託についてその範囲から委託者が実質的に多数でないものとして一定の要件を満たすものが除かれることとされている(法2二十六、令14の2)。これらはいずれも、その要件の判定を行う時期が、「信託の効力が生じた時」(法2二十九の二ハ(3)、令14の2丸1)とされていることから、本通達の本文と同様に取り扱われることとなるのである。本通達の(注)2では、このことを明らかにしている。

6 なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通15の2−1−5)を定めている。

《参考》

○ 新信託法(抄)
((信託の方法))

第3条 信託は、次に掲げる方法のいずれかによってする。

  1. 一 特定の者との間で、当該特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の契約(以下「信託契約」という。)を締結する方法
  2. ニ 特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の遺言をする方法
  3. 三 特定の者が一定の目的に従い自己の有する一定の財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為を自らすべき旨の意思表示を公正証書その他の書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)で当該目的、当該財産の特定に必要な事項その他の法務省令で定める事項を記載し又は記録したものによってする方法

《信託の効力の発生》

第4条 前条第一号に掲げる方法によってされる信託は、委託者となるべき者と受託者となるべき者との間の信託契約の締結によってその効力を生ずる。

2 前条第二号に掲げる方法によってされる信託は、当該遺言の効力の発生によってその効力を生ずる。

3 前条第三号に掲げる方法によってされる信託は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定めるものによってその効力を生ずる。

  1. 一 公正証書又は公証人の認証を受けた書面若しくは電磁的記録(以下この号及び次号において「公正証書等」と総称する。)によってされる場合 当該公正証書等の作成
  2. ニ 公正証書等以外の書面又は電磁的記録によってされる場合 受益者となるべき者として指定された第三者(当該第三者が二人以上ある場合にあっては、その一人)に対する確定日付のある証書による当該信託がされた旨及びその内容の通知

4 前三項の規定にかかわらず、信託は、信託行為に停止条件又は始期が付されているときは、当該停止条件の成就又は当該始期の到来によってその効力を生ずる。

【新設】 (法人課税信託に該当することとなった日の意義)

12の6−1−7 特定受益証券発行信託(法第2条第29号ハ((集団投資信託))に規定する「特定受益証券発行信託」をいう。以下12の6−1−7において同じ。)の計算期間の中途においてその承認受託者(同号ハ(1)に規定する「承認受託者」をいう。以下12の6−1−7において同じ。)がその承認を取り消された場合又は当該特定受益証券発行信託の受託者に承認受託者以外の者が就任した場合における、法第4条の7第7号((受託法人等に関するこの法律の適用))に掲げる「法人課税信託以外の信託が法人課税信託に該当することとなった場合にはその該当することとなった日」とは、その承認を取り消された日又は承認受託者以外の者が就任した日を含む計算期間の翌計算期間の開始の日をいうことに留意する。

(注) 本文の場合には、その承認を取り消された日又は承認受託者以外の者が就任した日を含む計算期間については、特定受益証券発行信託に該当する。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1 新信託法においては、これまで貸付信託法などの特別法に基づく貸付信託、投資信託等に限られていた受益権の証券化が一般的に認められることとされ、信託行為において受益証券を発行する旨の定めのある受益証券発行信託に関する規定が設けられた(新信託法185)。

2 法人税法においては、この受益証券発行信託は、集団投資信託に該当するものを除き、同法第2条第29号の2イ((受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託))に該当することから、法人課税信託として信託段階において受託法人を納税義務者として法人税が課されることとされている。

(注) 受益証券発行信託のうち、信託事務の実施につき税務署長の承認を受けた法人(以下「承認受託者」という。)が引き受けたもので一定の要件に該当するもの(以下「特定受益証券発行信託」という。)は、集団投資信託として信託収益を現実に受領した時に受益者に課税することとされている(法2二十九ハ)。

3 ところで、法人課税信託の受託法人は、当該法人課税信託の効力が生ずる日に設立されたものとされ、また、法人課税信託以外の信託が法人課税信託に該当することとなった場合にはその該当することとなった日に設立されたものとされている(法4の7七)。
 そうすると、例えば、法人課税信託以外の信託である特定受益証券発行信託の承認受託者が、所轄税務署長からその承認を取り消されたような場合には、当該信託は取消しにより法人課税信託に該当することになるのであるが、その場合における法人課税信託に該当することとなった日とは、その取消しを受けた日をいうのか、あるいは、信託の計算期間との関係上その他の日を指すのかについて若干の疑義が生ずる。

4 この点、特定受益証券発行信託について、その計算期間開始の日の前日までに丸1当該承認受託者がその承認を取り消された場合、丸2当該受益証券発行信託の受託者に承認受託者以外の受託者が就任した場合にはこれに該当しないこととされており(法2二十九ハ(1))、特定受益証券発行信託についてこれらの事由が生じたことにより法人課税信託となった場合における「法人課税信託に該当することとなった場合にはその該当することとなった日」とは、丸1及び丸2の事由が生じた日ではなく、当該事由が生じた日を含む計算期間の翌計算期間の開始の日をいうこととなり、同日以後において法人課税信託である受益証券発行信託となるのである。本通達では、このことを明らかにしている。

5 なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通15の2−1−6)を定めている。

【新設】 (信託事務を主宰する受託者の意義)

12の6−1−8 法第4条の8第2項((受託者が二以上ある法人課税信託))の「信託事務を主宰する受託者」とは、中心となって信託事務の全体を取りまとめる受託者をいう。この場合、全体を取りまとめているかは、信託契約に基づき、信託財産の受入れ事務、信託財産の管理又は処分に関する事務、収益計算の報告事務等の処理の実態を総合的に判定する。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

一の法人課税信託の受託者が二以上ある場合には、各受託者の当該法人課税信託に係る信託資産等は、一の者の信託資産等とみなして法人税法の規定を適用することとされ、この場合には、各受託者は、当該法人課税信託の信託事務を主宰する受託者を納税義務者として当該法人課税信託に係る法人税を納めることとされている(法4の8)。
 ここでいう「主宰」とは、一般に中心となって全体を取りまとめるという意味であることから、一の法人課税信託の受託者が二以上ある場合の納税義務者は、当該信託の受託者のうちで中心となって信託事務の全体を取りまとめる者をいうことになるのであるが、その判定に当たっては、信託契約に基づき、信託財産の受入れ事務、信託財産の管理又は処分に関する事務、収益計算の報告事務等の処理の実態を総合的に勘案することとなる。本通達ではこのことを明らかにしている。
 なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通15の2−1−7)を定めている。