7 資本的支出と修繕費

【改正】 (形式基準による修繕費の判定)

7−8−4 一の修理、改良等のために要した費用の額のうちに資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない金額がある場合において、その金額が次のいずれかに該当するときは、修繕費として損金経理をすることができるものとする。

(1) その金額が60万円に満たない場合

(2) その金額がその修理、改良等に係る固定資産の前期末における取得価額のおおむね10%相当額以下である場合

(注)

1 前事業年度前の各事業年度(それらの事業年度のうち連結事業年度に該当するものがある場合には、当該連結事業年度)において、令第55条第4項《資本的支出の取得価額の特例》の規定の適用を受けた場合における当該固定資産の取得価額とは、同項に規定する一の減価償却資産の取得価額をいうのではなく、同項に規定する旧減価償却資産の取得価額と追加償却資産の取得価額との合計額をいうことに留意する。

2  固定資産には、当該固定資産についてした資本的支出が含まれるのであるから、当該資本的支出が同条第5項の規定の適用を受けた場合であっても、当該固定資産に係る追加償却資産の取得価額は当該固定資産の取得価額に含まれることに留意する。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  本通達においては、一の修理、改良等のために要した費用の額のうち資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでないものについて、一種の簡便法として、その費用の額が少額であるもの又はその資産に対する費用の額の割合が小さいものは形式基準により修繕費として損金経理をすることを認めている。

2  ところで、平成19年度の税制改正により、資本的支出については、原則として、その資本的支出の金額を取得価額とし、その有する減価償却資産本体(以下「旧減価償却資産」という。)と種類及び耐用年数を同じくする減価償却資産(以下「追加償却資産」という。)を新たに取得したものとすることとされている(令55丸1)。また、そのいずれの資産もその償却の方法として定率法を採用している場合には、その資本的支出の行われた事業年度の翌事業年度開始の時において、その開始の時における旧減価償却資産の帳簿価額と追加償却資産の帳簿価額の合計額を取得価額とする一の減価償却資産を、新たに取得したものとすることができることとされている(令55丸4)。
 このように一の減価償却資産を新たに取得したものとされた場合において、その後において支出した費用の額が資本的支出であるか修繕費であるか明らかでないときに、本通達の(2)の「固定資産の前期末における取得価額」とは、旧減価償却資産と追加償却資産を合算して新たに取得したものとした一の減価償却資産の付け替え後の取得価額をいうのか、旧減価償却資産の取得価額と追加償却資産の取得価額との合計額をいうのか疑問が生じる。
 この点、本通達は、資本的支出であるか修繕費であるか明らかでない費用の額について、簡便的な判定方法を明らかにしているものにすぎないことから、平成19年度の税制改正による資本的支出の金額に係る取得価額の改正にかかわらず、その判定方法における「固定資産の前期末における取得価額」がその有する固定資産全体の取得価額であるという考え方は従来どおりで変わるものではない。

3  したがって、法人税法施行令第55条第4項《資本的支出の取得価額の特例》の規定を適用している場合における「固定資産の前期末における取得価額」とは、新たに取得したものとされた一の減価償却資産の取得価額をいうのではなく、旧減価償却資産の取得価額と追加償却資産の取得価額との合計額となる。本通達の注1ではこのことを明らかにしている。

4  また、平成19年度の税制改正により、同一事業年度内に複数の追加償却資産を取得した場合で、それらの追加償却資産について定率法を採用しており、かつ、同項の規定の適用を受けないときには、それらの追加償却資産のうち種類及び耐用年数を同じくするものについて、追加償却資産を取得した事業年度の翌事業年度開始の時における帳簿価額の合計額を取得価額とする一の減価償却資産を、新たに取得したものとすることができることとされた(令55丸5)。この方法によった場合、追加償却資産の取得価額と旧減価償却資産の取得価額とを合算していないからといって、追加償却資産の取得価額をこの判定方法の「固定資産の前期末の取得価額」から除くことは相当ではなく、また、当該追加償却資産は旧減価償却資産と物理的に一体であるから、合算していない追加償却資産の取得価額も形式基準の算式上の「固定資産の前期末における取得価額」に含まれるのである。本通達の注2ではこのことを明らかにしている。

5  連結納税制度においても同様の通達(連基通6−8−4)を定めており、同様の改正を行っている。