6 除却損失等

【改正】 (総合償却資産の除却価額)

7−7−3 法人の有する総合償却資産の一部について除却、廃棄、滅失又は譲渡(以下この節において「除却等」という。)があった場合における当該除却等による損益の計算の基礎となる帳簿価額は、その除却等に係る個々の資産が含まれていた総合償却資産の総合耐用年数を基礎として計算される除却等の時における未償却残額に相当する金額によるものとする。

(注) その除却等に係る個々の資産が特別償却、割増償却又は増加償却の規定の適用を受けたものであるときは、当該資産のこれらの償却に係る償却限度額に相当する金額についても、償却があったものとして未償却残額を計算することに留意する。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  税法上、総合償却資産はこれを構成する個々の資産を一体のものとして耐用年数を適用して償却することとなっていることから(総合償却)、改正前の本通達においては、その一体のものとして償却されていた総合償却資産の一部に除却等があった場合には、その除却価額や譲渡原価などの計算は、原則として、その除却等に係る個々の資産の取得価額の5%相当額とすることとしていた(いわゆる5%除却法)。これは、減価償却資産はその取得価額の95%相当額が償却可能限度額とされていたことから、その裏返しの考えとして、総合償却資産を構成する資産の一部に除却等があった場合には、その除却等に係る個々の資産は償却可能限度額まで償却されたものとして、取得価額の5%相当額を除却等による損益の計算の基礎となる帳簿価額としていたものである(旧基通7−7−3)。
 また、総合償却資産を構成する個々の資産の除却等による損益の計算の基礎となる帳簿価額について、継続適用を条件に、丸1個々の資産の個別耐用年数を基礎として計算される除却等の時における未償却残額に相当する金額又は丸2その総合償却資産の総合耐用年数を基礎として計算される除却等の時における未償却残額に相当する金額のいずれかの金額によっている場合には、その帳簿価額を基礎として個々の資産の除却等による損益を計算すること(いわゆる未償却残額除却法)を認めていた(旧基通7−7−3の2)。
 さらに、総合償却資産の償却費の額を合理的基準に基づいて個々の資産に配賦している場合には、その帳簿価額を基礎として個々の資産の除却等による損益を計算すること(いわゆる配賦簿価除却法)も認めていた(旧基通7−7−3の3)。

2  平成19年度の税制改正により、償却可能限度額が廃止され、総合償却資産についても備忘価額1円まで償却することができるとされたため、除却等による損益を計算する際の原則法であるいわゆる「5%除却法」は廃止することとし、これに代わる方法として、継続適用を条件に認めていた総合償却資産の総合耐用年数を基礎として計算される除却等の時における未償却残額に相当する金額を除却等による損益の計算の基礎となる帳簿価額とする方法(上記の「未償却残額除却法」の丸2の方法)を原則法とすることに改めた。
 これは、総合償却資産を構成する個々の資産の除却等による損益を計算するに当たって、従来から認めていた除却等による損益の計算の基礎となる未償却残額を算出する方法のうち、総合償却資産に適用している総合耐用年数を基礎とした未償却残額による方法が最も理論的で簡便な方法であると考えられることから、これを原則法としたものである。

3  なお、平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産に係るいわゆる「5%除却法」については、現に適用している法人に配慮して経過的取扱いを設けており、平成19年4月1日から平成20年3月31日までに開始した事業年度分の法人税についても適用することができる。

4  連結納税制度においても同様の通達(連基通6−7−4)を定めており、同様の改正を行っている。

【改正】 (償却額の配賦がされていない場合の除却価額の計算の特例)

7−7−4 法人の有する総合償却資産の一部について除却等があった場合における当該除却等による損益の計算の基礎となる帳簿価額につき、法人が継続してその除却等に係る個々の資産の個別耐用年数を基礎として計算される除却等の時における未償却残額に相当する金額によっている場合には、これを認める。

(注)

1 その除却等に係る個々の資産が特別償却、割増償却又は増加償却の規定の適用を受けたものであるときは、当該資産のこれらの償却に係る償却限度額に相当する金額についても、償却があったものとして未償却残額を計算することに留意する。

2 個々の資産の個別耐用年数は、機械及び装置については「機械装置の個別年数と使用時間表」の「機械及び装置の細目と個別年数」の「同上算定基礎年数」をいい、構築物については昭和45年5月25日付直法4−25ほか1課共同「『耐用年数の適用等に関する取扱通達』の制定について」通達付表3又は付表4に定める個別耐用年数をいう。ただし、個々の資産の個別耐用年数がこれらの表に掲げられていない場合には、当該資産と種類等を同じくする資産又は当該資産に類似する資産の個別耐用年数を基礎として見積られる耐用年数とする。
 なお、個々の資産の属する総合償却資産について耐用年数の短縮の承認を受けているものがある場合には、その承認を受けた耐用年数の算定の基礎となった個々の資産の耐用年数とする。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  従前は、総合償却資産を構成する資産の一部に除却等があった場合には、その除却等に係る個々の資産の取得価額の5%相当額により除却等による損益を計算するいわゆる「5%除却法」を原則法とし(旧基通7−7−3)、改正前の本通達(旧基通7−7−3の2)においては、その除却等による損益の計算方法の特例として、継続適用を条件にいわゆる「未償却残額除却法」によることを認めていた。この未償却残額除却法とは、その除却等をした個々の資産について、その取得価額、耐用年数、経過年数等を基に計算した除却時の未償却残額を除却等による損益の計算の基礎となる帳簿価額とするものである。
 具体的な計算方法は次のとおりである。

(1) 個別耐用年数を基礎とする場合
 その総合償却資産を構成する個々の資産の個別耐用年数を基礎として計算される除却等の時における未償却残額を帳簿価額とする方法。なお、旧定率法を採用している減価償却資産の未償却残額は、改正前の耐用年数通達付表7「定率法未償却残額表」の耐用年数及び経過年数に応じた未償却残額割合を個々の資産の取得価額に乗じて計算する。

(2) 総合耐用年数を基礎とする場合
 その総合償却資産に適用される総合耐用年数を基礎として計算される除却等の時における未償却残額を帳簿価額とする方法。なお、旧定率法を採用している減価償却資産の未償却残額は、(1)と同様に計算する。

2  平成19年度の税制改正により、償却可能限度額が廃止されたことに伴い、いわゆる「5%除却法」を廃止することとした。そして、総合償却資産を構成する個々の資産の除却等に係る損益を計算する方法として、改正前の本通達で定めていた総合耐用年数を基礎として計算した未償却残額を帳簿価額とする方法(上記1の(2))を原則法とし(基通7−7−3)、その特例として、継続適用を条件に、総合償却資産を構成する個々の資産の個別耐用年数を基礎として未償却残額を計算する方法(上記1の(1))を、改正後の本通達において存置することとしている。

3  連結納税制度においても同様の通達(連基通6−7−5)を定めており、同様の改正を行っている。

【改正】 (償却額の配賦がされている場合等の除却価額の計算の特例)

7−7−5 法人が各事業年度(その事業年度が連結事業年度に該当する場合には、当該連結事業年度)において計上した総合償却資産の償却費の額を、それに含まれる個々の資産に合理的基準に基づいて配賦している場合(7−7−3又は7−7−4の取扱いによっていた法人が当該事業年度において個々の資産に合理的基準に基づいて配賦した場合を含む。)に、その帳簿価額を基礎として当該個々の資産の除却等による損益の計算をしているときには、これを認める。

(注) 総合償却資産の償却費の額を個々の資産につき総合耐用年数を基礎として計算される償却限度額に応じて配賦することは、合理的基準に基づく配賦に該当する。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  総合償却資産を構成する資産の一部に除却等があった場合におけるその除却等による損益の計算の基礎となる帳簿価額は、法人税基本通達7−7−3《総合償却資産の除却価額》において、その原則法を、いわゆる「5%除却法」から「総合耐用年数による未償却残額除却法」へ改めるとともに、法人税基本通達7−7−4《償却額の配賦がされていない場合の除却価額の計算の特例》において、継続適用を条件に、いわゆる「個別耐用年数による未償却残額除却法」によることも認めることとしている。

2  本通達においては、更に、各事業年度(その事業年度が連結事業年度に該当する場合には、当該連結事業年度)において計上した総合償却資産の償却費の額を、総合償却資産を構成する個々の資産に合理的な基準に基づいて配賦している場合には、その帳簿価額を基礎として除却等に係る損益の計算をする、いわゆる「配賦簿価除却法」によることを認めている。

3  平成19年度の税制改正により、いわゆる「5%除却法」が廃止されたため、今後は個々の資産について除却等に係る損益の計算の基礎となる帳簿価額を何らかの方法で計算する必要がある。このため、本通達の対象範囲を広げ、過年度において個々の資産に償却費の額を配賦していなかった法人であっても、当該事業年度において合理的な基準に基づいて個々の資産に帳簿価額を配賦した場合について、合理的基準に基づいて配賦している場合に含まれることを明らかにしている。
 例えば、個々の資産に償却費の額を配賦していない総合償却資産について、当該事業年度において耐用年数通達の付表7(2)「定率法未償却残額表」により個々の資産の未償却残額を計算し、個々の資産の未償却残額の合計額と総合償却資産の帳簿価額との差額を個々の資産の未償却残額比により按分して配賦するといった方法は、合理的基準に基づいて配賦している場合として新たに認められるであろう。

4  連結納税制度においても同様の通達(連基通6−7−6)を定めており、同様の改正を行っている。

【改正】 (取得価額等が明らかでない少額の減価償却資産等の除却価額)

7−7−7 法人の有する少額の減価償却資産等(取得価額が20万円未満の減価償却資産で令第133条《少額の減価償却資産の取得価額の損金算入》及び第133条の2《一括償却資産の損金算入》の規定の適用を受けなかったものをいう。以下7−7−8において同じ。)の一部について除却等があった場合において、その除却等をした資産の取得時期及び取得価額が明らかでないため7−7−6の(2)によることができないときは、その除却等による損益の計算の基礎となる帳簿価額は、1円による。

(注) 当該少額の減価償却資産等のうちその除却等をした資産と種類、構造又は用途及び細目を同じくするもの(以下7−7−7において「少額多量保有資産」という。)の前事業年度(その事業年度が連結事業年度に該当する場合には、当該連結事業年度)終了の時(以下7−7−7において「基準時」という。)における帳簿価額からその除却等に係る少額多量保有資産の本文の取扱いによった帳簿価額を控除した残額が、次に掲げる算式により計算した金額を超える場合には、その超える部分の金額を当該事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認める。
(算式)
(当該前事業年度中に取得をした少額多量保有資産の取得価額の合計額÷当該前事業年度中に取得をした少額多量保有資産の数量)×基準時における少額多量保有資産の数量のうち除去等の対象とならなかった数量

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  改正前の本通達においては、少額で多量に保有する減価償却資産等で法人税法施行令第133条《少額の減価償却資産の取得価額の損金算入》及び第133条の2《一括償却資産の損金算入》の規定の適用を受けていないものの一部に除却等があった場合について、その取得時期及び取得価額が明らかでないため、個々の資産の未償却残額によって除却等による損益の計算ができないときには、特例として、除却等をした資産と種類等を同じくする資産で前事業年度に取得したものの取得価額の実績に基づき、その平均額の5%相当額を除却等による損益の計算の基礎となる帳簿価額とする簡便法を認めていた(旧基通7−7−7)。これは、減価償却資産の償却可能限度額が取得価額の95%相当額であったことから、その除却等をした資産は償却可能限度額まで償却したものと仮定し、除却等をした資産の帳簿価額を便宜的に前事業年度に取得した種類等を同じくする資産の取得価額の平均額の5%相当額としていたものである。

2  平成19年度の税制改正により、償却可能限度額が廃止され備忘価額1円まで償却が可能となったことに伴い、除却等による損益の計算の基礎となる帳簿価額を取得価額の5%相当額とする従前の取扱いを改め、備忘価額である1円をその帳簿価額とすることを本通達の本文で明らかにしている。ただし、除却等をした少額多量保有資産は取得時期が明らかではないものであることから、除却等をしたすべての資産が備忘価額1円まで償却しているとも限らず、除却等による帳簿価額をすべからく1円とみると除却等による除却価額や譲渡原価が過少に計上され、実態にそぐわない過大な帳簿価額が残ることにもなりかねない。

3  そこで、本通達の注書において、当期において取得した少額多量保有資産は除却等をしないという前提で、前期末において有する少額多量保有資産のうち当期において除却等をしたものの帳簿価額を1円として計算した当期末に有する少額多量保有資産の帳簿価額(想定総残高)が、前期末において有する少額多量保有資産のうち当期に除却等をしなかったものについてこれまでに全く償却を行っていなかったと仮定して計算した帳簿価額相当額(想定時価総額)を超える場合には、その超える部分の金額は、少なくとも除却等をした少額多量保有資産の実質的な帳簿価額と考えられることから、その超える部分の金額を損金の額に算入することを認めることとしている。
 具体的には、少額多量保有資産の前事業年度終了の時における帳簿価額から本文の取扱いにより計算される除却等をした少額多量保有資産に係る帳簿価額を控除した残額(想定総残高)が、前事業年度終了の時に有する少額多量保有資産のうち当該事業年度中に除却等をしていないものに係る帳簿価額(想定時価総額=前事業年度中に取得した少額多量保有資産の平均取得価額に前事業年度終了の時に有する少額多量保有資産のうち当該事業年度において除却等をしなかったものの数量を乗じて計算した金額)を超える場合には、その超える部分の金額を損金の額に計上することを認めることとしている。

4  連結納税制度においても同様の通達(連基通6−7−8)を定めており、同様の改正を行っている。
(計算例)

(1) 少額多量保有資産の前期末の帳簿価額・・・・・・20,000,000円

(2) 少額多量保有資産の前期末の数量・・・・・・5,000個

(3) 前期中に取得をした少額多量保有資産の取得価額の合計額・・・・・・2,000,000円

(4) 前期中に取得をした少額多量保有資産の数量・・・・・・200個

(5) 当期中に廃棄をした少額多量保有資産の数量・・・・・・3,500個

【本文の取扱いによる除却等の損益計算の基礎となる帳簿価額】

3,500個 × 1円 = 3,500円

【注書の取扱いにより損金の額に算入できる金額】

丸1 前期末の帳簿価額から本文の取扱いによる除却等の損益計算の基礎となる帳簿価額を控除した金額(想定総残高)

20,000,000円 − 3,500円 = 19,996,500円

丸2 前期中に取得した少額多量保有資産の平均取得価額

2,000,000円 ÷ 200個 = 10,000円

丸3 前期末の少額多量保有資産の数量のうち除却等の対象とならなかった数量

5,000個 − 3,500個 = 1,500個

丸4 前期末の少額多量保有資産のうち除却等の対象とならなかったものの帳簿価額相当額(想定時価総額)

10,000円 × 1,500個 = 15,000,000円

丸5 注書の取扱いの適用の判定

19,996,500円 > 15,000,000円

丸6 注書の取扱いにより損金の額に算入できる金額

19,996,500円 − 15,000,000円 = 4,996,500円

【新設】 (追加償却資産に係る除却価額)

7−7−10 令第55条第5項《資本的支出の取得価額の特例》の規定の適用を受けた一の減価償却資産を構成する各追加償却資産の一部に除却等があった場合には、当該除却等に係る追加償却資産を一の資産として、その除却等による損益を計算することに留意する。この場合において、その除却等による損益の計算の基礎となる帳簿価額は、7−4−2の2《転用した追加償却資産に係る償却限度額等》の(1)又は(2)の取扱いに準じて計算した金額による。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  平成19年度の税制改正により、新たな資産の取得とされた資本的支出(以下「追加償却資産」という。)について、種類及び耐用年数を同じくするものが同一事業年度内に複数ある場合には、一定の要件の下、その資本的支出を行った事業年度の翌事業年度開始の時において、その開始の時におけるそれらの追加償却資産の帳簿価額の合計額を取得価額とする一の減価償却資産を、新たに取得したものとすることができることとされている(令55丸5)。
 そして、法人が複数の追加償却資産を一の減価償却資産の取得とすることを選択した場合には、その一部を転用した場合などを除き、その後の事業年度において、個々の追加償却資産ごとに分離して別々に償却を行うことはできないこととされている(基通7−3−15の4)。

2  ところで、このように複数の追加償却資産を一の減価償却資産として償却を行っている場合について、一の資産の除却に伴い当該資産に係る追加償却資産も除却等をした場合には、転用の場合と同様にその除却等に係る追加償却資産を取り出して除却等による損益を計上することができるのかという疑問が生じる。
 この点、法令上、種類及び耐用年数を同じくする追加償却資産を一の減価償却資産として償却を行うことを認めているのは、追加償却資産のすべてを個々に管理・償却することの事務の煩雑さに配慮したものであり、除却等があった追加償却資産を引き続き合算したままで償却することを求めているものではないと考えられる。また、資産本体と追加償却資産は物理的に一体であり、資産本体のみの除却等による損益を計上し、追加償却資産については引き続き償却を行うこととなるのは適当ではない。
 そこで、本通達において、複数の追加償却資産を一の減価償却資産として償却している場合において、その一部に除却等があったときには、転用した場合の取扱いと同様に、その除却等に係る追加償却資産を分離して除却等による損益の計算ができることを明らかにしている。
 なお、除却等による損益の計算の基礎となる帳簿価額については、法人税基本通達7−4−2の2《転用した追加償却資産に係る償却限度額等》の(1)又は(2)の取扱いに準じて計算することを併せて明らかにしている。

3  連結納税制度においても同様の通達(連基通6−7−11)を定めている。