4 償却累積額による償却限度額の特例の適用を受ける資産

【改正】 (償却累積額による償却限度額の特例の適用を受ける資産に資本的支出をした場合)

7−4−14 法人が、令第61条第2項《減価償却資産の償却累積額による償却限度額の特例》の規定の適用を受けた減価償却資産について資本的支出をし、令第55条第2項《資本的支出の取得価額の特例》の規定を適用した場合において、当該資本的支出の金額を加算した後の帳簿価額が、当該資本的支出の金額を加算した後の取得価額の5%相当額を超えるときは、令第61条第2項の規定の適用はなく、当該減価償却資産について採用している償却方法により減価償却を行うことに留意する。

(注) 同項の規定を適用する場合には、当該資本的支出の金額を加算した後の取得価額の5%相当額が基礎となる。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  平成19年度税制改正前は、減価償却資産について償却費として損金の額に算入できる金額は、原則としてその取得価額の95%相当額が限度とされていた(旧令61)。
平成19年度の税制改正により、平成19年3月31日以前に取得をした減価償却資産については、償却の額の累積額が取得価額の95%相当額(従前の償却可能限度額)に達するまでは各々の償却方法(旧定額法、旧定率法、旧生産高比例法又は旧国外リース期間定額法)に基づいて計算を行い、前事業年度までの各事業年度においてした償却の額の累積額と当該事業年度の償却限度額に相当する金額との合計額が取得価額の95%相当額を超えることとなる事業年度においては、その償却限度額に相当する金額からその超える部分の金額を控除した金額を償却限度額として償却を行い(令61丸1一イ)、その翌事業年度以後の各事業年度においては、次の算式により計算した均等額による償却を行うこととされている(令61丸2)。
(算式)
焼却限度額=(取得価額−取得価額の95%相当額ー1円)×償却を行う事業年度の月数÷60

(注) 算式の月数は暦に従って計算し、1月に満たない端数を生じたときは、これを1月とする(令61丸3)。

2  ところで、平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産であって償却の額の累積額が取得価額の95%に達したためその翌事業年度から均等額による償却を行っているものに対して資本的支出を行い、法人税法施行令第55条第2項《資本的支出の取得価額の特例》の規定を適用してその減価償却資産の取得価額にその資本的支出の金額を加算した場合には、その加算した後の減価償却資産の帳簿価額がその加算した後の減価償却資産の取得価額の5%相当額を超えることとなるケースがある。
 このような場合には、償却の額の累積額が取得価額の95%相当額に達していないことから、法人税法施行令第61条第2項《減価償却資産の償却累積額による償却限度額の特例》に規定する上記1の算式により償却限度額の計算を行うことはできない。このため、本通達において、減価償却資産本体の帳簿価額に資本的支出の金額を加算した後の金額が、減価償却資産本体の取得価額にその資本的支出の金額を加算した後の金額の5%相当額を超える場合には、上記1の算式によらず、法人がその減価償却資産について採用している償却の方法により減価償却を行うことを留意的に明らかにしている。
なお、その後の事業年度において前事業年度までの各事業年度においてした償却の額の累積額と当該事業年度の償却限度額に相当する金額との合計額が取得価額の95%相当額を超える場合には、その超えることとなる事業年度においては加算後の取得価額の95%相当額に達するまでの金額が償却限度額となり、その翌事業年度以後において、改めて均等額による償却を行うこととなる。

3  連結納税制度においても同様の通達(連基通6−4−15)を定めており、同様の改正を行っている。

【新設】 (適格合併等により引継ぎを受けた減価償却資産の償却)

7−4−15 令第61条第2項《減価償却資産の償却累積額による償却限度額の特例》の規定の適用において、合併法人等(合併法人、分割承継法人、被現物出資法人又は被事後設立法人をいう。以下7-4-15において同じ。)の当該事業年度の前事業年度又は前連結事業年度までの各事業年度又は各連結事業年度においてした償却の額の累積額が取得価額の95%相当額に達している減価償却資産には、適格合併等(適格合併、適格分割、適格現物出資又は適格事後設立をいう。以下7-4-15において同じ。)により当該事業年度に移転を受けた減価償却資産のうち被合併法人等(被合併法人、分割法人、現物出資法人又は事後設立法人をいう。)においてした償却の額の累積額が取得価額の95%相当額に達しているものが含まれるものとする。

(注) 適格合併等の日の属する事業年度の償却限度額の計算において乗ずることとなる月数は、合併法人等が適格合併等により移転を受けた減価償却資産を事業の用に供した日から当該事業年度終了の日までの期間の月数によることに留意する。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  平成19年度の税制改正において、平成19年3月31日以前に取得をした資産について、前事業年度までの各事業年度においてした償却の額の累積額と当該事業年度の償却限度額に相当する金額との合計額が取得価額の95%相当額(従前の償却可能限度額)を超えることとなる事業年度においては、その償却限度額に相当する金額からその超える部分の金額を控除した金額を償却限度額とし、その翌事業年度以後の各事業年度において均等額による償却を行い、最終的に備忘価額1円まで償却できることとされている(令61丸1丸2)。

2  ところで、例えば、合併法人と同じ決算期である被合併法人とが期の中途において適格合併を行い、被合併法人が平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産で最後事業年度において取得価額の95%相当額まで償却したものを合併法人に引き継いだ場合には、被合併法人の最後事業年度の期間は合併法人の合併の日の属する事業年度の期間と重複し、合併法人においては合併の日の属する事業年度の前事業年度において当該減価償却資産を有していないことから、その引継ぎを受けた減価償却資産について、合併の日の属する事業年度において均等額による償却を行うことができず、その翌事業年度から償却を行うこととなるのかという疑問が生じる。
 しかしながら、当該減価償却資産は被合併法人の最後事業年度において償却の額の累積額が取得価額の95%相当額に既に達しているものであり、被合併法人においては最後事業年度後の事業年度がなく均等額による償却を行うことはできないこと、また、合併法人が引継ぎを受けた当該減価償却資産は合併の日において新たに移転を受けたものであることから、被合併法人の最後事業年度の期間が合併法人の合併の日の属する事業年度と重複していたとしても、その合併の日の属する事業年度から均等額による償却を行うことが認められるものである。本通達では、このことを明らかにしている。
 なお、この取扱いは合併の日に新たに移転を受けた点に着目してのものであることから、償却限度額の計算に当たって乗ずることとなる月数は、合併の日の属する事業年度の月数ではなく、合併法人が引継ぎを受けた減価償却資産を事業の用に供した日から当該事業年度終了の日までの月数によることを、本通達の注書において留意的に明らかにしている。

3  連結納税制度においても同様の通達(連基通6−4−16)を定めている。

解説の図