3 償却限度額等

【改正】 (転用資産の償却限度額)

7−4−2 減価償却資産を事業年度の中途において従来使用されていた用途から他の用途に転用した場合において、法人が転用した資産の全部について転用した日の属する事業年度開始の日から転用後の耐用年数により償却限度額を計算したときは、これを認める。

(注) 償却方法として定率法を採用している減価償却資産の転用前の耐用年数よりも転用後の耐用年数が短くなった場合において、転用初年度に、転用後の耐用年数による償却限度額が、転用前の耐用年数による償却限度額に満たないときには、転用前の耐用年数により償却限度額を計算することができることに留意する

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  減価償却資産を事業年度の中途において従来使用されていた用途から他の用途に転用した場合には、原則として転用前と転用後の期間に分けた上でそれぞれの用途に応じた耐用年数によりそれぞれに計算される償却限度額を合計した金額を転用した日の属する事業年度の償却限度額とすることとなるのであるが、本通達の本文においては、計算の簡便性の観点から、期首から転用資産の全部について転用後の耐用年数により償却限度額を計算した場合にはこれを認めることを明らかにしている。

2  ところで、転用によって耐用年数が短くなった場合、一般的には転用前の耐用年数よりも短い期間で償却を終えることになるのであるが、定率法を採用している場合には、技術的な問題として、ごく稀にではあるが転用後の耐用年数に基づいて償却限度額を計算したときに、結果として、償却期間が転用前の耐用年数よりも長くなることがある。これは、定率法の償却方法が一定の期間経過後は改定償却率による均等償却に移行するため、これに起因してそのような結果が生じるのである。
 しかしながら、ごく稀にとはいえ、耐用年数が短くなったにもかかわらず、転用前の耐用年数よりも長い期間で償却することになるというのは、耐用年数を基礎とした償却計算の制度の趣旨にそぐわない。そこで、本通達の注書において、定率法を採用している場合で、転用初年度における転用後の耐用年数による償却限度額が転用前の耐用年数による償却限度額に満たないこととなるときには、転用前の耐用年数により償却限度額の計算を行うことを認めることとしたものである。

3  なお、本通達により転用資産が複数ある場合には、転用資産の全部について期首から転用後の耐用年数により償却限度額の計算をした場合に限り、その計算を認めているのであるが、本通達の注書を適用する資産があるときには、当該資産は上記のとおり固有の事由により異なる償却方法を認めるのであるから、これを除いた他の転用資産のすべてについて、通達本文の取扱いを適用することとして差し支えない。

4  連結納税においても同様の通達(連結基通6−4−2)を定めており、同様の改正を行っている。

(例) 取得価額1,000,000円、耐用年数6年の減価償却資産を6年目に転用し、転用後の耐用年数が3年となった場合償却率等の例

年数 1 2 3 4 5 6 7
耐用年数6年
(注書適用)
耐用年数3年 注書適用 耐用年数3年
期首帳簿価額 1,000,000 583,000 339,889 198,156 115,525 57,763 57,763 1 9,647
調整前償却額 417,000 243,111 141,733 82,631 48,173 24,087 48,116   8,035
償却保証額 57,760 57,760 57,760 57,760 57,760 57,760 27,890   27,890
改定取得価額
×改定償却率
        57,762 57,762     9,647
償却限度額 417,000 243,111 141,733 82,631 57,762 57,762 48,116   9,646
期末帳簿価額 583,000 339,889 198,156 115,525 57,763 1 9,647 1 1

【新設】 (転用した追加償却資産に係る償却限度額等)

7−4−2の2 令第55条第5項《資本的支出の取得価額の特例》の規定の適用を受けた一の減価償却資産を構成する各追加償却資産のうち従来使用されていた用途から他の用途に転用したものがある場合には、当該転用に係る追加償却資産を一の資産として、転用後の耐用年数により償却限度額を計算することに留意する。この場合において、当該追加償却資産の取得価額は、同項の規定の適用を受けた事業年度開始の時における当該追加償却資産の帳簿価額とし、かつ、当該転用した日の属する事業年度開始の時における当該追加償却資産の帳簿価額は、次の場合に応じ、次による。

(1) 償却費の額が個々の追加償却資産に合理的に配賦されている場合 転用した追加償却資産の当該転用した日の属する事業年度開始の時の帳簿価額

(2) 償却費の額が個々の追加償却資産に配賦されていない場合 転用した日の属する事業年度開始の時の当該一の減価償却資産の帳簿価額に当該一の減価償却資産の取得価額のうちに当該追加償却資産の同項の適用を受けた事業年度開始の時における帳簿価額の占める割合を乗じて計算した金額

(注) 当該転用が事業年度の中途で行われた場合における当該追加償却資産の償却限度額の計算については、7−4−2による。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  平成19年度の税制改正により、新たな資産の取得とされた資本的支出(以下「追加償却資産」という。)について、種類及び耐用年数を同じくするものが同一事業年度内に複数ある場合には、一定の要件の下、その資本的支出を行った事業年度の翌事業年度開始の時において、その開始の時における追加償却資産の帳簿価額の合計額を取得価額とする一の減価償却資産を、新たに取得したものとすることができることとされている(令55丸5)。
 そして、法人が複数の追加償却資産を一の減価償却資産の取得とすることを選択した場合には、原則として、その後においては追加償却資産ごとに分離して別々に償却を行うことはできないこととされている(基通7−3−15の4)。

2  ところで、例えば、種類及び耐用年数を同じくする減価償却資産A、B及びCに対して、同一事業年度内に追加償却資産a、b及びcを取得し、その後、その翌事業年度にa、b及びcを一の減価償却資産の取得として償却を行っている場合において、本体資産A及び追加償却資産aについて用途の変更があったときには、その転用した本体資産Aについては転用後の耐用年数により償却を行うこととなる。この場合、その転用した本体資産Aに係る追加償却資産aについては、b及びcと合わせて一の減価償却資産として償却を行っているので、引き続き一の減価償却資産として償却をすることとなるのか、それとも、その転用に係る追加償却資産aのみを切り離して転用後の耐用年数により償却することとなるのか、いずれによるのかといった疑問が生じる。

3  この点については、今回の税制改正は資本的支出のすべてを個々に管理・償却することの事務の煩雑さに配慮して複数の追加償却資産を一の減価償却資産として償却できるようにしたものであること及びその資産本体と資本的支出は物理的に一体であり、それぞれの耐用年数が異なるというのは適当でないことから、本通達の前段において、上記のように複数の追加償却資産を一の減価償却資産として償却している場合であっても、その複数の追加償却資産の一部につき用途の変更があったときには、その転用した追加償却資産(以下「転用追加償却資産」という。)を分離して一の減価償却資産として転用後の耐用年数により償却限度額の計算を行う旨を留意的に明らかにしているのである。
 また、本通達の取扱いの適用を受ける場合の転用追加償却資産の取得価額については、資本的支出を行った事業年度の翌事業年度開始の時における帳簿価額とし、転用の日の属する事業年度開始の時における転用追加償却資産の帳簿価額については、丸1転用前における償却費の額が個々の追加償却資産に合理的に配賦されている場合には、転用追加償却資産のその転用した日の属する事業年度開始の時の帳簿価額とし、丸2その配賦がされていない場合には、その転用の日の属する事業年度開始の時における一の減価償却資産の帳簿価額を基礎として次の算式により計算した金額による旨を本通達の後段で明らかにしている。
(算式)
転用追加償却資産の転用の日の属する事業年度開始の時における帳簿価額=転用の日の属する事業年度開始の時における一の原価償却資産の帳簿価額×(資本的支出を行った事業年度の翌事業年度開始の時における転用追加償却資産の帳簿価額÷一の減価償却資産の取得価額)
 なお、事業年度の中途で転用が行われた場合には、減価償却資産本体と同様に転用追加償却資産についても、その転用の日の属する事業年度開始の日から転用後の耐用年数により償却限度額の計算をすることを認める旨を本通達の注書において明らかにしている。

4  連結納税制度においても同様の通達(連基通6−4−2の2)を定めている。

【新設】 (事業年度が1年に満たない場合の償却限度額の計算の特例)

7−4−2の3 減価償却資産の償却の方法につき定率法を採用している法人の事業年度が1年に満たない場合において、当該事業年度(以下7−4−2の3において「適用年度」という。)開始の時において有する減価償却資産の償却限度額の計算について、次によっているときは、これを認める。

(1) 耐用年数が2年である減価償却資産の帳簿価額を当該減価償却資産の取得価額によって計算すること。

(2) 当該適用年度開始の時における当該減価償却資産((1)に該当するものを除く。)の帳簿価額について、次に掲げる区分に応じ、それぞれ次に定める価額によって計算すること。

 当該適用年度が取得日基準期間内に終了する事業年度(取得の日の属する事業年度を除く。)である場合 当該減価償却資産の取得価額

 当該適用年度が取得応当日基準期間内に終了する事業年度(応当日の属する事業年度を除く。)である場合 当該応当日の属する事業年度開始の時における当該減価償却資産の帳簿価額

(注)

1 「取得日基準期間」とは、当該減価償却資産の取得の日の属する事業年度開始の日から同日以後1年を経過した日の前日までの期間をいう。

2 「取得応当日基準期間」とは、当該減価償却資産の取得の日に対応する応当日の属する事業年度開始の日から同日以後1年を経過した日の前日までの期間をいう。この場合の「応当日」とは、年における取得の日に対応する他の年における取得の日と同じ位置を占める日をいう。ただし、取得の日が2月29日であり、かつ、その年に対応する日がない場合には、当該応当日は2月28日とする。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  平成19年度の税制改正により新たに導入された定率法の償却限度額は、減価償却資産の期首帳簿価額(取得価額から既にした償却の額で損金の額に算入された金額を控除した金額をいう。以下同じ。)に「定率法の償却率」(耐用年数省令別表第十に規定)を乗じて計算した金額(以下「調整前償却額」という。)とその減価償却資産の取得価額に「保証率」(耐用年数省令別表第十に規定)を乗じて計算した金額(以下「償却保証額」という。)とを比較し、調整前償却額が償却保証額以上である場合には、当該調整前償却額を償却限度額とし、調整前償却額が償却保証額に満たない場合には、最初に満たないこととなる事業年度の期首帳簿価額(以下「改定取得価額」という。)に、「改定償却率」(耐用年数省令別表第十に規定)を乗じて計算した金額を償却限度額とすることとされている(令48の2丸1二、丸5)。

[調整前償却額≧償却保証額]

 限度額 = 償却期首帳簿価額 × 定率法の償却率

[調整前償却額<償却保証額]

 償却限度額 = 改定取得価額 × 改定償却率

2  ところで、事業年度が1年に満たない場合の「定率法の償却率」及び「改定償却率」は、その1年に満たない事業年度の月数を乗じてこれを12で除して計算した償却率によることとされている(耐令5丸2丸3)。例えば、半年決算法人がこの償却率により償却を行った場合、上期の期首簿価より下期の期首簿価が低くなることから、1年決算法人が計算する償却限度額より半年決算法人の上下2期分の償却限度額が過少に計算されることとなる。

3 そこで、本通達において、事業年度が1年に満たない法人であっても、各事業年度の償却限度額の計算については、事業年度が1年決算法人の償却限度額と同様の結果となるよう、次の算式により償却限度額の計算を行っている場合には、これを認めることを明らかにしている。

(1) 耐用年数2年の減価償却資産
 各事業年度の償却限度額=減価償却資産の取得価額×事業年度の月数に応じた償却率

(2) 耐用年数3年以上の減価償却資産

イ 当該事業年度が取得日基準期間内に終了する事業年度(取得の日の属する事業年度を除く。)である場合

 各事業年度の償却限度額=減価償却資産の取得価額×事業年度の月数に応じた償却率

ロ 当該事業年度が取得応当日基準期間内に終了する事業年度(応当日の属する事業年度を除く。)である場合

 各事業年度の償却限度額=応当日の属する事業年度開始の時における減価償却資産の帳簿価額×事業年度の月数に応じた償却率

(注)

1 上記(2)イの取得日基準期間とは、その減価償却資産の取得の日の属する事業年度開始の日から同日以後1年を経過した日の前日までの期間をいう。例えば、9月・3月の半年決算法人で減価償却資産の取得日が平成19年6月12日である場合には、取得日基準期間は平成19年4月1日から平成20年3月31日までとなり、(2)イの算式を適用する事業年度は、取得の日の属する事業年度(平成19年4月1日〜平成19年9月30日)を除いた平成19年10月1日から平成20年3月31日までの事業年度となる。

2 上記(2)ロの取得応当日基準期間とは、その減価償却資産の取得日に対応する応当日の属する事業年度開始の日から同日以後1年を経過した日の前日までの期間をいう。例えば、9月・3月の半年決算法人で減価償却資産の取得日が平成19年6月12日である場合には、取得応当日基準期間は平成20年4月1日以後毎年4月1日から翌年3月31日までの期間となり、(2)ロの算式を適用する事業年度は、応当日の属する事業年度(毎年4月1日〜9月30日)を除いた毎年10月1日から翌年3月31日までの事業年度となる。

(適用事業年度の例)

 耐用年数・・・・・・4年

 取得日・・・・・・・・平成19年6月12日

 決算期・・・・・・・・9月、3月


適用事業年度の例の図


(計算例1)
 取得価額1,000,000円、耐用年数2年(定率法の償却率1,000〔半年決算法人の償却率0.500〕)


計算例1の表


(計算例2) 
 取得価額1,000,000円、耐用年数3年(定率法の償却率0.833〔半年決算法人の償却率0.417〕、保証率0.02789、改定償却率1.000〔半年決算法人の改定償却率0.500〕)


計算例2の表