2 固定資産の取得価額等

【新設】 資本的支出の取得価額の特例の適用関係

7−3−15の4 法人のした資本的支出につき、令第55条第2項、第4項又は第5項《資本的支出の取得価額の特例》の規定を適用し、取得価額及び償却限度額の計算をした場合には、その後において、7−4−2の2《転用した追加償却資産に係る償却限度額等》による場合などを除き、これらの資本的支出を分離して別々に償却することはできないことに留意する。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  平成19年度の税制改正により、平成19年4月1日以後に資本的支出を行った場合には、原則として、その資本的支出の金額を取得価額とし、その有する減価償却資産(以下「旧減価償却資産」という。)と種類及び耐用年数を同じくする減価償却資産を新たに取得したものすることとされている(令55丸1)。ただし、資本的支出の金額に係る取得価額については次によることも認められている。

(1) 旧減価償却資産が旧定額法、旧定率法、旧生産高比例法又は旧国外リース期間定額法を採用している場合(つまり、平成19年3月31日以前に取得をされたものである場合)には、従前どおり、その資本的支出の金額を旧減価償却資産の取得価額に加算することができる(令55丸2)。

(2) 旧減価償却資産及びその旧減価償却資産と種類及び耐用年数を同じくする減価償却資産を新たに取得したものとされた資本的支出(以下「追加償却資産」という。)について定率法を採用している場合には、追加償却資産を取得した事業年度の翌事業年度開始の時において、その開始の時における旧減価償却資産の帳簿価額と追加償却資産の帳簿価額との合計額を取得価額とする一の減価償却資産を、新たに取得したものとすることができる(令55丸4)。

(3) 同一事業年度内に複数の追加償却資産を取得した場合において、それらの追加償却資産について定率法を採用しており、かつ、上記(2)の適用を受けないときには、それらの追加償却資産のうち種類及び耐用年数を同じくするものについて、追加償却資産を取得した事業年度の翌事業年度開始の時における帳簿価額の合計額を取得価額とする一の減価償却資産を、新たに取得したものとすることができる(令55丸5)。

(注)

1 旧減価償却資産がリース資産である場合には、資本的支出により新たに取得したものとされる減価償却資産はリース資産に該当するものとされ、リース期間をその資本的支出の金額を支出した日からリース期間終了の日までの期間として、リース期間定額法により償却限度額を計算することとされている(令55丸3)。

2 上記(2)については、旧減価償却資産についても定率法を採用している必要があることから、旧減価償却資産は平成19年4月1日以後に取得したものに限られる。

2  本通達においては、上記(1)から(3)までのいずれかにより償却をしている場合には、その後の事業年度において旧減価償却資産と追加償却資産を分離し又はそれぞれの追加償却資産を分離して別個に償却を行うことはできないということを念のため明らかにしている。
 上記(1)については、資本的支出を行った事業年度において旧減価償却資産の取得価額に資本的支出の金額を加算することから、資本的支出は旧減価償却資産に組み込まれ、法令上一の資産として償却することとなる。上記(2)及び(3)については、追加償却資産が取得された事業年度の翌事業年度開始の時において、新たに一の減価償却資産を取得したものとすることから、法令上、その開始の時から一の資産として償却することとなる。したがって、法令上一の資産とされたものについては、何らかの事由がない限り、分離することは当然できないのである。

3  ただし、例外として、上記(3)により複数の資本的支出を一の減価償却資産として合算している場合であって、そのいずれかに用途変更があったとき又は除却等があったときには、その用途変更又は除却等に係る資本的支出のみを別の資産として償却及び除却等損益の計算をすることが認められる(基通7−4−2の2、7−7−10)。

4  連結納税制度においても同様の通達(連基通6−3−23の2)を定めている。

【新設】 (3以上の追加償却資産がある場合の新規取得とされる減価償却資産)

7−3−15の5 法人が、令第55条第4項《資本的支出の取得価額の特例》に規定する追加償却資産(以下この章において「追加償却資産」という。)について同条第5項の規定を適用する場合において、当該追加償却資産のうち種類及び耐用年数を同じくするものが3以上あるときは、各追加償却資産の帳簿価額をいずれかの組み合わせにより合計するかは、当該法人の選択によることに留意する。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  平成19年度の税制改正により、平成19年4月1日以後に資本的支出を行った場合には、原則として、その資本的支出の金額を取得価額とし、その有する減価償却資産と種類及び耐用年数を同じくする減価償却資産を新たに取得したものとすることとされている(令55丸1)。そして、新たな取得とされた資本的支出(以下「追加償却資産」という。)が、同一事業年度内に複数ある場合において、それらの追加償却資産について定率法を採用しており、かつ、法人税法施行令第55条第4項《資本的支出の取得価額の特例》の規定の適用を受けないときは、それらの追加償却資産のうち種類及び耐用年数を同じくするものについて、追加償却資産を取得した事業年度の翌事業年度開始の時における帳簿価額の合計額を取得価額とする一の減価償却資産を、新たに取得したものとすることが認められている(令55丸5)。

2  このように追加償却資産の帳簿価額を合計して一の減価償却資産とする場合において、種類及び耐用年数を同じくする追加償却資産が3以上あるときに、そのすべての追加償却資産を合算しなければならないのか、それとも法人が任意に組み合わせることができるのか疑問が生じる。

3  種類及び耐用年数を同じくする複数の追加償却資産の帳簿価額を合算することができることとされているのは、複数の追加償却資産を個々に管理・償却することの事務の煩雑さに配慮したものと考えられる。しかしながら、例えば、資産管理を工場別に行っているような場合において、別々の工場で種類及び耐用年数を同じくする複数の追加償却資産があり、すべての追加償却資産を合算しなければならないこととなると、法人にとっては資産管理がより煩雑になってしまうこととなる。
 また、法令上も、種類及び耐用年数を同じくする追加償却資産のすべてを合算しなければならないとまでは規定されていない。
 そこで、本通達において、複数の追加償却資産の組み合わせが可能な場合には法人が任意に選択できることを念のため明らかにしている。

4  連結納税制度においても同様の通達(連基通6−3−23の3)を定めている。