第1 法人税基本通達関係
 1 減価償却の方法

【新設】 (旧定率法を採用している建物にした資本的支出に係る償却方法)

7−2−1の2 令第48条第1第1号イ(2)《減価償却資産の償却の方法》に規定する旧定率法を採用している建物に資本的支出をした場合において、当該資本的支出につき、令第55条第2項《資本的支出の取得価額の特例》の規定を適用せずに、同条第1項の規定を適用するときには、当該資本的支出に係る償却方法は令第48条の2第1項第1号《減価償却資産の償却の方法》に規定する定額法に限られることに留意する。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  平成19年度の税制改正の結果、建物(鉱業用減価償却資産等を除く。以下同じ。)の償却の方法については、平成19年4月1日以後に取得をされたものは定額法、平成10年4月13日から平成19年3月31日までの間に取得をされたものは旧定額法、平成10年3月31日以前に取得をされたものは旧定額法又は旧定率法によることとなっている(令48丸1一、48の2丸1一)。
 また、平成19年4月1日以後に資本的支出を行った場合には、原則として、資本的支出の金額を取得価額とし、その有する減価償却資産本体と種類及び耐用年数を同じくする減価償却資産を新たに取得したものとされるとともに(令55丸1)、平成19年3月31日以前に取得をした減価償却資産に対して資本的支出を行った場合には、資本的支出の金額をその減価償却資産の取得価額に加算することができるという特例計算が認められている(令55丸2)。

2  ところで、平成10年3月31日以前に取得をされた建物について旧定率法により償却している場合において、これに対して平成19年4月1日以後に資本的支出を行って、原則的方法を適用したときに、資本的支出に係る償却の方法は、建物本体の償却の方法に合わせて旧定率法となるのか、平成19年4月1日以後に取得した建物として定額法となるのかといった疑問が生じる。
 この点、原則的方法による場合には、建物に対する資本的支出は、資本的支出の金額を取得価額とする新たな建物を取得したものとされることから、旧定率法により償却を行っている建物本体に対して平成19年4月1日以後に資本的支出をした場合には、その資本的支出に係る償却の方法は平成19年4月1日以後に取得した建物の償却の方法である「定額法」に限られる。本通達において、このことを念のために明らかにしている。

3  なお、旧定率法により償却を行っている建物に対して平成19年4月1日以後に資本的支出をした場合において、特例計算を適用したときには、その資本的支出の金額を建物の取得価額に加算して「旧定率法」により償却することとなる。

4  連結納税制度においても同様の通達(連基通6−2−1の2)を定めている。

【改正】 (特別な償却の方法の承認)

7−2−3 法人の申請に係る特別な償却の方法について申請書の提出があった場合には、その申請に係る償却の方法が、申請に係る減価償却資産の種類、構造、属性、使用状況等からみてその減価償却資産の償却につき適合するものであるかどうか、償却限度額の計算の基礎となる償却率、生産高、残存価額等が合理的に算定されているかどうか等を勘案して承認の適否を判定する。この場合において、その方法が次に掲げる条件に該当するものであるときは、これを承認する。

(1) その方法が算術級数法のように旧定額法、旧定率法、定額法又は定率法に類するものであるときは、その償却年数が法定耐用年数より短くないこと。
 なお、平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産については、その残存価額が取得価額の10%相当額以上であること。

(2) その方法が生産高、使用時間、使用量等を基礎とするものであるときは、その方法がその減価償却資産の償却につき旧定額法、旧定率法、定額法又は定率法より合理的なものであり、かつ、その減価償却資産に係る総生産高、総使用時間、総使用量等が合理的に計算されるものであること。
 なお、平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産については、その残存価額が取得価額の10%相当額以上であること。

(3) その方法が取替法に類するものであるときは、申請に係る減価償却資産の属性、取替状況等が取替法の対象となる減価償却資産に類するものであり、その取得価額の50%相当額に達するまで定率法等により償却することとされていること。

(注) 特別な償却の方法の承認を受けている減価償却資産について、資本的支出をした場合には、当該資本的支出は当該承認を受けている特別な償却の方法により償却を行うことができることに留意する。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  本通達は、法人が定率法又は定額法などの資産の区分に応じて定められている償却の方法に代えて特別な償却の方法の申請をした場合に、その申請に係る承認の適否の判定について留意すべき事項を明らかにしている。

2  平成19年度の税制改正前においては、有形減価償却資産の残存価額が取得価額の10%とされており、本通達の(1)及び(2)の特別な償却の方法はそもそもその残存価額を10%以下に引き下げるというようなものではないことから、「残存価額が取得価額の10%相当額以上であること」を要件としていた。平成19年度の税制改正により、平成19年4月1日以後に取得をされる減価償却資産に係る償却の方法については、残存価額が廃止され耐用年数経過時点で1円まで償却することができることとされたことから、本通達において、特別な償却の方法の承認の基準である「残存価額が取得価額の10%相当額以上であること」とする要件を平成19年3月31日以前に取得した資産に限定する改正を行っている。

3  また、平成19年度の税制改正において、法人の有する減価償却資産に対して資本的支出をした場合には、原則として、その資本的支出の金額を取得価額として、その有する減価償却資産と種類及び耐用年数を同じくする減価償却資産を新たに取得したものとすることとされている(令55丸1)ことから、その有する減価償却資産が特別な償却の方法の承認を受けている場合において、その資本的支出について特別な償却の方法を採用しようとするときには、改めて特別な償却の方法の申請をする必要があるのではないかという疑問が生じる。
 この点、法令上、資本的支出を新たな資産の取得として償却限度額を別個に計算するとしても、資産本体とその資本的支出とは物理的に一体であることから、資産本体に適用する特別な償却の方法によりその資本的支出の償却限度額を計算するのであれば、改めて特別な償却の方法の承認を受ける必要はない。本通達の注書において、このことを明らかにしている。
 ただし、資本的支出について新たな資産の取得として資産本体とは異なる特別な償却の方法により償却するというのであれば、その資本的支出については改めて特別な償却の方法の承認を受ける必要がある。
 例えば、平成19年3月31日以前に取得した資産で、旧定率法をベースとする特別な償却の方法の承認を受けているものに対して資本的支出をし、その資本的支出の金額を取得価額とする新たな資産の取得としている場合において、その資本的支出につき旧定率法ではなく新たな資産の償却方法である定率法をベースとした特別な償却の方法につき承認を受けるというようなケースがこれに該当すると考えられる。

4  なお、平成19年3月31日以前に取得した資産に資本的支出をした場合で、法人税法施行令第55条第2項《資本的支出の取得価額の特例》の規定の適用を受けて当該資本的支出の金額を資産本体の取得価額に加算しているときは、資産本体とその資本的支出は法令上一の資産として資産本体について承認を受けた特別な償却の方法を適用するのであって、その資本的支出についてのみ特別な償却の方法の承認を受けることはできない。

5  連結納税制度においても同様の通達(連基通6−2−3)を定めており、同様の改正を行っている。