【改正】 (債務の免除を受けた更生債権等の範囲)

12-3-3 法第59条第1項第1号《会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入》に規定する「債務の免除を受けた場合」には、会社更生法第138条《更生債権等の届出》の届出がされなかった更生債権等(同法第2条第8項に規定する「更生債権」及び同条第10項に規定する「更生担保権」をいう。)につき、同法第204条第1項《更生債権等の免責等》の規定によって、その責任を免れることとなった場合も含むことに留意する。ただし、更生計画の定めるところにより同法第2条第13項に規定する更生債権者等に交付した募集株式若しくは設立時募集株式又は募集新株予約権(以下「募集株式等」という。)の割当てを受ける権利について当該募集株式等の引受けの申込みをしなかったためこれらの権利を失うこととなった場合などは含まれない。
金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第81条又は第248条《更生債権等の届出》の届出がされなかった更生債権等(同法第4条第8項又は第169条第8項に規定する「更生債権」及び同法第4条第10項又は第169条第10項に規定する「更生担保権」をいう。)に係る債務の免除についても、同様とする。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  法人について会社更生法等(会社更生法及び金融機関の更生手続の特例等に関する法律をいう。以下同じ。)の規定による更生手続開始の決定があった場合において、その決定があった時においてその法人に対し一定の債権を有する者からその債権につき債務の免除を受けたときには、その免除を受けた日の属する事業年度(以下「適用年度」という。)前の各事業年度において生じた欠損金額のうち、その債務の免除を受けた金額に達するまでの金額は、その適用年度の損金の額に算入することとされている(法591)。
会社更生法等の規定によれば、更生債権等は裁判所の定めた届出期間内に届け出なければ、利害関係人として更生手続に参加することができず、また、更生計画にも記載されないことから、計画の認可によって失権せしめられることになっている(会社更生法138、204、更生特例法81、125、248、295)。このように、更生債権等の届出をしなかったために更生計画認可の決定時に消滅することとなる更生債権等についての消滅も「債務の免除を受けた場合」に含まれることとなる。
また、更生会社等は、更生計画において、更生債権者等に対し、新たに払込み又は現物出資をさせて新株を発行し又は株式等を引き受けさせることによって新法人を設立することができることになっているが、この場合における払込金の一部には通常更生債権者等の有していた従前の権利(更生債権等)が充当され、残余について現金等を現実に払い込ませることになる(旧会社更生法175、183)。このように新たに一部の払込みをさせて新株を発行し又は出資若しくは基金を引き受けさせることとする引受権を与えている場合において、この引受権について払込みがなかったため債務が消滅したときには、この引受権に係る実質的な債務は本来の更生債権等の性質を有するものではないことから、「債務の免除を受けた場合」には含まれないことになる。
改正前の本通達においては、これらのことを明らかにしていた。

2  以上のような本通達による取扱いに実質的な変更はないが、会社法の制定に伴い、会社更生法等における新株発行手続に関する規定について募集株式を引き受ける者の募集手続に関する規定に改めるなどの見直しが行われていることから、本通達においても所要の整備を行っている。
具体的には、会社更生法において、従来の「新株又は新株予約権の引受権を交付する」という手続が、「更生債権者等が会社法第203条第2項の申込みをすることにより募集株式、設立時募集株式又は新株予約権(以下「募集株式等」という。)の割当てを受ける権利を交付する」という手続に改められている。この募集株式等の割当てを受ける権利について、更生債権者等が申込みをしないときは、その更生債権者等は募集株式等の割当てを受ける権利を失うこととされている(会社更生法175、会社法2032、2044)(会社更生法183、会社法593)(会社更生法176、会社法2422、2434)。このように、募集株式等の割当てを受ける権利について申込みがなかったため債務が消滅したときは、この割当てを受ける権利に係る実質的な債務は本来の更生債権等の性質を有するものではないと考えられることから、法人税法第59条第1項第1号に規定する「債務の免除を受けた場合」には該当しないこととなる。

3  また、募集株式等の割当てを受ける権利についてその引受けの申込みをし、当該募集株式等を引き受けた者は、株主となる権利又は新株予約権を取得するが、その後、出資の履行又は払込みをしない場合にはその株主となる権利又は新株予約権を失うこととされている(会社法633、2085、2463、287)。この場合においても、消滅する債務は当然のことながら更生債権等ではないことから、「債務の免除を受けた場合」には含まれないこととなる。
本通達の改正により、これらのことを明らかにしている。
なお、更生債権者等が交付を受けた募集株式等の割当てを受ける権利について申込みをしなかったことによりこれらの権利を失うこととなった場合等の債権者側の取扱いについては、法人税基本通達14−3−7《非更生債権等の処理》の改正により対応している。

4  連結納税制度においても、同様の通達(連基通11−2−3)を定めており、同様の改正を行っている。

【新設】 (債務の免除以外の事由による消滅の意義)

12-3-6 法第59条第1項第1号又は第2項第1号《会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入》に規定する「当該債権が債務の免除以外の事由により消滅した場合」とは、次に掲げるような場合がこれに該当する。

(1) 会社更生法又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律(以下12−3−6において「更生特例法」という。)の規定により、法第59条第1項第1号に規定する債権を有する者が、更生計画の定めに従い、同項に規定する内国法人に対して募集株式若しくは募集新株予約権の払込金額又は出資額若しくは基金の拠出の額の払込みをしたものとみなされた場合

(2) 会社更生法又は更生特例法の規定により、法第59条第1項に規定する内国法人が、更生計画の定めに従い、同項第1号に規定する債権を有する者に対して当該債権の消滅と引換えに、株式若しくは新株予約権の発行又は出資の受入れ若しくは基金の拠出の割当てをした場合

(3) 法第59条第2項に規定する内国法人が、同項第1号に規定する債権を有する者から当該債権の現物出資を受けることにより、当該債権を有する者に対して募集株式又は募集新株予約権を発行した場合

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  平成18年度税制改正により、会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入制度の対象に、いわゆるデット・エクィティー・スワップ(DES)に伴う債務消滅益が追加されている(法5912)。
 会社法においては、株式について発行価額という概念がなくなり、株主となる者が会社に対して払込み又は給付をした財産の価額をもって増加する資本金の額及び資本準備金の額とすることとされている(会社法445)。また、法人税法においても平成18年度税制改正により新株の発行及び自己の株式の譲渡の際に増加する資本金等の額について、払い込まれた金銭の額及び給付を受けた金銭以外の資産の価額その他の対価の額に相当する金額とされている(法令81一)。このため、法人がDESによる自己宛債権の現物出資(適格現物出資を除く。)を受けた場合には、債務者である法人の増加する資本金等の額は、その券面額でなく時価によることとなる。また、債務者である法人が現物出資を受けた自己宛債権に対応する債務について、その券面額と自己宛債権の時価との差額が債務の消滅益として計上されることとなる。
 そこで、平成18年度税制改正により過去の欠損金を損金算入できる事由である「債務の免除を受けた場合」に、「債権が債務の免除以外の事由により消滅した場合でその消滅した債務に係る利益の額が生ずるときを含む」こととされた(法591一、2一)。
 本通達は、「債権が債務の免除以外の事由により消滅した場合」に含まれるものについて例示している。

2  本通達の(1)においては、会社更生法等(会社更生法及び金融機関の更生手続の特例等に関する法律をいう。以下同じ。)の規定により、更生債権が消滅した場合において募集株式又は募集新株予約権(以下「募集株式等」という。)の申込みの上で当該募集株式の払込金額の払込みをしたものとみなされた場合を掲げている。
 会社更生法においては、更生計画の定めに従い、更生債権者等の権利の全部又は一部が消滅した場合において、これらの者が会社法第203条第2項の申込みをしたときは募集株式等の払込金額の全部又は一部の払込みをしたものとみなすこととする旨を定めることができることとされている(会社更生法175)。このような更生計画の定めに従い債権が消滅した場合は、「債権が債務の免除以外の事由により消滅した場合」に該当することとなる。
 金融機関の更生手続の特例等に関する法律(以下「更生特例法」という。)の規定により、更生計画の定めに従い、出資額又は基金の拠出の額の払込みをしたものとみなされた場合(更生特例法96、263)についても、同様である。

3  本通達の(2)においては、会社更生法等の規定により、更生債権等の消滅と引換えに株式又は新株予約権の発行等を行った場合を掲げている。
 会社更生法においては、更生債権者等の権利の全部又は一部の消滅と引換えにする株式の発行に関する手続を定めている(会社更生法177の2)。このような更生計画の定めに従い、債権者に対して当該債権の消滅と引換えに、株式又は新株予約権の発行をした場合も、「債権が債務の免除以外の事由により消滅した場合」に該当することとなる。
 更生特例法の規定により、更生計画の定めに従い、債権の消滅と引換えに出資の受入れ又は基金の拠出の割当てをした場合も同様である(更生特例法97、265)。

4  本通達の(3)においては、債権を現物出資する方法による典型的なDESを掲げている。債権者から当該債権の現物出資を受けることにより、当該債権を有する者に対して募集株式又は募集新株予約権を発行した場合は、一般的には、混同により債権が消滅することとなると解されている。したがって、この場合も「債権が債務の免除以外の事由により消滅した場合」に該当することとなる。
 本通達においては、これらのことを明らかにしている。

5  なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通11−2−6)を定めている。


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