【新設】 (金銭以外の資産による配当等の額)

3−1−7の5 法人が金銭以外の資産により剰余金の配当又は利益の配当を受ける場合には、法第23条《受取配当等の益金不算入》の規定の適用がある配当等の額は、原則として、当該剰余金の配当又は利益の配当の効力発生日における当該金銭以外の資産の価額によることに留意する。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  本通達においては、いわゆる現物配当が行われた場合に受取配当等の益金不算入の対象となる配当等の額は、当該現物配当に係る資産の帳簿価額ではなく、当該現物配当の効力発生日における時価によることを明らかにしている。

2  旧商法上、中間配当については金銭で行わなければならないことが明記されていたが(旧商法293ノ5)、利益の配当については明文の規定がなく、現物配当が商法上、可能かどうかについて必ずしも統一的な解釈は示されておらず、また、実務上も現物配当は行われていない状況にあった。
 会社法では、株式会社は株主総会の決議によって配当財産の種類及び帳簿価額の総額を定めなければならないこととされ(会社法4541一)、配当財産が金銭以外の財産であるときは、株主総会の決議によって、株主に与える金銭分配請求権(金銭以外の配当財産に代えて金銭を交付することを株式会社に対して請求する権利を言う。)に関する事項等を定めることができるとされるなど(会社法4544)、法令上、現物配当を行うことができることが明確化されている。そこで、会社法に基づき、現物配当が行われる場合に、受取配当等の益金不算入制度の対象となる配当等の額をいくらとみるのかという問題が生じる。

3  この点、所得の金額の計算の基礎となる法人の収益の額は収入した資産の収入の時における価額によるという基本的な考え方からすれば、法人が現物配当を受けた場合の収益の額はその配当の効力発生日における配当財産の時価により認識することが適当であると考えられる。そこで、本通達において、法人が金銭以外の資産により剰余金の配当又は利益の配当を受ける場合に、益金不算入の額の計算の基礎となる法人税法第23条《受取配当等の益金不算入》の規定の適用がある配当等の額は、原則として、当該剰余金の配当又は利益の配当の効力発生日における当該金銭以外の資産の価額によることを明らかにしている。
 なお、現物配当を行う法人の側について、企業会計においては、原則として配当の効力発生日における配当財産の時価により配当等の額を認識することとされているが、法人税法においても、配当の効力発生日における配当財産の時価により配当等の額を認識し、当該時価と当該配当財産の帳簿価額との差額について、当該配当財産の譲渡益又は譲渡損を認識することとなる。
 ちなみに、法人税法第67条第4項《特定同族会社の特別税率》において、現物配当を行った法人の事業年度末における留保金額を算出する際には、現物配当に係る資産の期末帳簿価額により配当が支払われたものとして計算することとされているので、注意を要する。

4  連結納税制度においても、同様の通達(連基通3−1−12)を定めている。

《参考》

○ 「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第2号)」(平成14年2月21日 企業会計基準委員会)

現物配当を行う会社の会計処理

10 配当財産が金銭以外の財産である場合、配当の効力発生日(会社法第454条第1項第3号)における配当財産の時価と適正な帳簿価額との差額は、配当の効力発生日の属する期の損益として、配当財産の種類等に応じた表示区分に計上し、配当財産の時価をもって、その他資本剰余金又はその他利益剰余金(繰越利益剰余金)を減額する。
 ただし、次の場合には、配当効力発生日における配当財産の適正な帳簿価額をもって、その他資本剰余金又はその他利益剰余金(繰越利益剰余金)を減額する。

(1)  分割型の会社分割(按分型)

(2)  保有する子会社株式のすべてを株式数に応じて比例的に配当(按分型の配当)する場合

(3)  企業集団内の企業へ配当する場合

(4)  市場価格がないことなどにより公正な評価額を合理的に算定することが困難と認められる場合
 なお、減額するその他資本剰余金又はその他利益剰余金(繰越利益剰余金)については、取締役会等の会社の意思決定機関で定められた結果に従うこととする。


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