【新設】 (取得条項付株式の取得等に際し1株未満の株式の代金を株主等に交付した場合の取扱い)

2-3-1 法第61条の2第11項第2号《有価証券の譲渡益又は譲渡損の益金又は損金算入》に規定する取得条項付株式に係る取得事由の発生によりその取得条項付株式を有する株主等に金銭が交付される場合において、その金銭が、その取得の対価として交付すべき当該取得をする法人の株式(出資を含む。以下2-3-1において同じ。)に1株未満の端数が生じたためにその1株未満の株式の合計数に相当する数の株式を譲渡し、又は買い取った代金として交付されたものであるときは、当該株主等に対してその1株未満の株式に相当する株式を交付したこととなることに留意する。ただし、その交付された金銭が、その取得の状況その他の事由を総合的に勘案して実質的に当該株主等に対して支払う当該取得条項付株式の取得の対価であると認められるときは、当該取得の対価として金銭が交付されたものとして取り扱う。
 同項第3号又は第5号に規定する全部取得条項付種類株式又は取得条項付新株予約権に係る株式に1株未満の端数が生じた場合についても、同様とする。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  平成18年度税制改正により、取得条項付株式に係る取得事由の発生により株主等に発行法人の株式のみが交付される場合の当該取得条項付株式の譲渡については、いわゆる簿価譲渡としてその譲渡損益に係る課税を繰り延べるとともに、みなし配当課税の適用除外とすることとされている(法61の211二、241四)。したがって、取得条項付株式の取得の対価として、株主等に発行法人の株式以外の資産が交付される場合には、課税の繰り延べは行われないこととなる。
 取得条項付株式に係る取得事由の発生により発行法人の株式を交付する場合において、その割当比率によっては株主に交付する発行法人の株式に1株未満の端数が生じることがあるが、この1株未満の端数の交付に代えて株主等に金銭を交付した場合には、「株式のみ」が交付されるという要件を満たさないことから、株式の譲渡損益に係る課税の繰延べが行われないことになるのかという問題がある。
 この点、株主に対し交付しなければならない当該法人の株式の数に1株に満たない端数がある場合は、会社法第234条《一に満たない端数の処理》の規定に基づき、その端数の合計数に相当する数の株式を他に譲渡し又は自ら買取りをし、かつ、その端数に応じてその譲渡により得られた代金又は買い取った代金を当該株主に交付しなければならないこととされている。すなわち、この場合の金銭交付は、1株未満の端数の合計数に相当する株式がいったん当該端数部分の所有者に共有された上で、発行法人がその所有者に代わってその1株未満の端数の合計数に相当する数の株式を適宜一括して譲渡し、その代金を交付するにすぎないものである。したがって、このような1株未満の端数に相当する金銭を株主に交付した場合には、当該株主に対して株式を交付したものとして取り扱うこととなる。

2  ただし、上記の取扱いは、通常の取引条件の下で取得条項付株式が取得事由の発生により取得される場合において、個々の株主の保有株式数の差により端数が生じた際に、それらの端数を会社が束ね、株主に代わって譲渡し換金したときの取扱いであるから、その交付された金銭が、その取得の状況その他の事由を総合的に勘案して実質的に当該株主等に対して支払う当該取得条項付株式の取得の対価であると認められるときは、当該取得の対価として金銭が交付されたものとして取り扱うこととなる。

3  法人税法第61条の2第11項第3号又は第5号に規定する全部取得条項付種類株式又は取得条項付新株予約権の取得決議又は取得事由の発生により、発行法人の株式が交付される場合にあっても、交付すべき株式に1株未満の端数が生じたときは、会社法第234条の規定に基づき、当該1株未満の端数の合計数に相当する数の株式を譲渡し、又は買い取った代金として金銭が交付されることとなる。したがって、この場合も、取得条項付株式の譲渡と同様、「株式のみ」が交付されたものとして取り扱われることとなる。
 本通達においては、これらのことを明らかにしている。

4  なお、取得請求権付株式に係る請求権の行使により発行法人の株式が交付される場合に、転換比率の設定により1株未満の端数が生じるときは、これを切り捨て、その端数部分の株式の価額に相当する金銭を株主に交付しなければならないこととされている(会社法1673)。また、新株予約権付社債に付された新株予約権の行使により発行法人の株式が交付される場合に、転換比率の設定により交付を受ける株式の数に1株未満の端数が生じるときは、その端数部分の株式の価額に相当する金銭を交付しなければならないとされている(会社法283)。これらの1株未満の端数に相当する部分は法人税法施行令第119条の8の2により、交付を受ける発行法人の株式に含まれることとされ、端数に相当する金銭が交付された場合にも簿価譲渡の要件を満たすこととされている。

5  連結納税制度においても、同様の通達(連基通2−3−1)を定めている。

【改正】 (他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合)

2-3-8 令第119条第1項第4号《有利発行により取得した有価証券の取得価額》に規定する「他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合」とは、株主等である法人が有する株式の内容及び数に応じて株式又は新株予約権が平等に与えられ、かつ、その株主等とその内容の異なる株式を有する株主等との間においても経済的な衡平が維持される場合をいうことに留意する。

(注) 他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合に該当するか否かについては、例えば、新株予約権無償割当てにつき会社法第322条《ある種類の種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合の種類株主総会》の種類株主総会の決議があったか否かのみをもって判定するのではなく、その発行法人の各種類の株式の内容、当該新株予約権無償割当ての状況などを総合的に勘案して判定する必要がある。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  平成18年度の税制改正前においては、いわゆる有利発行により取得した有価証券の取得価額については、原則として、その有価証券の払込期日における価額とされていた(旧法令119三)。ただし、有利発行により有価証券を取得したときであっても、その有価証券が「株主等として取得をしたもの」である場合には、その購入代価をもって当該有価証券の取得価額とすることとされていた。
 改正前の本通達においては、この「株主等として取得をしたもの」とは、株主等としての地位に基づき平等に取得したものをいうことを明らかにしていた。

2  平成18年度税制改正において、会社法の制定による種類株式の多様化に伴い、有価証券の取得価額に関する規定が整備され、従前の「株主等として取得をしたもの」の内容がより明確化され、「当該法人の他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合」に改正されている(法令119四)。
 本通達においては、この「他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合」とは、有利発行又は無償交付を受ける株主等が有する株式の内容及び数に応じて株式又は新株予約権が平等に与えられ、かつ、有利発行又は無償交付を受ける株主等と内容の異なる株式を有する株主等との間においても経済的な衡平が維持される場合をいうことを明らかにしている。
 例えば、2以上の種類の株式を発行している場合で、1の種類の株式を対象に新株の有利発行又は無償交付が行われ、他の種類の株式について転換割合の調整条項がないことなどの理由により他の種類の株式の価値が低下するときなどはこれに該当しないと考えられる。
 また、その判定に当たっては、例えば、新株予約権の無償割当てにつき、会社法第322条《ある種類の種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合の種類株主総会》による種類株主総会の決議があったか否かのみによるのではなく、その発行法人の各種類の株式の内容、無償割当ての状況等を総合的に勘案して判定する必要がある旨を併せて明らかにしている。

3  なお、連結納税制度においても同様の通達(連基通2−3−8)を定めており、同様の改正を行っている。

《参考》
○ 会社法(抄)
(ある種類の種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合の種類株主総会)

第三百二十二条 種類株式発行会社が次に掲げる行為をする場合において、ある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、当該行為は、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会(当該種類株主に係る株式の種類が二以上ある場合にあっては、当該二以上の株式の種類別に区分された種類株主を構成員とする各種類株主総会。以下この条において同じ。)の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。
一〜十三 省略

2〜4 省略

【改正】 (2以上の種類の株式が発行されている場合の銘柄の意義)

2-3-17 法人が、他の法人の発行する一の種類の株式と他の種類の株式とを有する場合には、それぞれ異なる銘柄として令第119条の2第1項《有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出の方法》の規定を適用するのであるが、それらの権利内容等からみて、その一の種類の株式と他の種類の株式が同一の価額で取引が行われるものと認められるときには、当該一の種類の株式と他の種類の株式は同一の銘柄の株式として、同項の規定を適用することに留意する。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  本通達においては、法人が他の法人が発行する2以上の種類の株式を有する場合の有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出に関する取扱いを明らかにしている。
 法人が、他の法人の発行する2以上の種類の株式を有する場合に、その株式の一単位当たりの帳簿価額を算出するときには、これらの株式は同一銘柄の株式として一括して計算するのか、それぞれ異なる銘柄の株式として別個に計算することになるのか、といった疑問が生ずる。
 この点については、種類株式は様々な権利内容のものが想定されるため、一概にはいえないが、少なくとも種類株式の権利内容等からみて他の種類の株式の取引価額と明らかに異なる値動きをするようなものについては、これを区分して帳簿価額を算出することが合理的であると考えられる。
 そこで、改正前の本通達においては、法人が、他の法人の発行する普通株式と種類株式とを有する場合において、その種類株式の権利内容等からみて、当該種類株式が普通株式の価額と異なる価額で取引が行われるものと認められるときには、当該種類株式は普通株式と異なる銘柄の株式として、有価証券の一単位当たりの帳簿価額を算出する旨を明らかにしていた。

2  平成13年の商法改正において、種類株式制度が見直されたことにより種類株式の内容が多様化しているが、今回の会社法の制定によりこれまで以上に多様な種類の株式の発行ができることとなった。
 このように多様な種類の株式の発行が可能となったことを契機として、平成18年度税制改正により、株式の発行法人は、株式の種類ごとに資本金等の額を区分管理することにより、株式の種類の違いに応じた課税の取扱いとなるように見直しが行われた(法令8)。

3  これらの改正を踏まえれば、法人が他の法人の発行する2以上の種類の株式を有する場合には、種類株式は異なる銘柄として一単位当たりの帳簿価額を算出することを原則とし、それらの株式の権利内容等からみて、その一の種類の株式と他の種類の株式が同一の価額で取引が行われると認められるものについては、これらを同一の銘柄の株式として取り扱うことが相当であると考えられる。本通達の改正により、このことを明らかにしている。

4  なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通2−3−16の2)を定めており、同様の改正を行っている。

【改正】 (一株に満たない株式等を譲渡した場合等の原価)

2-3-25 法人が、令第119条の8の2《取得請求権付株式の取得等の対価として生ずる端数の取扱い》に規定する1株に満たない端数に相当する部分又は令第139条の3第1項各号《一株未満の株式等の処理の場合等の所得計算の特例》に掲げる1株に満たない端数につき代わり金の交付を受けたときの譲渡に係る原価の額は、当該法人が当該1株に満たない端数に相当する株式等の交付を受け直ちに譲渡したものとして法第61条の2《有価証券の譲渡益又は譲渡損の益金又は損金算入》の規定を適用する。ただし、当該法人が当該代わり金に相当する金額を益金の額に算入している場合は、これを認める。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  本通達においては、取得請求権付株式の取得等の対価として生ずる端数に相当する部分(法令119の8の2)又は取得条項付株式の取得等の対価として生ずる端数に相当する部分(法令139の31)について代わり金の交付を受けたときの譲渡に係る原価の額は、当該法人が取得した株式のうち端数相当部分の株式を直ちに譲渡したものとして取り扱うことを明らかにしている。

2  平成18年度税制改正により、取得請求権付株式の取得等の対価として生ずる端数に相当する部分については、法人税法第61条の2第11項《有価証券の譲渡益又は譲渡損の益金又は損金算入》に規定する法人の株式に含まれることとされた(法令119の8の2)。これは、取得請求権付株式に係る請求権の行使に伴い株主に交付される株式について、転換比率の設定により1株未満の端数が生ずる場合には、発行法人はその端数部分の株式の価額に相当する金銭を当該株主に交付しなければならない(会社法167)こととされているが、法人税法上はいったん端数に相当する株式が交付され、直ちに金銭をもって買い取られたと取り扱うこととしたことによるものである。

3  取得請求権付株式の取得のほかにも、取得条項付株式の取得等の場合には、割当比率等の関係から株主に交付すべき発行法人の株式の数に1株未満の端数が生じることになる。これらの株主には、いわゆる代わり金が支払われるが、その実質は株主が受け取った1株未満の端数に相当する部分を直ちに譲渡しその対価として金銭を受け取ったものである。したがって、株主が代わり金の交付を受けたときは、1株未満の端数に相当する株式等の交付を受け、これを直ちに譲渡したものと取り扱って譲渡損益を認識することとなる。
 ただし、株主がこの代わり金の交付を受けた場合に、単に雑益として計上するだけでも差し支えない旨を本通達のただし書において明らかにしている。

4  なお、改正前の本通達において定めていた新株引受権を譲渡した場合等の原価の取扱いについては、平成18年度税制改正により、新株予約権(新株引受権が会社法の制定により改正)の取得価額が法人税法施行令第119条《有価証券の取得価額》において明らかにされたことから、廃止している。

5  連結納税制度においても、同様の通達(連基通2−3−21)を定めており、同様の改正を行っている。


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