【改正】 (有価証券の譲渡による損益の計上時期)

2-1-22 有価証券の譲渡による法第61条の2第1項《有価証券の譲渡損益の益金算入等》に規定する譲渡利益額又は譲渡損失額(以下2−1−23の3までにおいて「譲渡損益の額」という。)の計上は、同項の規定に基づき原則として譲渡に係る契約の成立した日に行うこととなるのであるから、次に掲げる場合には、それぞれ次に掲げる日に譲渡損益の額を計上する。

(1) 証券業者等に売却の媒介、取次ぎ若しくは代理の委託又は売出しの取扱いの委託をしている場合 当該委託をした有価証券の売却に関する取引が成立した日

(2) 相対取引により有価証券を売却している場合 証券取引法第41条《取引報告書の交付》に規定する取引報告書に表示される約定日、売買契約書の締結日などの当該相対取引の約定が成立した日

(3) その譲渡損益の額が次によるものである場合 次に掲げる区分に応じ、それぞれ次に定める日

 その法人の有していた株式を発行した法人の合併によるものについては、合併の効力を生ずる日(新設合併の場合は、新設合併設立法人の設立登記の日)

 その法人の有していた株式を発行した法人の分割型分割によるものについては、分割の効力を生ずる日(新設分割の場合は、新設分割設立法人の設立登記の日)

 株式交換又は株式移転によるものについては、株式交換の効力を生ずる日又は株式移転完全親法人の設立登記の日

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  本通達は、有価証券の譲渡の形態ごとにその譲渡損益の計上時期を明らかにしている。

2  改正前の本通達の(3)においては、次に掲げる事由による特殊な有価証券の譲渡について、客観的にそれが明らかとなる日あるいは効力を有することとなる日としてそれぞれ次に定める日に譲渡損益を計上することを明らかにしていた。

(イ) 資本若しくは出資の減少、株式(出資を含む。以下同じ。)の消却又は社員の退社若しくは脱退によるもの…これらの事実があった日

(ロ) その法人の有していた株式を発行した法人の合併によるもの…合併期日

(ハ) その法人の有していた株式を発行した法人の分割型分割によるもの…分割期日

(ニ) 解散による残余財産の分配によるもの…その分配の開始の日(その分配が数回に分割してなされた場合には、それぞれの分配の開始の日

(ホ) 株式交換又は株式移転によるもの…株式交換期日又は株式移転期日

3  平成18年度税制改正により、有価証券の譲渡が剰余金の配当その他一定の事由によるものである場合の譲渡損益の計上時期が、法令上も明確化され(法61の21、法規27条の3の2)、上記(イ)及び(ニ)については、その内容が法令に規定されたことから、今回の改正により本通達から削除している。

4  有価証券の譲渡が、合併、分割、株式交換又は株式移転によるものである場合の譲渡損益の計上時期についても、それぞれ、その合併の日、その分割の日、その株式交換の日又はその株式移転の日となることが、平成18年度税制改正により、法令上明記されている(法規27の3の2二・四・八・十)。ただし、合併の日等が具体的にいつになるかは必ずしも明らかでないところ、これらの日は法人税基本通達1-2-3《解散、継続、合併又は分割の日》及び同通達1-4-1《組織再編成の日》で定める日と当然一致するものであると考えられる。すなわち、合併によるものについては合併の効力を生ずる日(新設合併の場合は、新設合併設立法人の設立登記の日)、分割型分割によるものについては分割の効力を生ずる日(新設分割の場合は、新設分割設立法人の設立登記の日)、株式交換又は株式移転によるものについては株式交換の効力を生ずる日又は株式移転完全親法人の設立登記の日に譲渡損益を計上することとなる。
 本通達の(3)の改正により、このことを明らかにしている。

5  なお、会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第36条等の規定により、旧商法の規定が適用されることとなる合併、分割、株式交換又は株式移転については、改正前の本通達の取扱いによることとしている(経過的取扱い(1))。

6  連結納税制度においても、同様の通達(連基通2-1-22)を定めており、同様の改正を行っている。

【改正】 (剰余金の配当等の帰属の時期)

2-1-27 法人が他の法人から受ける剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配、資産の流動化に関する法律第115条第1項《中間配当》に規定する金銭の分配(以下「特定目的会社に係る中間配当」という。)又は投資信託及び特定目的信託の収益の分配(以下2−1−31までにおいてこれらを「剰余金の配当等」という。)の額は、次に掲げる区分に応じ、それぞれ次に掲げる日の属する事業年度の収益とする。ただし、その剰余金の配当等の額が外国法人から受けるものである場合において、当該外国法人の本店又は主たる事務所の所在する国又は地域の剰余金の配当等に関する法令にその確定の時期につきこれと異なる定めがあるときは、当該法令に定めるところにより当該剰余金の配当等の額が確定したとされる日の属する事業年度の収益とする。

(1) 法第23条第1項第1号に規定する剰余金の配当若しくは利益の配当又は剰余金の分配については、次による。

 剰余金の配当 当該配当の効力を生ずる日

 利益の配当又は剰余金の分配 当該配当又は分配をする法人の社員総会又はこれに準ずるものにおいて、当該利益の配当又は剰余金の分配に関する決議のあった日。ただし、持分会社にあっては定款で定めた日がある場合にはその日

(注) 法人が、配当落ち日に未収配当金の見積計上をしている場合であっても、当該未収配当金の額は、未確定の収益として当該配当落ち日の属する事業年度の益金の額に算入しない。次の(2)において同じ。

(2) 特定目的会社に係る中間配当については、当該中間配当に係る取締役の決定のあった日。ただし、その決定により中間配当の請求権に関しその効力発生日として定められた日があるときは、その日

(3) 投資信託及び特定目的信託の収益の分配のうち信託の開始の時からその終了の時までの間におけるものについては、当該収益の計算期間の末日とし、投資信託及び特定目的信託の終了又は投資信託及び特定目的信託の一部の解約による収益の分配については、当該終了又は解約のあった日

(4) 法第24条《配当等の額とみなす金額》の規定によるみなし配当については、次に掲げる区分に応じ、それぞれに定める日

イ 同条第1項第1号に掲げる合併によるものについては、合併の効力を生ずる日。ただし、新設合併の場合は、新設合併設立法人の設立登記の日

ロ 同項第2号に掲げる分割型分割によるものについては、分割の効力を生ずる日。ただし、新設分割の場合は、新設分割設立法人の設立登記の日

ハ 同項第3号に掲げる資本の払戻しによるものについては、資本の払戻しに係る剰余金の配当がその効力を生ずる日

ニ 同号に掲げる解散による残余財産の分配によるものについては、その分配の開始の日(その分配が数回に分割してされた場合には、それぞれの分配の開始の日)

 同項第4号に掲げる自己の株式又は出資の取得によるものについては、その取得の日

 同項第5号に掲げる出資の消却、出資の払戻し、社員その他法人の出資者の退社若しくは脱退による持分の払戻し又は株式若しくは出資をその発行した法人が取得することなく消滅させることによるものについては、これらの事実があった日

 同項第6号に掲げる組織変更によるものについては、組織変更の効力を生ずる日

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  本通達においては、剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配、中間配当又は投資信託及び特定目的信託の収益の分配に係る収益計上時期を定めている。

2  本通達の(1)においては、株式会社の行う剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うもの及び分割型分割によるものを除く。以下同じ。)、持分会社若しくは特定目的会社の行う利益の配当又は相互会社の行う剰余金の分配に係る収益計上時期を明らかにしている。
 旧商法の下では、株式会社の行う利益の配当については、株主総会において利益配当議案が承認されることにより、株主の配当金支払請求権が独立の債権として成立すると解されていることから(旧商法290)、改正前の本通達の(1)において、税務上も株主総会等の決議があった日に利益の配当に係る収益を計上することとしていた。
 会社法においては、株式会社は、剰余金の配当を行う場合には、その都度、株主総会の決議によってその剰余金の配当の効力が生ずる日(以下「効力発生日」という。)を定めなければならないこととされていることから(会社法4541)、効力発生日に株主の配当金支払請求権が独立の債権として成立するものと考えられる。そこで、税務上、株式会社の行う剰余金の配当については当該配当の効力を生ずる日において、収益を計上することとなる。
 なお、持分会社にあっては、利益の配当又は剰余金の分配について効力発生日を定めることは必ずしも法令上義務づけられておらず、当該配当又は分配をする法人の社員総会又はこれに準ずるものにおいて、当該利益の配当又は剰余金の分配に関する決議のあった日に具体的な配当金支払請求権が成立すると考えられることから、当該決議のあった日がその収益計上時期となる。ただし、持分会社にあっては、利益の配当を請求する方法その他の利益の配当に関する事項を定款で定めることができることとされていることから(会社法6212)、この規定に対応して、定款で定めた日がある場合には、その日に収益を計上することとなる。
 本通達の(1)の改正により、これらのことを明らかにしている。

3  本通達の(2)においては、中間配当に係る収益計上時期を明らかにしている。
 改正前の本通達の(2)においては、旧商法第293条ノ5第1項に規定する中間配当、会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律による改正前の資産の流動化に関する法律(以下「改正前の資産流動化法」という。)第102条第1項に規定する中間配当及び特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律等の一部を改正する法律第1条の規定による改正前の特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律(以下「旧資産流動化法」という。)第102条第1項に規定する中間配当を対象として、その取扱いを明らかにしていた。
 会社法の制定に伴い、旧商法における中間配当(商法293ノ5)については、剰余金の配当に含まれることとされたこと(会社法454)、また、改正前の資産流動化法第102条第1項《中間配当》又は旧資産流動化法第102条第1項《中間配当》に規定する中間配当については、会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律による改正後の資産の流動化に関する法律第115条第1項に中間配当として規定されたことから(会社法関係整備法229条)、本通達の(2)についても、改正後の資産の流動化に関する法律第115条第1項《中間配当》に規定する金銭の分配のみが対象となることを明らかにするための所要の整備を行っている。

4 本通達の(4)は、みなし配当に係る収益計上時期を明らかにしている。
改正前の本通達の(4)では、次に掲げるみなし配当の発生事由に応じ、それぞれ次に定める日の属する事業年度の収益とすることを明らかにしていた。

(イ) 合併(適格合併を除く。)によるものについては、合併期日又は合併登記の日

(ロ) 分割型分割(適格分割型分割を除く。)によるものについては、分割期日又は分割登記の日

(ハ) 資本若しくは出資の減少、株式(出資を含む。以下同じ。)の消却、自己の株式の取得又は社員の退社若しくは脱退によるものについては、これらの事実のあった日

(ニ) 解散による残余財産の分配によるものについては、その分配の開始の日(その分配が数回に分割してされた場合には、それぞれの分配の開始の日)

5  上記4(イ)のとおり、みなし配当の発生事由が合併によるものである場合には、改正前の取扱いにおいては、合併期日又は合併登記の日のいずれかでみなし配当に係る収益を計上することとされていた。
 会社法では、会社が吸収合併する場合において、吸収合併後に存続する会社が株式会社又は持分会社であるときは、吸収合併契約において、吸収合併がその効力を生ずる日を定めなければならず(会社法7491六、7511七)、吸収合併後に存続する会社はその効力発生日に吸収合併により消滅する会社の権利義務を承継することとされているとともに(会社法7501、7522)、吸収合併により消滅する会社の株主又は社員(以下「吸収合併消滅会社の株主等」という。)に吸収合併後に存続する会社の株式が交付されるとき又は吸収合併消滅会社の株主等が吸収合併後に存続する会社の社員となるときは、当該吸収合併消滅会社の株主等は、効力発生日に、吸収合併後に存続する会社の株主又は社員になることとされている(会社法7503、7523)。
 また、二以上の会社が新設合併を行う場合において、新設合併により設立する会社が株式会社又は持分会社であるときは、当該株式会社又は持分会社は、その成立の日(設立登記の日)において新設合併により消滅する会社の権利義務を承継することとされているとともに(会社法7541、7561)、新設合併により消滅する会社の株主又は社員(以下「新設合併消滅会社の株主等」という。)に新設合併により設立する会社の株式が交付されるとき又は新設合併消滅会社の株主等が親設合併により設立する会社の社員となるときは、当該新設合併消滅会社の株主等は、新設合併により設立する会社の成立の日に、その会社の株主又は社員になることとされている(会社法7542、7562)。
 このような会社法の規定を踏まえれば、みなし配当の発生事由が合併によるものである場合のそのみなし配当に係る収益計上時期は、吸収合併にあっては、その合併の効力を生ずる日となり、新設合併の場合は、新設合併設立法人の設立登記の日となる。

(注)  会社法の制定後の所得税法の取扱いにおいても、配当所得の収入すべき時期は、吸収合併にあっては、その合併の効力を生ずる日とし、新設合併の場合は、新設合併設立法人の設立登記の日とする改正が行われているところである(所基通36-4)。

 また、みなし配当の発生事由が分割型分割によるものである場合についても、会社法の規定(会社法758七、759、760六、761、764、766)を踏まえれば、吸収分割によるものについては分割の効力を生ずる日に、新設分割の場合は新設分割設立法人の設立登記の日に、みなし配当に係る収益を計上することとなる。
 本通達の改正後の(4)イ及びロにより、このことを明らかにしている。なお、これらの日はいずれも、法人税基本通達1-2-3《解散、継続、合併又は分割の日》、1-4-1《組織再編成の日》、2-1-22《有価証券の譲渡による損益の計上時期》で定める日と当然のことながら一致することとなる。

6  平成18年度税制改正において、資本剰余金の額の減少に伴う剰余金の配当(分割型分割によるものを除く。以下「資本の払戻し」という。)がみなし配当の発生事由に追加されているが(法241三)、資本の払戻しによるみなし配当については、資本の払戻しに係る剰余金の配当がその効力を生ずる日に収益計上することとなる。本通達の改正後の(4)ハにおいてこのことを明らかにしている。

7  自己の株式の取得により生じるみなし配当の収益計上時期について改正前の本通達の(4)ハでは、「その事実があった日」としていた。
 平成18年度税制改正により、有価証券を譲渡した場合の譲渡損益の計上時期について、みなし配当が生じる場合やいずれかの法人の資本金等の額又は利益積立金額の変動が移転資産の移転時の時価を基礎として計算される場合には、双方の取引価格をなるべく一致させるため、同時点で計上することを明確化する改正が行われている。そして、有価証券の譲渡が「自己の株式又は出資の取得の対価としての交付」によるものである場合の譲渡損益の計上時期は「その取得の日」となることが明記されている(法規27の3の2十一)。
 そこで、このような法令の規定を踏まえ、本通達の改正後の(4)ホにおいて、自己の株式又は出資の取得によるみなし配当の収益計上時期は「その取得の日」となることを明らかにしている。

8  平成18年度税制改正により、組織変更に際してその組織変更をした法人の株式以外の資産を交付した場合のその組織変更がみなし配当の発生事由に追加されている(法241六)。
 会社法上、株式会社が持分会社に組織変更をする場合には、当該株式会社は、組織変更計画において、組織変更がその効力を生ずる日(以下「効力発生日」という。)を定めなければならず(会社法7441九)、組織変更をする株式会社は、効力発生日に、持分会社になることとされている(会社法7451)。また、持分会社が株式会社に組織変更する場合についても、同様の規定が置かれている(会社法7461九、7471)。
 このような会社法の規定を踏まえれば、みなし配当の発生事由が組織変更である場合のみなし配当の収益計上時期についても、その効力発生日とすることとなる。本通達の改正後の(4)トにおいて、このことを明らかにしている。

9  連結納税制度においても、同様の通達(連基通2-1-30)を定めており、同様の改正を行っている。

【改正】 (償還有価証券の範囲)

2-1-33 償還有価証券とは、その有価証券を保有する法人にとって当該有価証券の償還期限が確定しており、かつ、その償還期限における償還金額が確定しているものをいうのであるから、当該有価証券が償還有価証券に該当するか否かの判定に当たり、次に掲げるものは、それぞれ次による。

(1) 抽選償還条項が付されている債券等のように期限前償還の可能性のあるものであっても、そのような期限前償還は考慮しないところにより、償還有価証券か否かを判定する。

(2) コマーシャル・ペーパー、譲渡性預金証書並びに取得期限及び取得金額の定めのある取得条項付株式又は全部取得条項付種類株式は、償還有価証券に該当する。

(3) 2-3-42《有価証券等に組み込まれたデリバティブ取引の取扱い》に定める複合有価証券等(有価証券に限る。)であっても、同通達の組込デリバティブ取引と区分された部分(償還期限及び償還金額があるものに限り、当該組込デリバティブ取引について同通達(注)3の適用を受ける場合を除く。)は、償還有価証券に該当する。

(4) 確定した償還期限の定めのないいわゆる永久債(償還権を発行者が有し契約条項等からみて償還の実行の可能性が極めて高いもので、かつ、償還時期及び償還金額が合理的に予測可能なものを除く。)は、償還有価証券に該当しない。

(5) 償還金額が変動する株価リンク債、他社株償還条項付社債等は、償還有価証券に該当しない。

(6) 次に掲げるものは、償還有価証券に該当しないものとして取り扱うことができる。

 2-1-25《相当期間未収が継続した場合等の貸付金利子等の帰属時期の特例》に掲げる事実が生じている場合の有価証券又は発行者の経営状態・資産状態の悪化等に伴い償還金額の一部の償還が明らかに見込まれないものとなっている場合の有価証券

 その償還の全部又は一部が6月以上延滞している場合の定時償還条項付債券(債券発行後一定期間据え置いた後、一定期間ごとに一定額以上の償還を規則的に行い、償還期限に未償還残高を償還することが定められている債券をいう。)

(注)1  転換社債型新株予約権付社債(募集事項において、社債と新株予約権がそれぞれ単独で存在し得ないこと及び新株予約権が付された社債を当該新株予約権の行使時における出資の目的とすることをあらかじめ明確にしている新株予約権付社債をいう。)は原則として償還有価証券に該当しない。
ただし、いわゆる転換価額がその新株予約権の行使の対象となる株式の相場を大きく上回り、将来的にも全くその行使の可能性がないと認められる場合には、令第119条の14《償還有価証券の帳簿価額の調整》に規定する「償還期限に償還されないと見込まれる新株予約権付社債」に当たらないため、償還有価証券に該当する。

  2  上記(6)は、これらに掲げる事実がその有価証券の取得後に生じた場合における当該事実が生じた事業年度以後の当該有価証券の判定について、同様とする。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  本通達は、償還有価証券の範囲について、特殊な債券や疑問の生じやすいものの取扱いを明らかにしている。

2  平成18年改正前の法人税法施行令第119条の14《償還有価証券の帳簿価額の調整》において、転換社債は法令上、償還有価証券の範囲から除かれていた。これは、転換社債は償還日において額面金額による償還が予定されている債券ではあるが、その価額は背後にある株式の価額と連動して変動するものであることから、単純に満期までの時の経過に応じて取得価額の修正をすることになじまないものであるためである。
 そして、転換社債型新株予約権付社債(新株予約権の行使があったときに代用払込の請求があったものとみなす旨を決議した新株予約権付社債のうち、次のいずれかの事項があらかじめ社債要項等において明らかにされているものをいう。)については、新株予約権の分離譲渡ができず、社債の発行価額と新株予約権の行使に際して払い込むべき金額とを同額とした上で、新株予約権を行使するときは必ず社債が償還されて、社債の償還額が新株予約権の行使に際して払い込むべき金額に充てられることとなり、その経済的実質は転換社債と同じであることから、改正前の本通達の注書1において、転換社債に含まれるものとして償還有価証券に該当しないものと取り扱っていた。

(1) 新株予約権について消却事由を定めておらず、かつ、社債についても繰上償還を定めていないこと。

(2) 新株予約権について消却事由を定めている場合には、新株予約権が消却されたときに社債も同時に償還されること、かつ、社債について繰上償還を定めている場合には、社債が繰上償還されたときに新株予約権も同時に消却されること。

3  平成18年度税制改正により、「償還期限に償還されないと見込まれる新株予約権付社債その他これに準ずるもの」が償還有価証券の範囲から除かれている(法令119の14)。
会社法の下では、金銭以外の財産を新株予約権の行使に際してする出資の目的とすることができ(会社法2361二・三)、転換社債型新株予約権付社債は、新株予約権の行使に当たり社債を現物出資するものとして構成された。
 また、企業会計においては、会社法の下では転換社債型新株予約権付社債を「募集事項において、社債と新株予約権がそれぞれ単独で存在し得ないこと及び新株予約権が付された社債を当該新株予約権の行使時における出資の目的とすることをあらかじめ明確にしている新株予約権付社債」と定義した上で(平成17年12月27日付企業会計基準委員会実務対応報告第16号「会社法による新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理に関する実務上の取扱い」)、転換社債型新株予約権付社債は、債券の一種であるが、その性質上、満期まで保有するメリットが少なく、満期前に株式に転換することが期待されているため、基本的には満期保有目的にはなじまない(日本公認会計士協会会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」68)としている。
 このような会社法や企業会計の考え方も踏まえ、改正後の本通達の注1において、転換社債型新株予約権付社債を「募集事項において、社債と新株予約権がそれぞれ単独で存在し得ないこと及び新株予約権が付された社債を当該新株予約権の行使時における出資の目的とすることをあらかじめ明確にしている新株予約権付社債」と定義した上で、償還有価証券に該当しないものとして取り扱うことを明らかにしている。
 ただし、いわゆる転換価額がその新株予約権の行使の対象となる株式の相場を大きく上回り、将来的にも全くその行使の可能性がないと認められる場合には、法人税法施行令第119条の14《償還有価証券の帳簿価額の調整》に規定する「償還期限に償還されないと見込まれる新株予約権付社債」に当たらないため、償還有価証券に該当することとなるのは改正前と同じである。
 なお、転換社債型新株予約権付社債について、社債と新株予約権がそれぞれ単独で存在し得ないことをあらかじめ明確にしている場合とは、改正前と同様、次のいずれかの事項があらかじめ募集事項において明らかにされているものをいう。

(1) 新株予約権について取得事由を定めておらず、かつ、社債についても繰上償還を定めていないこと。

(2) 新株予約権について取得事由を定めている場合には、新株予約権が取得されたときに社債も同時に償還されること、かつ、社債について繰上償還を定めている場合には、社債が繰上償還されたときに新株予約権も同時に消滅すること。

4  また、会社法の制定により株式の種類等が整備され、例えば、旧商法の転換予約権付株式、強制転換条項付株式、償還株式及び買受株式は、会社法では取得請求権付株式の取得と対価の交付及び取得条項付株式の取得と対価の交付として構成されている。
 これらを踏まえ、今般の改正において、償還株式、他社株転換社債等について用語整理を行うなどの所要の改正を行っている。

5  連結納税制度においても、同様の通達(連基通2-1-36)を定めており、同様の改正を行っている。


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