【改正】 (組織再編成の日)

1-4-1 法人が合併、分割、現物出資事後設立又は株式交換若しくは株式移転(以下1-4-1において「組織再編成」という。)を行った場合における当該組織再編成の日は、当該組織再編成により当該法人が合併法人、分割承継法人、被現物出資法人若しくは被事後設立法人にその有する資産及び負債の移転をした日又は株式交換若しくは株式移転を行った日をいうのであるから、留意する。

(注) 合併又は分割の場合における当該移転をした日は、合併の効力を生ずる日(新設合併の場合は、新設合併設立法人の設立登記の日)又は分割の効力を生ずる日(新設分割の場合は、新設分割設立法人の設立登記の日)をいう。
 また、株式交換又は株式移転を行った日とは、株式交換の効力を生ずる日又は株式移転完全親法人の設立登記の日をいう。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  合併、分割、現物出資又は事後設立(以下「組織再編成」という。)に係る損益等は、その有する資産及び負債の移転を行った時の「時価による譲渡」と認識することとされていること等から、組織再編成の日は、その有する資産及び負債の移転をした日をもって判定することが法令上予定されているところである。
 そこで、本通達において、法人が組織再編成を行った場合における当該組織再編成の日は、当該組織再編成により当該法人が合併法人、分割承継法人、被現物出資法人又は被事後設立法人にその有する資産及び負債の移転をした日をいうことを留意的に明らかにしている。

2  平成18年度税制改正により、適格株式交換及び適格株式移転に係る税制が創設され、法人が自己を株式交換完全子法人又は株式移転完全子法人とする株式交換又は株式移転(適格株式交換及び適格株式移転を除く。以下「非適格株式交換等」という。)を行った場合には、その法人が非適格株式交換等の直前の時において有する時価評価資産の評価益又は評価損は、その非適格株式交換等の日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入することとされた(法62の9、法令123の11)。
 そこで、その時価評価損益を計上することとなる株式交換の日又は株式移転の日がいつになるかということが問題となる。
 この点、会社法上、株式交換完全親会社は、株式交換契約において定めた効力発生日に株式交換完全子会社の発行済株式の全部を取得することとされている(会社法768〜771)。また、株式移転設立完全親会社は、その成立の日に株式移転完全子会社の発行済株式の全部を取得することとされている(会社法772〜774)。
 このような会社法の規定を前提とすれば、法人税法上の株式交換又は株式移転の日とは、法人が株式交換又は株式移転を行った日をいい、具体的には、それぞれ株式交換の効力を生ずる日又は株式移転完全親法人の設立登記の日となる。本通達の本文又は(注)の後段の改正によりこのことを留意的に明らかにしている。

3  みなし事業年度が設けられている合併や分割型分割については、そのみなし事業年度の期間を捉える上で必要な合併の日又は分割型分割の日について、法人税基本通達1-2-3《解散、継続、合併又は分割の日》において明らかにしており、これらの日と本通達にいう合併又は分割の場合における資産及び負債の移転をした日は当然一致するものである。
 今般、会社法の制定を踏まえ、法人税基本通達1-2-3の改正を行っているが、これと同様の趣旨により、合併又は分割によりその有する資産及び負債の移転をした日とは、合併の効力を生ずる日(新設合併の場合は、新設合併設立法人の設立登記の日)又は分割の効力を生ずる日(新設分割の場合は、新設分割設立法人の設立登記の日)をいうこととなる。
 このことを本通達の(注)の前段の改正により明らかにしている。

4  なお、会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第36条等の規定により、旧商法の規定が適用されることとなる合併、分割、株式交換又は株式移転については、改正前の本通達の取扱いによることとしている(経過的取扱い(1))。

5  連結納税制度においても、同様の通達(連基通1-6-1)を定めており、同様の改正を行っている。

【改正】 (合併等に際し1株未満の株式の譲渡代金を被合併法人等の株主等に交付した場合の適格合併等の判定)

1-4-2 法人が行った合併が法第2条第12号の8《適格合併》に規定する適格合併に該当するかどうかを判定する場合において、被合併法人の株主等に交付された金銭が、その合併に際して交付すべき合併法人の株式(出資を含む。以下1−4−3までにおいて同じ。)に1株未満の端数が生じたためにその1株未満の株式の合計数に相当する数の株式を他に譲渡し、又は買い取った代金として交付されたものであるときは、当該株主等に対してその1株未満の株式に相当する株式を交付したこととなることに留意する。ただし、その交付された金銭が、その交付の状況その他の事由を総合的に勘案して実質的に当該株主等に対して支払う合併の対価であると認められるときは、当該合併の対価として金銭が交付されたものとして取り扱う。
 法人が行った分割、株式交換又は株式移転が法第2条第12号の11《適格分割》、第12号の16《適格株式交換》又は第12号の17《適格株式移転》に規定する適格分割、適格株式交換又は適格株式移転に該当するかどうかを判定する場合についても、同様とする。

(注) 当該1株未満の株式は、令第4条の2第3項第5号《適格合併の要件》第6項第6号《適格分割の要件》、第15項第5号《適格株式交換の要件》及び第20項第5号《適格株式移転の要件》に規定する議決権のないものに該当する。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  法人が行った合併が適格合併に該当するかどうかを判定する場合において、被合併法人の株主に交付すべき合併法人の株式に1株未満の端数が生じたため、合併法人においてその1株未満の株式の合計数に相当する数の株式を他に譲渡し、その譲渡代金を当該株主に交付したときは、当該株主に対してその1株未満の株式に相当する株式を交付したものとして取り扱うこととしている。

2  平成18年度税制改正により、従来、租税特別措置法に定められていた株式交換及び株式移転に係る税制が法人税法の組織再編税制の下に位置付けられた上で、株式交換又は株式移転が適格要件を満たす場合には子法人が有する資産の含み損益を計上しないものとされた。適格株式交換又は適格株式移転(以下「適格株式交換等」という。)とは、一定の要件に該当する株式交換又は株式移転(以下「株式交換等」という。)で、株式交換完全子法人又は株式移転完全子法人(以下「株式交換完全子法人等」という。)の株主に株式交換完全親法人又は株式移転完全親法人(以下「株式交換完全親法人等」という。)の株式以外の資産(剰余金の配当として交付される金銭等を除く。)が交付されない株式交換等をいうこととされている(法2十二の十六、十二の十七)。したがって、株式交換等に際し、株式交換完全子法人等の株主に金銭を交付した場合には、その株式交換等は適格株式交換等に該当しないこととなる。
 株式交換等に際し、その交換比率によっては株式交換完全子法人等の株主に交付する株式交換完全親法人等の株式に1株未満の端数が生じることがあるが、その1株未満の株式の交付に代えてこれに相当する金銭を交付した場合には、株式交換完全子法人等の株主に株式交換完全親法人等の株式以外の資産が交付されたものとして、適格株式交換等に該当しないこととなるのかという問題がある。
 この点、株式交換完全子法人等の株主に対し交付しなければならない株式交換完全親法人等の株式の数に1株に満たない端数があるときは、会社法第234条《一に満たない端数の処理》の規定に基づき、その端数の合計数に相当する数の株式を他に譲渡し又は自ら買取りをし、かつ、その端数に応じてその譲渡により得られた代金又は買い取った代金を当該株式交換完全子法人等の株主に交付しなければならないこととされている。すなわち、この場合の金銭交付は、1株未満の端数の合計数に相当する株式がいったん当該端数部分の所有者に共有された上で、株式交換完全親法人等がその所有者に代わってその1株未満の株式の合計数に相当する数の株式を適宜一括して譲渡し、その代金を交付するにすぎないものである。
 また、株式交換完全親法人等の側についても、このような場合の1株未満の端数の処理に伴い株式交換完全子法人等の株主に交付すべきものとして収入する金額又は当該株主に交付した金額は、当該株式交換完全親法人等の益金の額又は損金の額に算入しないこととされている(法令139の3)。
 したがって、株式交換等を行うに当たり、このような1株未満の端数に相当する金銭を株式交換完全子法人等の株主に交付した場合には、当該株主に対して株式を交付したものとして取り扱うこととなり、本通達の後段の改正により、このことを明らかにしている。

3  なお、共同で事業を営むための株式交換等として適格株式交換等に該当するかどうかの要件のうちいわゆる継続保有要件を判定する場合の株式には議決権のない株式は含まれないこととされているところ(法規3の2)、1株未満の端数の合計数に相当する株式には会社法上、議決権がないため(会社法3081)、株式交換完全子法人等の株主が1株未満の端数に相当する金銭を受け取ったとしても当該要件の判定には影響を及ぼさないのは、合併の場合と同様である(法令4の215五、20五)。本通達の(注)の改正によりこの点を明らかにしている。

4  なお、本通達の本文の取扱いは、通常の取引条件の下で株式交換等が行われる場合において、個々の株式交換完全子法人等の株主の保有株式数の差により、端数が生じた際に、それらの端数を会社が束ね、株主に代わって譲渡等をし換金したときの取扱いであるから、その交付された金銭が、その交付の状況その他の事由を総合的に勘案して実質的に当該株主等に対して支払う株式交換等の対価であると認められるときは、当該株式交換等の対価として金銭が交付されたものとして取り扱うこととなる。 
 本通達のただし書の改正により、この点を明らかにしている。

5  連結納税制度においても、同様の通達(連基通1-6-2)を定めており、同様の改正を行っている。


戻る