1-2-2 法人が会社法その他の法令の規定によりその組織又は種類の変更(以下「組織変更等」という。)をして他の組織又は種類の法人となった場合には、組織変更等前の法人の解散の登記、組織変更等後の法人の設立の登記にかかわらず、当該法人の事業年度は、その組織変更等によっては区分されず継続することに留意する。
旧有限会社(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第2条に規定する旧有限会社をいう。)が、同法第45条《株式会社への商号変更》の規定により株式会社へ商号を変更した場合についても、同様とする。
【解説】
1 本通達は、法人が法令の規定により、その組織又は種類の変更をして他の組織又は種類の法人になった場合においても、その法人の事業年度は区分されないことを明らかにしている。
会社がその組織を変更するに当たっては、登記簿上、旧会社の解散及び新会社の設立の各登記を経ることとなるが、これは登記の技術上の問題であり、会社はその前後を通じて同一人格を保有するものと解されている(最判昭46.6.29)。また、組織変更によって会社法上の事業年度が区切られることともされていない。したがって、法人税法上もその解散・設立の登記によっては、事業年度は区分されず継続することとしているのである。
2 旧商法(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律による改正前の商法をいう。以下同じ。)の下では、組織変更は、株式会社と有限会社間(旧有限会社法64、67)及び合名会社と合資会社間(旧商法113、163等)でのみ認められていたが、会社法の制定により、株式会社と持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)間の組織変更が可能になるとともに(会社法2二十六等)、従来、「組織変更」と位置づけられていた持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)間の組織の変更については、その社員の責任の態様が変動するだけであり、会社の意思決定方式や業務執行者の変更など会社の基礎を変更するものでないことから、「組織変更」ではなく、定款の変更による持分会社の「種類の変更」と位置づけることとされた(会社法638)。
会社法に基づく組織の変更にあっても、旧商法に基づく組織変更の場合と同様、組織変更前の会社については解散の登記をし、組織変更後の会社については設立の登記をしなければならないこととされているが(会社法920)、その組織変更によって会社の人格が変わるものではなく、また、そもそも会社法上、組織の変更は会社の解散事由ともされていない(会社法471、641)。また、組織変更によって会社法上の事業年度が区切られることともされていない。したがって、法人税法上もその解散・設立の登記によっては、事業年度は区分されないこととなる。
また、持分会社が他の種類の持分会社となったときは、種類の変更前の持分会社については解散の登記をし、種類の変更後の持分会社については設立の登記をしなければならないこととされているが(会社法919)、会社の種類の変更は定款の変更にすぎず、会社の同一性は継続するものであることから、組織変更の場合と同様、その解散・設立の登記により事業年度が区分されることはない。
本通達の前段の改正により、これらのことを明らかにしている。
3 旧有限会社で会社法施行日に存するものは、何ら手続をすることなく株式会社(特例有限会社)として存続することとなるが(会社法関係整備法2、3)、定款を変更してその商号中に株式会社という文字を用いる商号の変更をすることができることとされている(会社法関係整備法45)。この場合には、特例有限会社については解散の登記をし、商号変更後の株式会社については設立の登記をしなければならないこととされているが(会社法関係整備法46)、その設立・解散の登記についても、登記の技術上の問題にすぎない。したがって、法人税法上も、従来の組織変更の取扱いと同様、事業年度は区分されないこととなる。本通達の後段の改正によりこのことを明らかにしている。
4 なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通1-4-2)を定めており、同様の改正を行っている。
1−2−3 法第14条第1号、第10号及び第14号《みなし事業年度》の「解散の日」又は第20号の「継続の日」とは、株主総会その他これに準ずる総会等において解散又は継続の日を定めたときはその定めた日、解散又は継続の日を定めなかったときは解散又は継続の決議の日、解散事由の発生により解散した場合には当該事由発生の日をいう。
また、同条第2号、第11号及び第15号の「合併の日」とは、合併の効力を生ずる日(新設合併の場合は、新設合併設立法人の設立登記の日)をいい、同条第3号及び第12号の「分割型分割の日」とは、分割の効力を生ずる日(新設分割の場合は、新設分割設立法人の設立登記の日)をいう。
【解説】
1 本通達は、法人税法第14条《みなし事業年度》の適用に当たり、解散、継続、合併又は分割の日がいつであるかということについて明らかにしている。
2 法人が事業年度の中途において合併により解散した場合には、「その事業年度の開始の日から合併の日の前日までの期間」を一の事業年度とみなすこととされている(法14二)。このため、この「合併の日」が具体的にいつになるのかが問題となる。
この点、旧商法において、合併の効力は合併の登記をもって生じることとされていたが(旧商法102)、合併に伴う消滅会社の権利義務の承継日がいつになるかという点については法令上具体的には明記されていなかったところである。他方、合併の実務としては、合併期日において被合併法人のすべての資産、負債は合併法人に実体的に承継され、また、被合併法人の損益取引その他の取引も合併期日以後はすべて合併法人に吸収されるとともに、被合併法人の会計帳簿の一切はその時点で閉鎖され、以後、合併法人の会計帳簿に合算されることになるので、経済実態としては、被合併法人は合併登記を待たずして、合併期日においてその実体を失い、消滅すると考えられる。
そこで、改正前の本通達においては、法人税法上の「合併の日」とは、実質的な効力発生日である「合併契約において合併期日として定めた日」をいうものとしていた。
3 会社法においては、合併の効力発生日について、吸収合併の場合と新設合併の場合とでは異なる定めが置かれている。
すなわち、吸収合併を行う場合は、合併契約書に効力発生日を定めることとされ、吸収合併存続株式会社は、その効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を承継することとされている(会社法750)。
また、新設合併を行う場合は、その効力の発生は新設法人の成立の日(登記の日)とされるとともに、新会社はその成立の日において、新設合併消滅会社の権利義務を承継することとされている(会社法754)。
このような会社法の規定を前提とすれば、法人税法上の「合併の日」についても、会社法との整合性を図ることが相当であると考えられる。そこで、本通達の改正により、「合併の日」とは、吸収合併にあっては効力発生日とし、新設合併にあっては新設合併設立法人の設立登記の日とすることとしている。
4 法人が事業年度の中途において分割型分割を行った場合の「分割型分割の日」についても、合併の場合と同様の趣旨による改正を行っている。
会社法の下では、吸収分割の場合は吸収分割承継会社は分割契約書に定めた効力発生日に吸収分割会社の権利義務を承継することとされ(会社法759)、新設分割の場合は新設分割設立会社はその成立の日に新設分割会社の権利義務を承継することとされている(会社法764)。このため、法人税法上、分割型分割が行われた場合に、分割の日とは、吸収分割の場合は分割の効力を生ずる日とし、新設分割の場合は新設分割設立法人の設立登記の日をいうこととし、会社法との整合性を図ることとした。
本通達の改正により、これらのことを明らかにしている。
5 なお、会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第36条等の規定により、旧商法の規定が適用されることとなる合併又は分割については、改正前の本通達の取扱いによることとしている(経過的取扱い(1))。
6 ところで、会社が事業年度開始の日を合併期日として新設合併を行おうとしても、当該事業年度開始の日が休日等である場合には、合併の登記が受け付けられず、新設合併設立法人の設立登記の日が遅れることがある。このような場合には、事業年度開始の日から新設会社の登記の日の前日までのみなし事業年度が生じることから、当該みなし事業年度に係る申告書を提出する必要がある。
ただし、たまたま行政機関の休日であったため登記申請ができず、やむを得ず翌日に提出したような場合には、別途、企業実務を考慮した弾力的な取扱いも認められている(国税庁ホームページ「新設合併等の登記が遅れた場合の取扱いについて」参照)。
7 なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通1−4−3)を定めており、同様の改正を行っている。
《参考》
○ 会社法(抄)
(株式会社の成立)
第四十九条 株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。
(株式会社が存続する吸収合併の効力の発生等)
第七百五十条 吸収合併存続株式会社は、効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を承継する。
2〜6 (省略)
(株式会社を設立する新設合併の効力の発生等)
第七百五十四条 新設合併設立株式会社は、その成立の日に、新設合併消滅会社の権利義務を承継する。
2〜5 (省略)
(株式会社に権利義務を承継させる吸収分割の効力の発生等)
第七百五十九条 吸収分割承継株式会社は、効力発生日に、吸収分割契約の定めに従い、吸収分割会社の権利義務を承継する。
2〜6 (省略)
(株式会社を設立する新設分割の効力の発生等)
第七百六十四条 新設分割設立株式会社は、その成立の日に、新設分割計画の定めに従い、新設分割会社の権利義務を承継する。
2〜7 (省略)
○ 商法(抄)(平成18年5月1日前)
第五十七条【設立の登記】 会社ハ本店ノ所在地ニ於テ設立ノ登記ヲ為スニ因リテ成立ス
第百二条【合併の効力発生時期】 会社ノ合併ハ合併後存続スル会社又ハ合併ニ因リテ設立シタル会社ガ其ノ本店ノ所在地ニ於テ前条ノ登記(注:合併の登記)ヲ為スニ因リテ其ノ効力ヲ生ズ
第四百十六条【解散及び合併に関する準用規定】 第九十六条、第九十七条、第九十八条第二項、第百二条及第百三条ノ規定ハ株式会社ニ之ヲ準用ス
2〜5 省略
第三百七十四条ノ九【新設分割の効力発生時期】 会社ノ分割ハ之ニ因リテ設立シタル会社ガ其ノ本店ノ所在地ニ於テ前条第一項ノ登記ヲ為スニ因リテ其ノ効力ヲ生ズ
第三百七十四条ノ二十五【吸収分割の効力発生時期】 会社ノ分割ハ之ニ因リテ営業ヲ承継シタル会社ガ其ノ本店ノ所在地ニ於テ前条第一項ノ登記ヲ為スニ因リテ其ノ効力ヲ生ズ
1−2−7 株式会社が解散等(会社法第475条各号《清算の開始原因》に掲げる場合をいう。)をした場合における清算中の事業年度は、当該株式会社が定款で定めた事業年度にかかわらず、同法第494条第1項《貸借対照表等の作成及び保存》に規定する清算事務年度になるのであるから留意する。
【解説】
1 本通達は、株式会社が解散した場合の事業年度について留意的に明らかにしている。
旧商法下では、清算中の株式会社の計算期間について特段の規定は設けられていなかったが、会社法においては、清算中の株式会社は、各清算事務年度に係る貸借対照表及び事務報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならないこととされた(会社法494)。この「清算事務年度」とは、株式会社が解散等をした場合において、その解散等をした日の翌日又はその後毎年その日に応当する日から始まる各1年の期間をいうこととされている(会社法494)。
ところで、法人が事業年度の中途において解散(合併による解散を除く。)をした場合、その事業年度開始の日から解散の日までの期間及び解散の日の翌日からその事業年度終了の日までの期間をそれぞれ一の事業年度とみなすこととされているが(法14一)、ここでいう「事業年度終了の日」の「事業年度」とは、会社が定款で定めた事業年度をいうのか、会社法で定める清算事務年度をいうのか、疑問をもつ向きもあるようである。
2 この点、会社法の規定を踏まえ、平成18年度の税制改正により、法人税法上の事業年度の定義が「営業年度その他これに準ずる期間で、法令で定めるもの又は法人の定款、寄附行為、規則若しくは規約に定めるもの」から「法人の財産及び損益の計算の単位となる期間で、法令で定めるもの又は法人の定款、寄附行為、規則若しくは規約に定めるもの」に改められていることから(法13)、清算中の会社にあっては、「清算事務年度」が法人税法第13条に定める「法人の財産及び損益の計算の単位となる期間で、法令で定めるもの」に該当することとなる。
したがって、法人が事業年度の中途において解散(合併による解散を除く。)をした場合には、まず、法人が定款等で定めた事業年度開始の日から解散の日までの期間についてみなし事業年度が生じ、次に、解散の日の翌日から会社法上の清算事務年度終了の日までの期間についてみなし事業年度が生じることとなる。
例えば、3月決算の法人が平成19年12月31日に解散し、清算株式会社となった場合には、その法人の事業年度は次のとおりとなる。
平成19年4月1日〜同年12月31日:事業年度開始の日から解散の日まで(法14一前段)
平成20年1月1日〜同年12月31日:解散の日の翌日からその事業年度(=清算事務年度:法13)終了の日まで(法14一後段)
本通達においては、これらのことを留意的に明らかにしている。
なお、破産手続開始の決定による解散の場合や持分会社が解散した場合にあっては、清算事務年度は定められていないことから、平成18年度税制改正前と同様に、会社が定款等に定めた事業年度を法人税法上の事業年度として、法人税法第13条及び第14条の規定が適用されることとなる。
《参考》
○ 会社法(抄)
(清算の開始原因)
第四百七十五条 株式会社は、次に掲げる場合には、この章の定めるところにより、清算をしなければならない。
一 解散した場合(第四百七十一条第四号に掲げる事由によって解散した場合及び破産手続開始の決定により解散した場合であって当該破産手続が終了していない場合を除く。)
二 設立の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合
三 株式移転の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合
(貸借対照表等の作成及び保存)
第四百九十四条 清算株式会社は、法務省令で定めるところにより、各清算事務年度(第四百七十五条各号に掲げる場合に該当することとなった日の翌日又はその後毎年その日に応当する日(応当する日がない場合にあっては、その前日)から始まる各一年の期間をいう。)に係る貸借対照表及び事務報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。
2・3 省略