第2 租税特別措置法関係通達(法人税編)関係

【新設】 (他の者から支払を受ける金額の範囲)

42の12−1 措置法第42条の12第1項又は第2項の規定の適用上、同条第3項第2号に規定する教育訓練費(以下「教育訓練費」という。)の額から控除する「他の者(当該法人との間に連結完全支配関係がある他の連結法人を含む。)から支払を受ける金額」には、次に掲げる金額が含まれる。

(1) 国等からその教育訓練費に充てるために交付を受けた補助金

(2) 販売業者等である法人がその使用人の教育訓練費に充てるために当該法人の取扱商品の製造業者等から交付を受けた金銭の額

【解説】

1 本制度は、当該事業年度の教育訓練費の額が比較教育訓練費の額を超える場合に、1一般の企業については、その超える部分の金額に25%を乗じて計算した金額を、2中小企業者等については、1の適用を受けることに代えて、当該事業年度の教育訓練費の額の総額に教育訓練費増加割合に応じた一定の割合を乗じて計算した金額を、それぞれ当該事業年度の法人税額(その10%相当額が限度とされる。)から控除することができるというものである(措法42の1212)。
 本制度の適用対象となる教育訓練費の額は、各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される金額に限られるのであるが、その教育訓練費に充てるため他の者から支払を受ける金額がある場合には、当該金額を控除した金額とされている(措法42の121)。

2 本通達においては、適用対象となる教育訓練費の額に含めないこととされる「他の者から支払を受ける金額」の範囲について、例示により明らかにしている。
 すなわち、厚生労働省の「キャリア形成促進助成金」などで、教育訓練費に充てるために国等から交付を受けた補助金のほか、販売店がその使用人に対して販売促進等の目的で実施した教育訓練等に要した費用に充てるため、その取扱商品に係るメーカー等から交付を受けた金銭の額などがこれに含まれる。
 なお、関連会社等と共同で教育訓練等を実施した場合には、その教育訓練等に要した費用の総額を合理的な基準によってあん分する方法で計算した自社負担分の金額だけが本制度の適用対象である教育訓練費の額となる(措通42の12−2の(注)参照)。
 したがって、関連会社等と共同で教育訓練等を実施した場合において、その教育訓練等に要した費用の総額を一旦立替払いし、その費用の総額を合理的な基準によってあん分する方法で計算した関連会社等の負担分の金額を受け取ったときは、この受け取った金額は立替金の清算金に過ぎず、自社の使用人の教育訓練費に充てるために支払を受けたものではないことから、「他の者から支払を受ける金額」には該当しない。
 ただし、合理的な基準によってあん分する方法で計算した関連会社等の負担分の金額を超える金額の支払を受けたときは、その超える部分の金額は関連会社等から贈与されたものであり、「他の者から支払を受けた金額」に該当することになる。

3 連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の15の2《教育訓練費の額が増加した場合の法人税額の特別控除》についても、同様の通達(措通68の15の2−1)を定めている。

【新設】 (教育訓練費の範囲)

42の12−2 教育訓練費は、法人が自己の使用人に対して行う教育訓練等(措置法令第27条の12第3項第1号に規定する教育訓練等をいう。以下同じ。)の費用に限られるのであるが、一の教育訓練等に自己の工場又は店舗等内で当該法人の事業に従事する専属下請先等の従業員で自己の使用人と同等の事情にある者が含まれている場合であって、その者の数が極めて少数であるときには、その一の教育訓練等の費用の全額を当該法人の教育訓練費の額とすることができるものとする。

(注)  一の教育訓練等に自己の使用人とそれ以外の者が含まれている場合には、当該法人の教育訓練費の額は、本文の取扱いを適用する場合を除き、当該教育訓練等の費用の額を自己の使用人の受講者数とそれ以外の受講者数との比等の合理的な基準によってあん分する方法で計算した金額になることに留意する。

【解説】

1

(1) 本制度の適用対象となる教育訓練費とは、法人がその使用人の職務に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させるために支出する費用とされており(措法42の123二)、原則として、自社と雇用関係のある使用人(自社の役員と特殊の関係のある者及び自社の使用人としての職務を有する役員を除く。)に対して実施する教育訓練等に要した費用に限られる。
 したがって、一の教育訓練等の対象者の中に自社の使用人以外の者が一人でも含まれている場合には、本制度の適用対象となる教育訓練費は、その教育訓練等に要した費用の総額ではなく、その総額のうち自社の使用人以外の者の部分を除いた金額を厳密に計算すべきという考え方もある。

(2) この点、一の教育訓練等の対象者の中に自社の工場又は店舗等内で自社の事業に従事する専属下請先等の従業員が含まれる場合であっても、その者が自社の使用人と同等の事情にあるものであって、その数が極めて少数であるときは、その教育訓練等を実施した効果は自社の事業に対して反映されるものと考えられる。
 このことから、このようなときの教育訓練等に要した費用の全額を本制度の適用対象となる教育訓練費に含めたとしても、教育訓練費の額を増加させた企業の奨励を目的とした本制度の趣旨に反することにはならず、当該法人の教育訓練費の額とすることができるものとして取り扱うこととしたものである。このことを本通達の本文において明らかにしている。
 なお、この「極めて少数」であるかどうかの判断については、教育訓練等の対象者全体に占める専属下請先等の従業員の割合によって判断するのではないかと考える向きもあろうが、その教育訓練等の規模にかかわらず一律に「受講者全体の何%以下」であれば「極めて少数」として取り扱うこととすると、その教育訓練等の規模が小さいことをもって、一人の対象者も含めることができないこととなり、適当ではないと考えられる。したがって、その教育訓練等の規模によっては、その専属下請先等の従業員が数名程度であっても「極めて少数」として取り扱って差し支えないものと考えられる。

(3) また、本通達の(注)において、関連会社等と共同で教育訓練等を実施した場合のように、一の教育訓練等に自社の使用人とそれ以外の者が含まれている場合の原則的な取扱いを留意的に明らかにしている。
 すなわち、上記(2)の取扱いを適用する場合を除き、当該法人の教育訓練費は、その教育訓練等に要した費用の総額を自社が負担すべき金額と関連会社等が負担すべき金額とに合理的な基準によってあん分する方法で計算した金額となる。この場合の「合理的な基準」とは、例えば、それぞれの受講者数の比や、これに間接経費等の額を勘案した比などが考えられる。

2

(1) 次に、自社の使用人に対して実施する教育訓練等に要した費用が本制度の対象となることは上記1のとおりであり、この場合の「使用人」とは、通常、正社員、契約社員、パート・アルバイト(以下「正社員等」という。)といった自己と雇用関係のある者をいうものと考えられる。
 したがって、自己と雇用関係のない派遣社員や請負労働者については、一義的には派遣先や注文主の使用人に該当しないことになるのであるから、派遣社員や請負労働者のように雇用関係のない者については、すべからく本制度の適用対象となる「使用人」に当たらないものとして厳密に取り扱うべきという考えもある。

(2) この点、これらの者のうち派遣社員(派遣労働者)の派遣先は、いわゆる労働者派遣法の適用を受け、労働者の危険・健康障害防止措置、労働時間の遵守等の責務を負い、派遣社員との間において指揮命令関係を有するものであることから、派遣社員は正社員等たる使用人と同等の立場にあるという側面も有している。さらに、個々の派遣社員の職務や教育訓練等の実態によっては、当該個々の派遣社員を本制度の適用における「使用人」に該当するものとして取り扱い得る場合も考えられる。
  そこで、この派遣先の企業と指揮命令関係にある派遣社員が、1当該企業に使用される正社員等と同一の職務に従事しており、2当該同一の職務に係る一の教育訓練等(当該正社員等を主体としたものに限る。)に参加している場合には、本制度の適用上、その企業の職務に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させるための支出を増加させるという趣旨に鑑み、当該派遣社員に係る教育訓練費の額を派遣先の企業の教育訓練費の額に含めても差し支えないものと考える。

(3) なお、当該派遣社員に係る教育訓練費の額を適用年度の教育訓練費の額に含めた場合には、当該適用年度に係る比較教育訓練費の額の算定に当たっても、当然のことながら、該当する派遣社員に係る教育訓練費の額を含めて計算することになる。
  他方、請負労働者については、注文主との間で派遣社員のような指揮命令関係がないことから、上記(2)のような取扱いはなく、本通達の本文の取扱いに従い、その者の数が極めて少数である場合に限り、本制度の適用対象となる。

3 連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の15の2《教育訓練費の額が増加した場合の法人税額の特別控除》についても、同様の通達(措通68の15の2−2)を定めている。


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