【改正】 (事業税の損金算入の時期の特例)

9−5−2 当該事業年度の直前の事業年度(その事業年度が連結事業年度に該当する場合には、当該連結事業年度。以下9−5−2において「直前年度」という。)分の事業税の額(9−5−1により直前年度の損金の額に算入される部分の金額を除く。以下9−5−2において同じ。)については、9−5−1にかかわらず、当該事業年度終了の日までにその全部又は一部につき申告、更正又は決定(以下9−5−2において「申告等」という。)がされていない場合であっても、当該事業年度の損金の額に算入することができるものとする。この場合において、当該事業年度の法人税について更正又は決定をするときは、当該損金の額に算入する事業税の額は、直前年度の所得(直前年度が連結事業年度に該当する場合には、当該連結事業年度の個別所得金額)又は収入金額に標準税率を乗じて計算するものとし、その後当該事業税につき申告等があったことにより、その損金の額に算入した事業税の額につき過不足額が生じたときは、その過不足額は、当該申告等又は納付のあった日の属する事業年度(その事業年度が連結事業年度に該当する場合には、当該連結事業年度)の益金の額又は損金の額に算入する。

(注)

1 個別所得金額とは、法第81条の18第1項《連結法人税の個別帰属額の計算》に規定する個別所得金額をいう。

2 標準税率は、次に掲げる法人の区分に応じ、それぞれ次による。

(1) 地方税法第72条の2第1項第1号イ《事業税の納税義務者等》に掲げる法人 同法第72条の24の7第1項第1号イ《事業税の標準税率等》の標準税率に同号ハに係る標準税率を加算して得た税率又は同条第4項第1号イの標準税率に同号ハに係る標準税率を加算して得た税率による。

(2) (1)に掲げる法人以外の法人 地方税法第72条の24の7に係る標準税率(同条第1項第1号又は第4項第1号に係る標準税率を除く。)による。

3 直前年度分の事業税の額の損金算入だけを内容とする更正は、原則としてこれを行わないものとする。

【解説】

1 資本の金額又は出資金額が1億円を超える法人(従来の所得課税法人に限られ、公益法人等、特別法人、人格のない社団等及び投資法人等が除かれる。)の平成16年4年1日以後に開始する事業年度から、事業税における外形標準課税制度が導入されている。これは、事業税として、従来の所得に対する課税に代えて、付加価値割、資本割及び所得割の合計額を課するというものである。
 付加価値割、資本割及び所得割の計算の概要は次のとおりである。

付加価値額の算式

・報酬給与額……報酬、給料、賃金、賞与、退職手当等及び確定給付企業年金の掛金等の合計額

・純支払利子……支払利子の額から受取利子の額を控除した額

・純支払賃借料…土地・家屋に係る支払賃借料から受取賃借料を控除した額

・単年度損益……繰越欠損金控除前の法人事業税の所得金額

資本等の金額の算式

(3) 所得割=各事業年度の所得×所得の金額の区分に応ずる標準税率によって定めた率

2 ところで、外形標準課税制度導入前の事業税は、その課税標準である各事業年度の所得は、原則として、各事業年度の法人税の課税標準である所得の計算の例によって算定されるものであるため、法人税の更正、決定等に連動してその課税が修正されるという事情があった。
そこで、法人税についていわゆる2期以上の連年同時更正を行う場合にはその担税力等を考慮して、たとえ翌事業年度末までに事業税の全部又は一部につき申告、更正又は決定がされていない場合であっても、その納付すべき税額を見積り、これを翌事業年度の損金の額に算入することができるという事業税の損金算入時期の特例が本通達において定められていたところである。

3 外形標準課税制度の導入後、いわゆる2期以上の連年同時更正が今後起こり得る平成17年度の本通達の改正に当たっては、法人税の所得金額に直接リンクする所得割に相当する分については従来どおりと考えて、法人税基本通達9−5−1《租税の損金算入の時期》の取扱いにかかわらず、本通達の取扱いを認めることを明らかにしている。
  さらに、付加価値割に相当する分についても、課税標準となる付加価値額の構成要素としての単年度損益部分が法人税法上の所得金額の変動に連動する性質を有しており、所得割と同様に取り扱う要素が包含されているが、一方で、付加価値割の課税標準である付加価値額は単年度損益だけで構成されるものではなく、収益配分額(報酬給与額、純支払利子、純支払賃借料)をも合計したものであり、収益配分額の増減の状況によっては、法人税の所得金額が増加したからといって必ずしも付加価値額が増加するとは限らないと考えられる。
  この収益分配額の構成要素である報酬給与額、純支払利子、純支払賃借料については、特に、その算出方法が地方税法及び地方税法施行令並びに地方税法の施行に関する取扱について(道府県税関係)(昭和29年5月13日自乙府発第109号各都道府県知事宛自治庁次長通達)などに事業税独自の見地から詳細に定められており、課税当局がこれらの額を精緻に算出することは困難性を伴うものである。他方、付加価値額のうちの単年度損益は、繰越欠損金控除前の税法上の所得金額をいうこととされていることから、法人税法上の所得金額のみにより把握することが可能ではある。

4 このような外形標準課税制度の特質を踏まえ、執行上の便宜と納税者の担税力への配慮とのバランスを勘案し、一つの割り切りとして、付加価値額のうち単年度損益の部分だけに着目し、課税当局が更正又は決定をする場合の事業税の損金算入額は、前事業年度の所得金額に「付加価値割の標準税率と所得割の標準税率とを加算して得た税率」を乗じて計算することにとどめることとしたものである。
 なお、税務調査等において収益配分額に影響を及ぼす是否認があったとしても、課税当局において、これに係る付加価値割に相当する額をも計算して損金算入することはしない。また、資本割も考慮することはない。
  本通達の(注)2では、このことを明らかにしている。

5 連結納税制度においても、同様の通達(連基通8−5−2)を定めており、同様の改正を行っている。


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