【新設】 (時価)

4−1−3 法人の有する資産について法第25条第3項《資産評定による評価益の益金算入》の規定を適用する場合における令第24条の2第5項第1号《再生計画認可の決定等の事実が生じた場合の評価益の額》に規定する「これらの事実が生じた時の価額」は、当該資産が使用収益されるものとしてその時において譲渡される場合に通常付される価額による。

【解説】

1 本通達において、法人について民事再生法の規定による再生計画認可の決定又は商法の規定による整理計画の決定といった事実が生じた場合に、その有する資産について評価益の額の計算をするときのこれらの事実が生じた時の価額については、その資産が使用収益されるものとしてこれらの事実が生じた時において譲渡される場合に通常付される価額によることを明らかにしている。

2 平成17年度税制改正において、法人について、1民事再生法の規定による再生計画認可の決定があったこと及び商法の規定による整理計画の決定があったこと、2これらに準ずる一定の事実が生じた場合において、その法人がその有する資産の価額につき一定の評定を行っているときは、その資産(売買目的有価証券等一定のものを除く。)の評価益の額は、これらの事実が生じた日の属する事業年度の益金の額に算入することとされている(法253)。
 このうち上記1の事実が生じた場合の益金の額に算入される評価益の額は、資産のこれらの事実が生じた時の価額と当該事実が生じた時の直前のその帳簿価額との差額とされている(法令24の25一)。
 ところで、民事再生法の規定による再生計画認可の決定があった場合における資産の価額については、民事再生法において、再生手続開始の決定時に一切の財産について財産評定をすることとされており(民事再生法第124条)、この場合の財産評定は分配可能額の下限を算出して再生債権者等の利害調整をするため処分価額によることとされている(民事再生規則第56条)。これに対して、法人税法第25条第3項の規定を適用する場合に当たっても、この処分価額による財産評定を許容しうるかという問題については、利用可能な資産まで一律に処分価額を付するということは、税制の適正性を担保するという観点からすると適当ではない。
  したがって、このような事実が生じた場合のその計算の基礎となる資産の価額は、原則として、その事実が生じた時における資産がそのままの状態において買手方においても使用収益されるものと仮定した場合の通常の譲渡価額をいうのであるから、いわゆるスクラップ等としての処分価額ではなく、また、いわゆる正味実現可能価額(譲渡可能価額から譲渡経費の見積額を控除した金額)や再調達原価を意味するものではないことに留意する必要がある。
  なお、民事再生法の再生計画において処分が決められている資産で、その処分の蓋然性が高いものである場合(処分の相手方との個別の処分予定価額が決まっている等の場合)には、上記にかかわらず、その個別の処分予定価額を時価とすることの方が妥当であると考えられる。

3 この取扱いは、平成17年改正前の法人税法第33条第2項《資産の評価損の損金算入》の規定により評価損を計算する場合の期末の時価について使用収益価額によることとされており(法基通9−1−3)、再生計画認可等の事実が生じた場合に評価益の額を計算するときの資産の価額についても同様に取り扱うこととしたものである。

4 上記2の2の事実として上記2の1の事実に準ずる事実が生じたこと(その債務処理に関する計画が次に掲げる要件に該当するものに限る。)がある。

イ 一般に公表された債務処理を行うための手続についての準則に従って策定されていること

ロ 債務者の有する資産及び負債につき、準則に定められた資産及び負債の価額の評定に関する事項に従って資産評定が行われ、その資産評定による価額を基礎とした債務者の貸借対照表が作成されていること

ハ ロの貸借対照表における資産及び負債の価額、その債務処理に関する計画における損益の見込み等に基づいて債務者に対する債務免除額が定められていること

ニ 2以上の金融機関等が債務の免除をすることが定められていること、又は政府関係金融機関若しくは協定銀行が有する債権等につき債務の免除をすることが定められていること

(注) イの準則は、公正かつ適正なものと認められるものであって、債務者の有する資産及び負債の価額の評定に関する事項など一定の事項が定められているものに限られるとともに、特定の者(政府関係金融機関及び協定銀行を除く。)が専ら利用するためのものは除かれる。

 この事実が生じた場合における資産の価額については、一般に公表された債務処理を行うための準則に定められた公正な価額による資産評定によって貸借対照表に計上されている価額によることとなるが、これについては、次のような文書回答が出されている。

1 平成17年5月11日付文書回答「私的整理に関するガイドライン及び同Q&Aに基づき策定された再建計画により債権放棄等が行われた場合の債務者側の税務上の取扱いについて」

2 平成17年6月30日付文書回答「『中小企業再生支援協議会の支援による再生計画の策定手順(再生計画検討委員会が再生計画案の調査・報告を行う場合)』に従って策定された再生計画により債権放棄等が行われた場合の税務上の取扱いについて」

3 平成17年8月26日付文書回答「『RCC企業再生スキーム』に基づき策定された再生計画により債権放棄等が行われた場合の債務者側の税務上の取扱いについて」

5 なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通4−1−3)を定めている。

【新設】(再生計画認可の決定等の事実が生じた場合の資本等の金額)

4−1−9 法人が法第25条第3項《資産評定による評価益の益金算入》に規定する評定を行っている資産の評価益の額を益金の額に算入するかどうかを判定する場合における令第24条の2第4項第4号《評価益計上資産から除かれる資産の範囲》に規定する「資本等の金額」は、法第25条第3項に規定する再生計画認可の決定があったことその他これに準ずる事実が生じた時の直前の資本等の金額となることに留意する。

【解説】

1 平成17年度税制改正により、法人について次に掲げる事実が生じた場合において、その有する資産について評価益の額の益金算入の規定(法253)の適用を受けるときには、その資産を一定の単位に区分した後のそれぞれの資産の時価とその帳簿価額との差額がその資産を有する法人の資本等の金額の2分の1に相当する金額と1,000万円とのいずれか少ない金額に満たない場合のその資産にはこの規定の適用がないこととされている。

1 民事再生法の規定による再生計画認可の決定

2 商法の規定による整理計画の決定

31及び2に準ずる事実

2 本通達においては、資産の評価益に相当する差額がその法人の資本等の金額の2分の1に相当する金額と1,000万円とのいずれか少ない金額に満たないかどうかを判定する場合に、当該資本等の金額は、再生計画認可の決定等の事実が生じた時の直前の資本等の金額によることを明らかにしている。
  これは、上記1から3までの事実が生じた場合の評価益の額は、これらの事実が生じた日の直前の帳簿価額を基準として算出されることから、益金の額に算入される評価益の額を計算するかどうかの判定の基礎となる資本等の金額もそれらの事実が生じた時の直前の資本等の金額を基礎とするものである。

3 一方、上記1から3までの事実が生じた場合における資産の評価損の損金算入の規定(法333)の適用を受ける場合にも、その資産を一定の単位に区分した後のそれぞれの資産の時価とその帳簿価額との差額がその資産を有する法人の資本等の金額の2分の1に相当する金額と1,000万円とのいずれか少ない金額に満たない場合のその資産にはこの規定の適用がないこととされているが、この場合の資本等の金額についても同様の考え方となる。

4 なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通4−1−9)を定めている。


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