第1 法人税基本通達関係

【新設】 (適格合併等直前既修正額の計算)

1−6−5 令第9条の2第3項第1号に掲げる場合に該当する場合において、同号の適格合併に係る同号イに規定する適格合併等直前既修正額に相当する部分の金額は、同号イの被合併法人が同号の適格合併の前に同条第2項の規定の適用を受けた金額(以下1−6−5において「被合併法人既修正額」という。)によるのであるから、例えば、当該被合併法人既修正額が、当該適格合併により他の連結法人(同号に規定する他の連結法人をいう。)に引き継がれた利益積立金額(連結個別利益積立金額を含む。)を超える場合であっても、当該適格合併等直前既修正額に相当する部分の金額は当該被合併法人既修正額となることに留意する。
  同号の適格分割型分割に係る同号イに規定する適格合併等直前既修正額に相当する金額についても、同様とする。

【解説】

1 本通達において、連結法人が、いわゆる「投資簿価修正」を行う場合に、投資簿価修正の対象となる株式の発行法人(連結子法人)が適格合併を行っていたときに留意すべき事項を明らかしている。
 投資簿価修正とは、連結法人が連結子法人の株式について譲渡等を行う場合、この株式の譲渡損益等に対する課税と連結子法人の稼得した利益に対する課税との二重課税を防止する等の観点から、譲渡等の処理の前に、連結子法人株式の帳簿価額に連結子法人の連結納税期間中の連結個別利益積立金額の増加額又は減少額に相当する金額(以下「帳簿価額修正額」という。)を加算又は減算するとともに、自己の連結個別利益積立金額に帳簿価額修正額に相当する金額の調整を行う制度である(法2十八ヘ、法2十八の二チ、令9の21、令119の34、119の41)。
 ただし、過去に当該連結子法人の株式について譲渡等が行われ、既に投資簿価修正が行われていた場合、帳簿価額修正額から既に行われた投資簿価修正の額(以下「既修正額」という。)は除かれることとされている(令9の22)。

2 平成17年度の税制改正において、投資簿価修正を行う場合の連結法人の既修正額の計算方法が明確化された。すなわち、連結法人が連結子法人の株式を譲渡等することによって投資簿価修正を行う場合において、この譲渡等の前に投資簿価修正の対象となる株式の発行法人(連結子法人)を合併法人とする適格合併が行われ、被合併法人から合併法人である連結子法人に利益積立金額(連結個別利益積立金額を含む。以下同じ。)の引継ぎが行われており、かつ、被合併法人が投資簿価修正を行っていたときは、引継ぎを受けた利益積立金額で被合併法人が行っていた投資簿価修正の額(以下「適格合併等直前既修正額」という。)を連結法人の既修正額に加算又は減算することとすることが明確にされた。
 この加算又は減算した後の金額(以下「既修正等額」という。)を帳簿価額修正額から除くこととすることによって、帳簿価額修正額の計算の適正化が図られている。

3  上記のように、投資簿価修正の対象となる株式の発行法人(連結子法人)を合併法人とする適格合併が行われ、利益積立金額の引継ぎが行われた場合、例えば、次表のケースBのように、被合併法人が行っていた投資簿価修正の額(以下「被合併法人既修正額」という。)(正)が被合併法人から合併法人に引き継がれた利益積立金額(正)を超えるときは、連結法人の既修正額に加算する金額である「適格合併等直前既修正額」は、引き継がれた利益積立金額を上限とするのではないか。すなわち、被合併法人から合併法人に利益積立金額が引き継がれたことよって、このような加算を行うのであるから、被合併法人既修正額のうちの引き継がれた利益積立金額を超える金額は連結法人の既修正額に加算しないのではないかという疑義が生ずる。
  この点、適格合併等直前既修正額は被合併法人既修正額が引継ぎを受けた利益積立金額を超えるか否かにかかわらず、被合併法人既修正額の全額が連結法人の既修正額に加算される(既修正等額に含まれる。)ことになる。
  したがって、被合併法人既修正額と引継ぎを受けた利益積立金額との大小関係が次のいずれの場合であっても連結法人の既修正等額に含める金額である「適格合併等直前既修正額」は被合併法人既修正額となる。
  以上のことを本通達前段において明らかにしている。

  被合併法人既修正額 合併法人が引継ぎを受けた利益積立金額 適格合併等直前既修正額(連結法人(合併法人)の既修正等額に含める金額)
ケースA 100 150 100
ケースB 100 30 100
ケースC 100 △150 100
ケースD △100 150 △100
ケースE △100 △ 30 △100
ケースF △100 △150 △100

4 投資簿価修正の対象となる株式の発行法人(連結子法人)を分割承継法人とする適格分割型分割が行われていた場合も同様に既修正等額の計算を行うことを本通達後段において明らかにしている。

5 なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通1−8−6)を定めている。

【新設】 (最終利益積立金額の計算)

1−6−6 令第9条の2第3項第1号に掲げる場合に該当する場合において、同号の適格合併に係る同号ロに規定する最終利益積立金額に相当する部分の金額は、同号ロの被合併法人の最終利益積立金額(以下1−6−6において「被合併法人最終利益積立金額」という。)によるのであるから、例えば、当該被合併法人最終利益積立金額が、当該適格合併により他の連結法人(同号に規定する他の連結法人をいう。)に引き継がれた利益積立金額(連結個別利益積立金額を含む。)を超える場合であっても、当該最終利益積立金額に相当する部分の金額は当該被合併法人最終利益積立金額となることに留意する。
  同号の適格分割型分割に係る同号ロに規定する最終利益積立金額に相当する金額についても、同様とする。

【解説】

1 本通達において、連結法人が、いわゆる「投資簿価修正」を行う場合に、投資簿価修正の対象となる株式の発行法人(連結子法人)が適格合併を行っていたときに留意すべき事項を明らかしている。
 投資簿価修正とは、連結法人が連結子法人の株式について譲渡等を行う場合、この株式の譲渡損益等に対する課税と連結子法人の稼得した利益に対する課税との二重課税を防止する等の観点から、譲渡等の処理の前に、連結子法人株式の帳簿価額に連結子法人の連結納税期間中の連結個別利益積立金額の増加額又は減少額に相当する金額(以下「帳簿価額修正額」という。)を加算又は減算するとともに、自己の連結個別利益積立金額に帳簿価額修正額に相当する金額の調整を行う制度である(法2十八ヘ、法2十八の二チ、令9の21、令119の34、119の41)。
 ただし、過去に当該連結子法人の株式について譲渡等が行われ、既に投資簿価修正が行われていた場合、帳簿価額修正額から既に行われた投資簿価修正の額(以下「既修正額」という。)は除かれることとされている(令9の22)。

2 平成17年度の税制改正において、投資簿価修正を行う場合の連結法人の既修正額の計算方法が明確化された。すなわち、連結法人が連結子法人の株式を譲渡等することによって投資簿価修正を行う場合において、この譲渡等の前に投資簿価修正の対象となる株式の発行法人(連結子法人)を合併法人とする適格合併が行われ、被合併法人から合併法人である連結子法人に利益積立金額(連結個別利益積立金額を含む。以下同じ。)の引継ぎが行われた場合は、引継ぎを受けた利益積立金額で被合併法人の連結納税期間前の利益積立金額(以下「最終利益積立金額」という。)を連結法人の既修正額に加算又は減算することとする改正が行われた。
  この加算又は減算した後の金額(以下「既修正等額」という。)を帳簿価額修正額から除くこととすることによって、帳簿価額修正額の計算の適正化が図られた。

3 上記のように、投資簿価修正の対象となる株式の発行法人(連結子法人)を合併法人とする適格合併が行われ、利益積立金額の引継ぎが行われた場合、例えば、次表のケースBのように、被合併法人の連結期間前の利益積立金額(以下「被合併法人最終利益積立金額)という。)(正)が被合併法人から合併法人に引き継がれた利益積立金額(正)を超えるときは、連結法人の既修正額に加算する金額である「最終利益積立金額」は、引き継がれた利益積立金額を上限とするのではないか。
 つまり、被合併法人から合併法人に利益積立金額が引き継がれたことによって、このような加算を行うのであるから、被合併法人最終利益積立金額のうちの引き継がれた利益積立金額を超える金額は連結法人の既修正額に加算しないのではないかという疑義が生ずる。
 この点、既修正額に加算することとなる最終利益積立金額は被合併法人最終利益積立金額が引継ぎを受けた利益積立金額を超えるか否かにかかわらず、被合併法人最終利益積立金額の全額が連結法人の既修正額に加算される(既修正等額に含まれる。)ことになる。
  したがって、被合併法人最終利益積立金額と引継ぎを受けた利益積立金額との大小関係が次のいずれの場合であっても連結法人の既修正等額に含める金額である「最終利益積立金額」は被合併法人最終利益積立金額となる。
  以上のことを本通達前段において明らかにしている。

  被合併法人最終利益積立金額 合併法人が引継ぎを受けた利益積立金額 最終利益積立金額(連結法人(合併法人)の既修正等額に含める金額)
ケースA 100 150 100
ケースB 100 30 100
ケースC 100 △150 100
ケースD △100 150 △100
ケースE △100 △ 30 △100
ケースF △100 △150 △100

4 投資簿価修正の対象となる株式の発行法人(連結子法人)を分割承継法人とする適格分割型分割が行われていた場合も同様に既修正等額の計算を行うことを本通達後段において明らかにしている。

5 なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通1−8−6)を定めている。


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