第1 法人税基本通達関係

【改正】(国内業務を廃止した場合の事業税の特例)

20−3−8 外国法人が国内業務の全部を廃止した場合には、その廃止をした日の属する事業年度(以下20−3−8において「国内業務廃止年度」という。)に課される事業税の額については、9−5−1及び9−5−2《租税の損金算入の時期等》にかかわらず、当該国内業務廃止年度の損金の額に算入することができる。この場合において、その損金の額に算入する事業税の額(以下20−3−8において「事業税の課税見込額」という。)は、次に掲げる区分に応じ、次の金額とする。

(1) 地方税法第72条の2第1項第1号ロに規定する法人次の算式により計算した金額

(算式)

事業税の課税見込額の算式

(2) 地方税法第72条の2第1項第1号イに規定する法人

イ 当該国内業務廃止年度において所得割の課税見込額が生じる場合当該国内業務廃止年度に係る事業税の課税見込額として(イ)から(ハ)までの算式により計算した金額の合計額

(イ) 資本割の課税見込額
算式)

資本割の課税見込額の算式

(ロ)付加価値割の課税見込額
算式)

付加価値割の課税見込額の算式

(ハ) 所得割の課税見込額
算式)

所得割の課税見込額の算式

ロ 当該国内業務廃止年度において所得割の課税見込額が生じない場合当該国内業務廃止年度に係る事業税の課税見込額として(イ)及び(ロ)の算式により計算した金額の合計額

(イ)資本割の課税見込額
算式)

資本割の課税見込額の算式

(ロ) 付加価値割の課税見込額
算式)

付加価値割の課税見込額の算式

(注)
1 所得割とは、地方税法第72条の12第1号ハに規定する所得割をいう。
2 資本割とは、地方税法第72条の12第1号ロに規定する資本割をいう。
3 付加価値割とは、地方税法第72条の12第1号イに規定する付加価値割をいう。
4 収益配分額とは、地方税法第72条の14に規定する収益配分額をいう。
5 単年度損益とは、地方税法第72条の18に規定する単年度損益をいい、単年度損益の額は、事業税の課税見込額を損金の額に算入しないで計算した金額とする。

【解説】

1 法人税法上、販売費、一般管理費その他の費用(償却費等を除く。)については、期末までに債務の確定していることがその損金算入の要件とされており(法223二)、損金算入が認められる租税も原則的には、その租税の納税方式に従って租税債務が具体的に確定した事業年度において損金の額に算入することになっている(基通9−5−1)。
 ところで、事業税は、その納税方式が申告納税方式であるところから、原則として、納税申告書に記載された税額についてはその納税申告書が提出された日の属する事業年度の損金の額に算入し、更正又は決定に係る税額については、その更正又は決定の日の属する事業年度の損金の額に算入することとされている(基通9−5−1の(1))。したがって、当該事業年度に係る事業税の額は、中間申告分を除き、翌期以降でなければ損金の額に算入されないということになる。
 他方、外国法人は国内源泉所得を有する場合に納税義務があるので、例えば、我が国において事業を行う外国法人がその支店等を撤収し、以後国内源泉所得が生じないこととなったような場合には、その支店等を撤収した日を含む事業年度については、その期の国内源泉所得に係る法人税の申告をすることになるが、その翌期以降は納税申告義務がないことになる。しかしながら、このような場合でも、その支店等を撤収した日を含む事業年度(国内業務廃止年度)に係る事業税の額は、その国内業務廃止年度終了後において確定するから、その事業税の額は、上記のような取扱いからすると、国内業務廃止年度の損金の額に算入することができないばかりでなく、その後も損金の額に算入する機会が事実上ないことになる。
そこで、本通達において、このような場合の国内業務廃止年度に係る事業税については、特別にその国内業務廃止年度において損金の額に算入することができるものとし、これにより当該外国法人の国内業務に係る課税関係を終結させることができることとしている。

2 この場合、事業税の課税見込額は、次の算式により求められる。

(算式)
事業税の課税見込額イコール(事業税の課税見込額を損金の額に算入しないで計算した所得金額−事業税の課税見込額)かける事業税の税率
改正前の本通達においては、上記算式を因数分解し、事業税の課税見込額を導き出す算式を示していた。

3 ところで、地方税法の改正により、いわゆる外形標準課税が導入され、平成16年4月1日以後開始する事業年度に係る事業税につき、資本金が1億円を超える法人に対しては、従来の所得割に加え、新たに付加価値割及び資本割が課されることとされており、外国法人も例外とされていない(電気供給業等、収入割が課される一定の事業を行う法人を除く。)。
 そこで、今回の改正では、法人の区分別にそれぞれその事業税の課税見込額を算出する算式を示すこととした。具体的には次のとおりである。
 まず、(1)においては、所得割のみが課される法人(資本金1億円以下の法人等)について事業税の課税見込額を算出する算式を示しているが、これは改正前の算式と同様の考えによるものである。
 (2)のイにおいては、資本金が1億円を超える法人につき、所得割、付加価値割及び資本割が課される場合の事業税の課税見込額を算出する算式を示している。
 また、(2)のロにおいては、資本金が1億円を超える法人につき、欠損のため所得割の課税見込額が生じないため、付加価値割及び資本割のみが課される場合の事業税の課税見込額を算出する算式を示している。
 なお、事業税の課税見込額の算出に当たっては、計算の便宜上、1資本割の課税見込額、2付加価値割の課税見込額、3所得割の課税見込額の順に計算し、いずれの場合も標準税率ではなく実際税率によることとなる。

《参考》
外形標準課税による事業税の課税見込額の算式は次のとおりである。
(算式)
事業税の課税見込額イコール資本割の課税見込額プラス付加価値割の課税見込額プラス所得割の課税見込額

資本割の課税見込額・・・・・A
付加価値割の課税見込額・・・B
所得割の課税見込額・・・・・C

Aイコール外国法人の資本割の課税標準額かける資本割の税率

Bイコール〔収益配分額プラス{事業税の課税見込額を損金の額に算入しないで計算した単年度損益マイナス(AプラスBプラスC)}〕かける付加価値割の税率

Cイコール{事業税の課税見込額を損金の額に算入しないで計算した所得金額マイナス(AプラスBプラスC)}かける所得割の税率

4 なお、この取扱いは、国内業務の全部を廃止することにより、その国内業務廃止年度の事業税について損金算入の機会がないということに着目して定められたものであるため、国内業務の一部を廃止しただけでその後も他に課税対象となる国内源泉所得が生ずるような場合には、法人税法第14条第21号《みなし事業年度》の規定の適用を受けることとなったようなときであっても、その国内業務の一部廃止年度についてこの取扱いを適用することはできないことに注意する必要がある。


戻る