第1 法人税基本通達関係


【改正】(複利の方法による現在価値に相当する金額の計算)

13−1−11 令第138条第3項《特別の経済的な利益の額の計算》に規定する「通常の利率」は昭和39年4月25日付直資56・直審(資)17「財産評価基本通達」(法令解釈通達)の4−4に定める基準年利率(同条第2項に規定する金銭の貸付けを受けた日を含む月に適用される基準年利率とする。)、「貸付けを受ける期間」は1年を単位として計算した期間(1年未満の端数があるときは切り捨てて計算した期間)、複利の方法で現在価値を計算する場合の「複利現価率」は小数点以下第3位まで計算した率(第4位を切り上げる。)による。

(注)同条第2項に規定する金銭の貸付けを受けた日を含む月に適用される基準年利率が事業年度終了の日において公表されていない場合は、公表されている直近の月の利率によって差し支えないものとする。

【解説】

1 借地権等の設定によりその土地の時価が10分の5以上低下し土地の所有権の一部の譲渡があったものとされる場合において、借地権等の設定に伴い、通常の場合の金銭の貸付けの条件に比し特に有利な条件による金銭の貸付けその他特別の経済的な利益を受けるときは、これらの経済的な利益の額を権利金に含めた金額を借地権等の設定の対価として取り扱うこととされている(法令1382)。
 この特別の経済的な利益の額は、貸付けを受けた金額から、その貸付けを受けた金額について返済期間に応じて「通常の利率」(低利貸付けの場合は、通常の利率から実際の利率を控除した利率)の10分の5に相当する利率による複利現価率を乗じて計算した金額(将来返済すべき金額の現在価値)を控除した金額とされている(法令1383)。
 これらの規定を受けて、改正前の本通達においては、「通常の利率」を年3.0%と定めていた。

2 この「通常の利率」は、昭和38年に当時の市中金融機関の平均的な利率等を勘案して1割と定められていたが、平成11年12月の通達改正時に、過去10年間の長期国債の応募利回りと長期プライムレートの平均値などを参考に、「年10%」から「年4.5%」に引き下げられた(平11課法2−9による改正)。この改正は、1近時は昭和38年当時の金利に比べ低金利の状況にあること、2財産評価基本通達における財産の現在価値を算定する際の利率(「基準年利率」)について過去10年間の長期国債の応募利回りと長期プライムレートの平均値を基に「年4.5%」と定められたことなどを考慮したものである。その後、「通常の利率」は、財産評価基本通達に定める「基準年利率」の改正と連動する形で、平成14年2月の通達改正時には「年4.5%」から「年3.5%」に引き下げられ(平14課法2−1による改正)、平成15年2月の通達改正時には「年3.5%」から「年3.0%」に引き下げられている(平15課法2−7による改正)。

3 ところで、平成16年6月の財産評価基本通達の改正(平16課評2−7)において、それまで年3.0%と定められていた「基準年利率」が次のとおり改められている。

イ 日本証券業協会において売買参考統計値が公表される利付国債に係る複利利回りを基に計算する。

ロ 年数又は期間を、短期(3年未満)、中期(3年以上7年未満)及び長期(7年以上)に区分して定める。

ハ その年利率は、各月ごとに別途定めることとし、四半期ごとに3カ月分をまとめて公表する。

(注) 例えば、平成16年分の基準年利率については、平成16年6月4日付課評2−9「平成16年分の基準年利率について」(法令解釈通達)により1月〜3月分の基準年利率を定めた後、その一部改正の形で、平成16年7月28日付課評2−17により4月〜6月分、平成16年10月13日付課評2−27により7月〜9月分及び平成17年1月7日付課評2−1により10月〜12月分の基準年利率が定められ、公表されている。

 この改正は、1 従来のように過去10年間の長期国債の応募利回りと長期プライムレートの平均値を基に基準年利率を定めた場合、金利(利率)が下落傾向にあるときは、過去の高い利率が加味されるため高い数値となり、課税時期の利率と乖離が生じることがある、2基準年利率については、改正前の財産評価基本通達のように期間の長短にかかわらず一律として定めるよりも、期間の長短に応じたリスクをも考慮して定めるのがより適切であるとの趣旨によるものである。

4 上記2のとおり、「通常の利率」は、「基準年利率」と同水準とする形で改正を重ねてきたのであるが、「通常の利率」についても、近時の金利の下落傾向時において従来の定め方では過去の高い利率が加味され高い数値となり、実際に貸付けを受けた時期の利率と乖離が生じるという点においては、改正前の「基準年利率」と同様の状況にあると考えられる。
 また、借地権等の設定に伴い、通常の場合の金銭の貸付けの条件に比し特に有利な条件による金銭の貸付けを受けた場合の特別の経済的な利益は、一般的には長期間にわたってその金銭の返還を要しないことにより享受する利益であり、通常、長期性を有する財産の現在価値を求める際に使用される「基準年利率」と同一の利率によることが相当であると考えられる。
 そこで、今回の改正により、「通常の利率」は、財産評価基本通達に定める「基準年利率」によることを明らかにした。具体的には、その金銭の貸付けを受けた金額の返済期間に応じた短期、中期、長期のそれぞれの基準年利率のうち、当該貸付けを受けた日を含む月に適用される基準年利率により、特別の経済的な利益の額を計算することとなる。

5 なお、各月ごとの基準年利率は四半期ごとに3カ月分をまとめて公表していることから、法人の決算月によっては、貸付けを受けた日を含む月に適用される基準年利率が決算期末までに公表されていないことがあり得る。
 そこで、原則的には、金銭の貸付けを受けた日を含む月に適用される基準年利率によるのであるが、当該適用月の基準年利率が期末時までに公表されていない場合にあっては、公表されている直近の月の基準年利率によっても差し支えない旨を注書により明らかにしている。

6 改正後の取扱いは、平成16年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税に適用され、同日前に開始した事業年度分の法人税については、改正前の取扱いによることとしている(経過的取扱いの(4))。

7 なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通16−1−11)を定めており、同様の改正を行っている。


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