第3 租税特別措置法関係通達(法人税編)関係

【新設】(自己資本比率を算出する際の負債の意義

68の2−11 措置法令第39条の34の2第9項に規定する「負債(借入金その他利子の支払の基因となるものに限る。)」には、例えば、その金銭消費貸借契約において利子の支払を約さないものであっても、その利子の支払を約さないことに合理的な理由がないものが含まれることに留意する。

【解説】

  1. 1 本制度における自己資本比率は、次の算式により計算される(措法68の22四)。
    自己資本比率(%)=前事業年度末自己資本の額÷前事業年度末総資産の額×100
  2. 2 上記算式の分子の「前事業年度末自己資本の額」とは、前事業年度終了の時における資本の金額又は出資金額、資本積立金額及び利益積立金額の合計額に当該同族会社の同族株主等に対する負債の額を加算した金額となる(措令39の34の2910)。
  3. 3 この「前事業年度末自己資本の額」を計算する場合において、資本の金額等の合計額に加算する「当該同族会社の同族株主等に対する負債の額」は、法令上、「借入金その他利子の支払の基因となるものに限る。」(措令39の34の29)こととされていることから、実際に利子の支払のないものは、これに含まれないのではないかとの疑問が生じる。
     しかしながら、本制度における自己資本比率の計算は、当該同族会社の同族株主等からの借入金やこれと同様に一般に有利子により資金調達を行う負債(例えば、社債)を実質的に資本の金額等と同等に取り扱うこととしているものであり、同族会社と同族株主等の間で通常の取引が行われて発生した支払手形、買掛金、未払金等の一般に無利子となる負債を含まない趣旨の規定であると解される。したがって、たまたま利息を徴していない負債であっても、本来であれば利子を付すべき性質の負債である場合には、当該同族株主等からの資金提供は「借入金その他利子の支払の基因となるもの」に含めることが相当である。本通達において、このことを留意的に明らかにしている。
     なお、この「一般に無利子となる負債」であるかどうかは、その勘定科目により判断するのではなく、その負債が生じたことの実質により判定することはいうまでもない。
  4. 4 また、連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の109«連結法人である中小企業者等に対する同族会社の特別税率の不適用»についても、同様の通達(連措通68の109−11)を新たに定めている。

【新設】(自己資本比率を算出する際の株主等の意義)

68の2−12 同族会社の判定の基礎となる株主等と特殊の関係のある個人(令第4条第1項に規定する特殊の関係のある個人をいう。)又は株主等と特殊の関係のある法人(令第4条第2項に規定する特殊の関係のある法人をいう。)であっても、当該同族会社の株式又は出資を有しない場合は、措置法令第39条の34の2第9項に規定する「同族株主等」には含まれないことに留意する。

【解説】

  1. 1 本制度における自己資本比率は、次の算式により計算される(措法68の22四)
    自己資本比率(%)=前事業年度末自己資本の額÷前事業年度末総資産の額×100
  2. 2 上記算式の分子の「前事業年度末自己資本の額」とは、同族会社の前事業年度終了の時における資本の金額又は出資金額、資本積立金額及び利益積立金額の合計額をいうこととされているが、同族会社における自己資本の借入金等への振替えを防止するため、当該同族会社の同族株主等に対する負債(借入金その他利子の支払の基因となるものに限る。)がある場合には、当該負債の額を加算した金額とされている(措令39の34の29)。
     この場合の同族株主等とは、同族会社の株主等のうち、法人税法施行令第71条«使用人兼務役員とされない役員»第1項第4号イからハまでの規定中「役員」とあるのを「株主等」と読み替えた場合に同号イからハまでに掲げる要件のすべてを満たしている者をいうこととされており、具体的には、次のイからハまでに掲げる要件のすべてを満たしている者がこれに該当することとなる。
     なお、その同族会社が連結子法人である場合には、その連結完全支配関係を有する連結親法人の株主等で判定することになる。
    • イ 当該会社の株主グループにつきその持株割合が最も大きいものから順次その順位を付し、その第一順位の株主グループ(同順位の株主グループが二以上ある場合には、そのすべての株主グループ。以下この号イにおいて同じ。)の持株割合を算定し、又はこれに順次第二順位及び第三順位の株主グループの持株割合を加算した場合において、当該株主等が次に掲げる株主グループのいずれかに属していること。
      1. (1) 第一順位の株主グループの持株割合が百分の五十を超える場合における当該株主グループ
      2. (2) 第一順位及び第二順位の株主グループの持株割合を合計した場合にその持株割合がはじめて百分の五十を超えるときにおけるこれらの株主グループ
      3. (3) 第一順位から第三順位までの株主グループの持株割合を合計した場合にその持株割合がはじめて百分の五十を超えるときにおけるこれらの株主グループ
    • ロ 当該株主等の属する株主グループの当該会社に係る持株割合が百分の十を超えていること。
    • ハ 当該株主等(その配偶者及びこれらの者の持株割合が百分の五十を超える場合における他の会社を含む。)の当該会社に係る持株割合が百分の五を超えていること。

      (注) 上記の「株主グループ」とは、その会社の一の株主等(その会社が自己の株式又は出資を有する場合のその会社を除く。)並びに当該株主等と法人税法第2条第10号に規定する特殊の関係のある個人及び法人をいう。

  3. 3 ところで、同族会社であるかどうかの判定に当たっては、一の株主等には、その株主等と法人税法施行令第4条第1項に定める特殊の関係のある個人(例えば、株主等の親族等)及び株主等と法人税法施行令第4条第2項に定める特殊の関係のある法人(例えば、株主等の50%超保有会社等)を一の株主グループとして捉え、その株主グループが有する株式の数又は出資の金額を判定の基礎とすることとされている(法2十、法令4)ことから、本制度における自己資本の金額に加算する負債の判定に当たっては、この一の株主グループに属する者に対する負債の額も加算することになるのではないかという疑問が生じる。
     しかしながら、本制度の場合は、仮に、同族会社の判定に当たって、株主等と特殊の関係のある個人又は株主等と特殊の関係のある法人に該当し、一の株主グループとされる者であっても、当該同族会社の株式又は出資を有しない限りにおいては、本制度における同族株主等には含まれず、当該特殊の関係のある個人からの負債の額や当該特殊の関係のある法人からの負債の額があったとしても、算式の分子の「前事業年度末自己資本の額」に加算する必要はない。
     本通達において、このことを明らかにしている。
  4. 4 なお、連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の109«連結法人である中小企業者等に対する同族会社の特別税率の不適用»についても、同様の通達(連措通68の109−12)を新たに定めている。

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