第3 租税特別措置法関係通達(法人税編)関係
42の4−7 法人が中小企業者(措置法第42条の4第7項に規定する中小企業者をいう。以下同じ。)に該当する法人であるかどうかは、当該事業年度終了の時の現況によって判定するものとする。
(注) 措置法第42条の4第8項の規定の適用を受ける法人であるかどうかの判定は、同項に規定する繰越中小企業者等税額控除限度超過額の生じた事業年度終了の時において中小企業者に該当するかどうかによるのであるから、同項の規定の適用を受ける事業年度終了の時においても中小企業者に該当する必要はないことに留意する。
【解説】
1 平成15年度の税制改正により、試験研究費の額が増加した場合等の法人税額の特別控除制度(措法42の4)の一つとして繰越中小企業者等税額控除限度超過額の控除制度(以下この項において「本制度」という。)が創設された。本制度は、青色申告法人の各事業年度(次のから
までの制度の適用を受ける事業年度及び解散等事業年度を除く。)において、一定の要件を満たす場合は、その有する繰越中小企業者等税額控除限度超過額のうち一定額の税額控除を認めるという制度である(措法42の4
)。
増加試験研究費税額控除制度(措法42の4
)
試験研究費の総額に係る税額控除制度(措法42の4
)
特別共同試験研究費に係る税額控除制度(措法42の4
)
繰越税額控除限度超過額の控除制度(措法42の4
)
(注) 「解散等事業年度」とは、解散(合併による解散を除く。)の日を含む事業年度及び清算中の各事業年度をいう(措法42の4)。
また、「繰越中小企業者等税額控除限度超過額」とは、当該事業年度開始の日前1年以内に開始した各事業年度で中小企業技術基盤強化税制(措法42の4)による控除をしてもなお控除しきれない金額(既に本制度の適用を受けて控除された金額を除く。)の合計額をいう(措法42の4
十)。
2 ところで、本制度による税額控除の基礎となる「繰越中小企業者等税額控除限度超過額」は中小企業技術基盤強化税制の適用上生じるものであるが、この中小企業技術基盤強化税制の適用対象法人となる「中小企業者等」とは、次に掲げる法人をいうこととされているところ(措法42の4、措令27の4
)、特に、イ及びロに掲げる中小企業者にあっては、その適用対象法人に該当するかどうかをいつの時点で判定するかが問題となる。
イ 資本又は出資の金額が1億円以下の法人(その発行済株式の総数又は出資金額の2分の1以上を同一の大規模法人に所有されている法人及びその発行済株式の総数又は出資金額の3分の2以上を大規模法人に所有されている法人を除く。)
ロ 資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人
ハ 農業協同組合等(農業協同組合、農業協同組合連合会、中小企業等協同組合、出資組合である商工組合及び商工組合連合会、内航海運組合、内航海運組合連合会、出資組合である生活衛生同業組合、漁業協同組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会、森林組合並びに森林組合連合会をいう(措法42の4九)。)
(注) 「大規模法人」とは、次に掲げる法人をいい、中小企業投資育成株式会社を除くこととされている(措令27の4)。
a 資本又は出資の金額が1億円を超える法人
b 資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人
この点、中小企業技術基盤強化税制は一事業年度を通じた試験研究費の額を対象として特別税額控除を行うものであることから、事業年度の中途で適用対象法人に該当するかどうかを判定するという考え方にはなじまない。
そこで、改正前の本通達において、法人が中小企業技術基盤強化税制の適用対象法人に該当する法人であるかどうかは、各事業年度終了の時の現況によって判定するものとし、その終了時点において資本金が1億円以下の法人等について中小企業技術基盤強化税制の適用があるものとして取り扱うこととしている。
3 また、本制度による税額控除の基礎となる「繰越中小企業者等税額控除限度超過額」が中小企業技術基盤強化税制の適用上生じるものであることから、中小企業技術基盤強化税制と同様に、本制度の適用を受ける事業年度終了の時においても中小企業者に該当していなければならないのではないかとの疑問が生じる。
しかしながら、本制度における繰越中小企業者等税額控除限度超過額は、中小企業技術基盤強化税制を適用した結果として生じたものであることから、結果として控除しきれなかった部分の金額について実際に税額控除を受ける事業年度終了の時においても中小企業者に該当する必要はない。
改正後の本通達の(注)において、このことを明らかにしている。
4 なお、連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の9《試験研究費の額が増加した場合等の法人税額の特別控除》についても、同様の通達(連措通68の9−10)を定めている。
42の4−10の2 措置法第42条の4第7項の規定の適用に当たって、例えば、その適用を受けようとする法人が同条第4項に規定する繰越税額控除限度超過額を有する法人であっても、同一の事業年度において同項を重複して適用することはできず、いずれかの規定を適用することに留意する。
同条第8項の規定の適用に当たっての同条第2項の規定の適用についても、同様とする。
【解説】
1 平成15年度の税制改正により、試験研究費の額が増加した場合等の法人税額の特別控除制度(措法42の4)の一つとして繰越税額控除限度超過額の控除制度(以下この項において「本制度」という。)が創設された。本制度は、青色申告法人の各事業年度(増加試験研究費税額控除制度(措法42の4)の適用を受ける事業年度及び解散等事業年度を除く。)において、一定の要件を満たす場合は、その有する繰越税額控除限度超過額のうち一定額の税額控除を認めるという制度である(措法42の4
)。
2 ところで、本制度による税額控除の基礎となる「繰越税額控除限度超過額」は、同じく平成15年度の税制改正により創設された試験研究費の総額に係る税額控除制度(措法42の4)の適用上生じるものである。この試験研究費の総額に係る税額控除制度は、中小企業技術基盤強化税制(措法42の4
)のように適用対象法人を「中小企業者等」に限定するものではなく、資本金が1億円を超える法人についても適用があるが、これらの制度に係る税額控除割合は、それぞれ次の表1及び表2とおり、試験研究費の総額に係る税額控除制度の方が、中小企業技術基盤強化税制に比して低く設定されている。
【表1】試験研究費の総額に係る税額控除制度
事業年度 |
試験研究費割合 |
税額控除割合 |
---|---|---|
平成15年1月1日から平成18年3月31日までの間に開始する各事業年度(平成15年4月1日以後に終了する事業年度に限る。) | 10%以上 | 12% |
10%未満 | (試験研究費割合×0.2)+10% | |
平成18年4月1日以後に開始する各事業年度 | 10%以上 | 10% |
10%未満 | (試験研究費割合×0.2)+8% |
(注) 上記の税額控除割合は、特別共同試験研究費に係る税額控除制度(措法42の4)の適用のない場合のものであり、その税額控除割合に小数点以下3位未満の端数(%表示にあっては、小数点以下1位未満の端数)があるときは、これを切り捨てる。
【表2】中小企業技術基盤強化税制
事業年度 | 税額控除割合 |
---|---|
平成15年1月1日から平成18年3月31日までの間に開始する各事業年度(平成15年4月1日以後に終了する事業年度に限る。) | 15% |
平成18年4月1日以後に開始する事業年度 | 12% |
3 ところで、例えば、資本金1億円超の法人が、この税額控除割合の差に着目して、当期中に減資して中小企業者等に該当する法人となり、当期の試験研究費の額に中小企業技術基盤強化税制を適用しようとする場合も考えられる。法人が中小企業技術基盤強化税制の適用対象法人に該当する法人であるかどうかは、各事業年度終了の時の現況によって判定するものであること(措通42の4−7参照)から、この適用自体は可能であるが、さらに、中小企業技術基盤強化税制を適用した事業年度において、所得に対する法人税額の20%の控除余裕枠があるときには、前期に発生した繰越税額控除限度超過額を控除できるかという問題がある(次の事例参照)。
【事例】
4 この点については、中小企業技術基盤強化税制の根拠法令となる租税特別措置法第42条の4第7項の規定上は、適用対象となる各事業年度から「第1項から第4項までの規定の適用を受ける事業年度」を除くこととされ、本制度の規定(措法42の4)が排除されている。したがって、本制度を適用する事業年度においては、中小企業技術基盤強化税制を重複して適用することはできず、結果として、同一事業年度内にあっては、いずれかの制度を選択適用しなければならない(措法42の4
かっこ書)。
同様に、繰越中小企業者等税額控除限度超過額の繰越控除制度(措法42の4)を適用する事業年度においては、次の
から
までの制度を重複して適用することはできず、結果として、同一事業年度内にあっては、それぞれいずれかの制度を選択適用することになる(措法42の4
かっこ書)。
増加試験研究費税額控除制度(措法42の4
)
試験研究費の総額に係る税額控除制度(措法42の4
)
特別共同試験研究費に係る税額控除制度(措法42の4
)
繰越税額控除限度超過額の控除制度(措法42の4
)
本通達において、これらのことを明らかにしている。
5 なお、連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の9《試験研究費の額が増加した場合等の法人税額の特別控除》についても、同様の通達(連措通68の9−12の2)を新たに定めている。