第1 法人税基本通達関係

 

【改正】(期末利益積立金額)

16−1−6 法人が事業年度の中途において利益の配当又は剰余金の分配(みなし配当を含む。)を行い利益積立金額が減算した場合又は当該事業年度前の各事業年度(その事業年度が連結事業年度に該当する場合には、当該連結事業年度)において損金の額に算入されなかった償却超過額、引当金、準備金の繰入超過額等を当該事業年度において損金の額に算入した場合には、その減算した金額又は損金の額に算入した金額は、法第67条第3項第3号《積立金基準額》に規定する「当該事業年度の所得等の金額に係る部分の金額」に該当する。したがって、当該事業年度の留保所得金額がある場合において、当該事業年度終了の時利益積立金額は、適格合併、適格分割型分割又は連結法人による他の連結法人の株式の譲渡等があったことにより法第2条第18号《利益積立金額》の規定に基づき加算又は減算する利益積立金額があるときを除き、当該事業年度開始の時の利益積立金額と同額となることに留意する。

【解説】

1 留保控除額の計算の一つに、期末時の利益積立金額が期末時の資本金額(出資金額)の25%相当額に満たない場合におけるその満たない部分の金額に相当する金額という、いわゆる積立金基準額があるが、この場合の期末時の利益積立金額は、当該金額から「当該事業年度の所得等の金額に係る部分の金額」を除くこととされている(法673三)。
 ところで、法人が事業年度の中途で利益配当又は剰余金分配(みなし配当を含む。)を行った場合(例えば、中間配当を行った場合)には利益積立金額を減算することになるが(法2十八ヌ)、積立金基準額を計算する場合の期末時の利益積立金額をどのように計算するのか疑問が生じる。
 そこで、このような配当があった場合には、その配当を「当該事業年度の所得等の金額に係る部分の金額」、換言すれば当期の所得から成るものとして取り扱い、期末時の利益積立金額は減算前の利益積立金額を基に計算することを明らかにしている。
 また、前期以前に損金算入されなかった償却超過額、引当金、準備金の繰入超過額等を当期に損金算入した場合には、当期首の利益積立金額からその損金算入額部分が減少することになるが、これは当期の所得金額の計算との関連において減少するものである。このため、このような損金算入額は「当該事業年度の所得等の金額に係る部分の金額」に該当し、積立金基準額における期末時の利益積立金額は、その損金算入前の利益積立金額を基に計算することを明らかにしている。

2 利益積立金額に加算又は減算する事由及び金額は税法上明記されているが(法2十八)、次の事由により加算又は減算する金額は「当該事業年度の所得等の金額に係る部分の金額」には該当しないことがある。このため、次の事由により加算又は減算する金額は、積立金基準額における期末時の利益積立金額の計算に当たっても、加算又は減算を要する場合がある。

1 適格合併又は適格分割型分割により被合併法人又は分割法人から引継ぎを受ける利益積立金額がある場合(法2十八ニ、ホ)

2 連結法人による他の連結法人の株式の譲渡等により当該連結法人の利益積立金額となる金額がある場合(法2十八ヘ)

3 連結法人が当該連結法人を分割法人とする分割型分割を行った場合の当該分割型分割の日の前日の属する事業年度の直前の連結事業年度終了の時の連結個別利益積立金額等がある場合(法2十八ト)

4 非適格分割型分割により分割法人が株主等に交付した金銭等の価額の合計額が分割資本等金額を超える場合(法2十八ル)

5 資本若しくは出資の減少により減少した資本又は出資の金額が減資資本等金額を超える場合(法2十八ヲ)

6 株式の消却により交付した金銭等の価額の合計額が消却資本等金額を超える場合(法2十八ワ)

7 自己の株式の取得により交付した金銭等の価額の合計額が取得資本等金額を超える場合(法2十八カ)

8 社員の退社又は脱退による持分の払戻しとして交付した金銭等の価額の合計額が退社資本等金額を超える場合(法2十八ヨ)

9 適格分割型分割により分割法人が分割承継法人に引き継ぐ利益積立金額がある場合(法2十八タ)

3 ところで、上記1から9までの事由のうち4から8までのケースではみなし配当が生じる。当該みなし配当の額は、まず当期の所得金額から流出処理することから、当期の留保所得金額がある場合(すなわち、当期の留保所得金額がみなし配当の額を上回る場合)には、積立金基準額における期末時の利益積立金額は、結局、期首時の利益積立金額と同額になるのである。
 改正前の本通達においては、利益積立金額の加算又は減算が生ずる事由として上記1から9までの事由を掲げていたが、上記のみなし配当の額と当期の留保所得金額との関係からみれば、積立金基準額における期末時の利益積立金額が期首時の利益積立金額と同額にならないケースをより限定的に除く表現の方が適切であると考えられる。
 そこで、改正後の本通達においては、当期の留保所得金額がある前提を置いた上で、積立金基準額における期末時の利益積立金額は、上記1から3まで及び9の事由があったことにより利益積立金額に加算又は減算する金額がある場合を除き、期首時の利益積立金額と同額になることを明らかにしている。

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