第1 法人税基本通達関係

【改正】(償却費として損金経理をした金額の意義)

7−5−1 法第31条第1項《減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法》に規定する「償却費として損金経理をした金額」には、法人が償却費の科目をもって経理した金額のほか、損金経理をした次に掲げるような金額も含まれるものとする。

(1) 令第54条第1項《減価償却資産の取得価額》の規定により減価償却資産の取得価額に算入すべき付随費用の額のうち原価外処理をした金額

(2) 減価償却資産について法又は措置法の規定による圧縮限度額を超えてその帳簿価額を減額した場合のその超える部分の金額

(3) 減価償却資産について支出した金額で修繕費として経理した金額のうち令第132条《資本的支出》の規定により損金の額に算入されなかった金額

(4) 無償又は低い価額で取得した減価償却資産につきその取得価額として法人の経理した金額が令第54条第1項の規定による取得価額に満たない場合のその満たない金額

(5) 減価償却資産について計上した除却損又は評価損の金額のうち損金の額に算入されなかった金額

(注) 評価損の金額には、法人が計上した減損損失の金額も含まれることに留意する。

(6) 少額な減価償却資産(おおむね60万円以下)又は耐用年数が3年以下の減価償却資産の取得価額を消耗品費等として損金経理をした場合のその損金経理をした金額

(7) 令第54条第1項の規定によりソフトウエアの取得価額に算入すべき金額を研究開発費として損金経理をした場合のその損金経理をした金額

【解説】

1 本通達においては、たとえ法人が償却費以外の科目名で費用化した金額であっても、その性質上償却費として損金経理したものとみて差し支えないものを例示し、これについては、税法上減価償却をしたものとみなして取り扱うこととしている。

2 ところで、平成14年8月9日に企業会計審議会から「固定資産の減損に係る会計基準」が公表されたことを受け、平成15年10月31日付で企業会計基準委員会から減損会計基準を実務に適用する場合の具体的な指針が公表された(企業会計基準適用指針第6号「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」)。
 この減損会計基準は、原則的には平成17年4月1日以後開始する事業年度から適用されるが、平成16年3月31日以後に終了する事業年度についても早期適用が認められている。このため、早ければ平成16年3月末決算から適用する法人もある。
 そもそも減損会計とは、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合に、一定の条件の下で回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額(減損損失を計上)する会計処理をいう。
 減損損失を認識する場面としては、資産が生み出す営業損益が3期連続でマイナスになる場合、使用範囲又は方法について回収可能価額を著しく低下させる変化がある場合、資産の市場価格が帳簿価額から50%程度以上下落した場合などである。一方、税務上、固定資産について評価損による損金算入ができる場合は、災害による損傷など一定の場合に限定されていることから(令68三)、減損損失が会計上計上されても、その全部又は一部が税法上否認されるときがある。
 しかしながら、減損損失の計上は、減価償却資産についての費用化の一形態であって、減価償却費の計上とは二者択一的なものであり、減損損失と償却費とを同時に計上するということはできない性質のものであるから、その減損損失の金額は、償却費として計上したものと認め、当期の償却限度額の範囲内で償却費として認容して差し支えないものと考えられる。
 改正後の本通達の(5)の(注)においてその点を明らかにしている。

3 また、自社開発・自社利用のソフトウエア費用については、無形固定資産として資産計上し、それが開発研究用のものについては3年間で、それ以外のものについては5年間で償却することとされている(耐用年数省令別表三、八)。
 ところで、会計上は、自社利用のソフトウエアの資産計上は、そのソフトウエアの利用により将来の収益獲得又は費用削減が確実と認められるものに限り無形固定資産に計上し、それ以外のものについては、費用処理することとされている(研究開発費等に係る会計基準四3、研究開発費及びソフトウエアの会計処理に関する実務指針「11」)。一方、税務上は、ソフトウエアの利用により将来の収益獲得又は費用削減にならないことが明らかなものに限り取得価額に算入しないことができるとしている(基通7−3−15の3(2))。
 このように企業会計上の判断と税務上の判断とが必ずしも一致しない部分がある。
 そこで、税務上は取得価額に含めるべき費用を企業会計上は損金経理することが要請されることがあることを考慮し、ソフトウエアの取得価額に算入すべき金額を会計上費用処理した場合には、当該金額を償却費として損金経理をしたものとして取り扱う旨を本通達の(7)において明らかにしている。

4 なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通6−5−1)を定めている。

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