1 仮決算による中間申告における退職給与引当金勘定への繰入れ

Q. 平成14年7月の法人税法の改正により、平成15年3月31日以後に終了する事業年度においては、税務上、退職給与引当金勘定への繰入れが認められないこととされています。
 3月31日決算法人が、平成14年4月1日から同年9月30日までの期間について仮決算による中間申告を行う場合には、改正前の規定による退職給与引当金勘定への繰入れは認められるのでしょうか。

A. 改正前の規定による退職給与引当金勘定への繰入れを行うことができます。

 仮決算による中間申告は、法人税法第72条第1項(仮決算をした場合の中間申告書の記載事項等)に規定されていますが、同項においては、当該事業年度開始の日以後6月の期間を一事業年度とみなして計算した所得の金額を基に税額を計算するものとされています。
 退職給与引当金制度については、平成14年7月の法人税法の改正により廃止されましたが、平成15年3月31日前に終了する事業年度については、改正前の法人税法第54条(退職給与引当金)の規定が従前どおり適用することとされています(平成14年7月改正法附則2)。
 このため、3月31日決算法人が、法人税法第72条第1項の規定に従って平成14年4月1日から同年9月30日までの期間を一事業年度とみなして仮決算による中間申告を行う場合には、平成14年7月改正前の法人税法第54条の規定による退職給与引当金勘定への繰入額の損金算入が認められることとなります。

(参考)法人税法第72条第1項
 中間申告書を提出すべき内国法人である普通法人が当該事業年度開始の日以後6月の期間を一事業年度とみなして当該期間に係る課税標準である所得の金額又は欠損金額を計算した場合には、その普通法人は、その提出する中間申告書に、前条第1項各号に掲げる事項に代えて、次に掲げる事項を記載することができる。

一 当該所得の金額又は欠損金額

二 当該期間を一事業年度とみなして前号に掲げる所得の金額につき前節(税額の計算)(第67条(同族会社の特別税率)及び第70条(仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の控除)を除く。)の規定を適用するものとした場合に計算される法人税の額

三 前二号に掲げる金額の計算の基礎その他財務省令で定める事項

2 中間申告における退職給与引当金勘定の取崩し

Q. 3月31日決算法人が、平成14年4月1日から同年9月30日までの期間中に使用人の退職等の事実が生じた場合には、当該期間について仮決算による中間申告を行うに際し、退職給与引当金勘定の金額について取崩しを行う必要があるのでしょうか。

A. 改正前の法人税法施行令の規定に従い取崩しを行う必要があります。

 上記1のとおり、3月31日決算法人の平成14年4月1日から同年9月30日までの期間について仮決算による中間申告を行う場合には、退職給与引当金については、平成14年7月改正前の法人税法第54条の規定及び平成14年8月改正前の法人税法施行令の規定が適用されることとなります。 
 したがって、その期間中に使用人の退職等の事実が生じた場合には、当該期間について仮決算による中間申告を行うに際し、退職給与引当金勘定の金額につき、改正前の法人税法施行令第107条の規定に従い要取崩額として計算された金額を取り崩す必要があります。

3 確定申告における退職給与引当金の取扱い

Q. 3月31日決算法人が、平成14年4月1日から同年9月30日までの期間の仮決算による中間申告において退職給与引当金の繰入れを行った場合、その繰入額はその事業年度(平成15年3月31日終了事業年度)の確定申告においても、損金算入が認められることになるのでしょうか。

A. 仮決算による中間申告において損金の額に算入した退職給与引当金勘定への繰入額についても、確定申告においては損金算入することはできません。

 平成14年7月改正前の法人税法第54条の規定は、平成15年3月31日以後に終了する事業年度においては適用されません(平成14年7月改正法附則2)。
 したがって、平成15年3月31日終了事業年度分の確定申告においては改正前の法人税法の規定の適用はなく、税務上、退職給与引当金の繰入れは認められず、平成14年4月1日から同年9月30日までの期間の仮決算による中間申告において損金算入が認められた退職給与引当金の繰入額についても、確定申告においては損金算入することはできません。

4 経過措置の規定による退職給与引当金勘定の要取崩額の計算

Q. 3月31日決算法人の平成14年4月1日から同年9月30日までの期間の仮決算による中間申告において、退職給与引当金勘定への繰入れを行った場合、その事業年度(平成15年3月31日終了事業年度)の確定申告における平成14年7月改正法附則第8条(退職給与引当金に関する経過措置)の規定による要取崩額は、いずれの時の退職給与引当金勘定の金額に基づいて計算することとなるのでしょうか。

A. その事業年度(平成15年3月31日終了事業年度)開始の時の退職給与引当金勘定の金額を基に計算することとなります。

 平成14年7月の法人税法の改正により退職給与引当金制度が廃止され、廃止前の退職給与引当金勘定の金額については、その取崩しを段階的に行う等の経過措置が講じられています。
 平成14年7月改正法附則第8条第2項(退職給与引当金に関する経過措置)においては、経過措置による取崩しを行う金額の計算について、法人が平成15年3月31日以後最初に終了する事業年度において退職給与引当金勘定の金額を有する場合の当該退職給与引当金勘定の要取崩額の計算は、「改正事業年度開始の時に有する退職給与引当金勘定の金額」を基に行うこととされています。
 したがって、お尋ねのように、仮決算による中間申告において改正前の法人税法の規定により退職給与引当金勘定への繰入れを行った場合であっても、その事業年度(平成15年3月31日終了事業年度)の確定申告における改正法附則第8条第2項の規定による取崩額の計算は、事業年度開始の時の退職給与引当金勘定の金額を基に行うこととなります。

5 仮決算による中間申告における受取配当等の益金不算入額の計算

Q. 3月31日決算法人が、平成14年4月1日から同年9月30日までの期間について仮決算による中間申告を行う場合には、受取配当等の益金不算入額の計算は、平成14年7月改正前、改正後のいずれの規定に従って計算することとなるのでしょうか。

A. 改正前の規定により受取配当等の益金不算入額の計算を行うこととなります。

 仮決算による中間申告は、法人税法第72条第1項(仮決算をした場合の中間申告書の記載事項等)に規定されていますが、同項においては、当該事業年度開始の日以後6月の期間を一事業年度とみなして計算した所得の金額を基に税額を計算するものとされています。
 受取配当等の益金不算入額の計算については、平成14年7月の法人税法の改正により配当等の区分や益金不算入額の計算につき改正が行われたところであり、改正後の規定は平成15年3月31日以後に終了する事業年度から適用され、同日前に終了する事業年度については、改正前の規定が従前どおり適用されます(平成14年7月改正法附則2)。
 このため、3月31日決算法人が法人税法第72条第1項の規定に従って平成14年4月1日から同年9月30日までの期間を一事業年度とみなして仮決算による中間申告を行う場合の受取配当等の益金不算入額の計算は、平成14年7月改正前の法人税法第23条の規定に従って行うこととなります。
 ただし、この場合であっても、平成15年3月31日終了事業年度の確定申告については改正後の法人税法の規定が適用されますので、その事業年度における受取配当等の益金不算入額の計算は、そのすべてについて改正後の法人税法第23条(受取配当等の益金不算入)の規定に従って行うこととなります。
 具体的には、例えば資本の金額が1億円を超える法人の中間申告における特定株式等以外の株式等に係る受取配当等の益金不算入額の計算は、「特定利子控除の適用・益金不算入割合80%」で行うこととなりますが(旧法233一)、確定申告においては、これを連結法人株式等及び関係法人株式等のいずれにも該当しない株式等として「特定利子控除の不適用・益金不算入割合50%」で行うこととなります。