次のような契約を締結して行われるPFI事業については、その資産の契約形態が賃貸借であったとしても、その賃貸借の目的となる資産の引渡しの時にその資産の売買があったものとされるとともに(法令136の3)、民間事業者Aが一定の延払基準の方法により経理したときは、法人税法第63条《長期割賦販売等に係る収益及び費用の帰属事業年度》の規定の適用ができると解して差し支えないでしょうか。
1 事業の概要
本事業は、民間事業者AがPFI法に基づき建設・所有するB館を、契約期間中(30年間)はC県に賃貸しながら、そのB館の維持管理の業務を受託するというものであります。
なお、契約期間経過後には、民間事業者Aが有するB館の所有権をC県に対して無償で譲渡します。
2 サービスの対価の支払
C県は、民間事業者Aに年2回・30年間払いによってサービスの対価を支払うこととしていますが、その対価のうち賃貸料相当額の部分については、本件工事費等及びこれに係る支払利息相当額が積算の基礎となっています。
3 運営と観覧料の徴収・管理
B館は、民間事業者Aがその所有権を有しますが、対外的に「C県立B館」の名で運営されるとともに、C県は、B館の入館者から観覧料を徴収(実際の徴収事務は民間事業者Aに委託しますが、当日分の観覧料は県の出納員に引継ぎ)し管理します。
4 契約期間の中途における契約の終了
契約期間の中途において、契約不履行等の一定の事実が生じた場合には、契約の終了があり得ますが、その場合であっても、C県はB館の所有権をすべて保持・取得した上で、契約終了時における本件工事費等の残額及びこれに係る支払利子相当額の合計額の90%ないし100%相当額を民間事業者Aに対して支払います。
《概要図》
照会の事実を前提とすれば、貴見のとおりで差し支えありません。
1 売買とされるリース取引
法人がリース取引をした場合において、そのリース取引が、例えば、リース期間終了の時又はリース期間の中途において、リース資産が無償又は名目的な対価の額でその賃借人に譲渡されるものであるときは、そのリース資産の賃貸人から賃借人への引渡しの時にそのリース資産の売買があったものとして、各事業年度の所得の金額を計算することとされています(法令136の3)。
この規定の対象となるリース取引とは、資産の賃貸借で、次の要件を満たすものをいうこととされています(法令136の3)。
(1) その賃貸借に係る契約が、賃貸借期間の中途においてその解除をすることができないものであること又はこれに準ずるものであること。
(2) その賃貸借に係る賃借人がその賃貸借に係る資産からもたらされる経済的な利益を実質的に享受することができ、かつ、その資産の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担すべきこととされているものであること。
2 本事業の要件判定
本事業が上記1の「売買とされるリース取引」に該当するかどうかについては、次のとおりであります。
(1) 資産の賃貸借であること
本事業の民間事業者AとC県との間で締結された契約書の条項によれば、民間事業者Aは、B館について、本件引渡日から(30年後の)平成○年3月31日までの期間、C県に賃貸することとなっています。
(2) 解除をすることができないものに準ずるものであること
対象となるリース取引の要件の一つに、その賃貸借に係る契約が、賃貸借期間の中途においてその解除をすることができないものに準ずるものであることが掲げられています。その一例として、「資産の賃貸借契約に解約禁止条項がない場合であって、賃借人が契約違反をした場合又は解約する場合において、賃借人が、当該賃貸借に係る賃貸借期間のうちの未経過期間に対応するリース料の額の合計額のおおむね全部(原則として100分の90以上)を支払うこととされているもの」があります(基通12の3−1−1の(1))。
本事業の契約書の条項によれば、契約期間の中途において、契約不履行等の一定の事実が生じた場合には、契約の終了があり得ますが、その場合であっても、C県はB館の所有権をすべて保持・取得した上で、契約終了時における本件工事費等の残額及びこれに係る支払利子相当額の合計額の90%ないし100%相当額を民間事業者Aに対して支払うこととなっています。
(3) 経済的利益の実質的な享受者であること
対象となるリース取引の要件の一つに、その賃貸借に係る賃借人がその賃貸借に係る資産からもたらされる経済的な利益を実質的に享受することができることがあります。
本事業において、B館は、民間事業者Aがその所有権を有しますが、対外的に「C県立B館」の名で運営されるとともに、C県は、B館の入館者から観覧料を徴収(実際の徴収事務は民間事業者Aに委託しますが、当日分の観覧料は県の出納員に引継ぎ)し管理することとなっています(C県財務規則、条例)。
(4) 使用費用の実質的な負担者であること
対象となるリース取引の要件の一つに、その資産の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担すべきこととされているものであることがあります。これについては、その賃貸借期間中に賃借人が支払うリース料の額の合計額が、賃貸人における賃貸借資産の取得価額及びその取引に係る付随費用(賃貸借資産の取得に要する資金の利子、固定資産税、保険料等その取引に関連して賃貸人が支出する費用をいう。)の額の合計額がおおむね全部(原則として100分の90以上)とされていることをいうと取り扱われています(基通12の3−1−2)。
本事業の契約書の条項によれば、C県は、民間事業者Aに年2回・30年間払いによってサービスの対価を支払うこととしていますが、その対価のうち賃貸料相当額の部分については、本件工事費等及びこれに係る支払利息相当額が積算の基礎となっています。
(5) リース期間終了後の無償譲渡
売買とされるリース取引の一例として、リース期間終了の時又はリース期間の中途において、リース資産が無償又は名目的な対価の額でその賃借人に譲渡されるものであるときがあります。
本事業の契約書の条項によれば、契約期間経過後には、民間事業者Aが有するB館の所有権をC県に対して無償で譲渡することになっています。
3 長期割賦販売等
法人税法第63条《長期割賦販売等に係る収益及び費用の帰属事業年度》の規定の適用がある「長期割賦販売等」とは、次に掲げる要件に適合する条件を定めた契約に基づき当該条件により行われる資産の販売等をいうこととされています(法63、法令127)。
(1) 月賦、年賦その他の賦払の方法により3回以上に分割して対価の支払を受けること。
(2) その資産の販売等に係る目的物又は役務の引渡し又は提供の期日の翌日から最後の賦払金の支払の期日までの期間が2年以上であること。
(3) その契約において定められているその資産の販売等の目的物の引渡しの期日までに支払の期日の到来する賦払金の額の合計額がその資産の販売等の対価の額の3分の2以下となっていること。
本事業が売買とされるリース取引に該当する場合には、C県は、民間事業者Aに年2回・30年間払いによってサービスの対価を支払うこととしていることから、その対価のうち賃貸料相当額の部分が資産の販売等の対価となります。
4 結論
以上のことからすれば、本事業については、その資産の契約形態が賃貸借であったとしても、その賃貸借の目的となる資産の引渡しの時にその資産の売買があったものとされるとともに(法令136の3)、民間事業者Aが一定の延払基準の方法により経理したときは、法人税法第63条《長期割賦販売等に係る収益及び費用の帰属事業年度》の規定の適用ができると解されます。