課所4−17
課資3− 6
課料3−10
査察1−26
平成12年7月3日
(改正)課個2−26
課総6− 23
課資3−9
査察1−72
令和3年12月2日

国税局長 殿
沖縄国税事務所長 殿

国税庁長官

 標題のことについて、所得税法(以下「法」という。)第 150条第1項の規定の適用に関し留意すべき事項等を下記のとおり定めたから、今後処理するものからこれにより取り扱われたい。

(趣旨)
 個人の青色申告の承認の取消しは、法第 150条第1項各号に掲げる事実及びその程度、記帳状況、改善可能性等を総合勘案の上、真に青色申告書を提出するにふさわしくない場合について行うこととし、この場合の取扱基準の整備等を図ったものである。

1 帳簿書類を提示しない場合における青色申告の承認の取消し

 法第 150条第1項第1号に規定する帳簿書類の備付け、記録又は保存とは、単に物理的に帳簿書類が存在することのみを意味するにとどまらず、これを税務職員に提示することを含むものである。
  したがって、税務調査に当たり帳簿書類の提示を再三にわたり求めたにもかかわらず調査対象者が正当な理由なくその提示を拒否した場合には、同号に規定する青色申告の承認の取消事由に該当することとなり、その提示がされなかった年分のうち最も古い年分以後の年分について、その承認を取り消す。

2 税務署長の指示に従わない場合における青色申告の承認の取消し

 帳簿書類の備付け、記録又は保存について、当該承認を受けている者が法第 148条第2項に規定する税務署長の指示に従わない場合には、法第 150条第1項第2号の取消事由に該当することとなるが、この場合、当該指示に係る年分以後の年分について、その承認を取り消す。
 なお、指示に従わない場合には、青色申告の承認の取消事由に該当する旨を告げる。

3 隠ぺい又は仮装の場合等における青色申告の承認の取消し

(青色申告の承認を取り消す場合)

(1) 青色申告の承認を受けている者につき、次のいずれかに該当する場合には、(4)の場合を除き、法第 150条第1項第3号の規定によりその該当することとなった年分以後の年分について、その承認を取り消す。

イ 決定又は更正をした場合において、当該決定又は更正後の所得金額(以下「更正等に係る所得金額」という。)のうち隠ぺい又は仮装の事実に基づく所得金額(以下「不正事実に係る所得金額」という。)が、当該更正等に係る所得金額の50%に相当する金額を超えるとき(当該不正事実に係る所得金額が 500万円に満たないときを除く。)

ロ 純損失の金額を減額する更正(所得金額があることとなる更正を含む。)をした場合において、当該更正により減少した部分の純損失の金額(所得金額があることとなる更正の場合にあっては、当該所得金額を加算した金額)のうち隠ぺい又は仮装の事実に基づく金額(以下「不正事実に係る純損失の金額」という。)が、当初の申告に係る純損失の金額(所得金額があることとなる更正の場合にあっては、当該所得金額を加算した金額。以下「申告に係る純損失の金額」という。)の50%に相当する金額 を超えるとき(当該不正事実に係る純損失の金額が 500万円に満たないときを除く。)

ハ 帳簿書類への記載等が不十分である等のため、法第 156条の規定による推計によらなければ適正な所得金額の計算ができないと認められる状況にある場合

(注) 法第 150条第1項第1号又は第2号の規定に該当する場合には、この基準にかかわらずその承認の取消しをするのであるから留意する。

(修正申告等があった場合の取消し)

(2) 期限後申告書又は修正申告書の提出があった場合において、これらの申告書の提出 が、調査があったことにより決定又は更正がされるべきことを予知してされたものであるときは、それぞれその期限後申告又は修正申告後の所得金額又は純損失の金額につき決定又は更正があったものとして(1)のイ又はロの取扱いを適用する。

(更正等に係る所得金額等)

(3) (1)のイ又はロの取扱いを適用する場合において、その年分の所得金額の計算上次に掲げる金額があるときは、これらの取扱いにおける更正等に係る所得金額又は申告に係る純損失の金額は、それぞれ次に掲げる金額による。

1 法第70条の規定による青色申告書を提出する者に係る繰り越された純損失の金額 当該金額の控除をしないで計算した金額

2 青色申告書を提出する者に限り必要経費に算入することができる金額(1の純損失の繰越控除を除く。) 当該金額を必要経費に算入したものとして計算した金額

(今後適正申告が期待できると認められる場合の取消しの見合せ)

(4) (1)のイ又はロに該当する場合であっても、その年分前7年以内の各年分につき、次の要件のいずれをも満たし、かつ、今後適正な申告が期待できると認められるときは、青色申告の承認の取消しを見合わせる。

1 青色申告の承認の取消しを受けていないこと

2 既往の調査による不正事実に係る所得金額又は不正事実に係る純損失の金額(純損失が減少した部分の金額を含む。)が 500万円に満たないこと

(2年分以上同時処理の場合の取消基準)

(5) 2年分以上の各年分について同時処理をする場合において、(1)から(3)までの取扱いは、その同時処理をした各年分ごとに判定するのであるが、(4)の1及び2の要件を満たすか否かに係る取扱いの適用については、当該同時処理をした年分のうち最終の年分前7年以内の各年分において当該1及び2に掲げる要件を満たすか否かにより判定する。

4 相当の事情がある場合の個別的な取扱い

 青色申告の承認の取消しは、青色申告制度の趣旨から真に青色申告書を提出するにふさわしくないと認められる場合に行うものであるから、3(1)に該当しない場合においても、二重帳簿を作成する等の方法により計画的に取引の一部を正規の帳簿に記載していない、3(1)の取消しに係る形式基準を回避するために当該基準を僅かに下回る過少申告を毎年継続して行っている等、当該納税者の帳簿書類の記録の状況、申告書の提出状況等からみて法第 150条第1項第3号の規定により取消しをすることが相当と認められるものについては、3(1)にかかわらず、所轄国税局長(沖縄国税事務所にあっては、国税事務所長)と協議の上その事案に応じた処理を行うものとする。

5 電子帳簿保存法の要件に従っていない場合における青色申告の承認の取消し

 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律の要件に従っていない場合における青色申告の承認の取消しに当たっては、電磁的記録又は電子計算機出力マイクロフィルムの備付け又は保存の程度(電磁的記録に代わる書面等による備付け又は保存の有無とその程度を含む。)、今後の改善可能性等を総合勘案の上、真に青色申告書を提出するにふさわしいと認められるかどうかを検討し、法第150条第1項の規定の適用を判断する。