課法2-11
課総10-23
査調7-7
査察1-132
令和8年6月30日

各国税局長 殿
沖縄国税事務所長 殿

国税庁長官

標題のことについて、下記のとおり定めたから、これにより適切に取り扱われたい。

(趣旨)

本指針は、法人税法施行規則(以下「法規」という。)第59条の2《関連者間取引に係る書類の整理保存の特例》及び第67条の2《関連者間取引に係る書類の整理保存の特例》(以下、これらを併せて「本特例」という。)について、適正な執行と納税者の事務負担の軽減とを両立させる観点から、運用上の基本的な考え方及び具体的な取扱いを整理し、その円滑な実施に資することを目的とする。

1 基本的な考え方

 法人税法(以下「法」という。)上、取引に関して相手方から受け取った注文書、契約書等の書類及び自己の作成したこれらの書類等を保存しなければならないとされているが、当該書類等にその取引の詳細な内容や支払額の計算の根拠(以下「取引情報」という。)の記載又は記録(以下「記載等」という。)が十分にされていない場合には、取引の実態解明が困難となることがある。とりわけ、一定の支配関係がある法人間の取引(いわゆるグループ内取引)においては、当事者間の関係に照らし、取引に関する詳細な資料が作成されないことも多く、そのような場合には、取引情報が外部から把握し難く、取引の実態解明がより困難となる状況が生じ得る。
 本特例は、このような取引情報の記載等が十分でない場合があることを踏まえ、内国法人に対し、関連者(法規第59条の2第3項又は第67条の2第3項に規定する関連者をいう。以下同じ。)との間で関連者間取引(法規第59条の2第1項又は第67条の2第1項に規定する関連者間取引をいう。以下同じ。)を行った場合において、当該関連者間取引に関して受領し、又は作成した書類等に必要記載事項(法規第59条の2第1項各号に掲げる当該関連者間取引の区分に応じ当該各号に定める事項をいう。以下同じ。)の記載等がないときは、その記載等がない事項(以下「特定事項」という。)を明らかにする書類(以下「特定事項記載書類」という。)を取得し、又は作成するとともに、その特定事項記載書類の整理及び保存(以下「保存等」という。)をしなければならないこととしている。
 一方で、従来の書類保存制度(法規59@三、67@一)が取引に関して受領し、又は作成した書類について一律の保存等を求めるものであるのに対し、本特例は、関連者間取引に該当するか否かの判断や、当該書類における記載事項の確認を要するほか、必要に応じ特定事項記載書類の取得又は作成を求めるものであるため、納税者に従来の対応状況に応じて追加的な事務負担を生じさせる場合がある。
 このような本特例の趣旨及び内容を踏まえ、取引の実態に即して特定事項記載書類の保存等の義務の履行の状況を個別具体的に判断するとともに、社会通念も踏まえ、事実関係、保存可能性等の具体的事情を総合的に勘案し、適切に運用するよう留意する。

2 損金算入との関係

 本特例は、関連者間取引に関して受領し、又は作成した書類等に必要記載事項の記載等がない場合に特定事項記載書類の保存等を義務付けるものであるが、当該保存等は、その基となった関連者間取引に係る費用の損金算入の要件とされているものではない。このため、特定事項記載書類の保存等が行われていない場合であっても、そのことのみをもって、関連者間取引に係る費用の損金算入が直ちに認められないことになるものではない。したがって、課税関係の判断に当たっては、関連者間取引の内容及び事実関係について帳簿書類その他の資料から実態の把握に努めるものとし、その結果に基づき実態に即した判断を行うことに留意する。

3 記載内容の程度に関する基本的な考え方と特定事項記載書類の取扱い

(1) 記載内容の程度に関する基本的な考え方

本特例は、納税者に対して取引の内容及び性質に照らして通常求められる範囲を超える詳細な資料の一律の保存等を求める趣旨のものではない。必要記載事項は、関連者間取引の内容を第三者の立場からみて客観的に把握することができる程度の記載が求められるものである。
 また、特定事項は、必要記載事項のうち、当該関連者間取引に関して受領し、又は作成した書類等に記載等がされた事項によって明らかとなっていないものであり、その内容は、当該関連者間取引の内容及び当該書類等における記載等の状況に応じて異なる。したがって、特定事項の内容及び記載の程度については、対価の額又は費用の額の算定又は計算の方法並びに資産(譲渡若しくは貸付けの対象となる工業所有権等又は役務の提供に係る資産をいう。(2)において同じ。)又は役務の提供の内容及びその資産の果たす機能等を踏まえ、実態に即して個別具体的に判断する。

(注)1 必要記載事項と、租税特別措置法施行規則第22条の10第6項《国外関連者との取引に係る課税の特例》に規定する独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(以下「ローカルファイル」という。)に記載すべき事項との間には一定の対応関係が認められ、当該ローカルファイルに記載された事項により関連者間取引に係る必要記載事項が確認できる場合があることから、当該ローカルファイルにおいて、当該関連者間取引の内容を客観的に把握することができる程度の必要記載事項の記載がある場合には、当該関連者間取引に係る特定事項はないこととなり、本特例は適用されない(法規59の2@、67の2@)。

2 その保存等に係る特定事項記載書類に記載すべき特定事項を電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律第2条第5号《定義》に規定する電子取引により取得した場合には、当該電子取引に係る電磁的記録について同法第7条《電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存》の規定に基づく保存義務が別途課され、この場合、当該特定事項に係る関連者間取引については、本特例は適用されない(法規59の2A、67の2A)。

(2) 関連者間取引の類型に応じた特定事項の内容に関する具体的な取扱い

特定事項の内容については、関連者間取引の内容に応じ、イ及びロに掲げる事項並びにこれらに係る例示を踏まえて判断する。
 なお、当該関連者間取引に関して受領し、又は作成した書類等における記載等が、例えば、対価の額について一式とされていたり、取引の内容が抽象的に表示されているのみであるなど、当該関連者間取引の実態を把握するに足りるものではない場合には、当該書類等の記載等のみをもって必要記載事項の記載等があるとはいえず、特定事項が生ずることとなることに留意する。

イ 工業所有権等に係る関連者間取引(第1号関係)

第1号に定める事項は、当該工業所有権等の内容、その範囲及び存続期間並びに内国法人の事業における当該工業所有権等の利用の内容等並びに対価の額及びその算定の基礎となる計算方法等に関する情報をいう。例えば、当該工業所有権等の内容及び利用状況と対価の額との関係について、関連者間取引の実態に即して合理的に把握できる情報が示されているものはこれに該当する。

ロ 役務の提供に係る関連者間取引(第2号関係)

第2号に定める事項は、役務の提供に係る事業活動の内容又は役務の具体的な内容及びその提供の態様並びにこれらに係る対価の額又は役務の提供に係る費用の額及びその計算方法等について把握することができるものをいう。当該役務が費用分担等に係る事業活動として行われるものであるか、経営の管理若しくは指導等に係る役務の提供として行われるものであるか、又はその他個々の役務の提供として行われるものであるかその類型に応じて、次に掲げる情報により、当該取引の実態を把握できると認められるものはこれに該当する。

(イ) 費用分担等に係る事業活動として行われる場合には、当該事業活動の内容、その実施方法、場所及び回数並びに当該事業活動により内国法人が受ける利益の内容並びに当該内国法人が負担する費用の額を算出する根拠となった計算方法等に関する情報

(ロ) 経営の管理又は指導等に係る役務の提供として行われる場合には、その役務の具体的内容、その提供の態様、提供の頻度又は期間及び当該役務の提供に係る対価の額の計算方法等に関する情報

(ハ) その他これらに類する役務の提供として行われる場合には、その役務の提供の日時、場所、期間又は回数、その具体的内容、対価の額の内訳及びその計算方法等に関する情報

4 実地調査時における対応

(1) 保存場所の取扱い及び運用上の留意点

本特例における特定事項記載書類については、関連者間取引に係る工業所有権等の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供を受けた内国法人に対して、その保存等の義務が生ずることとされている。このため、その保存等の義務を有する内国法人は、納税地又は関連者間取引に係る国内の事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地(以下「納税地等」という。)において当該特定事項記載書類の保存等をすることが原則である。他方、関連者間取引に係る必要記載事項の記載等がある書類等については、当該内国法人の親会社その他の関連者において一元的に保存等がなされている場合がある。このような場合には、事務負担に配慮する観点から、調査担当者の求めに応じて、当該内国法人が関連者から、当該書類等に記載等がある事項のうち特定事項記載書類に記載すべきものを遅滞なく入手し、当該事項を提示することができると認められるときは、当該内国法人の納税地等において特定事項記載書類の保存等がなされているものとして取り扱う。ただし、当該内国法人が当該事項を遅滞なく入手し、提示することができないと認められるときは、(2)により対応することに留意する。
 なお、当該内国法人が当該事項を遅滞なく入手し、提示することができると認められるか否かについては、その入手及び提示に係る体制並びに要する期間その他の事情を踏まえるとともに、提示された情報の内容が当該関連者間取引に係る必要記載事項を確認するに足りるものであるかどうかの観点から判断する。
 また、上記の取扱いは、調査担当者が必要に応じて関連者に対して行う調査その他の調査手続を妨げるものではないことに留意する。

(2) 保存等がない又は不十分な場合の対応

特定事項記載書類の保存等の状況に照らし、その保存等がないと認められる場合又は記載の程度が不十分と認められる場合には、調査担当者は、次に掲げる事項を調査対象者に明示した上で、合理的な期間を定め、特定事項記載書類の取得又は作成及びその提示を求めるものとする。この場合において、調査担当者は、調査対象者に対してその求めに係る説明内容や応答状況等の経過について、詳細に記録しておくことに留意する。

イ 取引区分 当該取引が関連者間取引に該当する理由及び法規第59条の2第1項各号のいずれに該当するか

ロ 記載事項 当該関連者間取引に係る特定事項の内容

ハ 不足の程度 特定事項記載書類への記載の程度が不十分と認められる場合には、その不十分と認められる内容及び当該内容の税務調査上の必要性

(注) 特定事項記載書類の保存等がない又は記載が不十分と認められるかどうかの判断に当たっては、(1)の考え方を踏まえ、当該内国法人等の納税地等における保存等の有無のみに基づく判断を行うことのないよう留意する。

5 青色申告の承認の取消しに係る取扱い

(1) 青色申告の承認の取消しに関する基本的な考え方

法第127条第1項第1号《青色申告の承認の取消し》においては、帳簿書類の備付け、記録又は保存が法第126条第1項《青色申告法人の帳簿書類》に規定する財務省令(法規第53条から第59条の2まで)で定めるところに従って行われていない場合には青色申告の承認を取り消すことができることとされており、本特例(法規第59条の2に係る部分に限る。(1)において同じ。)に基づく特定事項記載書類の保存等の義務についても、当該財務省令の規定に含まれるものである。青色申告の承認の取消し(以下「取消処分」という。)に係る事由に該当する事実を把握した場合において、当該事実が書類の保存等に係るものであるときは、従来の書類保存制度においては書類の保存の有無を基礎として当該事由の該当性が判断されてきたのに対し、本特例に係る義務の履行の成否の判断は、その性質上、関係法令の解釈や事実認定を伴うため、その保存等の有無のみにより取消処分の要否を決することは、青色申告制度の趣旨に照らし必ずしも適切であるとはいえない。したがって、取消処分の要否に係る判断は、4によりその保存等の状況及びその是正の可否等を把握した上で、その違反の程度その他の事情を踏まえ、適切に行うものとする。
 なお、特定事項記載書類の保存等の状況は、欠損金の繰越控除の適用に係る帳簿書類の保存要件(法規26の3@)にも関係するものであり、当該繰越控除の対象となる欠損金については、その欠損金が生じた事業年度に係る特定事項記載書類を含む帳簿書類の保存等が十分に行われていない場合には、当該繰越控除の適用を受けることができないことがある点にも留意する。

(注) 特定事項記載書類の保存等の義務の違反の程度が軽微である場合には、取消処分を行わず、改善指導にとどめることができる。

(2) 処分理由の記載

取消処分の合理性を担保する観点から、処分理由には、その取消処分の基因となった事実及び当該事実が法第127条第1項第1号の取消事由に該当することのほか、特定事項の内容、記載等が不十分である場合にはその程度を具体的に記載する。

(3) 取消処分後の特定事項記載書類の提示

内国法人が特定事項記載書類の保存等を行わなかったことにより取消処分がなされた後、当該取消処分に係る不服申立て等の段階で特定事項記載書類の保存等がされていることを示すために当該特定事項記載書類が提示されたとしても、このことによって、原処分の効力に影響を与えるものではない。

6 青色申告法人以外の普通法人等に係る取扱い

 本特例は、青色申告法人以外の普通法人等に対しても適用される(法規67の2)。これらの法人については青色申告の承認の取消しの問題は生じないが、特定事項記載書類を含む帳簿書類の保存等の状況により関連者間取引の実態を明らかにすることができないことその他の事情により法人税の課税標準又は欠損金額を実額により算定することが困難であると認められるときは、法第131条《推計による更正又は決定》の規定による推計課税の要否について検討を要することに留意する。
 なお、当初青色申告書を提出していた事業年度であっても、取消処分に係る事由に該当する事実がある場合には、当該事業年度に遡ってその承認が取り消されることがあるため、取消処分の対象となる事業年度以後の事業年度については同条の規定の適用対象となることに留意する。また、本特例に係る特定事項記載書類の保存等の義務は青色申告法人か青色申告法人以外の普通法人等であるかにかかわらず課されるものであるから、取消処分によってその義務を免れるものではないことにも併せて留意する。