(別紙)
平成22年11月19日

国税庁課税部長
西村 善嗣 殿

社団法人 生命保険協会
理事 棚瀬 裕明

T 照会の趣旨

 定期金給付契約に関する権利の評価方法(相続税法24、25)については、課税の適正化を推進する観点から、平成22年度税制改正において見直されました。
 この平成22年度税制改正において、定期金給付契約でその契約に関する権利を取得した時において定期金給付事由が発生しているものに関する権利の価額については、これまでの割合・倍数による評価から、

  • イ 解約返戻金の金額、
  • ロ 定期金に代えて一時金の給付を受けることができる場合には当該一時金の金額(以下「一時金の金額」といいます。)、
  • ハ 予定利率による複利年金現価率で計算した金額

のうちいずれか多い金額とされました(相続税法241一・三)。
 ところで、個人年金保険については、定期金給付契約に関する権利を取得した日(年金支払事由発生日。以下「権利取得日」といいます。)以後、最初に到来する年金支払日(以下「初回年金支払日」といいます。)について、先日付(一般的には権利取得日の年単位の応当日)に指定する取扱い(以下「据置き」といいます。)があり、この場合の改正後の相続税法第24条《定期金に関する権利の評価》の取扱いについて、明確化しておくことが必要であると考えております。
 このような必要性から、 Uの「照会の内容」に掲げる見解のとおり解して差し支えないか、ここに照会いたします。

U 照会の内容

 改正後の相続税法第24条第1項第1号及び第3号に規定するイの「解約返戻金の金額」又はロの「一時金の金額」については、同号に規定する金額となりますが、ハの「予定利率による複利年金現価率で計算した金額」については、次のとおりとなります。

1 初回年金支払日を権利取得日の翌日以後1年以内に指定した場合(初回年金支払日が権利取得日と同日(以下「期首払い」といいます。)の場合(別添:図12))
 改正後の相続税法第24条第1項第1号及び第3号に規定する有期定期金及び終身定期金として評価することとなります。

2 初回年金支払日を権利取得日の翌日以後1年を超えて指定した場合

(1) 期首払いの場合(別添:図34
 改正後の相続税法第24条第1項第1号及び第3号に規定するハの「予定利率による複利年金現価率で計算した金額」の算出に当たっては、有期定期金の「給付を受けるべき残りの期間(以下「給付期間」といいます。)の年数」及び終身定期金の「余命年数」に、据置きした期間(以下「据置期間」といいます。)の年数を含めないで計算することとなります。
 具体的には、

1 権利取得日における給付期間の年数(余命年数)から据置期間の年数を控除した残りの期間の年数(以下の算式において「実質給付期間の年数」といいます。)に応ずる予定利率による複利年金現価率によりハの「予定利率による複利年金現価率で計算した金額」を求め、

2 1により算出した価額に据置期間の年数に応ずる予定利率による複利現価率を乗じる、

こととなり、以下の算式のとおりとなります。

(給付を受けるべき金額の1年当たりの平均額)×(実質給付期間の年数に応ずる予定利率による複利年金現価率)×(据置期間の年数に応ずる予定利率による複利現価率)

(注)

  • 1 上記の「据置期間」は、据置き前の初回年金支払日から据置き後の初回年金支払日までの期間ではなく、権利取得日から据置後の初回年金支払日の直前の権利取得日の応当日までの期間として計算します(例えば、権利取得日が平成23年4月1日、据置後の初回年金支払日が平成26年4月1日の場合の据置期間は、平成23年4月2日(初日不算入。国税通則法101一)から平成25年4月1日(平成26年4月1日の直前の権利取得日の応当日)までの2年となります。)。
  • 2 給付を受けるべき金額の1年当たりの平均額の財産評価基本通達200《給付を受けるべき金額の1年当たりの平均額》の適用に当たっては、実質給付期間に給付を受けるべき金額の合計額を当該実質給付期間の年数で除した金額となります。
  • 3 予定利率は、権利取得日における予定利率となります(評基通200−6)。
  • 4 複利現価率は、小数点以下第3位未満四捨五入します。

(2) 初回年金支払日が権利取得日の翌年の応当日(以下「期末払い」といいます。)の場合(別添:図56
 上記(1)の算式と同じになります。

V 照会者の求める見解となることの理由

1 初回年金支払日を権利取得日の翌日以後1年以内に指定した場合(「期首払い」の場合)
 改正後の相続税法第24条第1項第1号及び第3号に規定するハの「複利年金現価率」は、毎期末に一定金額を一定期間受け取れる定期金の現在価値を求める際に用いられる率であることから、各期の定期金の給付を期末払いのものとして計算することとなるものと考えます。
 したがって、権利取得日の翌日以後1年以内に指定された初回年金支払日については、期末払いのものとして計算することとなりますので、据置期間は勘案せず、改正後の相続税法第24条の規定のとおりの計算をすることとなるものと考えます。

2 初回年金支払日を権利取得日の翌日以後1年を超えて指定した場合

(1) 期首払いの場合
 改正後の相続税法第24条第1項第1号及び第3号に規定するハの「予定利率による複利年金現価率で計算した金額」は、有期定期金では給付期間の年数、終身定期金では定期金の給付を受けると見込まれる期間の年数(余命年数)にそれぞれ給付を受ける定期金の課税時期における現在価値の総和としての評価額を求めるものとされています。
 このため、有期定期金の給付期間の年数及び終身定期金の余命年数は、実際に定期金の給付を受ける又は受けると見込まれる期間の年数を給付期間の年数(余命年数)とすることが相当であり、具体的には、権利取得日における給付期間の年数(余命年数)から据置期間の年数を控除した残りの期間の年数である実質給付期間の年数とするのが相当と考えます。
 そして、据置期間のない場合の定期金の給付期間の年数(余命年数)の算定にあっては、有期定期金の給付期間の年数は1年未満の端数切上げ(相規12の22一)、終身定期金の余命年数は1年未満の端数切捨て(相規12の3)とされているため、給付期間の年数(余命年数)は年単位となります。これにより計算される複利年金現価は、権利取得日から定期金の最終給付日の(有期定期金の場合は直後、終身定期金の場合は直前)の権利取得日の応当日までの期間(年単位)に受け取ることのできる金額の権利取得日における現在価値を求めていることとなります。
 一方、据置期間のある場合の定期金の「据置期間」は上記のとおり、複利年金現価の計算上、考慮すべきでない期間となりますので、据置後の初回年金支払日の直前の権利取得日の応当日が権利取得日であるとした場合の現在価値を複利年金現価によって求め、更に、その価額を権利取得日の現在価値に割り戻すことが必要となります。この場合、複利年金現価によって求めた価額に、据置期間の年数に応ずる予定利率による複利現価率を乗ずることが相当と考えます。
 なお、予定利率は、据置期間の有無にかかわらず、権利取得日における予定利率となります(評基通200−6)。

(2) 期末払いの場合
 上記(1)の理由と同じになります。

別添

図1 有期定期金(期首払いの場合)

 平成23年4月1日に定期金給付契約に関する権利を取得(年金支払事由が発生)し、初回年金支払日(平成23年4月1日)を1年据置きして、平成24年4月1日から毎年4月1日に年金を7回受け取る場合の給付期間の年数は平成23年4月2日から平成30年4月1日までの7年となり、評価額計算は以下のとおりとなります。

別添 図1

図2 終身定期金(期首払いの場合)

 平成23年4月1日の定期金給付契約に関する権利の取得(年金支払事由発生)時に80歳3カ月の男性が、初回年金支払日(平成23年4月1日)を1年据置きして、平成24年4月1日から毎年4月1日に年金を終身に渡って受け取る場合、平成23年1月1日現在において公表されている最新の完全生命表(評基通200−3)が第20回完全生命表であるとしたときの80歳男性の平均余命は8.22であるため、余命年数は8年となり(1年未満切捨て)、評価額計算は以下のとおりとなります。

別添 図2

図3 据置期間がある有期定期金(期首払いの場合)

 平成23年4月1日に定期金給付契約に関する権利を取得(年金支払事由が発生)し、初回年金支払日(平成23年4月1日)を3年据置きして、平成26年4月1日から毎年4月1日に年金を5回受け取る場合、平成26年4月1日から5回目を受け取る平成30年4月1日までの給付期間の年数は7年(平成23年4月2日〜平成30年4月1日)でありますが、平成23年4月2日から平成25年4月1日(据置後の初回年金支払日の直前の権利取得日の応当日)までの2年を据置期間の年数として、実質給付期間の年数は5年(7年[平成23年4月2日〜平成30年4月1日]−2年[平成23年4月2日〜平成25年4月1日])となり、評価額計算は以下のとおりとなります。

別添 図3

図4 据置期間がある終身定期金(期首払いの場合)

 平成23年4月1日の定期金給付契約に関する権利の取得(年金支払事由発生)時に80歳3カ月の男性が、初回年金支払日(平成23年4月1日)を4年据置きして、平成27年4月1日から毎年4月1日に年金を終身に渡って受け取る場合、平成23年1月1日現在において公表されている最新の完全生命表(評基通200−3)が第20回完全生命表であるとしたときの80歳男性の平均余命は8.22であるため、余命年数は8年となりますが(1年未満切捨て)、平成23年4月2日から平成26年4月1日(据置後の初回年金支払日の直前の権利取得日の応当日)までの3年を据置期間の年数として、実質給付期間の年数は5年(8年[平成23年4月2日〜平成31年4月1日]―3年[平成23年4月2日〜平成26年4月1日])となり、評価額計算は以下のとおりとなります。

別添 図4

図5 据置期間がある有期定期金(期末払いの場合)

 平成23年4月1日に定期金給付契約に関する権利を取得(年金支払事由が発生)し、初回年金支払日(平成24年4月1日)を2年据置きして、平成26年4月1日から毎年4月1日に年金を5回受け取る場合、平成26年4月1日から5回目を受け取る平成30年4月1日までの給付期間の年数は7年(平成23年4月2日〜平成30年4月1日)でありますが、平成23年4月2日から平成25年4月1日(据置後の初回年金支払日の直前の権利取得日の応当日)までの2年を据置期間の年数として、実質給付期間の年数は5年(7年[平成23年4月2日〜平成30年4月1日]−2年[平成23年4月2日〜平成25年4月1日])となり、評価額計算は以下のとおりとなります。

別添 図5

図6 据置期間がある終身定期金(期末払いの場合)

 平成23年4月1日の定期金給付契約に関する権利の取得(年金支払事由発生)時に80歳3カ月の男性が、初回年金支払日(平成24年4月1日)を3年据置きして、平成27年4月1日から毎年4月1日に年金を終身に渡って受け取る場合、平成23年1月1日現在において公表されている最新の完全生命表(評基通200−3)が第20回完全生命表であるとしたときの80歳男性の平均余命は8.22であるため、余命年数は8年となりますが(1年未満切捨て)、平成23年4月2日から平成26年4月1日(据置後の初回年金支払日の直前の権利取得日の応当日)までの3年を据置期間の年数として、実質給付期間の年数は5年(8年[平成23年4月2日〜平成31年4月1日]―3年[平成23年4月2日〜平成26年4月1日])となり、評価額計算は以下のとおりとなります。

別添 図6