1 照会の趣旨

 地方税統一QRコードについては、地方公共団体及び金融機関等の関係機関における事務負担の軽減並びに納税者の利便性向上のため、規制改革実施計画(令和3年6月18日閣議決定)において、「令和5年度課税分から地方税用QRコードの活用を開始できるよう措置する。」と決定されたこと(別添1)を受け、「地方税におけるQRコード規格に係る検討会 取りまとめ」(令和3年6月)において、令和5年4月1日から地方税統一QRコード付納付書(以下「本件納付書」といいます。イメージは別添2のとおりです。)が活用されることとなりました。
 また、eLTAX(地方税ポータルシステムの呼称であり、地方税における申告や納税などの手続を、インターネットを利用して電子的に行うシステムをいいます。以下同じです。)を経由する方法による地方税の電子納付については、地方税法等の一部を改正する法律(令和4年法律第1号。以下「令和4年改正地方税法」といいます。)等により、対象税目が全ての地方税に拡大されるとともに、スマートフォン決済アプリやクレジットカード等による電子納付を可能とすること等を内容とする地方税法及び関係法令の改正が行われました(令和5年4月1日施行)。
 これにより、改正後においては、地方公共団体から本件納付書の送付を受けた地方税の納税者は、本件納付書に付された地方税統一QRコード(以下「本件QRコード」といいます。)を読み取ることにより、インターネットバンキング等に係る操作の正確化・簡便化が図られることに加え、スマートフォン操作による電子納付が可能になると見込まれます。
 このほか、地方税の納税者が本件納付書を特定金融機関等(令和4年改正地方税法による改正後の地方税法第747条の6第3項に規定する特定金融機関等をいいます。なお、本照会文中に記載する地方税法令に係る条文は令和4年改正地方税法等による改正後のものを指します。)の窓口に持参し納付を行う場合には、特定金融機関等が本件QRコードから必要な情報を読み取り、eLTAXに送信する取扱いになることから、この場合についてもeLTAXを通じた地方税の電子納付として位置付けられます(特定金融機関等においては、納付書の送付事務等が削減されることによる事務負担の軽減が見込まれるほか、地方公共団体においても、納付書の受領確認事務等が削減されることによる事務負担の軽減が見込まれます。)。
 上記の場合、地方税を受領した特定金融機関等は、本件納付書に添付されている領収証書へ領収日付印を押印し納税者へ交付することとなりますが、納税者へ交付する当該領収証書(以下「本件領収証書」といいます。)は、印紙税法別表第三非課税文書の表(以下「非課税文書の表」といいます。)の「法令の規定に基づき地方公共団体の公金の取扱いをする者」が作成する「地方公共団体の公金の取扱いに関する文書」に該当し、非課税文書に該当すると解して差し支えないでしょうか。
 おって、本件QRコードの読み取りは特定金融機関等の窓口又は事務センターで行うこととなりますが、本件QRコードの読み取りを行った結果、本件QRコードの破損等により読み取りエラーが発生した場合についても、本件領収証書は非課税文書に該当すると解して差し支えないでしょうか。
 なお、本件照会については、以下の事項について事前に総務省自治税務局から確認を受けていますので、当該事項を前提とします。

イ 令和5年4月1日以降、本件納付書を使用して納付する地方税は地方税法第747条の6第2項に規定する特定徴収金に該当し、特定金融機関等の窓口における当該特定徴収金の受領は、特定徴収金に係る収納の事務として行うものとなること。
ロ 特定金融機関等の窓口又は事務センターで本件QRコードの読み取りを行った結果、読み取りエラーが発生した場合であっても、特定金融機関等の立場に変更があるものではなく、上記イの事実に影響を与えるものではないこと。

(注)「QRコード」は株式会社デンソーウェーブの登録商標となります。

2 照会に係る取引等の事実関係

 (1) 指定金融機関制度

 地方公共団体の公金の収納又は支払に当たっては、金融機関を指定して事務を取り扱わせなければならない(都道府県は義務であり、市町村は任意となります。)こととされており、指定を受ける金融機関は、その取り扱わせる公金取扱事務の内容から、指定金融機関、指定代理金融機関、収納代理金融機関及び収納事務取扱金融機関(以下「指定金融機関等」といいます。)の4つに区分されます(地方自治法第235条、地方自治法施行令第168条)。
 したがって、地方公共団体の公金の収納又は支払の事務については、原則として、指定金融機関等により取り扱われることとなります。

 (2) 特定徴収金の収納の特例

 地方公共団体は、地方税に係る地方公共団体の徴収金のうち、納税義務者又は特別徴収義務者がeLTAXを経由する方法により電子的に納付若しくは納入するもの又は本件納付書を使用して納付若しくは納入するもの(以下「特定徴収金」といいます。)に係る収納の事務については、指定金融機関等ではなく、地方税共同機構(以下「機構」といいます。)に行わせることとされており、機構は、地方税法において、地方公共団体が共同して運営する組織として位置付けられています(地方税法第747条の6第1項及び第2項、同法第761条)。
 また、機構は、特定徴収金の収納の事務の一部を特定金融機関等に委託することができることとされており、その場合は地方公共団体に通知することとされています(地方税法第747条の6第3項、地方税法施行令第57条の5の2第1項)。
 なお、特定金融機関等とは、地方税法第20条の11の2に規定する金融機関等のうち、特定徴収金の収納の事務を適切かつ確実に遂行することができるものとして、地方公共団体の徴収金の収納の事務を行うための役務(日本マルチペイメントネットワーク運営機構が運営するマルチペイメントネットワークを利用して特定徴収金を収納する役務)を提供することができる金融機関等をいいます(地方税法第747条の6第3項、地方税法施行規則第24条の44及び平成31年総務省告示第150号)。
 このほか、特定金融機関等は、特定徴収金の収納の事務の一部の委託を受けた場合、機構を通じて、地方公共団体に対して特定徴収金を払い込む責任を負うこととされています(地方税法施行令第57条の5第2項、第57条の5の2第3項)。
 おって、特定徴収金については、従来、対象税目が一部の地方税に限られていましたが、令和4年改正地方税法等により、令和5年4月1日以降については、対象税目が全ての地方税に拡大されました(地方税法第747条の6第2項)。

 (3) 地方税統一QRコードと特定徴収金の納付等

 特定徴収金の納付については、従来、eLTAX上での納付手段である「インターネットバンキング」や「ダイレクト納付」等(以下「インターネットバンキング等」といいます。)のみに限られていましたが、令和4年改正地方税法等により、令和5年4月1日以降については、本件QRコード等を活用することにより、スマートフォン決済アプリやクレジットカード等による電子納付が可能となりました。
 具体的には、令和5年4月1日以降、本件納付書の送付を受けた地方税の納税者が本件QRコードを読み取ることにより、インターネットバンキング等に係る操作の正確化・簡便化が図られることに加え、スマートフォン操作による電子納付がeLTAXで可能となるほか、地方税の納税者が本件納付書を特定金融機関等の窓口に持参し納付を行う場合についても、特定金融機関等が本件QRコードを読み取ることにより、特定徴収金として納付することとなりました。
 これらの特定徴収金の納付方法を整理すると以下のとおりとなります。

イ 令和5年3月31日まで インターネットバンキング等

ロ 令和5年4月1日以降  インターネットバンキング等、スマートフォン操作による電子納付、特定金融機関等の窓口に本件納付書を持参することによる納付

3 上記2の事実関係に対して照会者の求める見解となることの理由

 (1) 印紙税法等の規定

イ 金銭又は有価証券の受取書

印紙税法別表第一課税物件表(以下「課税物件表」といいます。)は、課税文書として「売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書」(第17号の1文書)及び「売上代金以外に係る金銭又は有価証券の受取書」(第17号の2文書)を掲げています。
 また、印紙税法基本通達別表第一第17号文書1は、「金銭又は有価証券の受取書」とは、金銭又は有価証券の引渡しを受けた者が、その受領事実を証明するために作成し、その引渡者に交付する単なる証拠証書をいい、文書の表題、形式がどのようなものであっても、その作成目的が当事者間で金銭又は有価証券の受領事実を証明するものであるときは、これに該当する旨定めています。

ロ 非課税となる金銭又は有価証券の受取書

課税物件表の第17号文書非課税物件欄は、「金銭又は有価証券の受取書」(第17号文書)のうち、「記載された受取金額が5万円未満のもの」は非課税文書に該当する旨定めています。

ハ 非課税となる地方公共団体の公金の取扱いに関する文書

非課税文書の表では「法令の規定に基づき地方公共団体の公金の取扱いをする者」が作成する「地方公共団体の公金の取扱いに関する文書」について、非課税文書に該当する旨定めています(印紙税法第5条第三号、印紙税法別表第三)。
 また、「地方公共団体の公金の取扱いに関する文書」については、印紙税法基本通達別表第一非課税文書3において、地方自治法の規定に基づく指定金融機関等が公金の出納に関して作成する文書をいい、法令の規定に基づき、地方公共団体から地方税や水道料金等(以下「地方税等」といいます。)の収納の事務の委託を受けた者(以下「受託者」といいます。)が、地方税等を納付しようとする者(以下「支払者」といいます。)から、地方税等の交付を受けたときに、受託者が支払者に対して交付する金銭の受取書についても、当該文書に含まれる旨定めています。

ニ 印紙税の納税義務の成立

印紙税の納税義務は、課税文書を作成した時に成立し、課税文書の作成者がその作成した課税文書について印紙税を納める義務がある旨定めています(国税通則法第15条第2項第十二号、印紙税法第3条)。
 また、課税文書の作成とは、印紙税法基本通達第44条において、単なる課税文書の調製行為をいうのではなく、課税文書となるべき用紙などに課税事項を記載し、これをその文書の目的に従って行使することをいい、相手に交付する目的で作成される課税文書については、交付の時が課税文書の作成の時である旨定めています。

 (2) 本件領収証書に係る印紙税の取扱い

 上記3(1)ハのとおり、法令の規定に基づき地方公共団体から地方税の収納の事務の委託を受けた者(受託者)が支払者から地方税の交付を受けたときに、受託者が支払者に対して交付する金銭の受取書は、「地方公共団体の公金の取扱いに関する文書」に含まれることとされています。
 このため、令和5年4月1日以降、本件納付書の送付を受けた地方税の納税者が本件納付書を特定金融機関等の窓口に持参し地方税の納付を行う場合に、地方税を受領した特定金融機関等が上記の「法令の規定に基づき地方公共団体から地方税の収納の事務の委託を受けた者」に該当するか否かについて、以下検討します。

 上記2(2)のとおり、地方税法の規定に基づき、地方公共団体は、特定徴収金に係る収納の事務を機構に行わせることとされており、機構は、特定徴収金の収納の事務の一部を特定金融機関等に委託することができることとされています。
 特定金融機関等は、上記2(2)のとおり、法令(地方税法)の規定に基づき、特定徴収金の収納の事務を適切かつ確実に遂行することができると認められ、かつ、一定の要件に該当する者であり、機構は、特定徴収金の収納の事務の一部を特定金融機関等に委託した場合は地方公共団体に通知することとされています。
 このほか、特定金融機関等は、特定徴収金の収納の事務の一部の委託を受けた場合、機構を通じて、地方公共団体に対して特定徴収金を払い込む責任を負うこととされています。
 これらに加え、機構は、上記2(2)のとおり、地方税法の規定により「地方公共団体が共同して運営する組織」と位置付けられています。
 以上により、特定金融機関等は、法令(地方税法)の規定に基づき、特定徴収金の納付委託を受ける者として適切かつ確実な能力を有するとともに、各種の責任を(機構を通じ)地方公共団体に負うこととされていることに加え、地方税法上「地方公共団体が共同して運営する組織」である機構から特定徴収金の収納の事務の一部の委託を受けていると認められます。
 これらのことからすると、特定金融機関等は「法令(地方税法)の規定に基づき地方公共団体から地方税(特定徴収金)の収納の事務の委託を受けた者(受託者)」であると取り扱って差し支えないと考えます。
 また、上記1の前提事項のとおり、令和5年4月1日以降、本件納付書を使用して納付する地方税は「特定徴収金」に該当し、特定金融機関等の窓口で行う当該特定徴収金の受領は「特定徴収金に係る収納の事務」として行うものであると認められ、上記3(1)ニのとおり、印紙税の納税義務は、課税文書の作成の時に成立し、相手に交付する目的で作成される課税文書については、交付の時が課税文書の作成の時であるとされています。
 以上により、本件領収証書は、「法令(地方税法)の規定に基づき地方公共団体から地方税(特定徴収金)の収納の事務の委託を受けた者(受託者)」である特定金融機関等が、支払者から特定徴収金の交付を受けたときに、受託者(特定金融機関等)が支払者に対して交付する金銭の受取書であると認められることから、「地方公共団体の公金の取扱いに関する文書」に該当し、支払者に本件領収証書を交付する時点で印紙税法第5条第三号に規定する非課税文書に該当すると考えます。

 なお、特定金融機関等の窓口又は事務センターで本件QRコードの読み取りを行った結果、読み取りエラーが発生した場合であっても、上記1の前提事項のとおり、本件納付書を使用して納付する地方税は「特定徴収金」に該当し、当該特定徴収金の受領は「特定徴収金に係る収納の事務」として行うものと認められ、読み取りエラーが発生したことをもって「特定徴収金の収納の事務を適切かつ確実に遂行することができるものとして、地方公共団体の徴収金の収納の事務を行うための役務を提供することができる金融機関等」という特定金融機関等の立場に変更があるものではないことから、この場合において特定金融機関等の窓口で交付する本件領収証書についても、「地方公共団体の公金の取扱いに関する文書」に該当し、上記と同様に支払者に交付する時点で非課税文書に該当すると考えます。