1 照会の趣旨

 国は、東京一極集中の是正及び地方の担い手不足対応のため、地方における起業、UIJターンによる起業・就業者を創出する地方公共団体の取組を地方創生推進交付金で支援することとし、地方公共団体は、当該地方創生推進交付金を活用し、地域の課題に取り組む「社会性」「事業性」「必要性」の観点をもった事業(以下「社会的事業」という。)の起業を支援するための地方創生起業支援事業(以下「起業支援事業」という。)及び地域の重要な中小企業等への就業や社会的事業の起業をする移住者を支援するための地方創生移住支援事業(以下「移住支援事業」という。)を行うことを予定している。
 起業支援事業及び移住支援事業においては、支援対象者にそれぞれ支援金(以下、「起業支援金」又は「移住支援金」という。)が支給されるところ、それらの課税関係について、下記3のとおり取り扱って差し支えないか、照会する。

2 照会に係る取引等の事実関係

(1) 起業支援事業について

 起業支援事業は、各都道府県が地域再生計画に定める社会的事業の分野において、地域課題の解決を目的として新たに起業する者(起業者が法人の設立を行う場合は当該法人)に対して、起業に要した経費の一部の補助を行うものであり、事業の概要は以下のとおりである。

イ 事業主体
 都道府県
 ただし、効率的・効果的な事業の執行の観点から、起業支援事業の審査、支給業務等は都道府県が公募又は選定した団体(以下「執行団体」という。)が行う。

ロ 支給対象者
 次の(イ)から(ハ)までの要件を全て満たす者。

(イ) 東京圏(東京都、埼玉県、千葉県及び神奈川県)以外の道府県又は東京圏内の条件不利地域(注1)において社会的事業(注2)の起業を行うこと。

(注1)  過疎地域自立促進特別措置法、山村振興法、離島振興法、半島振興法又は小笠原諸島振興開発特別措置法の指定区域を含む市町村のうち、政令指定都市を除く市町村。
(注2)  都道府県においてそれぞれの実情を踏まえて設定するものであるが、例えば、地域活性化関連・まちづくりの推進・過疎地域等活性化関連・買物弱者支援・地域交通支援・社会教育関連・子育て支援・環境関連・社会福祉関連等の事業が想定される。

(ロ) 起業支援事業の公募開始日以降、事業期間完了日までに個人開業届又は法人の設立を行うこと。

(ハ) 起業地の都道府県内に居住していること、又は居住予定であること。

ハ 対象経費
 新たに起業する者が起業に要する経費(注1)(人件費、店舗等借料、設備費(注2)、原材料費、借料、知的財産権等関連経費、謝金、旅費、外注費、委託費、マーケティング調査費、広報費等)

(注1) 経費ごとの上限額は設定していない。

(注2) 土地、建物の取得は対象外、車両の取得は原則対象外。

ニ 支給金額
 起業に要した経費の2分の1に相当する額(最大200万円)

ホ 支給方法
 精算払い

ヘ 交付手続
 申請をする者は、本人確認書類に加え、上記ロの要件に該当することを証する書類を地方公共団体に提出することとし、地方公共団体は、執行団体による審査を経て、上記ロの要件に該当すると認めるときは起業支援金を支給する。
 ただし、国として上記申請又は審査の具体的方法までは定めておらず、支援の対象となる経費について、固定資産の取得等に要する費用とそれ以外の費用とを明確に区分できる制度とはなっていない。

(2) 移住支援事業について

 移住支援事業は、東京23区(在住又は通勤)から東京圏外等へ移住し、移住支援事業を実施する地方公共団体が選定した中小企業等に就業した者又は起業支援金の交付決定を受けた者に対し、移住に要する引越代、交通費等及び移住先における住居費の補助を目的として、都道府県及び市町村が共同で支援金を支給するものであり、事業の概要は以下のとおりである。

イ 事業主体
 都道府県及び市町村(支給事務は市町村が行う)

ロ 支給対象者
 次の(イ)から(ハ)までの要件を全て満たす者。

(イ)  移住直前に、連続して5年以上、①東京23区に在住していた者又は②東京圏(条件不利地域を除く。)に在住し、かつ、東京23区に通勤していた者。
(ロ)  東京圏以外の道府県、又は東京圏内の条件不利地域に転入した者。
(ハ)  移住支援事業を実施する都道府県が選定した中小企業等(注)に新規就業した者又は起業支援金の交付決定を受けた者。
(注) 官公庁、独立行政法人、国又は地方公共団体が設立・出資しているもの等を除く。

ハ 支給金額
 単身での移住の場合は最大60万円、世帯での移住の場合は最大100万円

ニ 支給方法
 一括で支給(使途を問わない定額渡し切り方式)

(3) 起業支援事業及び移住支援事業の事業期間は2019年度から2024年度までの6年間である。

(4) 起業支援事業及び移住支援事業について、国が定める取扱いの要件は上記⑴及び⑵のとおりであるが、当該要件の範囲内であれば、事業主体である地方公共団体が事業の趣旨を踏まえつつ独自に要件を設定することは差し支えない。ただし、この場合でも、事業の本来の趣旨を踏まえ、極端に対象者が少なくなったりすることがないよう、合理的な範囲内で設定することとする。

3 照会者の求める見解となることの理由

(1) 起業支援金について

 起業支援金は、上記2(1)のとおり、地方公共団体が社会的事業の分野において地域課題の解決を目的として新たに起業した者に対して、その起業した業務の遂行上生じた経費の一部を補助するものである。
 したがって、起業支援金の支給対象が個人の場合は、その起業した業務の遂行に付随して生じた収入であると解されることから、当該個人の事業所得、不動産所得、山林所得又は雑所得の金額の計算上、総収入金額に算入することとなると考える。
 また、起業支援金の支給対象が法人の場合は、当該法人の益金の額に算入することとなると考える(法法22②)。
 なお、例えば、地方公共団体が支給対象者に対し、起業支援金のうち固定資産の取得に充てられた部分と認められる金額を明示して通知する場合又は支給対象者が固定資産の取得に要した経費のみを地方公共団体に申請し、これに対し起業支援金が支給される場合には、所得税法第42条《国庫補助金等の総収入金額不算入》又は法人税法第42条《国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入》の規定の適用があると取り扱って差し支えないものと考える。

(2) 移住支援金について

 所得税法上、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものは一時所得とされている(所法34①)。
 移住支援金は、上記2⑵のとおり、移住先の地方公共団体が、一定の要件を満たす移住者に対して支給するものであるところ、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得のいずれにも該当せず、当該支給の対象から官公庁に新規就業した者は除かれていることから給与所得にも該当しないと考える。
 そして、移住支援金は、営利を目的とする継続的行為から生じたものではなく、労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質も認められないとともに、一時に支給されるものであるから、一時所得に該当すると考える。