別紙

医政地発0331第4号
令和7年3月31日

国税庁 課税部審理室長 殿

厚生労働省医政局地域医療計画課長

産科医療補償制度(以下「本体制度」といいます。)は、安心して産科医療を受けられる環境整備の一環として、分娩に係る医療事故により脳性麻痺となった児及びその家族の経済的負担を速やかに補償するとともに、事故原因の分析を行い、将来の同種事故の防止に資する情報を提供すること等により、紛争の防止・早期解決及び産科医療の質の向上を図る仕組みとして平成21年に創設されました。
 本体制度においては、産科医療補償制度標準補償約款の規定に基づき、分娩に係る医療事故により脳性麻痺となった児に対して一定の補償金(以下「本件補償金」といいます。)が支払われることになっており、本件補償金については、「産科医療補償制度に基づき支払われる補償金の所得税法上の取扱いについて(平成20年11月4日付医政総発第1104001号照会に対する回答)」(平成20年11月6日付課審4−198、課個2−24)にて、旧所得税法(平成22年3月法律第6号による改正前のもの)第9条第1項第16号及び所得税法施行令第30条に規定する非課税所得として取り扱って差し支えないことをお示しいただいたところです。
 その後、令和4年1月に本体制度の補償対象基準の見直しが行われたことを機に、今般、過去に補償対象外となった児等について、令和4年1月改定後の補償対象基準に相当する給付対象の基準を満たす場合に、本体制度において損害保険会社から本体制度の運営組織(以下「制度運営組織」といいます。)に返還された保険料を原資として給付金を支払う産科医療特別給付事業(以下「本件事業」といいます。)を実施することになりました。
 そこで、本件事業において、本件事業の運営組織である公益財団法人日本医療機能評価機構(以下「事業運営組織」といいます。)から給付対象となる児(当該児が令和7年1月1日時点で死亡している場合には、その児の配偶者、直系血族又は生計を一にするその他の親族)(以下「本件給付対象者」といいます。)に支払われる給付金についても、所得税法第9条第1項第18号及び所得税法施行令第30条に規定する非課税所得として取り扱って差し支えないか伺います。
 なお、本件事業の概要及び当該給付金が非課税所得として取り扱われる理由は、下記のとおりです。

1 本件事業の概要

(1) 本件事業の給付対象

制度運営組織である公益財団法人日本医療機能評価機構が損害保険会社との間で締結する産科医療補償責任保険契約(以下「本件保険契約」といいます。)の被保険者として本体制度に加入している分娩機関の医学的管理下における分娩により出生した児のうち、以下の条件を満たす者を給付対象とします。

妊産婦が当該分娩機関との間で本体制度に係る補償契約を締結した上で、当該分娩機関に対して保険料相当分を支払っており、現に本件補償金又は当該分娩機関等からの損害賠償金等(1,200万円以上)を受領していないこと
平成21年1月から令和3年末日までの間に出生し、出生当時の補償対象基準における個別審査の対象であって、令和4年1月改定後の補償対象基準に相当する給付対象の基準を満たすこと

(2) 本件事業の給付金(以下「本件給付金」といいます。)の支給先

以下のいずれかに該当する者に対して支給します。

事業運営組織が給付対象として認定した児
 事業運営組織が給付対象として認定した児が令和7年1月1日時点で死亡している場合における、当該児(以下「死亡児」といいます。)の保護者(※)
(※)保護者とは、児について親権を行う者、未成年後見人又はこれらに準ずる者であって、当該児を現に監護する者(死亡児を監護していた者を含みます。)をいいます。

(3) 本件給付金の額

1,200万円(一時金)となります。

(4) 本件給付金の財源

本体制度では、妊産婦が本体制度に加入している分娩機関との間で本体制度に係る補償契約を締結した上で、当該分娩機関に対して保険料相当分を支払い、当該分娩機関から制度運営組織を介して損害保険会社に保険料が納付され、当該損害保険会社から当該分娩機関に保険金が支払われることで、分娩機関による補償を可能としていますが、当該損害保険会社は、徴収した保険料のうち経費を除いた一部の額を特約に基づき制度運営組織に返還しています。本件給付金の財源は制度運営組織に返還された保険料を活用することとなります。

(5) 本件給付金の支払方法

  1. イ (1)の給付対象に該当する児又はその保護者は、当該児が事業運営組織から給付対象として認定を受けた後に、事業運営組織に対して給付申請をします。
  2. ロ 事業運営組織は、給付申請書類を受け取った後、不備や不足がないか確認を行います。
    ※ 申請書類に不備や不足がある場合には、訂正や追加提出を求めます。
  3. ハ 事業運営組織は、すべての書類を受領した後、当該児又はその保護者が指定した金融機関の口座に本件給付金を振り込みます。

(6) 損害賠償金等との調整

本件事業において、児又はその保護者が分娩機関等から1,200万円以上の損害賠償金等を受領している場合は、本件給付金は支払われないこととされています。また、本件給付金の支払後、分娩機関等が損害賠償責任を負うことが判明した場合には、既に支払われた本件給付金は分娩機関等が児又はその保護者に対し支払うべき損害賠償金等に優先的に充当されます。この場合、事業運営組織は、その充当された金額について、児又はその保護者が分娩機関等に対して有する権利を取得します。

2 本件給付対象者に支払われる本件給付金が非課税所得として取り扱われる理由

(1) 非課税所得とされる保険金、損害賠償金等について

損害保険契約に基づき支払を受ける保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含みます。)で、心身に加えられた損害に基因して取得するものは、非課税所得とされています(所法91十八)。これには、損害保険契約に基づく保険金及び生命保険契約に基づく給付金で、身体の傷害に基因して支払を受けるものその他これらに類するものが含まれるものとされています(所令30本文・一)。
 また、上記にいう「身体の傷害に基因して支払を受けるもの」は、自己の身体の傷害に基因して支払を受けるものをいいますが、その支払を受ける者と身体に傷害を受けた者とが異なる場合であっても、その支払を受ける者がその身体に傷害を受けた者の配偶者若しくは直系血族又は生計を一にするその他の親族であるときは、当該保険金又は給付金についても非課税所得とされています(所基通9−20)。

(2) 本件給付対象者に支払われる本件給付金について

本件給付対象者に支払われる本件給付金は、次のイからハまでの点を踏まえれば、本件補償金と同様、「損害保険契約に基づき身体の傷害に基因して支払を受けるものに類するもの」として、非課税所得として取り扱うのが相当と考えられます(所法91十八、所令30本文・一)。

  1. イ 本件給付金は、本件補償金の支払に充てられずに損害保険会社から返還された保険料を原資としています。当該保険料は、分娩機関が本件保険契約の被保険者として、制度運営組織を通じて損害保険会社に支払ったものであり、当該保険料相当分については、妊産婦が分娩機関と締結した補償契約に基づき、分娩費用の一部として負担したものです。
  2. ロ 児又はその保護者が分娩機関等から損害賠償金等を1,200万円以上受領している場合は本件給付金は支払われず、また、本件給付金が支払われた後に分娩機関等が損害賠償責任を負うことが判明した場合には、本件給付金は分娩機関等が児又はその保護者に対し支払うべき損害賠償金等に優先的に充当され、事業運営組織が児又はその保護者が分娩機関等に対して有する権利を取得することとしており、損害保険契約に基づく保険金と同様に、填補すべき損害の額を超えて本件給付金と損害賠償金等が重複して支払われることはありません。
  3. ハ 本件給付金は、平成21年1月から令和3年末日までの間に本体制度の加入分娩機関の医学的管理下において出生し、本体制度における出生当時の補償対象基準における個別審査の対象であって、令和4年1月改定後の補償対象基準に相当する給付対象の基準を満たす脳性麻痺児について支払われるものです。したがって、本件給付対象者が支払を受ける本件給付金については、自己の身体の傷害に基因して支払を受けるもの又は身体に傷害を受けた者の配偶者、直系血族若しくは生計を一にするその他の親族が支払を受けるものに該当します。

以上

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