社会保険の未適用事業所が社会保険に加入する等の場合、当該事業所に使用される者は、遡及して健康保険の資格を取得するとともに、国民健康保険の資格を喪失する。
その際、健康保険料については、保険料徴収権の消滅時効の規定により、2年遡及して月単位で徴収される(健康保険法(大正11年法律第70号。以下「健保法」という。)第193条等)一方、既に納付されていた国民健康保険料については、遡及して減額の賦課決定を行った上で還付することになる。この賦課決定については、各年度単位で行うが、期間制限の規定により、当該年度における最初の保険料の納期の翌日から起算して2年を経過した日以後においてはすることができない(国民健康保険法(昭和33年法律第192号。以下「国保法」という。)第110条の2)ことから、還付しきれない部分が残り、結果的に保険料の二重払いが生ずることがあり得る。
しかしながら、特に被保険者に帰責性がないような場合に結果的に保険料の二重払いが生ずることは、国民健康保険事業の運営に対する信頼に影響し得る。これを踏まえ、例えば、被保険者の不利益を補填するために、各市町村(特別区を含む。以下同じ。)の判断により、地方自治法(昭和22年法律第67号)第232条の2の規定に基づく寄附として被保険者に保険料相当分を返還することが考えられるが、寄附を受けた被保険者において当該寄附を非課税として取り扱って差し支えないか、照会する。
資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金及びこれに類するものは非課税とされる(所得税法第9条第1項第十七号、所得税法施行令第30条第三号)。
また、葬祭料、香典又は災害等の見舞金で、その金額がその受贈者の社会的地位、贈与者との関係等に照らし社会通念上相当と認められるものについては、所得税法施行令第30条の規定により課税しないものと取り扱われている(所得税基本通達9−23)。
一般的には、個人が地方公共団体から地方自治法第232条の2の規定に基づいて寄附を受けた場合、当該寄附について所得税の課税対象となるものと考えられる。
しかしながら、本件にあっては、上記2(4)により保険料の二重払いが生じている被保険者において、まさに保険料の二重払いという経済的損失が生じているものと認められる。
そして、上記2(5)により各市町村が地方自治法第232条の2の規定に基づき当該被保険者に対し不利益の補填を目的として保険料相当額を寄附することについては、当該被保険者から国民健康保険料の納付を受けた保険者である各市町村が、国保法上当該被保険者に対して還付しきれない保険料相当分を実質的に還付しようとするものであり、社会通念上相当の理由があると認められる。
したがって、上記2(5)により各市町村が被保険者に寄附する保険料相当分については、資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金に類するものとして、非課税として取り扱って差し支えないものと考える。