平成26年6月19日

国税庁課税部長 殿

東京電力株式会社 

1 照会の趣旨

 今般の福島第一・第二原子力発電所の事故(以下「本件事故」といいます。)により被害を受けられた方々に当社がお支払している賠償金の所得税法上の取扱いについては、平成23年11月30日付国税庁文書回答及び平成24年11月29日付国税庁文書回答において明らかにされているところです。

 この度、平成25年12月20日に閣議決定された「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」及び同月26日に原子力損害賠償紛争審査会が取りまとめた「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針第四次追補(避難指示の長期化等に係る損害について)」を踏まえ、当社において、「住居確保に係る費用の賠償および住居以外の建物修復に係る費用の賠償に関するご案内について」を本年4月30日に公表しました。

 今後、当該公表内容に従って被害を受けられた個人の方々に対して、以下の「住居確保に係る費用」に対する賠償金をお支払していくこととなりますが、個人の方が受ける当該賠償金については、所得税法上、非課税に該当するものと取り扱ってよろしいか照会いたします。

(1)持ち家に居住されていた方の「住居確保に係る費用」

  • ・下記2(1)のイに掲げる住宅等の再取得費用等
  • ・下記2(1)のロに掲げる住宅の建替え費用等

(2)借家に居住されていた方の「住居確保に係る費用」

  • ・礼金等の一時金相当額
  • ・本件事故発生時点の借家との家賃差額相当額

2 照会に係る取引等の事実関係

(1) 持ち家に居住されていた方の「住居確保に係る費用」に対する賠償金

本件事故発生時点において避難指示区域の見直し後の区域(注1)にある持ち家に居住されていた方を対象に、移住(注2)される際の住宅や宅地の購入費用や、帰還される際の建替え・修繕費用を、次のとおり賠償します。

(注)1 帰還困難区域、居住制限区域及び避難指示解除準備区域(以下、これらを併せて「対象区域」といいます。)をいいます。
2 長期にわたり帰還できないこと等の理由から、生活の本拠を本件事故発生時点の住居から移すことをいいます。

イ 移住される場合

本件事故発生時点において、1移住を余儀なくされた区域(注1)にある持ち家に居住されていた方及び2移住を余儀なくされた区域以外の対象区域にある持ち家に居住されていた方のうち移住をすることが合理的であると認められる方を対象に、移住に際して実際に負担された以下の項目に掲げる費用(以下「住宅等の再取得費用等」といいます。)のうち、必要かつ合理的な範囲の費用を賠償します(一定の限度額を有します。)。

項目内容
住宅の再取得費用移住先の住宅を新たに確保するために要した新築工事費用、家賃等のうち、従前の住宅に係る賠償金額を超えて負担された費用(注2)
宅地の再取得費用移住先の宅地を新たに確保するために要した宅地取得費用、借地権の設定費用等のうち、従前の宅地に係る賠償金額を超えて負担された費用(注2)
住宅・宅地の再取得に係る諸費用移住先の住宅及び宅地を新たに確保するために要した登記費用や消費税、不動産取得税、設計監理料等の諸費用

(注)1 帰還困難区域並びに大熊町及び双葉町のその他の対象区域(居住制限区域及び避難指示解除準備区域)をいいます。
2 従前の住宅及び宅地に係る賠償金については、「財物価値の喪失又は減少等」として別途賠償しております。

ロ 帰還される場合

本件事故発生時点において、移住を余儀なくされた区域以外の対象区域に居住されていた方で、帰還先である従前の住宅の管理不能に起因する建替え又は修繕が必要である方を対象に、帰還に際して実際に負担された以下の項目に掲げる費用(以下「住宅の建替え費用等」といいます。)のうち、必要かつ合理的な範囲の費用を賠償します(一定の限度額を有します。)。

項目内容
住宅の建替え・修繕費用従前の住宅の建替え又は修繕のために要した費用のうち、従前の住宅に係る賠償金額を超えて負担された費用(注)
住宅の建替えに要した解体費用従前の住宅の建替えのために要した解体費用
住宅の建替え・修繕に係る諸費用従前の住宅の建替え又は修繕のために要した登記費用や消費税、不動産取得税、設計監理料等の諸費用

(注)従前の住宅に係る賠償金については、「財物価値の喪失又は減少等」として別途賠償しております。

(2) 借家に居住されていた方の「住居確保に係る費用」に対する賠償金

本件事故発生時点において対象区域内の借家に居住されていた方を対象に、帰還又は移住される先での新たな住居を確保(借家に限らず住宅を新たに取得した場合等も含みます。)するため負担を余儀なくされた費用として、次のとおり賠償します。

イ 対象区域内であった地域を新たな生活の本拠とされる場合

 新たに借家に入居するための礼金等の一時金相当額として、本件事故発生当時の世帯人数に応じて定額で賠償します。

 なお、対象区域内であった地域を新たな生活の本拠とされる場合、本件事故発生時点と同等の家賃水準となることが見込まれることを踏まえ、上記の賠償金には新たな借家の家賃と本件事故発生時点の借家の家賃との差額に相当する額(家賃差額相当額)は含まれていませんが、本件事故発生時点の借家の家賃が低廉であって、新たな借家の家賃との差額が発生する場合は、負担された家賃の差額を必要かつ合理的な範囲で賠償します。

ロ 対象区域外の地域を新たな生活の本拠とされる場合

新たな借家と本件事故発生時点の借家との家賃差額相当額(8年分)及び新たに借家に入居するための礼金等の一時金相当額として、本件事故発生当時の世帯人数に応じて定額で賠償します。

3 照会者の求める見解となることの理由

 所得税法上、不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金については非課税とされています(所法91十七、所令30二)。

 今般の「住居確保に係る費用」に対する賠償金は、上記の所得税法の規定を踏まえると、次のとおり取り扱われることになると考えられます。

(1) 持ち家に居住されていた方の「住居確保に係る費用」に対する賠償金

 住宅等の再取得費用等及び住宅の建替え費用等に対する賠償金は、本件事故に基因して住居を確保するために要する必要かつ合理的な範囲の費用について、その支出を行うことに対しお支払するものであり、不法行為その他突発的な事故により資産(財産)に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金に該当し、いずれも非課税となります。

(2) 借家に居住されていた方の「住居確保に係る費用」に対する賠償金

 新たに借家に入居するための礼金等の一時金相当額及び本件事故発生時点の借家との家賃差額相当額に対する賠償金は、本件事故に基因して住居を確保するために負担を余儀なくされた費用について、その支出を行うことに対しお支払するものであり、不法行為その他突発的な事故により資産(財産)に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金に該当し、いずれも非課税となります。