障障発0123第1号
平成25年1月23日
国税庁課税部審理室長
住倉 毅宏 殿
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部
障害福祉課長 辺見 聡
障害者自立支援法の下における障害福祉サービス及び児童福祉法の下における障害児支援(障害児通所支援及び障害児入所支援をいう。以下同じ。)の対価に係る現行の医療費控除の取扱いについては、所得税法第73条及び同法施行令第207条の規定に基づき、次に掲げる通知等により当省から関係団体、関係機関等に周知を行い、その運用がなされているところである。
今般、介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律(平成23年法律第72号)による改正後の社会福祉士及び介護福祉士法の規定により、介護福祉士及び認定特定行為業務従事者(以下「介護福祉士等」という。)が、診療の補助として喀痰吸引及び経管栄養(同法附則第3条第1項に規定する特定行為を含む。以下「喀痰吸引等」という。)を実施することが認められたところである。
また、平成24年度税制改正において所得税法施行令第207条が改正され、介護福祉士等による喀痰吸引等の対価で平成24年4月1日以後に支払うものについて、医療費控除の対象とされたところである。
そこで、障害者自立支援法及び児童福祉法(以下「障害者自立支援法等」という。)の下で実施される介護福祉士等による喀痰吸引等については、障害福祉サービス又は障害児支援(以下「障害福祉サービス等」という。)に要する費用に係る自己負担額の10分の1をその対価として医療費控除の対象と取り扱うこととしてよいか、貴庁の見解を承りたく照会する。
なお、介護保険制度の下で実施される介護福祉士等による喀痰吸引等については、居宅サービス等に要する費用に係る自己負担額の10分の1を医療費控除の対象として取り扱う旨、当省老健局からの照会に対する貴庁平成24年12月21日付文書回答により明らかにされているところである。
(1) 障害福祉サービス等の対価に係る医療費控除の取扱いについて
現行の障害者自立支援法等の下での障害福祉サービス等の対価に係る医療費控除については、次のとおり取り扱われている。
イ 障害者自立支援法に基づき利用する障害福祉サービスのうち、次に掲げるものが医療費控除の対象とされている。
サービス種別 | 医療費控除の対象部分 |
---|---|
療養介護 | 自己負担額の全額 |
居宅介護(注1) | ・身体介護(居宅における身体介護が中心である場合) ・通院等介助(身体介護を伴う通院介助が中心である場合) ・乗降介助(通院等のための乗車又は降車の介助が中心である場合) |
重度訪問介護 | 自己負担額の2分の1(注1、2) |
重度障害者等包括支援(注3) | 提供されたサービスに係る自己負担額のうち、居宅介護及び短期入所の部分は全額、重度訪問介護の部分は2分の1が対象(注1、2) |
短期入所 | 市町村により遷延性意識障害者加算等として決定された部分に限る。 |
(注)
ロ 児童福祉法に基づき利用する障害児支援のうち、次に掲げるものが医療費控除の対象とされている。
障害児通所支援 | 障害児入所支援 |
---|---|
医療型児童発達支援 ・肢体不自由児通園施設 |
医療型障害児入所施設 ・肢体不自由児施設 ・知的障害児施設(第一種自閉症児施設) ・重症心身障害児施設 |
ハ 上記イに掲げる障害福祉サービス(療養介護を除く。)を利用した場合、障害福祉サービス事業者から所定の「在宅介護費用証明書」又は「障害福祉サービス利用者負担額証明書」が発行され、当該証明書に医療費控除の対象となる金額が記載される。なお、上記イに掲げる障害福祉サービスのうちの療養介護及び上記ロに掲げる障害児支援については、医療機関において行われるものであるため、領収書や証明書について特に定めてはいない。
(2) 照会の介護福祉士等による喀痰吸引等について
イ 新たに医療費控除の対象となる介護福祉士等による喀痰吸引等は、これまで医療費控除の対象となっていなかった次に掲げる障害福祉サービス等を利用し、かつ、当該障害福祉サービス等において、介護福祉士等により実施されるものである。
障害福祉サービス | 障害児支援 | |
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(注)市町村により遷延性意識障害者加算等として決定された部分を除く。
ロ 医療費控除の対象となる金額は、障害福祉サービス等に要する費用に係る自己負担額の10分の1とする。
(1) 障害者自立支援法等の下における喀痰吸引等は、障害者自立支援法等の規定に基づき、上記2(2)イの表のから
による障害福祉サービス等の下で、介護福祉士等により障害児者の心身の状況に応じた介護の一環として実施されるものであるが、提供される障害福祉サービス等の中で喀痰吸引等に係る部分はその一部分であり、喀痰吸引等に係る対価の額は、これらのサービス事業者が行う費用の総額に含まれている。
本来であれば、喀痰吸引等に係る対価の額は、各サービスにおける個々の実施状況から算出することが望ましいが、各サービスにおいて実際に行った喀痰吸引等の部分を特定してその対価の額を算出することは、障害者自立支援法等上不可能である。
そのため、障害福祉サービス等の対価として支払う金額のうち、喀痰吸引等に係る対価として医療費控除の対象となる金額を、合理的な方法で明示していくことが必要となる。
(2) そこで、全国身体障害者施設協議会の調査研究事業における実態調査から、障害者入所施設における喀痰吸引等の所要時間を算定したところ、喀痰吸引等の所要時間は、利用者1人に対し1日の支援に要する総所要時間の約10%という結果が得られた。
(注)
(3) 上記(2)の調査結果のとおり、障害者入所施設においては喀痰吸引等に係る所要時間の割合が10分の1であることから、障害福祉サービス等における喀痰吸引等に係る費用の割合もこの割合により算定することは合理的であるととともに、障害福祉サービス事業者及び障害福祉サービス等の利用者の利便及び画一的な実施という観点から、上記2(2)のイに掲げる全てのサービスにおいて同様の取扱いとすることが適当と考える。
したがって、このような喀痰吸引等の実態を踏まえ、喀痰吸引等の対価に係る医療費控除の対象となる金額は、障害福祉サービス等に要する費用に係る自己負担額(次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次に定める額)の10分の1をその対価の額として取り扱うことが相当と考える。
イ 指定障害福祉サービスの場合
支給決定障害者等の家計の負担能力その他の事情をしん酌して障害者自立支援法施行令で定める額(当該政令で定める額が障害福祉サービス費用基準額の100分の10に相当する額を超える場合は100分の10相当額)
ロ 基準該当障害福祉サービスの場合
指定障害福祉サービスの場合に準じて算定した自己負担額
ハ 指定通所支援又は指定入所支援の場合
通所給付決定保護者又は入所給付決定保護者の家計の負担能力その他の事情をしん酌して児童福祉法施行令で定める額(当該政令で定める額が障害児通所給付費基準額又は障害児入所給付費基準額の100分の10に相当する額を超える場合は100分の10相当額)
ニ 基準該当通所支援の場合
指定通所支援の場合に準じて算定した自己負担額
(注) 上記イからニにおける用語の意義は、別添のとおりである。
(4) なお、上記2(2)のイに掲げる障害福祉サービス等において喀痰吸引等が行われた場合の証明書については、これまでの「在宅介護費用証明書」及び「障害福祉サービス利用者負担額証明書」を別紙様式「障害福祉サービス等利用料領収証」(PDF/114KB)とすることとし、当該領収証に喀痰吸引等の対価の額(自己負担額の10分の1相当額)を「費用額」欄に記載することにより、医療費控除の適用に関し疑義が生じないよう措置することとする。
〔別添〕
1 指定障害福祉サービスとは、都道府県知事、指定都市の市長及び中核市の市長が指定する者(指定障害福祉サービス事業者)により行われる障害福祉サービスをいい(障害者自立支援法29)、基準該当障害福祉サービスとは、指定障害福祉サービス以外の障害福祉サービスをいう(障害者自立支援法30
)。
2 指定通所支援、指定入所支援とは、都道府県知事が指定する者(指定障害児通所支援事業者)又は障害児入所施設(指定障害児入所施設)により行われる障害児通所支援又は障害児入所支援をいい(児童福祉法21の5の3、24の2
)、基準該当通所支援とは、都道府県の条例で定める一定の基準を満たすと認められる事業を行う事業所により行われる支援をいう(児童福祉法21の5の4
)。
3 障害福祉サービス費用基準額、障害児通所給付費基準額、障害児入所給付費基準額とは、指定障害福祉サービス又は指定通所支援若しくは指定入所支援に通常要する費用につき、厚生労働大臣が定める基準により算定した費用の額を合計した額をいう(障害者自立支援法29、児童福祉法21の5の3
、24の2
)。