老総発1212第1号
平成24年12月12日

国税庁課税部審理室長
    住倉 毅宏 殿

厚生労働省老健局
総務課長 片岡 佳和

1 照会の趣旨

 介護保険制度の下における居宅サービス等(居宅サービス、介護予防サービス、地域密着型サービス及び地域密着型介護予防サービスをいう。以下同じ。)の対価に係る現行の医療費控除の取扱いについては、所得税法第73条、同法施行令第207条及び同法施行規則第40条の3並びに国税庁発遣の平成12年6月8日付課所4-9「介護保険制度下での指定介護老人福祉施設の施設サービスの対価に係る医療費控除の取扱いについて」及び同日付課所4-11「介護保険制度下での居宅サービスの対価に係る医療費控除の取扱いについて」に基づき、当省から関係団体、関係機関等に周知を行い、その運用がなされているところである。
 今般、介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律(平成23年法律第72号)による改正後の社会福祉士及び介護福祉士法の規定により、介護福祉士及び認定特定行為業務従事者(以下「介護福祉士等」という。)が、診療の補助として喀痰吸引及び経管栄養(同法附則第3条第1項に規定する特定行為を含む。以下「喀痰吸引等」という。)を実施することが認められたところである。
 また、平成24年度税制改正において所得税法施行令第207条が改正され、介護福祉士等による喀痰吸引等の対価で平成24年4月1日以後に支払うものについて、医療費控除の対象とされたところである。
 そこで、介護保険制度の下で実施される介護福祉士等による喀痰吸引等については、居宅サービス等に要する費用に係る自己負担額の10分の1をその対価として医療費控除の対象と取り扱うこととしてよいか、貴庁の見解を承りたく照会する。

2 照会に係る事実関係等

(1) 居宅サービス等の対価に係る医療費控除の取扱いについて
 現行の介護保険制度下での居宅サービス等の対価に係る医療費控除については、次のとおり取り扱われている。

  • イ 介護保険法に規定する居宅サービス計画又は介護予防サービス計画に基づき利用する、まる1からまる10に掲げる医療系の居宅サービス又は介護予防サービスが医療費控除の対象とされている。
    サービス種別(医療系)
    まる1 訪問看護 まる6 介護予防訪問看護
    まる2 訪問リハビリテーション まる7 介護予防訪問リハビリテーション
    まる3 居宅療養管理指導 まる8 介護予防居宅療養管理指導
    まる4 通所リハビリテーション まる9 介護予防通所リハビリテーション
    まる5 短期入所療養介護 まる10 介護予防短期入所療養介護

    (注) 上記まる1からまる10のほか、平成24年4月1日以後に行われる「定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用する場合に限る。)」及び「複合型サービス(医療系のサービスを含む組合せにより提供されるものに限り、生活援助中心型の訪問介護の部分を除く。)」が含まれる。

  • ロ 介護保険法に規定する居宅サービス計画又は介護予防サービス計画に基づき、上記イの表のまる1からまる10に掲げる医療系の居宅サービス又は介護予防サービスと併せて利用する、次のまる1からまる13に掲げる福祉系の居宅サービス等が医療費控除の対象とされている。
    サービス種別(福祉系)
    まる1 訪問介護(生活援助中心型を除く) まる8 介護予防訪問介護
    まる2 訪問入浴介護 まる9 介護予防訪問入浴介護
    まる3 通所介護 まる10 介護予防通所介護
    まる4 短期入所生活介護 まる11 介護予防短期入所生活介護
    まる5 夜間対応型訪問介護  
    まる6 認知症対応型通所介護 まる12 介護予防認知症対応型通所介護
    まる7 小規模多機能型居宅介護 まる13 介護予防小規模多機能型居宅介護

    (注) 上記まる1からまる13のほか、平成24年4月1日以後に行われる「定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用しない場合及び連携型事業所に限る。)」及び「複合型サービス(医療系のサービスを含まない組合せにより提供されるもの(生活援助中心型の訪問介護の部分を除く。)に限る。)」が含まれる。

  • ハ 居宅サービス等を利用した場合、居宅サービス等事業者から所定の「居宅サービス等利用料領収証」が発行され、当該領収証に医療費控除の対象となる金額が記載される。

(2) 照会の介護福祉士等による喀痰吸引等について

  • イ 新たに医療費控除の対象となる介護福祉士等による喀痰吸引等は、これまで医療費控除の対象となっていなかった次に掲げる居宅サービス等を利用し、かつ、当該居宅サービス等において、介護福祉士等により実施されるものである。
    • (イ) 上記(1)ロの表のまる1からまる13に掲げる福祉系の居宅サービス等(定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用しない場合及び連携型事業所に限る。)及び複合型サービス(医療系のサービスを含まない組合せにより提供されるものに限る。)を含む。)で、医療系の居宅サービス又は介護予防サービスと併せて利用しないもの
    • (ロ) 生活援助中心型の訪問介護
    • (ハ) 特定施設入居者生活介護
    • (ニ) 介護予防特定施設入居者生活介護
    • (ホ) 認知症対応型共同生活介護
    • (ヘ) 地域密着型特定施設入居者生活介護
    • (ト) 介護予防認知症対応型共同生活介護
  • ロ 医療費控除の対象となる金額は、居宅サービス等に要する費用に係る自己負担額の10分の1とする。

3 照会者の求める見解となることの理由

(1) 介護保険制度の下における喀痰吸引等は、介護保険法の規定に基づき、上記2(2)イの(イ)から(ト)による居宅サービス等の下で、介護福祉士等により要介護者及び要支援者(以下「要介護者等」という。)の心身の状況に応じた介護の一環として実施されるものであるが、提供される居宅サービス等の中で喀痰吸引等に係る部分はその一部分であり、喀痰吸引等に係る対価の額は、居宅サービス等事業者が行う居宅サービス等の費用の総額に含まれている。
 本来であれば、喀痰吸引等に係る対価の額は、各居宅サービス等における個々の実施状況から算出することが望ましいが、各居宅サービス等において実際に行った喀痰吸引等の部分を特定してその対価の額を算出することは、介護保険制度上不可能である。
 そのため、居宅サービス等の対価として支払う金額のうち、喀痰吸引等に係る対価として医療費控除の対象となる金額を、合理的な方法で明示していくことが必要となる。

(2) そこで、当省老人保健健康増進等事業の調査研究事業における実態調査から、訪問看護における喀痰吸引等の所要時間を算定したところ、喀痰吸引等の所要時間は、訪問時総所要時間の約10%という結果が得られた。

(注)

  • 1 「24時間訪問看護サービス提供の在り方に関する調査研究事業報告書(平成23年3月)」のデータを用い算定したところ、訪問看護における医療処置等の所要時間のうち、まる1喀痰吸引に係る平均的な所要時間は3.1分/件、まる2経管栄養に係る平均的な所要時間は3.7分/件であった。訪問看護1回当たりの平均所要時間は約57分であることから、(3.1+3.7)÷57=11.9%となり、訪問看護における喀痰吸引等の所要時間の割合は、約1割と推計できる。
  • 2 当該調査の結果は訪問看護のデータに基づくものであるものの、訪問看護以外の居宅サービス等における喀痰吸引等の実施データはなく、また、要介護状態であれば必要な介護サービス時間は同じであり、要介護状態の高齢者が在宅の場合と施設にいる場合とで、提供される介護サービスの時間が大きく異なることはない。

(3) 上記(2)の調査結果のとおり、訪問看護においては喀痰吸引等に係る所要時間の割合が10分の1であることから、居宅サービス等における喀痰吸引等に係る費用の割合もこの割合により算定することは合理的であるととともに、居宅サービス等事業者及び居宅サービス等の利用者の利便及び画一的な実施という観点から、上記2(2)のイに掲げる全てのサービスにおいて同様の取扱いとすることが適当と考える。
 したがって、このような喀痰吸引等の実態を踏まえ、喀痰吸引等の対価に係る医療費控除の対象となる金額は、居宅サービス等に要する費用に係る自己負担額(次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次に定める額)の10分の1をその対価の額として取り扱うことが相当と考える。

  • イ 指定居宅サービスの場合
     居宅介護サービス費用基準額から居宅介護サービス費の額を控除した金額
  • ロ 指定介護予防サービスの場合
     介護予防サービス費用基準額から介護予防サービス費の額を控除した金額
  • ハ 基準該当居宅サービス及び基準該当介護予防サービスの場合
     指定居宅サービス及び指定介護予防サービスの場合に準じて算定した自己負担額
  • ニ 指定地域密着型サービスの場合
     地域密着型介護サービス費用基準額から地域密着型介護サービス費の額を控除した金額
  • ホ 指定地域密着型介護予防サービスの場合
     地域密着型介護予防サービス費用基準額から地域密着型介護予防サービス費の額を控除した金額

(注) 上記イからホにおける用語の意義は、別添のとおりである。

(4) なお、上記2(2)のイに掲げる居宅サービス等において喀痰吸引等が行われた場合の領収証については、別紙様式例「居宅サービス等利用料領収証(喀痰吸引等用)」(PDF/156KB)のとおり、「医療費控除の対象となる金額」欄に居宅サービス等に要する費用に係る自己負担額(保険対象分)の10分の1を記載することとし、医療費控除の適用に関し疑義が生じないよう措置することとする。

〔別添〕

1 指定居宅サービス、指定介護予防サービスとは、都道府県知事、指定都市の市長及び中核市の市長が指定する者(指定居宅サービス事業者、指定介護予防サービス事業者)により行われる居宅サービス又は介護予防サービスをいう(介護保険法41まる1、53まる1、203の2)。

2 指定地域密着型サービス、指定地域密着型介護予防サービスとは、市町村の長が指定する者(指定地域密着型サービス事業者、指定地域密着型介護予防サービス事業者)により行われる地域密着型サービス又は地域密着型介護予防サービスをいう(介護保険法42の2まる1、54の2まる1)。

3 基準該当居宅サービス、基準該当介護予防サービスとは、指定居宅サービス又は指定介護予防サービス以外の居宅サービス若しくは介護予防サービス又はこれらに相当するサービス(都道府県の条例で定める一定の基準を満たすと認められるものに限る。)をいう(介護保険法42まる1二、54まる1二)。

4 居宅介護サービス費用基準額、介護予防サービス費用基準額、地域密着型サービス費用基準額、地域密着型介護予防サービス費用基準額とは、各サービスの種類ごとにサービスの内容、要介護(要支援)状態区分、地域等を勘案して算定される各サービスに要する平均的な費用の額を勘案して厚生労働大臣が定める基準により算定した費用の額をいう(介護保険法41まる4、42の2まる2、53まる2、54の2まる2)。

5 居宅介護サービス費、介護予防サービス費、地域密着型介護サービス費、地域密着型介護予防サービス費とは、市町村が(居宅)要介護被保険者又は居宅要支援被保険者に支給するもの((居宅)要介護被保険者又は居宅要支援被保険者に代わり、上記1及び2の指定居宅サービス事業者等に支払う場合を含む。)で、上記3の各サービス費用基準額の100分の90相当額をいう(介護保険法41、42の2、53、54の2)。