(別紙)

平成23年12月26日

国税庁課税部審理室長
   住倉 毅宏 殿

社団法人 生命保険協会
理事   棚瀬 裕明

T 照会の趣旨

平成22年度税制改正において、一般生命保険料控除と個人年金保険料控除(適用限度額はそれぞれ5万円)で構成されていた生命保険料控除制度(所法76)について、介護医療保険料控除(適用限度額4万円)の創設、新契約に係る一般生命保険料控除と個人年金保険料控除の適用限度額をそれぞれ4万円とすること及び各保険料控除の合計適用限度額を現行の10万円から12万円に引き上げることを主な内容とする改正が行われ、この新生命保険料控除制度については、平成24年分以後の所得税について適用することとされています(平22改正法附則4)。
 そこで、生命保険協会としては、各生命保険会社において、平成24年分以後における新生命保険料控除制度が円滑に導入されるよう、所得税法第76条《生命保険料控除》の解釈・取扱いに関して、その明確化を図ることが必要と考えております。
 このような必要性から、生命保険会社が取り扱う保険契約について、IIの「照会の内容及びその見解となることの理由」に掲げる見解のとおりで差し支えないか、ここに照会いたします。

U 照会の内容及びその見解となることの理由

1 契約締結に係る基準日の考え方

(関連条項:所得税法第76条第5項から第9項まで)
  所得税法第76条第5項に規定する「新生命保険契約等」、第7項に規定する「介護医療保険契約等」及び第8項に規定する「新個人年金保険契約等」(以下、これらを併せて「新契約」といいます。)については、平成24年1月1日以後に締結したものとされています。
 また、第6項に規定する「旧生命保険契約等」及び第9項に規定する「旧個人年金保険契約等」(以下、これらを併せて「旧契約」といいます。)については、平成23年12月31日以前に締結したものとされています。
 これらの契約の締結に係る基準日は、生命保険契約の「申込日」や「責任開始日」ではなく、保険期間の起算日である「契約日」となります。

〔理由〕
生命保険契約においては、「契約日」が保険期間の起算日(初日)として保険料等の算定の基準日となることから、契約締結に係る基準日は「契約日」になると考えられます。

2 契約変更等に係る基準日の考え方

(関連条項:所得税法第76条第5項、第7項、第8項及び第10項)
  平成24年1月1日以後に旧契約に附帯して新契約を締結した場合には、その旧契約は、同日以後に締結した契約(新契約)とみなすこととされています。 この新契約とみなす範囲の契約変更等(特約の(中途)付加等)を行った場合の基準日は、「手続日」や「責任開始日」ではなく、「効力発生日」となります。 〔理由〕 生命保険契約においては、契約変更等が行われた場合、「効力発生日」が保険料等の算定の基準日となることから、契約変更等に係る基準日は「効力発生日」になると考えられます。

3 新契約とみなす範囲の契約変更等

(関連条項:所得税法第76条第5項、第7項、第8項及び第10項)
  平成24年1月1日以後に、旧契約について以下の契約変更等(契約の締結等)が行われた場合には、その旧契約は新契約とみなすこととなります。

  • 転換
  • アカウント型商品の保障見直し(全部・一部)
  • 主契約の更新
  • 特約の更新
  • 特約の(中途)付加(各保障区分に属さない保障の特約や不担保特約等の付加及び団体保険等における加入者単位での特約の付加を除きます。)

一方、旧契約について行われる以下の契約変更等(契約の締結等)については、新契約とみなすものには該当しないこととなります。

  • 保険金額の増減額(特約の付加によらないもの)
  • 保障のない特約(保険料口座振替特約や特別勘定特約等)の(中途)付加
  • 契約者の名義変更
〔理由〕
生命保険契約においては、新契約とみなす範囲の契約変更等(契約の締結等)は、上記に示したものが該当すると考えられます。
 なお、ここに示していないものについては、この限りではありません。

4 新旧併用

(関連条項:所得税法第76条第1項及び第3項)
新契約と旧契約の双方に加入する納税者の場合、一般生命保険料控除、個人年金保険料控除については、これらの控除ごとに、丸1新契約に係る控除額(適用限度額4万円)、丸2旧契約に係る控除額(適用限度額5万円)、丸3新契約と旧契約の双方について保険料控除の適用を受ける場合の控除額(適用限度額4万円)のいずれか有利なものを納税者が選択することができます。

〔理由〕
所得税法第76条第1項において、丸1新生命保険料を支払った場合、丸2旧生命保険料を支払った場合又は丸3新生命保険料及び旧生命保険料を支払った場合の一般生命保険料控除額の計算方法がそれぞれ示されています。
 また、同様に、第3項において、新個人年金保険料及び旧個人年金保険料を支払った場合の個人年金保険料控除額の計算方法がそれぞれ示されています。
 これらの控除額の計算に当たっては、適用限度額を除き、特に制限は課されていないことから、いずれか有利なものを納税者が選択して適用することは可能と考えられます。

5 新契約とみなす範囲の契約変更等(企業保険(1))

(関連条項:所得税法第76条第5項、第7項、第8項及び第10項)
企業等の団体又はその代表者を契約者とし、その団体の所属員等を被保険者とする保険契約等(いわゆる団体保険契約、団体年金保険契約)においては、新契約とみなす範囲の契約変更等(契約の締結等)が行われたかどうかは、その契約変更等が団体の契約単位にて行われたかどうかにより判断することとなります。

〔理由〕
団体保険契約及び団体年金保険契約については、団体又はその代表者が契約者となって契約を締結するものであり、契約数はあくまでも一つであることから、新契約とみなす範囲の契約変更等(契約の締結等)が行われたかどうかは、団体の契約単位で行われた契約変更等に限って判断するのが相当と考えられます。

6 新契約とみなす範囲の契約変更等(企業保険(2))

(関連条項:所得税法第76条第5項及び同項4号、同法施行令208条の8)
団体保険契約、適格退職年金及びそれ以外の団体年金保険契約(拠出型年金、非適格企業年金)については、保障性特約の契約全体への付加・団体保険契約(更新型)の更新のみが新契約とみなす範囲の契約変更等(契約の締結等)に該当することとなります。
 また、被保険者の追加(増加)については、新契約とみなす範囲の契約変更等に該当しないこととなります。

〔理由〕
団体保険契約、適格退職年金及びそれ以外の団体年金保険契約(拠出型年金、非適格企業年金)については、法令上、承認規定等の範囲が定められていません。
 また、団体保険契約及び団体年金保険契約にあっては、上記3に記載した新契約とみなす範囲の契約変更等(契約の締結等)のうち、保障性特約の契約全体への付加・団体保険契約(更新型)の更新のみがこれに該当すると考えられます。
 なお、団体保険契約及び団体年金保険契約については、団体又はその代表者が契約者となって契約を締結するものであり、契約数はあくまでも一つであることから、新契約とみなす範囲の契約変更等は、上記5のとおり、団体の契約単位で行われた場合に限られ、被保険者の追加(増加)については新契約に該当しないと考えられます。