別紙

平成20年2月21日

国税庁課税部審理室長
岡南 啓司 殿

財団法人日本モーターボート競走会
会長 かげ山幸夫

 社団法人である全国18のモーターボート競走会とこれらが会員となって設立された全国モーターボート競走会連合会は、モーターボート競走法の一部を改正する法律(平成19年法律第16号。以下「改正モーターボート競走法」という。)に基づき、平成20年3月31日をもって解散することとなりました。改正モーターボート競走法附則第13条は、解散した各会の「一切の権利及び義務は、その解散の時において国土交通大臣が指定する者(指定法人)が承継する。」と規定しており、これに基づき弊会(平成20年2月20日付で指定)がその権利義務を承継する予定です。
 ところで、モーターボート競走事業による売上は、長期的に減少(平成3年度2兆2千億円から平成17年度9千7百億円)しており、18会中10会が赤字となっています。また、平成18年7月「モーターボート競走事業活性化検討委員会」報告書においては、人件費の削減や雇用・勤務形態の見直しが求められています。このため、弊会では、人件費の削減を念頭に置いた就業規則、給与規程及び退職金規程(以下「本件退職金規程」という。)を定めることとしました。なお、各会解散後、引き続き弊会に勤務することを希望する職員は、本件退職金規程等によることを承諾し、採用希望申請書を提出しなければならないことになっています。
 また、各会で採用されている退職金制度は、制度の類型(別添参照)、退職金の算定方法及び支給金額等が異なっていますが、弊会では本件退職金規程により内部積立型の退職金制度のみを採用することとしています。なお、本件退職金規程には、平成20年3月31日以前の各会における勤続期間を弊会の勤続期間に加算しないことが定められています。
 この場合、各会が解散時に精算打切支給する退職金(以下「本件退職金」という。)を退職所得として取り扱って差し支えないか伺います。

〔理由〕

1 法令等の適用関係

イ 所得税法第30条第1項は、「退職所得とは、退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与に係る所得をいう。」と規定しています。

ロ 所得税基本通達では、引き続き勤務する使用人に対し退職手当等として一時に支払われる給与のうち、退職に準ずる事実が生じたことにより、それ以前の勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与で、その給与が支払われた後に支払われる退職手当等の計算上その給与の計算の基礎となった勤続期間を一切加味しない条件の下に支払われるもの(以下「打切支給の退職金」という。)を退職所得として取り扱うこととされています(所基通30-2、30-2の2)。また、適格退職年金制度等のような外部拠出型の退職金制度に基づく打切支給の退職金についても、退職に準ずる事実が生じたことにより支払われるものは退職所得として取り扱われています(所基通31-1(3))。

ハ この退職に準ずる事実の判定に当たり、例えば、使用人から執行役員への就任につき、勤務関係の性質、内容、労働条件等において重大な変動があって、形式的には継続している勤務関係が実質的には単なる従前の勤務関係の延長とはみられないなどの特別の事実関係があると認められる場合は、退職に準ずる事実があるものとされ、その打切支給の退職金は退職所得として取り扱われています(所基通30-2の2、31-1(3))。

2 本件退職金について
 本件退職金は、内部積立型の退職金制度に基づいて打切支給されるものと、内部積立型と外部拠出型(適格退職年金制度等)の併用による退職金制度に基づいて打切支給されるものがあります。したがって、これらが退職所得として取り扱われるためには、退職に準ずる事実が認められるとともに、打切支給に合理的な理由が認められることが必要と考えます。
 本件退職金については、以下のとおり、退職に準ずる事実及び打切支給の合理性が共に存し、また、本件退職金規程により解散日以前の各会における勤続期間を弊会の勤続期間に加算しないこととしていることから、退職所得として取り扱われるものと考えます。

(1)退職に準ずる事実
 今回の組織統合は、政府の基本方針(平成18年7月「モーターボート競走事業活性化検討委員会」報告書)を受けて行われているところ、本基本方針ではモーターボート競走事業の効率的な運営を確保する観点から特に人件費の見直しを行うことが求められており、弊会では、人件費の削減を念頭に置いた就業規則、給与規程及び退職金規程を定めることとなりました。したがって、弊会が解散する各会の権利義務を承継するとしても、引き続き勤務する職員の勤務体系に著しく影響を及ぼすことになりますから、「勤務関係の性質、内容、労働条件等において重大な変動があって、形式的には継続している勤務関係が実質的には単なる従前の勤務関係の延長とはみられないなどの特別の事実関係がある」と考えます。

(2)打切支給の合理性
 解散する各会で採用されている退職金制度は、内部積立型のほか外部拠出型を採用している会と採用していない会とがあり、採用している会においてもそれぞれ異なった類型の制度が採用されています(別添参照)。また、退職金算定の基本数値となる給与の額に階差が生じているため、これをベースに計算される退職金の支給金額にも階差が生じることとなります。このため、全職員を一律に管理し、退職金の支給金額を平準化する観点から本件退職金規程を定めることとしたのであり、各会の解散時に本件退職金を精算打切支給がされることに合理的な理由があると考えます。

(別添)

退職金制度の類型

  内部積立型 外部拠出型
全国モーターボート競走会連合会 確定拠出年金制度(企業型)
群馬県モーターボート競走会 ×
埼玉県モーターボート競走会 適格退職年金制度
東京都モーターボート競走会 ×
静岡県モーターボート競走会 適格退職年金制度
愛知県モーターボート競走会 中小企業退職金共済制度
三重県モーターボート競走会 適格退職年金制度
福井県モーターボート競走会 中小企業退職金共済制度
滋賀県モーターボート競走会 ×
大阪府モーターボート競走会 適格退職年金制度
兵庫県モーターボート競走会 中小企業退職金共済制度
徳島県モーターボート競走会 ×
香川県モーターボート競走会 確定拠出年金制度(企業型)
岡山県モーターボート競走会 ×
広島県モーターボート競走会 ×
山口県モーターボート競走会 適格退職年金制度
福岡県モーターボート競走会 ×
佐賀県モーターボート競走会 ×
長崎県モーターボート競走会 ×

(注) 確定拠出年金制度(企業型)については、解散時に制度を終了し、各人の年金資産は国民年金基金連合会へ移換され、確定拠出年金制度(個人型)として管理される。