別紙

平成19年9月26日

国税庁課税部審理室長
岡南 啓司 殿

経済産業省製造産業局
車両課長 若井 英二 

 

 特別認可法人である全国の7つの自転車競技会は、自転車競技法及び小型自動車競走法の一部を改正する法律(平成19年法律第82号。以下「一部改正自転車競技法」という。)第1条の規定による改正後の自転車競技法(昭和23年法律第209号。以下単に「法」という。)第13条の16の2の規定に基づき、新設合併契約が締結され、新たに日本自転車競技会が設立されました。これに伴い、7つの自転車競技会は解散しました。日本自転車競技会は、解散した各自転車競技会の権利義務を包括的に承継することとされているため(法13条の16の11第2項)、各自転車競技会に勤務する職員は、引き続き日本自転車競技会に勤務することとなります。なお、日本自転車競技会は、その後組織変更して、民法34条の規定に基づく財団法人日本自転車競技会になる予定です。
 ところで、今回の組織統合は、組織・運営の効率化を図る観点から行われるところ、各自転車競技会で採用されている退職金制度(内部積立型)についても同様の観点から見直しを行った結果、1自転車競技(競輪事業)の経営不振により今後各自転車競技会の退職給与規程で定める水準で支給することが困難であること及び2退職金の支給額が国家公務員を超える水準であること等の事実が判明しました。このため、日本自転車競技会では、退職金の支給水準を大幅に抑えた新たな退職金制度を導入することとし、各自転車競技会は労使合意を経て各職員に対して解散までの勤続期間に係る退職金の打切支給を実施することになりました。
 なお、合併契約書及び日本自転車競技会の職員退職手当規程において、各自転車競技会に勤務していた期間を退職金の算定期間に一切含まないことが明記されています。また、新たに定められた就業規則では、給与規程の見直しによる一律カット、就業時間を7時間から8時間に延長、転勤先の範囲拡大等が行われています。
 この場合、各自転車競技会が打切支給する退職金(以下「本件退職金」という。)は、退職所得として取り扱って差し支えないか伺います。

(参考)組織統合に至るまでの経緯

(1) 平成18年3月、経済産業省に置かれる産業構造審議会車両競技分科会車両競技活性化小委員会(以下「産業構造審議会」という。)が、「全国に7つ存在する自転車競技会については、組織・運営の効率化を図る観点から、平成19年度中に統合・公益法人化すること」を答申。

(2) 平成19年3月6日、一部改正自転車競技法案が閣議決定され、通常国会へ提出。

(3) 平成19年3月29日に参議院、6月5日に衆議院でそれぞれ可決され、6月13日に公布、一部施行。

(4) 平成19年7月9日、各自転車競技会は法に基づき新設合併契約を締結。

(5) 平成19年9月10日、日本自転車競技会が設立。

(6) 平成19年10月1日、財団法人日本自転車競技会に組織変更。(予定)

〔理由〕

 所得税法第30条第1項は、「退職所得とは、退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与に係る所得をいう。」と規定しています。
 最高裁昭和58年12月6日第三小法廷判決は、その一時金が、例えば「定年延長又は退職年金制度の採用等の合理的な理由による退職金支給制度の実質的改変により精算の必要があって支給されるもの、あるいは、その勤務関係の性質、内容、労働条件等において重大な変動があって、形式的には継続している勤務関係が実質的には単なる従前の勤務関係の延長とはみられないなどの特別の事実関係がある」場合には、退職の事実の有無にかかわらず、同条に規定する「これらの性質を有する給与」として退職所得に当たると判示しています。
 また、所得税基本通達においても、引き続き勤務する使用人に対し退職手当等として一時に支払われる給与のうち、新たに退職給与規程を制定し、又は中小企業退職金共済制度若しくは確定拠出年金制度への移行等相当の理由により従来の退職給与規程を改正した場合において、当該制定又は改正前の勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与で、その給与が支払われた後に支払われる退職手当等の計算上その給与の計算の基礎となった勤続期間を一切加味しない条件の下に支払われるものについては退職所得として取り扱うこととされています(所基通30−2(1))。
 以上のような退職所得に関する考え方を前提にすると、本件退職金については、次の二つの理由から所得税法第30条第1項に規定する「これらの性質を有する給与」に当たり、「退職所得」として取り扱うことが相当と考えます。

(1) 日本自転車競技会は、1自転車競技(競輪事業)の経営不振により今後各自転車競技会の退職給与規程で定める水準で支給することが困難であること及び2退職金の支給額が国家公務員を超える水準であること等の理由から退職金の支給水準を大幅に抑えた新たな退職金制度を導入することとしている。また、新たな退職金制度では、退職金の算定に当たって、各自転車競技会に勤務していた期間を退職金の算定期間に一切含まないこととしている。したがって、本件退職金は、最高裁でも判示され、所得税基本通達30−2(1)の(注)1に定めるところの「合理的な理由による退職金制度の実質的改変により精算の必要から支払われるもの」に当たること。

(2) 今回の組織統合は、政府の基本方針(平成18年3月経済産業省産業構造審議会提言)を受けて行われているところ、本基本方針では組織・運営の効率化を図る観点から全国の7つの自転車競技会を統合して、公益法人化することとされており、この統合に当たっては、上述のように給与規程の見直し等を含む就業規則の改正も行われている。したがって、日本自転車競技会(今後財団法人に組織変更予定)が、解散する各自転車競技会の権利義務を承継することとされているとしても、その組織・運営方法等の見直しが引き続き勤務する職員の勤務体系に著しく影響を及ぼすことになる。これは、最高裁が判示する「勤務関係の性質、内容、労働条件等において重大な変動があって、形式的には継続している勤務関係が実質的には単なる従前の勤務関係の延長とはみられないなどの特別の事実関係がある」場合として取り扱うことが相当であること。