国都開第15号
平成18年11月15日

国税庁課税部審理室長殿
岡南 啓司 殿

国土交通省都市・地域整備局
都市計画課開発企画調査室長
山本 健一

 宅地造成等規制法(昭和36年法律第191号)第20条第1項及び同法施行令第19条第1項第1号に基づく造成宅地防災区域の指定又は同法第3条に基づく指定を受けた宅地造成工事規制区域内において同法第16条第2項の勧告を受けた造成宅地の所有者、管理者又は占有者(以下「宅地所有者等」といいます。)は、当該造成宅地について滑動崩落を防止するための工事(以下「滑動崩落防止工事」といいます。)を行うこととなります。この場合においては、当該滑動崩落防止工事に必要な費用の全部又は一部を宅地所有者等が負担することとなります。
 そこで、宅地所有者等が造成宅地防災区域の指定又は宅地造成工事規制区域内における一定の勧告を受けて行う滑動崩落防止工事の費用について、税務上、下記のように取り扱って差し支えないか、照会いたします。

1 造成宅地が宅地造成等規制法施行令第19条第1項第1号の基準に該当することにより、都道府県知事等による造成宅地防災区域の指定又は宅地造成工事規制区域内における勧告(以下「造成宅地防災区域の指定等」という。)を受けた造成宅地においてその宅地所有者等が行う滑動崩落防止工事の費用については、当該造成宅地上に住宅家財等(所得税法第72条第1項に規定する資産(通常生活に必要な資産)に限る。)を有する場合には、所得税法施行令第206条第1項第3号に規定する支出に該当し、災害関連支出として雑損控除の対象となる。

2 当該滑動崩落防止工事を行ったことにより補助金の支給を受けた場合には、雑損控除額の計算上、保険金等により補てんされる金額として、当該補助金の額を控除した金額が損失の金額となる。

3  滑動崩落防止工事が造成宅地防災区域の指定等を受けて行ったものであること及び個人費用負担額等の証明として、申請者からの申請により都道府県知事等が宅地改修証明書(別添の書式例(PDFファイル/62KB)に準拠したものをいう。)を発行するので、当該証明書を領収書等に代えて確定申告書に添付又は提示することにより雑損控除の適用を受けることができる。

(理由)

 居住者又は居住者と生計を一にする配偶者その他の親族で総所得金額等が38万円以下の者の有する生活に通常必要な資産につき、災害等により損失が生じた場合(その災害等に関連する一定のやむを得ない支出を含む。)には、雑損控除として所定の金額を控除することができる(所法72)。
 また、「災害により住宅家財等につき現に被害が生じ、又はまさに被害が生ずるおそれがあると見込まれる場合において、当該住宅家財等に係る被害の拡大又は発生を防止するため緊急に必要な措置を講ずるための支出」は、災害等に関連するやむを得ない支出とされている(所令2061三)。
 地震、集中豪雨や降雨の蓄積等による異常な地下水位の上昇、風化による土の変質等によって、宅地造成等規制法施行令第19条第1項第1号の基準(安定計算によって、地震力及びその盛土の自重によるその盛土の滑り出す力がその滑り面に対する最大摩擦抵抗力その他の抵抗力を上回ること(安全率が1.0未満)が確かめられたもの)に該当する造成宅地は、盛土の滑ろうとする力とその抵抗力とのつりあいのバランスが崩れている危険な状態であるため、造成宅地防災区域の指定等を受けた宅地所有者等は緊急に滑動崩落防止工事(排水工、アンカー工の設置等)を行う必要がある。
  したがって、宅地所有者等(宅地所有者等と生計を一にする配偶者その他の親族で総所得金額等が38万円以下の者を含む。)が造成宅地上に住宅家財等(所得税法第72条第1項に規定する資産(通常生活に必要な資産)に限る。)を有する場合において、造成宅地防災区域の指定等を受けて緊急に行う滑動崩落防止工事で相当なものに要する費用については、所得税法施行令第206条第1項第3号に規定する災害関連支出として雑損控除の対象になると解される。

(注) 造成宅地防災区域の指定等は、造成宅地が宅地造成等規制法施行令第19条第1項第2号の基準(切土又は盛土をした後の地盤の滑動、宅地造成に関する工事により設置された擁壁の沈下、切土又は盛土をした土地の部分に生じた崖の崩落その他これらに類する事象が生じている場合)に該当するときにも行われるが、このような事象が生じている場合には、当該勧告等がなくとも「まさに被害が生ずるおそれがあると見込まれる場合」に該当するので、従前の例により取り扱われる。

 また、当該滑動崩落防止工事を行ったことにより宅地所有者等に支給される補助金(原則としてその費用の2分の1)は、滑動崩落防止工事の費用を支援するものであるので、雑損控除額の計算上、保険金等により補てんされる金額として、当該補助金の額を控除した金額が損失の金額となる。
 なお、災害関連支出について雑損控除の適用を受ける場合、その金額を証する書類(領収書等)を確定申告書等に添付するかその提出の際に提示しなければならないこととされているが(所法1203一、所令2621一)、都道府県知事等が発行する宅地改修証明書により、滑動崩落防止工事の費用が造成宅地防災区域の指定等を受けて行ったものであること及び個人費用負担額等の証明がされるので、これを確定申告書等に添付又は提示することにより雑損控除の適用を受れるものとして差し支えないと考えられる。

以上

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