平成13年5月15日

国税庁
課税部長 村上喜堂殿

日本証券業協会
常務理事 若林勝三

 ソニー株式会社(以下「ソニー」という。)では、去る1月25日に開催された臨時株主総会において、同社の子会社であるソニーコミュニケーションネットワーク株式会社(以下「SCN」という。)の経済価値を反映する種類株式(以下「子会社連動株式」という。)の発行に備えるための定款変更が承認されたところであります。
 これにより、ソニーは、取締役会決議に基づき子会社連動株式を発行できることとなりましたが、当該子会社連動株式は、下記「1.子会社連動株式の概要」に記載する特徴等を有する種類株式であり、変更後の定款に基づき、1現金交付による任意消却又は一斉消却(強制消却)、2普通株式への一斉転換、3SCNの普通株式の交付による一斉消却(強制消却)のいずれかが実施される可能性があります。
 この子会社連動株式の消却の場合等の所得税及び法人税の課税関係については、下記「2.子会社連動株式に係る課税関係」のとおりと考えますが、ご照会申し上げます。

1.子会社連動株式の概要

(1) 種類株式としての子会社連動株式
 ソニーが発行を予定している子会社連動株式は、商法第222条第1項の規定に基づき発行される種類株式で、ソニーの普通株式とは別銘柄として東京証券取引所に上場される予定である。

(2) 子会社連動株式の特徴
 子会社連動株式はソニーが発行する株式であり、ソニーの子会社であるSCNの経済価値を反映するよう設計されているが、株主はソニーに対して議決権を有し、SCNに対する議決権は有しない。
 商法第222条第1項に規定する配当等に関する普通株式と異なる内容等は、次のとおりである。

1 配当
 SCNの配当金額に連動する額の配当金を普通株主に優先して配当する。

2 残余財産の分配
 ソニーの清算の場合には、SCN株式又はその処分により得られた金銭を普通株主に優先して分配する。

3 株式の消却
 発行の後、いつでも子会社連動株式を市場買付け又は公開買付けにより任意に消却することができる。また、発行の日から3年経過した後の日で、取締役会が消却する日を定めた場合等において、強制的に一斉消却することもできる。

(3) 子会社連動株式の終了
 子会社連動株式の終了の方法として、次の方法が定款に定められている。

1 時価相当の金銭の支払いによる消却
 子会社連動株式は、いつでも商法第212条に規定する株主に配当すべき利益をもって買入消却(任意消却)されうる。
 また、

1 その発行の日から3年経過した後の日で、取締役会が強制消却する日を定めた場合、

2 SCNが100分の80以上の資産を譲渡等により処分したこと、SCNが子会社でなくなったことなどの特定の事由が生じた場合、

3 SCNの株式が取引所等に上場等される場合
には、商法第212条に規定する株主に配当すべき利益をもってする株式の消却の方法又は商法第375条以下の資本減少の規定に従う株式の消却の方法により、子会社連動株式の時価相当の金銭を支払って、強制的に消却すること(強制消却)が定款に定められている。

2 ソニー普通株式への一斉転換
 子会社連動株式は、その発行の日から3年経過した後の日で、かつ、取締役会が定める日(一斉転換日)において、1株につき次の算式で求めた数のソニーの普通株式に転換され終了することが定款に定められている。

子会社連動株式のソニー普通株式への一斉転換計算の算式

 また、上記12(SCNの100分の80以上の資産譲渡等)又は3(SCN株式の上場等)に掲げる事由が生じた場合にも同様に一斉転換することにより終了することができる。
 ソニー普通株式への一斉転換においては、上記いずれの場合においても、

1 転換により発行される普通株式の発行価額は、転換により消滅する子会社連動株式の発行価額と同額とされ、当該転換に伴い利益積立金が資本等に繰り入れられることはない。したがって、転換の前後において、ソニーの資本等の金額に変動はない、

2 上記の算式のとおり、子会社連動株式の株主には10%のプレミアムを付した価格の比率で普通株式が交付される。

3 転換により生じる1株に満たない端数は、商法に定める株式併合の場合に準じて取り扱う
こととされている。

 株主に他の種類の株式への転換権を付した転換株式については、商法第222条の2に規定されているが、ソニーが発行する子会社連動株式については株主に転換権が付与されていないため、本件転換は同条の規定を根拠とするものではない。しかし、現行商法においても優先的内容の明確性及び客観性を害しない範囲で、種類株式の優先的内容に解除条件若しくは期限を付すことは可能と解されており、本件子会社連動株式は、予め定款に定められた取締役会の決議等を解除条件として普通株式へ一斉転換ができるものである。
 また、子会社連動株式の普通株式への一斉転換においても、子会社連動株式の消滅と普通株式の発行を伴うが、資本等の金額に変動はなく、株主は普通株主として継続して資本参加することとなる点で、転換株式の転換の場合と同様である。

3 SCN株式の交付による強制消却
 SCN株式の取引所等への上場等が承認された場合には、子会社連動株式の全部を消却または普通株式に転換することになるが、その場合、上記1で述べた時価相当の金銭を支払う方法に代えて、子会社連動株式1株に対して下記算式で求める数のSCN株式を交付することができるとしている。
 この場合のSCN株式の交付による消却は、商法第212条の規定により株主に配当すべき利益をもって消却し、または商法第375条以下の資本減少の規定に従い消却されるものである。

SCN株式の交付による子会社連動株式の強制消却計算の算式

※ 「基準比率」とは、子会社連動株式とSCN株式の対応関係を表すもので、「1」を子会社連動株式の最初の発行決議時における「親会社の1単位の株式数」で除した数値をいう。本件照会に係る親会社(ソニー)の1単位の株式数は100株であるため、基準比率は「0.01」となる。
 なお、子会社連動株式若しくはSCN株式の分割又は併合など、比率に影響を与える事由が生じた場合には調整される。

2.子会社連動株式に係る課税関係

(1) 子会社連動株式の発行時の課税関係
 子会社連動株式は、親会社であるソニーが種類株式として一般投資家に対して公募の方法で発行するものであり、その発行価額はブックビルディングの方法により市場において決定されるものであるから、これを取得する株主には特段の課税関係は生じない。

(2) 子会社連動株式の保有又は譲渡に係る課税関係

1 子会社連動株式の株主は、保有期間中にSCNの配当金に連動した配当金をソニーから受領することとなるが、これについては、通常の配当による所得として、所得税又は法人税の課税対象となる(所法24、法法23)。

2 保有する子会社連動株式が分割又は併合された場合には、取得価額の付け替えを行うこととされ、課税関係は生じない(所令110、法令119の32)。

3 子会社連動株式を市場で譲渡した場合には、個人は上場株式等の譲渡による所得として課税対象となり(措法37の101、旧措法37の111)、法人は益金に算入される(法法22)。
 これらは、いずれも通常の株式の保有又は譲渡に係る課税関係と何ら変わるものではない。

(3) 子会社連動株式の終了時の課税関係
 子会社連動株式は、上記1(3)のとおり、1時価相当の金銭の支払いによる任意消却又は強制消却、2ソニー普通株式への一斉転換、3SCN株式の交付による強制消却により終了する旨定款に定められている。この場合のそれぞれの課税関係は、次のとおりとなる。

1 時価相当の金銭の支払による任意消却又は強制消却に係る課税関係

1 子会社連動株式の時価相当の金銭の支払いによる任意消却は、株主に配当すべき利益をもって行われるものであり、その交付を受ける金銭の額について、当該消却が市場買付けによる場合には、みなし配当課税の適用はなく、株式等の譲渡による所得として課税関係が生ずることとなる(平成6年10月31日付課法8-5、課所4-11)。また、当該消却が公開買付けによる場合には、みなし配当及び株式等の譲渡による所得として課税関係が生ずることとなる(ただし、平成14年3月31日までの間に行われる公開買付けに個人が応じる場合にあっては、みなし配当課税は適用されない(措法9の4)。)。

2 子会社連動株式の時価相当の金銭の支払いによる強制消却は、株主に配当すべき利益をもって又は商法の資本減少の規定に従い行うものであり、その交付を受ける金銭の額については、みなし配当及び株式等の譲渡による所得として課税関係が生ずることとなる(所法25、法法24、措法37の104)。

2 ソニー普通株式への一斉転換に係る課税関係
 子会社連動株式は商法第222条第1項に規定する種類株式であり、これを普通株式へ転換する転換権は株主にないものの、定款に定める条件付の種類株式として転換株式の場合と同様に転換がなされるものである。即ち、転換により消滅する子会社連動株式の発行価額は新たに発行される普通株式の発行価額と同額とされ、資本等及び利益積立金の額は転換によっては変動せず、そのままの状態で発行会社であるソニーに留保される。また、子会社連動株主は、ソニーの株主から離脱せず、依然としてソニーの株主のままである。
 したがって、子会社連動株式について生じている値上がり益等はいわば未実現のままであるから、株主は、子会社連動株式の取得価額(帳簿価額)を転換後の普通株式の取得価額(帳簿価額)に付け替えるのみで、株式の譲渡等としての課税関係は生じない。
 ただし、一斉転換に伴い各株主に割り当てられる普通株式について1株に満たない端数が生じる場合には、商法に定める株式併合の場合に準じて処理されることとされているため、100分の1未満の端数及び100分の1の整数倍に当たる端数で端株原簿への記載を希望しないものについては、これらを一括してソニーが処分し、各株主が当該端数に応じて換価代金を受領することになるが、これについては、当該各株主に、普通株式(取得価額(帳簿価額)の付替え後)の譲渡による所得として課税関係が生じる。

3 SCN株式の交付による強制消却に係る課税関係
 SCN株式を交付することによる消却は、時価相当の金銭を支払う方法に代えて子会社連動株式の株主にSCN株式を交付するものであるから、12の強制消却に係る課税関係と同様、株主にはみなし配当及び株式等の譲渡による所得として課税関係が生じるとともに、ソニーについては子会社であるSCN株式の譲渡による課税関係が生じることとなる。

以上