1 照会の趣旨

 道路交通法(昭和35年法律第105号)では、運転免許証(以下「免許証」といいます。)の有効期間の更新(以下「免許証の更新」といいます。)を受けようとする者に対し、一定の講習等を受けることを義務付けており、原則として、70歳未満の者は更新時講習を、70歳以上75歳未満の者は高齢者講習を、75歳以上の者は認知機能検査及び高齢者講習をそれぞれ受けていなければならないこととされています。
 今般、高齢運転者による重大な交通死亡事故の発生等を受け、高齢運転者対策の充実・強化を図る観点から、道路交通法の一部を改正する法律(令和2年法律第42号。以下「令和2年改正道路交通法」といいます。)等により、75歳以上で一定の違反歴がある者に対し、従来の認知機能検査及び高齢者講習に加えて、新たに運転技能検査の受検を義務付けること等を内容とする道路交通法及び道路交通法関係法令の改正が行われました(令和4年5月13日施行)。
 また、自動車教習所等が都道府県公安委員会(以下「公安委員会」といいます。)の認定を受けて行う運転免許取得者教育(更新時講習と同等の効果がある課程及び高齢者講習と同等の効果がある課程により行われるものに限ります。以下「改正前同等教育」といいます。)については、免許証の更新時の更新時講習又は高齢者講習の代わりとなる一方で、運転免許が失効した者等が運転免許試験の一部免除を受けて運転免許を再取得する際の更新時講習又は高齢者講習の代わりとしては認められていないことから、公安委員会が行うこれらの講習と同じ法的効果を持たないものとされていましたが、改正後においては、公安委員会が行うこれらの講習と同じ法的効果を持つものとして位置付けられるとともに、その名称が「運転免許取得者教育」から「運転免許取得者等教育」に改められました。
 なお、運転免許取得者等教育のうち、高齢者講習と同等の効果がある課程により行われる教育(以下「高齢者講習同等教育」といいます。)については、公安委員会が指定する者により行われるものであることが認定を受けるための要件とされました。
 このほか、認知機能検査及び新たに導入される運転技能検査についても、高齢者講習同等教育と同様に、公安委員会が指定する者が公安委員会の認定を受けて運転免許取得者等検査として認知機能検査と同等の効果がある方法により行われる検査(以下「認知機能検査同等検査」といいます。)及び運転技能検査と同等の効果がある方法により行われる検査(以下「運転技能検査同等検査」といいます。)を実施することができることとなり、これらの検査は、公安委員会が行う認知機能検査又は運転技能検査と同じ法的効果を持つものとして位置付けられました。
 この場合、令和2年改正道路交通法の施行日(令和4年5月13日)以後に公安委員会が指定する者が公安委員会の認定を受けて行う高齢者講習同等教育、認知機能検査同等検査及び運転技能検査同等検査(以下「本件同等教育等」といいます。)の手数料は、消費税が非課税となる行政手数料に該当するものと解して差し支えないか伺います。

2 照会に係る取引等の事実関係

(1) 免許証の更新に係る制度の概要

 免許証の更新時に受けることが義務付けられる一定の講習等については、従来、原則として、70歳未満の者は更新時講習、70歳以上75歳未満の者は高齢者講習、75歳以上の者は認知機能検査及び高齢者講習とされていましたが、令和2年改正道路交通法により、その施行日以後については、その者の更新期間が満了する日における年齢等に応じて、原則として、それぞれ次のとおりとなりました。

① 70歳未満の者
 更新時講習又は運転免許取得者等教育のうち更新時講習と同等の効果がある課程により行われる教育(以下「更新時講習同等教育」といいます。)

② 70歳以上75歳未満の者
 高齢者講習又は高齢者講習同等教育

③ 75歳以上の者(一定の違反歴がある者以外の者)
(i)  高齢者講習又は高齢者講習同等教育
(ii) 認知機能検査又は認知機能検査同等検査

④ 75歳以上の者(一定の違反歴がある者)
(i)  高齢者講習又は高齢者講習同等教育
(ii) 認知機能検査又は認知機能検査同等検査
(iii)  運転技能検査又は運転技能検査同等検査

(2) 新たに導入される運転技能検査の内容

 令和2年改正道路交通法により新たに導入される運転技能検査は、75歳以上で一定の違反歴のある者が免許証の更新等を受ける際に受検することが義務付けられるものであり、その内容は、普通自動車等の運転について必要な技能に関して検査を行うものとなります。
 具体的には、実際にコース等において、普通自動車を使用して、原則、1,200メートル以上の距離を走行させることにより、次の能力について減点式採点法により採点を行います。
(採点を行う能力)

① 運転装置を操作する能力

② 交通法規に従って運転する能力

③ ①及び②のほか、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転する能力その他の自動車を安全に運転する能力

 運転技能検査の結果が普通自動車等を運転することが支障があることを示す基準に該当する場合には、免許証の更新等を受けることはできません(道路交通法第97条の2第2項、同法第101条の4第4項。条文は令和2年改正道路交通法等による改正後のものを指します。以下同じです。)。
 なお、運転技能検査は受検期間内に繰り返し受けることができます。

(3) 公安委員会が指定する者が公安委員会の認定を受けて行う教育及び検査

 自動車教習所等が公安委員会の認定を受けて行う改正前同等教育を終了した者は、免許証の更新時の更新時講習又は高齢者講習の受講義務が免除される一方で、特定失効者等(道路交通法第97条の2第1項第3号に規定する特定失効者及び同項第5号に規定する特定取消処分者をいいます。以下同じです。)が運転免許試験の一部免除を受けて運転免許を再取得する際の更新時講習又は高齢者講習の受講は免除されないこととされていました。
 上記については、令和2年改正道路交通法により、運転免許取得者等教育(更新時講習同等教育及び高齢者講習同等教育に限ります。以下「改正後同等教育」といいます。)を終了した特定失効者等についても、運転免許試験の一部免除を受けて運転免許を再取得する際の更新時講習又は高齢者講習の受講を免除することとされました。
 これに伴い、運転免許取得者教育の対象が、免許証の更新を受けようとする者(現に運転免許を受けている者)だけでなく、特定失効者等にも拡大されることから、その名称についても、「運転免許取得者教育」から「運転免許取得者等教育」に改められました。
 以上により、改正後同等教育は、公安委員会が行う更新時講習又は高齢者講習と同じ法的効果を持つものとして位置付けられ、免許証の更新等を受けるに当たり、更新時講習同等教育を終了した者は更新時講習を受ける必要がなく、高齢者講習同等教育を終了した者は高齢者講習を受ける必要がないものとされました。
 また、現在、高齢の運転免許保有者の増加等を背景に、高齢者講習等の実施体制の確保が課題となっており、高齢者の免許証の更新に係る制度を安定的に運用するためには、高齢者講習と同じ法的効果を持つ高齢者講習同等教育については、一定程度の回数が安定的に実施されることが必要です。このため、高齢者講習同等教育については、同教育を適正かつ確実に行うことができる者として公安委員会の指定を受けた者により行われるものであることが、公安委員会の認定を受けるための要件とされました(道路交通法第108条の32の2第1項第3号ロ、運転免許取得者等教育の認定に関する規則(平成12年国家公安委員会規則第4号)第4条第2項第4号)。
 一方、更新時講習については、高齢者講習とは異なり、実施体制が特段ひっ迫している状況にないこと等から、更新時講習同等教育に関して公安委員会の認定を受けるための要件に変更は行われておりません(公安委員会の認定を受けるための要件として、実施者が公安委員会の指定を受けることとはされていません。)。
 このほか、認知機能検査及び新たに導入される運転技能検査についても、これらの検査と同じ法的効果を持つものとして、公安委員会の認定を受けた運転免許取得者等検査(認知機能検査同等検査及び運転技能検査同等検査に限ります。以下「本件同等検査」といいます。)を実施できることとなりましたが、本件同等検査についても、高齢者講習同等教育と同様に、一定程度の回数が安定的に実施される必要があることから、本件同等検査を適正かつ確実に行うことができる者として公安委員会の指定を受けた者により行われるものであることが、公安委員会の認定を受けるための要件とされました(道路交通法第108条の32の3第1項第3号イ及びロ、運転免許取得者等検査の認定に関する規則(令和4年国家公安委員会規則第8号)第4条第1項第4号及び第2項第4号)。
 これにより、免許証の更新等を受けるに当たり、認知機能検査同等検査を受けた者は認知機能検査を受ける必要がなく、運転技能検査同等検査を受けた者は運転技能検査を受ける必要がないものとされました。

(4) 公安委員会が指定する者が認定を受けて行う本件同等教育等の手数料

 公安委員会が指定する者が公安委員会の認定を受けて行う本件同等教育等の手数料については、その金額及び徴収について法令上の定めはなく、その実施者が任意に定めることになります。

3 上記2の事実関係に対して照会者の求める見解となることの理由

(1) 講習又は検査に係る手数料に関する消費税の非課税規定等

 国、地方公共団体、消費税法別表第三に掲げる法人(以下「別表第三法人」といいます。)その他法令に基づき国若しくは地方公共団体の委託若しくは指定を受けた者が、法令に基づき行う検査、検定、試験、審査、証明及び講習に係る役務の提供で、その手数料その他の料金の徴収が法令に基づく一定のものについては、消費税が非課税とされています(消費税法第6条第1項、別表第一第5号イ)。
 また、上記に掲げる役務の提供に類するものとして政令で定める一定のものについても、消費税が非課税とされています(消費税法第6条第1項、別表第一第5号ロ)。
 これを受けて、消費税法施行令第12条第2項第2号イ(1)では、国、地方公共団体、別表第三法人その他法令に基づき国又は地方公共団体の委託又は指定を受けた者が行う役務の提供で、法令において、弁護士その他の法令に基づく資格を取得し、若しくは維持し、又は当該資格に係る業務若しくは行為を行うにつき、登録、認定、確認、指定、検査、検定、試験、審査及び講習(以下「講習等」といいます。)に係る役務の提供を受けることが要件とされているものについては、非課税となる旨を定めています。
 なお、「料金の徴収が法令に基づくもの」とは、「手数料を徴収することができる」又は「手数料を支払わなければならない」等の規定をいい、「別途手数料に関する事項を定める」又は「手数料の額は○○○円とする」との規定は含まれないと解されています(消費税法基本通達6−5−2)。

(2) 照会者の求める見解となることの理由

 上記2(4)のとおり、公安委員会が指定する者が公安委員会の認定を受けて行う本件同等教育等に係る手数料については、その徴収の根拠となる法令上の規定がないことから、消費税法別表第一第5号イには該当しないこととなります。
 このため、上記(1)のとおり、照会の手数料について、これが非課税となる場合の要件としては消費税法施行令第12条第2項第2号イ(1)に該当するかについて検討する必要があると考えますので、次の要件の該当性について、以下検討します。

① 講習又は検査を行う者が、国、地方公共団体、別表第三法人その他法令に基づき国若しくは地方公共団体の委託若しくは指定を受けた者であること

② 当該事務が、法令に基づき行う講習等に係る役務の提供で、法令において、弁護士その他の法令に基づく資格を取得し、若しくは維持し、又は当該資格に係る業務若しくは行為を行う場合に当該講習等に係る役務の提供を受けることが要件とされているものであること

イ 講習又は検査を行う者が国等に該当するか
 上記2(3)のとおり、本件同等教育等については、その運営者が公安委員会の指定を受けることが公安委員会の認定を受ける要件とされています。
 具体的には、その指定を受けようとする者の申請を受けた公安委員会が、運転免許取得者等教育の認定に関する規則第4条第2項第4号又は運転免許取得者等検査の認定に関する規則第4条第1項第4号若しくは第2項第4号の規定に基づき、一定程度の回数を安定的に実施することが可能であるかなどの観点から、本件同等教育等を適正かつ確実に行うことができる者に該当するかどうかについて、所要の審査を実施した上で指定することとなります。
 したがって、本件同等教育等の実施者は、法令に基づき地方公共団体の指定を受ける者に該当するものと認められ、上記@の要件を満たすものと考えます。

ロ 法令に基づき行う講習等に係る役務の提供に該当し、法令において、資格を維持する場合に当該講習等に係る役務の提供を受けることが要件とされているものに該当するか
 本件同等教育等は、上記2(3)のとおり、道路交通法、運転免許取得者等教育の認定に関する規則及び運転免許取得者等検査の認定に関する規則の定めるところにより実施されるものであり、法令に基づき行われるものです。
 また、本件同等教育等は、上記2(3)のとおり、免許証の更新を受ける際に受講等が義務付けられる高齢者講習、認知機能検査及び運転技能検査の代わりとなるものです。
 ところで上記②の「資格」とは、法令において、その資格を有しない者はその資格に係る業務若しくは行為を行うことができないこととされている場合のその資格をいうこととされています(消費税法施行令第12条第1項第1号イかっこ書)。
 道路交通法では、何人も、公安委員会の運転免許を受けないで、自動車等を運転してはならず、自動車等を運転しようとする者は、公安委員会の運転免許を受けなければならないと規定しています(道路交通法第64条第1項、同法第84条第1項)。
 したがって、運転免許はここでいう「資格」に該当します。
 これらのことから、本件同等教育等は、法令において資格(運転免許)を維持(更新)する場合に受講等が要件とされていると認められるため、上記Aの要件を満たすものと考えます。

(3) 結論

 以上のことからすると、照会の本件同等教育等に係る手数料は、消費税法第6条第1項及び別表第一第5号ロ並びに消費税法施行令第12条第2項第2号イ(1)の規定に基づき、消費税が非課税となるものと考えます。