府公第60号
平成23年4月6日
国税庁 課税部
審理室長 飯島 信幸 殿
内閣府大臣官房
公文書管理課長 福井 仁史
「公文書等の管理に関する法律」(平成21年法律第66号、以下「公文書管理法」という。)は、国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであることにかんがみ、行政文書等の適正な管理、歴史公文書等の適切な保存及び利用等を図り、国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的として制定されたものです(公文書管理法1)。
公文書管理法においては、国の行政機関が保有する行政文書や独立行政法人等が保有する法人文書のうち、歴史公文書等に該当するものを国立公文書館等に移管し、当該施設において特定歴史公文書等として保存し、これを一般の利用に供することとされています(公文書管理法8、11、16)。
当該利用は、国立公文書館等において、文書又は図画については閲覧又は写しの交付等の方法により行われ、写しの交付による場合には、利用者は手数料(以下「本件手数料」という。)を納付しなければならないとされています(公文書管理法19、20)(以下「特定歴史公文書等利用制度」といいます。)。
この場合の本件手数料については、消費税法第6条第1項並びに消費税法別表第一第5号イ(3)及び消費税法施行令第12条第2項第1号ハにより、消費税が非課税とされる行政手数料に該当するものと取り扱って差し支えないかご照会申し上げます。
公文書管理法において、歴史公文書等とは、歴史資料として重要な公文書その他の文書とされ、また、特定歴史公文書等とは、当該歴史公文書等のうち、国立公文書館等に移管されたものとされています(公文書管理法2、
)。
なお、行政機関の長は、管理している行政文書について、保存期間が満了したときの措置として、歴史公文書等に該当するものにあっては、国立公文書館等への移管の措置を、それ以外のものにあっては、廃棄の措置をとるべきことを定めなければならないとされています(公文書管理法5)。
また、国立公文書館等の長は、当該国立公文書館等において保存されている特定歴史公文書等について利用の請求があった場合には、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」(平成11年法律第42号、以下「行政機関情報公開法」という。)第5条《行政文書の開示義務》第1項に掲げる情報等(以下「不開示情報」という。)が記録されている場合を除き、これを利用させなければならないとされています(公文書管理法16)。
すなわち、特定歴史公文書等利用制度の対象となる文書は、国立公文書館等において保存されている特定歴史公文書等のうち、不開示情報の記録等がないものとなります。
公文書管理法において、特定歴史公文書等の保存は、独立行政法人国立公文書館の設置する公文書館並びにこれに類する機能を有する行政機関及び独立行政法人等の施設であって、「公文書等の管理に関する法律施行令」(平成22年政令第250号、以下「公文書管理令」という。)で定める施設で行うこととされています(公文書管理法2)。
具体的には、特定歴史公文書等は、次の〜
の施設で保存し、利用に供されることとなります。
特定歴史公文書等利用制度は、特定歴史公文書等を利用しようとする者からの請求に基づき、次のとおり行われます(公文書管理法19、公文書管理令24)。
(注) 国立公文書館等の長は、特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関する定め(以下「利用等規則」という。)を設けなければならないとされており、当該利用等規則においては手数料その他一般利用に関する事項等を記載するものとされています。
なお、利用等規則を設けようとする場合には、内閣総理大臣と協議し、その同意を得なければならないとされており、さらに、内閣総理大臣においては、当該利用等規則に同意しようとする場合には、公文書管理委員会に諮問しなければならないとされています(公文書管理法27、29二)。
写しの交付により特定歴史公文書等を利用する者は、
により本件手数料を納付しなければならないとされています(公文書管理法20、公文書管理令25)。
国、地方公共団体、消費税法別表第三に掲げる法人(以下「別表第三法人」といいます。)その他法令に基づき国若しくは地方公共団体の委託若しくは指定を受けた者が、法令に基づき行う公文書及び公文書に類するもの(記章、標識その他これらに類するものを含む。)の交付(再交付及び書換交付を含む。)、更新、訂正、閲覧及び謄写に係る役務の提供で、その手数料その他の料金の徴収が法令に基づくものは非課税とされています(消法6、別表第一5イ、ロ、消令12
一ハ)。
なお、「料金の徴収が法令に基づくもの」とは、「手数料を徴収することができる」又は「手数料を支払わなければならない」等の規定をいい、「別途手数料に関する事項を定める」又は「手数料の額は〇〇〇円とする」との規定は含まれないと解されています(消基通6-5-2)。
上記3から、
が、非課税とされる公文書の交付等に係る手数料に該当する要件となりますから、本件手数料について当該要件の適否を以下検討します。
上記2(4)のとおり、写しの交付により特定歴史公文書等を利用する者は、手数料を納付しなければならないとされています(公文書管理法20)。
したがって、本件手数料は、その徴収が法令に基づくものに該当すると考えます。
公文書管理法においては、特定歴史公文書等を保存し、利用に供する施設を規定又は指定するものですが、次の理由から、本件手数料に係る消費税法別表第一第5号の適用に当たっては、単に施設を規定又は指定するものではなく、当該施設を管理運営する行政機関又は独立行政法人等を規定又は指定するものであると解するのが相当であります。
など、利用請求への決定処分、手数料の出納業務、異議申立てに係る諸手続、内閣総理大臣への報告等、法的な効果を組織(機関)として行うものであります。
さらに、公文書管理令第2条第1項第3号の指定に当たっては、当該対象施設における特定歴史公文書等の専用書庫、閲覧室や利用請求窓口の整備状況等、施設の整備状況にとどまらず、これら施設の利用に対応するための職員の配置状況や特定歴史公文書等の保存、利用等に係る業務の実施体制及び知見の有無、利用請求に係る処分決定や写しの交付に係る手数料収納業務、当該処分に係る法人としての処理体制等を勘案することとしており、実質的には、当該対象施設を設置している法人において、特定歴史公文書等利用制度を履行し得る責任能力があるか否かを判断し、当該責任能力を有すると認められた場合に指定することとしています。
特定歴史公文書等利用制度は、公文書管理法の規定に基づき国立公文書館等が保存する特定歴史公文書等を利用請求者に対し閲覧させ、又は写しの交付等を行うものであることから、法令に基づく事務に該当すると考えます。
上記3のとおり、消費税法においては、手数料等の徴収が法令に基づく公文書及び公文書に類するものの交付等に係る役務の提供を非課税としていることから、特定歴史公文書等が消費税法上の公文書及び公文書に類するものに該当するか否かを検討する必要があります。
特定歴史公文書等とは、上記2(1)のとおり歴史資料として重要な公文書その他の文書のうち、保存期間が満了した行政文書、法人文書で、国立公文書館等に移管されたもの、並びに国等が寄贈を受けた文書で国立公文書館等に移管されたものであります(公文書管理法2、
)。
公文書については、消費税関係法令上、特に定義規定は設けられていませんが、行政文書には、行政機関の職員が職務上作成した文書であって、組織的に用いるものとして保有しているものが該当するものと考えられており、行政文書が公文書に該当するとの考えに疑問はないところであります。
なお、別表第三法人に該当する独立行政法人等の情報公開手数料は、消費税法別表第一第5号イ(3)《公文書の閲覧等》又は、消費税法施行令第12条第2項第1号ハにより非課税とされており、別表第三法人に該当する独立行政法人等が作成した文書はこれらに規定する公文書若しくは公文書に類するものに該当すると考えます。
また、特定歴史公文書等とは、国が公文書管理法に基づき同法第一条に規定する趣旨のもと、国立公文書館等で保存し、一般の利用に供することとしているものです。そうすると、著名人の日記や私信など行政文書以外の文書や別表第三法人に該当しない独立行政法人等が作成、保管していた文書であっても国が特定歴史公文書等として保存し、一般の利用に供することとしたものですから消費税法の適用においては公文書若しくは公文書に類するものであると解すことが相当であると考えます。
以上のことからすると、本件手数料は、消費税法第6条第1項並びに消費税法別表第一第5号イ(3)及び消費税法施行令第12条第2項第1号ハにより、消費税が非課税とされる行政手数料に該当するものと考えます。