別紙1

20初教職第42号
平成21年3月24日

国税庁 課税部 審理室長
大久保 修身 殿

文部科学省 初等中等教育局 教職員課長
大木 高仁

(別紙1の1)

1 照会の趣旨(法令解釈・適用上の疑義の要約及び照会者の求める見解の内容)

(1) 教員免許更新制の導入

 教員免許更新制は、その時々で教員として必要な資質能力が保持されるよう、定期的に最新の知識技能を身に付けることで、教員が自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得ることを目的として、教育職員免許法(昭和24年法律第147号、以下「教免法」といいます。)の平成19年6月の改正により、平成21年4月1日から導入されることとなりました。
 教員免許更新制の実施により原則として、平成21年4月1日以降に授与された免許状の有効期間はその授与の日の翌日から起算して10年を経過する日の属する年度の末日までとされ(教免法912)、当該有効期間の満了までに免許状更新講習を受講・修了した上で免許管理者から免許状の有効期間の更新を受ける必要(教免法9の21)がありますが、免許状更新講習を受講・修了せず有効期間が満了すると当該免許状は失効します。
 また、免許状更新講習は、大学、指定教員養成機関等、法令に定める講習実施機関により実施され、講習の受講料は各実施機関によって定めることとされています。

(2) 行政手数料に係る消費税法上の非課税規定等

消費税法別表第一第五号ロ及び同法施行令第12条第2項第二号イ(1)においては、国、地方公共団体、法別表第三に掲げる法人その他法令に基づき国又は地方公共団体の委託又は指定を受けた者が行う役務の提供で、法令において、弁護士その他の法令に基づく資格を取得し、若しくは維持し、又は当該資格に係る業務若しくは行為を行うにつき、登録等(登録、認定、確認、指定、検査、検定、試験、審査及び講習)に係る役務の提供を受けることが要件とされているものについては、非課税とされています。
 また、非課税となる行政手数料等の範囲として、消費税法基本通達6−5−1では、手数料等の徴収について、その根拠となる規定がないものであっても一定の手数料は非課税となることを明らかにしています。

(3) 照会の趣旨

 免許状更新講習については、各実施機関が任意に定めた受講料を対価として実施されますが、以下に記載のとおり、その実施機関は、「国、地方公共団体、法別表第三に掲げる法人その他法令に基づき国又は地方公共団体の委託又は指定を受けた者」(一部これら以外の者を含む。以下「国又は指定法人等」といいます。)のいずれかに該当するものであり、かつ、当該講習は「法令において、法令に基づく資格を維持するにつき、講習を受けることが要件とされているもの」に該当するものと考えられますから、これらの「国又は指定法人等」が実施する、受講料を対価とする免許状更新講習に係る役務の提供は消費税が非課税となるものと解して差し支えないか照会いたします。

(別紙1の2)

2 照会に係る取引等の事実関係

(1) 教員免許更新制度の概要

 免許状の有効期間の更新を受けようとする者は、当該免許状の有効期間満了前の2年2月の期間に、大学等が開設する免許状更新講習を30時間以上受講・修了し、免許管理者に申請して免許状の有効期間を更新することが必要とされています。

(2) 更新講習の受講対象者について

  • イ 現職教員(指導改善研修中の者を除く。)
  • ロ 教員採用内定者
  • ハ 教育委員会や学校法人などが作成した臨時任用(又は非常勤)教員リストに登載されている者
  • ニ 過去に教員として勤務した経験のある者
  • 等(教免法9の31、免許状更新講習規則(平成20年文部科学省令第10号)9)

(注)

  • 1 施行前に授与された免許状を有する者の取扱い
     施行前に授与された免許状を有する現職教員等(平成21年3月31日以前に授与された免許状を有する者)は、生年月日及びその者の有する免許状の授与の日に応じて定められた期限までに免許状更新講習を修了したことの確認を受けなければならず、その後においても当該期限から10年を経過するごとに免許状更新講習を修了したことの確認を受けなければならないものとされ、講習を修了したことの確認を受けなかった現職教員等の免許状は、その効力を失うものとされています。(教免法改正附則2235
  • 2 免許状更新講習を受講せずに免許管理者に申請を行うことによって免許状を更新できる者(免除対象者)は次のとおりとされています。
    • a 優秀教員表彰者
    • b 教員を指導する立場にある者(校長、副校長、教頭、主幹教諭または指導教諭あるいは教育長または指導主事など)
    • 等(教免法9の23、教免法施行規則(昭和29年文部省令第26号)61条の4)

(3) 免許状更新講習について

  • イ 免許状更新講習を開設できる機関
     免許状更新講習を開設することのできる機関は次のとおりとされています。
    • a 大学
    • b 指定教員養成機関(専修学校などで文部科学大臣の指定を受けているもの)
    • c 都道府県・指定都市等教育委員会
    • 等(教免法9の31、免許状更新講習規則1)
  • ロ 免許状更新講習の実施形態
     講習の開設は、長期休業期間中や土日での開講を基本とするとともに、通信・インターネットや放送による形態なども認めることにより、受講しやすい環境の整備に努めることとされています。
  • ハ 免許状更新講習の講師
     免許状更新講習の講師を担当することのできる者は次のとおりです。
    • a 大学の教授・准教授・講師
    • b 教育委員会の指導主事
    • 等(教免法9の31二、免許状更新講習規則5)
  • ニ 免許状更新講習の内容
     受講者は、本人の専門や課題意識に応じて、教職課程を持つ大学などが開設する講習の中から、次の内容の必要な講習を選択し、受講することとされています。
    • a 教職についての省察並びに子どもの変化、教育政策の動向及び学校の内外における連携協力についての理解に関する事項(12時間以上)
    • b 教科指導、生徒指導その他教育の充実に関する事項(18時間以上)
    • (教免法9の31一、免許状更新講習規則4)

(別紙1の3)

3 照会者の求める見解となることの理由

(1) 免許状更新講習の実施機関について

 免許状更新講習は上記2(3)のとおり、大学その他文部科学省令で定める者が、一定の基準に適合することについての文部科学大臣の認定を受けて行うこととされています(教免法9の31)。具体的には、1大学、2指定教員養成機関、3教育委員会、4大学共同利用機関のほか5文部科学大臣が指定した者が免許状更新講習の実施機関となり(教免法9の31、免許状更新講習規則1)、これらの実施機関は、末尾の表「免許状更新講習実施機関一覧表」のとおり、「国又は指定法人等」に該当することとなります。

(2) 教育職員免許を維持するための免許状更新講習の要件性について

 消費税法施行令第12条第2項第二号イ(1)に規定する「資格」とは、法令において、その資格を有しない者はその資格に係る業務若しくは行為を行うことができないこととされている場合のその資格をいうこととされています(同条1一イかっこ書)。
 教育職員とは、学校教育法第1条に定める小学校等の教員をいい(教免法2)、教免法により授与される免許状(以下「教育職員免許」といいます。)を有する者でなければならないこととされていますから(教免法3)、教育職員免許は、この場合の「資格」に該当するものと考えられます。
 また、教免法上、普通免許状及び特別免許状に10年間の有効期間が設けられ、申請があった場合には免許管理者は有効期間を更新することとされていますが、その更新は申請をした者が免許状更新講習を修了している場合に限り行われるものとされていますから(教免法9の23)、免許状を維持するためには当該講習を受けることが要件とされているものということができるものと考えます。

(注)

  • 1 上記2(注)1のとおり、教免法改正前に授与された免許状を有している者についても、定められた期限までに免許状更新講習を修了したことの確認を受けなければならず、確認を受けなかった者の免許状は効力を失うこととされていることから(教免法改正附則225)、教育職員免許を維持するためには当該講習を受けることが要件とされているものと考えます。
  • 2 同(注)2のとおり、優秀教員表彰者等は免許状更新講習を受講せずに免許管理者に申請を行うことによって免許状を更新できることとされていますが、これは、要件とされる講習の受講を免除されているのであって、免除される者があることをもって教育職員免許を維持するための要件とされていないことにはならないものと考えます。

(3) 結論

以上のとおり、本件免許状更新講習の実施機関は「国又は指定法人等」に該当するものとなり、また、本件免許状更新講習は、消費税法施行令第12条第2項第二号イ(1)に規定する「法令において、法令に基づく資格を維持するにつき、講習を受けることが要件とされているもの」に該当するものと考えられますから照会の趣旨のとおり、消費税は非課税となるものと考えます。

(表)「免許状更新講習実施機関一覧表」
1大学  学校教育法上の大学は、国(国立大学法人法第2条第1項に規定する国立大学法人及び独立行政法人国立高等専門学校機構を含む)、地方公共団体(地方独立行政法人法第68条第1項に規定する公立大学法人を含む)、私立学校法第3条に規定する学校法人のみが設置することができる(学校教育法2)ことが原則とされています。
 国立大学法人、独立行政法人国立高等専門学校機構、地方独立行政法人(公立大学法人)及び学校法人は法別表第三に掲げられている法人です。
 よって、大学が行う免許状更新講習は、原則として、「国」、「地方公共団体」、「法別表第三に掲げる法人」のいずれかが行う役務の提供となります。
 なお、構造改革特別区域法第12条の規定に基づき学校を設置することができることとされている株式会社(以下「学校設置会社」といいます。)が設置する大学は、下記(注)のとおり、学校法人が設置する大学が行う免許状更新講習と同様の取扱いとすることが相当と考えます。
2指定教員養成機関  教員養成機関は、教員の養成を目的として大学に設置されるものですが、大学における教員養成を補完するものとして、指定教員養成機関制度が設けられており、大学以外の専門学校等においても、文部科学大臣から教員養成機関として指定を受けることにより、教員養成をすることが可能となっています(教育職員免許法施行規則27)。
 指定の対象は、国(国立大学法人法第2条第1項に規定する国立大学法人及び独立行政法人国立高等専門学校機構を含む)、地方公共団体(地方独立行政法人法第68条第1項に規定する公立大学法人を含む)、私立学校法第3条に規定する学校法人、私立学校法第64条に規定による法人が設置する教員養成機関です(同29)。
 よって、指定教員養成機関が行う免許状更新講習は、「国」、「地方公共団体」、「法別表第三に掲げる法人」のいずれかが行う役務の提供となります。
3教育委員会  教育委員会は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律により、都道府県及び市町村に設置される行政機関です。
 よって、教育委員会が行う免許状更新講習は、「地方公共団体」が行う役務の提供となります。
4大学共同利用機関  大学共同利用機関は、大学における学術研究の発展等に資するために設置される大学の共同利用の研究所です(国立大学法人法24)。
 大学共同利用機関は、大学が設置する機関ですので、大学共同利用機関が行う免許状更新講習は、大学が行う免許状更新講習と同様、「国」、「地方公共団体」、「法別表第三に掲げる法人」のいずれかが行う役務の提供となります。
  大学共同利用機関法人  大学共同利用機関を設置することを目的として設立される法人であり(国立大学法人法23)、法別表第三に掲げられている法人です。
5文部科学大臣が指定した者  「法令に基づき国若しくは地方公共団体の委託又は指定を受けた者」に該当します。

(注)

 消費税法別表第三に掲げる法人(以下「別表三法人」といいます。)が行う役務の提供で、法令において、法令に基づく資格を維持するにつき、登録等の役務の提供を受けることが要件とされているものは非課税とされており、この別表三法人には、私立学校法第3条に規定する学校法人(以下「学校法人」といいます。)が含まれています。
 ところで、学校法人は、文部科学大臣の認可を受けて学校を設置することとされていますが、学校設置会社についても、文部科学大臣の認可を受けて学校を設置することができることとされています(構造改革特別区域法121、学校教育法4)。このように学校設置会社は、学校を設置し運営するという面において、学校教育法上、学校法人と同等に取り扱われているところです。
 一方、学校設置会社が設置する大学(以下「会社立大学」といいます。)が、免許状更新講習を開設する場合にも、学校法人が設置する大学(以下「学校法人立大学」といいます。)と同様に、文部科学大臣の指定(免許状更新講習規則1四)を受けるまでもなく、講習の内容やその講師等について文部科学大臣の審査を受け、その認定を受けることで開設できることとされています(教免法第9の31)。
 このように、教免法上、会社立大学は学校法人立大学と同等に取り扱われていますので、会社立大学が行う免許状更新講習は、学校法人立大学が行う免許状更新講習と同様に、非課税となる役務の提供に該当するものと取り扱うことが相当と考えます。