平成16年11月30日
改正平成18年7月14日
企業会計基準委員会

1 本実務対応報告の対象とする排出クレジットとその性格

(1) 本実務対応報告の対象とする排出クレジット
 本実務対応報告は、京都メカニズムにおける排出クレジットを対象とし、それは二酸化炭素換算量で示される。なお、京都メカニズム以外の排出クレジットについても、会計上、その性格が類似していることから、本実務対応報告の考え方を斟酌し、会計処理を行うものとする。

3 専ら第三者に販売する目的で排出クレジットを取得する場合の会計処理

(1) 他者から購入する場合
 専ら第三者に販売する目的で排出クレジットを他者から購入する場合、通常の商品等の購入と同様の会計処理を行う。したがって、将来の一定時点で排出クレジットを購入することとした契約を締結した段階では取引を認識せず、引渡しを受けた段階で取引を認識する。引渡しを受けた排出クレジットについては、取得原価により棚卸資産として処理し、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とする。
 なお、排出クレジットの取得の前に資金を支出している場合には、原則として「前渡金」とするが、通常、取得に至るまでの期間が長期になると想定されることから、明らかに回収可能である場合を除き、評価減の要否を検討することが適当である。

4 将来の自社使用を見込んで排出クレジットを取得する場合の会計処理

(1) 他者から購入する場合
 将来の自社使用を見込んで排出クレジットを他者から購入する場合、「無形固定資産」又は「投資その他の資産」の購入として会計処理を行う。したがって、将来の一定時点で排出クレジットを購入することとした契約を締結した段階では、取引を認識しない。
 また、取得した排出クレジットは、時間の経過による減価がないこと、及び陳腐化がないと考えられることから、減価償却は行われないが、「固定資産の減損に係る会計基準」の対象となる。その適用に際しては、第三者への売却可能性に基づく財産的価値を有していることに着目して資産計上されているため、他の資産とのグルーピングは適当でないと考えられる(企業会計基準適用指針第6号「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」第8項参照)。
 資産として計上された排出クレジットは、自社の排出量削減に充てられたときに、これを費用(原則として、「販売費及び一般管理費」とすることが考えられる。)として計上する。具体的には、排出クレジットを国別登録簿(割当量口座簿)の政府保有口座へ償却を目的として移転した時点において費用とする。また、実際に政府保有口座に移転していなくとも移転することが確実と見込まれる場合や、第三者へ売却する可能性がないと見込まれる場合にも費用とすることが適当である。