(別紙)
第78号
平成23年2月18日

国税庁 課税部
課税部長 西村 善嗣 殿

預金保険機構
理事長 田邉 昌徳

T 照会の経緯

 預金保険機構(以下「機構」といいます。)は、昭和46年7月、預金保険法(以下「預保法」といいます。)に基づき、我が国の預金保険制度の運営主体として政府、日本銀行及び民間金融機関の出資により設立された法人です。
 預金保険制度は、金融機関が破綻して預金や金融債などの預金保険制度の対象となる預金等の払戻しができなくなった場合などに預金者等を保護し、信用秩序の維持に資することを目的とするものです。
 したがって、金融機関が破綻した場合、預金保険制度により預金等の一部は保護されることになりますが、保護されない部分の預金等については、破綻した金融機関に対して倒産手続が適用される結果、その全額が破産配当・弁済金により弁済されるとは限らず、一部が切り捨てられることがあります。
 ところで、預金保険制度の対象となる預金等のうち預金については、平時においては寄託債権に該当することから、預金者からの請求により預金の払戻しが認められます。
 しかしながら、金融機関が破綻した場合、上記のとおり、預金であっても元本の一部の返済が受けられないことがあり得ますが、このような場合における預金に係る税務上の取扱いを整理したものとしては、平成23年2月7日付預保第61号「金融機関が破綻した場合における預金保険制度による保護の対象外の預金に係る所得税及び法人税の取扱いについて(照会)」により、預金者が破綻した金融機関に預け入れている預金に対する税務上の取扱いを国税庁に照会し、同月10日に「貴見のとおりで差し支えない。」旨の文書回答(以下「平成23年2月10日付文書回答」といいます。)をいただいたところです。
 さらに、預金者の予測可能性に資するため、個人預金者に相続が開始した場合に当該預金者が破綻した金融機関に預け入れている預金に対する税務上の取扱いを明確にするべく本件照会を行うこととしたところです。

U 事実関係

1 預金保険制度による預金者保護の概要等

(1) 金融機関が破綻した場合、預金保険制度の対象となる預金の元本(既に支払われて元本に組み込まれた利息を含み、以下「保護対象預金」といいます。)だけでなく、その預金に係る支払が未だなされていない利息(破綻日までの期間に係るものに限り、以下「経過利息」といいます。)も預金保険制度による保護の対象となります。
 しかしながら、保護対象預金及び経過利息(以下「保護対象預金等」といいます。)の全額が保護されるとは限らず、その預金の区分に応じた範囲が設定されています。
 具体的には、保護対象預金のうち決済用預金に該当するものは、預金の元本の全額が保護の範囲とされ、決済用預金以外の預金に該当するものは、1金融機関ごとに預金者1人当たりの預金の元本のうち1,000万円以下の部分の金額が保護の範囲とされています(保護対象預金のうちこれらの保護の範囲に該当するものを以下「付保預金」といいます。)。
 また、決済用預金以外の保護対象預金に係る経過利息については、付保預金に対応する部分のみが保護の範囲とされています。
 以下においては、預金保険制度の保護の範囲となる付保預金とその経過利息を「付保預金等」といいます。

(注)

1 預金であっても、外貨預金、無記名預金など一定のものについては保護の対象になりません。

2 上記の「決済用預金」とは、無利息、要求払い、決済サービスを提供できることという3要件を満たす預金をいいます。

(2) 保護対象預金のうち付保預金の範囲を超える部分及び保護対象預金に該当しない預金の元本(既に支払われて元本に組み込まれた利息を含みます。以下においてはこれらを合わせて「非付保預金」といいます。)並びに非付保預金に係る支払が未だなされていない利息(以下「未払利息」といい、非付保預金と合わせて「非付保預金等」といいます。)に係る弁済については、民事再生法等の倒産手続による弁済が行われることから、一般的にはその弁済までに長期間を要することが見込まれますので、機構が預金者における預金の早期の流動性の回復の必要があると認める場合には、非付保預金等のうち担保権の目的となっていない預金等債権(以下「非担保債権」といいます。)を買い取ることができます(預保法70)。この非担保債権の買取りによる支払を、以下「概算払」といいます。

(注) 非担保債権に該当するものであっても、他の金融機関から受け入れた預金など一定のものについては、上記の買取りの対象とはなりません。

(3) 非付保預金等を有する預金者((2)による非担保債権の買取りをした機構を含みます。)に対しては、民事再生法等の倒産手続により破綻した金融機関の財産の状況に応じて弁済が行われるとともに、その一部が切り捨てられることがあります。

(注) (2)による非担保債権の買取りをした機構が上記の弁済を受けた場合において、その弁済を受けた金額が(2)の概算払により支払われた金額と非担保債権の買取りに要した一定の費用の合計額を超えるときには、元預金者の不当利得返還請求権の行使に代替するものとして、その超える部分の金額を(2)による非担保債権の買取りに応じた元預金者に対して支払います(預保法702ただし書)。以下においては、この支払を「精算払」といい、この精算払を受ける権利を「精算払受領権」といいます。

2 金融機関が破綻した場合の預金の弁済に係る手続
 金融機関が破綻した場合の預金者に対する預金の弁済に係る手続は、唯一の手順が定められているわけではありませんが、次の手順で行われることが想定されるため、本件の照会においては、この手順によることを前提とします。

(1) 金融庁長官は、金融機関がその財産をもって債務を完済することができないと認める等一定の要件に該当する場合には、当該金融機関に対し「金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分」(以下「管理を命ずる処分」といいます。)を行うとともに、機構を金融整理管財人に選任します(預保法741、772、782、1391)。
 また、管理を命ずる処分があった場合には、当該金融機関を代表し、業務の執行並びに財産の管理及び処分を行う権利は、金融整理管財人に専属することとなります(預保法771)。
 この管理を命ずる処分があった金融機関を、以下「破綻金融機関」といいます。

(2) 破綻金融機関においては、預金者をはじめとする債権者の間の平等を保ち、財産の流出を防ぐために、預金の払戻しなどの業務に制約を課して財産を保全することが必要となりますので、管理を命ずる処分を受けた日と同日に、裁判所に対して民事再生法における再生手続開始の申立てを行うとともに、財産の保全処分の申立てを行い保全処分命令を受けます(民事再生法21、30)。
 ただし、付保預金等については、預金保険制度で保護されるため、裁判所の許可を得ることにより、保全処分の例外として預金者からの請求により再生手続開始の決定があるまでの間、払戻しが認められます(民事再生法30)。

(注) 機構は、破綻金融機関に対する倒産手続として、民事再生法による手続を予定していることから、上記においても同法の手続に従って記載しています(以下における説明についても同様です。)。

(3) 破綻金融機関が民事再生法における再生手続開始の決定を受けた場合には、預金者が再生手続開始前に預け入れた預金も再生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権に該当しますので、再生計画の定めるところによらなければ、弁済をし、弁済を受け、その他これを消滅させる行為(免除を除く。)をすることができない再生債権となります(民事再生法841、851)。
 ただし、付保預金等については、預金保険制度で保護されるため、裁判所の許可を得ることにより、民事再生法第85条の規定にかかわらず、預金者からの請求により、裁判所が定めた一定の期間内において払戻しが認められます(金融機関等の更生手続の特例等に関する法律47312)。

(4) 機構は、預金者が有する非担保債権を預金者からの請求に基づいて概算払額に相当する金額で買い取ることができます(預保法702)。
 この概算払額の算定及び非担保債権の買取りは、次の手続等により行われます。

1 機構は、概算払率の算定をする場合、金融機関の財務の状況に照らし、当該金融機関について破産手続が行われたならば弁済を受けることができると見込まれる額(破産配当見込額)等を考慮しなければならないとされており(預保法712)、実務上は、破綻金融機関の資産及び負債について、監査法人による資産査定の結果等を踏まえ清算価値で評価して算定することとなります。
 また、概算払率の決定に当たっては、機構の運営委員会の議決を経た後、金融庁長官及び財務大臣の認可を受けます(預保法711、1391)。

2 機構は、概算払率が決定した場合、概算払に係る買取期間、買取場所、概算払額の支払方法、買取りの取扱時間、買取りの際に機構に提出又は提示すべき書類等を定め、当該概算払率とともに公告します(預保法721、同法施行令18)。

3 機構は、買取りを希望する預金者から買取りの請求があった場合、その内容を確認し、速やかに買取代金(以下「概算払額」といいます。)を振り込みます。
 この概算払額は、機構が預金者から買い取る非担保債権の額から、未払利息のうち金融機関の破綻後の期間に対応する利息の額を控除した金額に機構が定める概算払率を乗じて計算した金額により算定されます(預保法703)。

(注) なお、上記の買取りにおいては、預金者から買い取った非担保債権を預金者が買い戻すような権利を付与することはありません。

(5) 民事再生法における再生計画認可の決定が行われた場合には、預金者が有する非付保預金等の一部が切り捨てられるとともに、切り捨てられなかった部分に対する弁済が行われます。

(注)

1 この弁済の額は、再生計画において、非付保預金等のうち非付保預金から充当することが定められ、弁済の額が非付保預金の額を超えない限り、未払利息に対する充当は行われない予定です。

2 上記(4)により概算払を受けた元預金者においては、上記1(3)の(注)に記載する精算払を受ける場合があります。

V 照会事項(照会趣旨)

 個人預金者に相続が開始した場合に当該預金者が破綻した金融機関に預け入れている預金の価額については、付保預金及び非付保預金とに区分し、それぞれ次のとおり評価するものと解してよろしいか伺います。

1 民事再生法における再生手続開始の申立ての日(金融庁長官が管理を命ずる処分を行った日)以後、概算払率決定の日の前日までの間に個人預金者に相続が開始した場合

(1) 付保預金
 財産評価基本通達(以下「評価通達」といいます。)203(預貯金の評価)に基づき評価する。

(算式)付保預金の金額(1,000万円までの金額(注)1)+(既経過利子の額(注)2−源泉所得税相当額)

(注)1 付保預金が決済用預金である場合は、その全額となる。

(注)2 破綻金融機関と破綻金融機関の事業の譲渡を受ける金融機関等(以下「承継金融機関」といいます。)との間における契約等により、民事再生法における再生手続開始の申立ての日後の利息が、預金者に支払われる場合には、当該再生手続開始の申立ての日後の利息を既経過利子の額に含めて評価する。

(2) 非付保預金
 評価通達204(貸付金債権の評価)に基づき評価するが、非付保預金の価額は、評価通達205(貸付金債権等の元本価額の範囲)本文の「その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれる」金額に該当し、非付保預金の元本の価額に算入しない。非付保預金の価額に対応する既経過利息の額も評価しない。以下、2(2)及び3(2)における非付保預金の価額のうち、元本の価額に算入されない金額に応ずる既経過利息の額についても同様である。
 したがって、非付保預金の価額は評価しない。

2 概算払率決定の日以後、再生計画認可の決定の日の前日までの間に概算払を受けていない個人預金者に相続が開始した場合

(1) 付保預金
 評価通達203に基づき評価する。

(算式)付保預金の金額(1,000万円までの金額(注)1)+(既経過利子の額(注)2−源泉所得税相当額)

(注) (注)1及び2は上記1(1)の(注)1及び2と同じ。

(2) 非付保預金
 評価通達204に基づき評価するが、非付保預金の価額のうち非付保預金の金額に概算払率を乗じて計算した金額を超える部分の価額は、評価通達205本文の「その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれる」金額に該当し、非付保預金の元本の価額に算入しない。
 したがって、非付保預金の価額(相続税評価額)は以下の算式により評価することとなる。

(算式)非付保預金等の金額×概算払率

3 再生計画認可の決定の日以後、弁済金受領までの間に概算払を受けていない個人預金者に相続が開始した場合

(1) 付保預金
 評価通達203に基づき評価する。

(算式)付保預金の金額(1,000万円までの金額(注)1)+(既経過利子の額(注)2−源泉所得税相当額)

(注) (注)1及び2は上記1(1)の(注)1及び2と同じ。

(2) 非付保預金
 評価通達204に基づき評価するが、非付保預金の価額のうち再生計画に基づく弁済金の金額を超える部分の価額は、評価通達205(2)の切り捨てられる部分の債権の金額に該当し、非付保預金の元本の価額に算入しない。
 したがって、非付保預金の価額(相続税評価額)は弁済金の価額に相当する金額により評価することとなる。

4 概算払を受けた個人預金者に再生計画認可の決定の日以後、精算払が行われるまでの間に相続が開始した場合
 精算払により支払を受けるべき金銭は未収金として相続財産となり、その価額(相続税評価額)は精算払により支払を受けるべき金額により評価することとなる。
 なお、概算払を受けた個人預金者について、再生計画認可の決定の日の前日までの間に相続が開始した場合、当該預金者の概算払により取得した精算払受領権の価額は評価しない。

W 理由(照会者の求める見解となることの理由)

1 民事再生法における再生手続開始の申立ての日(金融庁長官が管理を命ずる処分を行った日)以後、概算払率決定の日の前日までの間に個人預金者に相続が開始した場合
 金融機関が破綻した場合、上記U2のとおり、当該金融機関に対し「管理を命ずる処分」が行われ、業務の執行並びに財産の管理及び処分を行う権利は金融整理管財人(機構)に専属することとなり、管理を命ずる処分が行われた日と同日に民事再生法における再生手続開始の申立てが行われます。
 したがって、「管理を命ずる処分」が行われ、再生手続開始の申立ての日以後、概算払率決定の日の前日までの間に個人預金者に相続が開始した場合には、次のとおり取り扱うことが相当と考えます。

(1) 付保預金
 上記U1(1)のとおり、付保預金等は、預金保険制度による保護の対象となります。
 そして、上記U2のとおり、破綻金融機関が民事再生法における再生手続開始の申立てを行った場合、裁判所から保全処分命令を受けますが、付保預金等は預金保険制度で保護されるため、裁判所の許可を得ることにより、保全処分の例外として、預金者からの請求により再生手続開始の決定があるまでの間、払戻しが認められます。また、民事再生法における再生手続開始の決定があった場合には、付保預金等も再生債権となりますが、付保預金等は預金保険制度で保護されるため、裁判所の許可を得て預金者からの請求により、裁判所が定めた一定の期間において払戻しが認められます。
 したがって、付保預金の価額は、民事再生法における再生手続開始の申立ての日(金融庁長官が管理を命ずる処分を行った日)以後も、次の算式のとおり預金として評価通達203により評価することが相当と考えます。

(算式)付保預金の金額(1,000万円までの金額(注)1)+(既経過利子の額(注)2−源泉所得税相当額)

(注)1 付保預金が決済用預金である場合は、その全額となります。

(注)2 預保法の保護対象となる利息は、預入日から破綻日(保険事故が発生した日であり、民事再生法における再生手続開始の申立ての日と同日)までに発生したものとなりますが(預保法541)、破綻金融機関と承継金融機関等との間の承継金融機関等による債務履行引受けの契約等により、預金者に対し、破綻金融機関から当該再生手続開始の申立ての日後の利息が支払われる場合があります。
 その場合、民事再生法における再生手続開始の申立ての日後の利息は、付保預金の利息として破綻金融機関から預金者に支払われるものであることから、当該付保預金の既経過利子の額に含めて評価することになると考えます。

(2) 非付保預金
 評価通達204は、貸付金、売掛金、未収入金、預貯金以外の預け金、仮払金、その他これらに類するもの(以下「貸付金債権等」といいます。)の価額は、元本の価額(返済されるべき金額)と課税時期現在の既経過利息の価額の合計額によるとしています。また、評価通達205において、貸付金債権等の評価を行う場合において、債権金額の全部又は一部が、課税時期において、1債務者について民事再生法の規定による再生手続開始の決定があったときにおける当該債務者に対して有する貸付金債権等の金額(評基通205(1)ハ)、2再生計画認可の決定により債権の切捨て等の決定があった場合の当該決定により切り捨てられる部分の債権の金額等(評基通205(2))、3その他その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるときのそれらの金額(評基通205本文)は元本の価額に算入しないこととしています。
上記U2(3)のとおり、民事再生法における再生手続開始の決定があった場合には、非付保預金等は再生債権となり、再生計画の定めるところによらなければ、弁済を受ける行為等をすることができなくなる(民事再生法851)ことからすれば、非付保預金は預金者からの請求により預金の払戻しが認められる寄託債権である預金ではなく、一般的な他の貸付金債権等と同様に、評価通達204及び同205に基づき評価することが相当と考えます。
 そうすると、非付保預金の価額については、民事再生法における再生手続開始の決定があった日以後は評価通達205(1)ハの事実が発生している場合の貸付金債権等の金額に該当し、その全額を元本の価額に算入しないことが相当と考えます。
 ただし、金融機関の場合には上記U2(1)のとおり、再生手続開始の決定が行われる前に、預保法の規定による「管理を命ずる処分」が行われ、業務の執行並びに財産の管理及び処分を行う権利は金融整理管財人(機構)に専属することとなり、これにより当該金融機関は破綻金融機関となることからすれば、非付保預金の価額については、再生手続開始の申立ての日(金融庁長官が管理を命ずる処分を行った日)以後再生手続開始の決定の日の前日までの間についても、評価通達205本文の「その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれる」金額に該当し、その全額を元本の価額に算入しないことが相当と考えます。
 また、非付保預金の価額の全額が元本の価額に算入されないため、非付保預金の価額に対応する既経過利息の額も課税時期現在の既経過利息の価額に算入しないことになるものと考えます。以下、下記2(2)及び3(2)における非付保預金の価額のうち、元本の価額に算入されない金額に応ずる既経過利息の額についても同様です。
 したがって、非付保預金の価額は評価しないこととなるものと考えます。

2 概算払率決定の日以後、再生計画認可の決定の日の前日までの間に概算払を受けていない個人預金者に相続が開始した場合

(1) 付保預金
 上記1(1)と同じになります。

(算式)付保預金の金額(1,000万円までの金額(注)1)+(既経過利子の額(注)2−源泉所得税相当額)

(注) (注)1及び2は上記1(1)の(注)1及び2と同じになります。

(2) 非付保預金
 上記1(2)のとおり、民事再生法における再生手続開始の申立ての日(金融庁長官が管理を命ずる処分を行った日)以後、非付保預金は、評価通達204及び同205に基づき評価することが相当と考えます。
 ところで、概算払率は、上記U2(4)に記載したとおり、破綻金融機関の資産及び負債についての監査法人による資産査定の結果等を踏まえた清算価値で非付保預金等を評価して算定され、機構の運営委員会の議決を経た上で、金融庁長官及び財務大臣の認可を受けて決定されます。このような手続を経て決定された概算払率を非付保預金等の額に乗じて計算した金額は、当該非付保預金等に係る回収可能額として合理的な金額と考えられます。
 したがって、非付保預金については、非付保預金の金額に概算払率を乗じて計算した金額を超える部分の価額については、評価通達205本文の「その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれる」金額に該当し、非付保預金の元本の価額に算入しないことが相当と考えます。
 以上のことから、非付保預金の価額(相続税評価額)は以下の算式により評価することとなるものと考えます。

(算式)非付保預金等の金額×概算払率

3 再生計画認可の決定の日以後、弁済金受領までの間に概算払を受けていない個人預金者に相続が開始した場合

(1) 付保預金
 上記1(1)と同じになります。

(算式)付保預金の金額(1,000万円までの金額(注)1)+(既経過利子の額(注)2−源泉所得税相当額)

(注) (注)1及び2は上記1(1)の(注)1及び2と同じになります。

(2) 非付保預金
 上記1(2)のとおり、民事再生法における再生手続開始の申立ての日(金融庁長官が管理を命ずる処分を行った日)以後、非付保預金は、評価通達204及び同205に基づき評価することが相当と考えます。
 ところで、この間に未だ概算払を受けていない預金者に対しては、上記U2(5)のとおり、再生計画認可の決定以後、認可決定された再生計画に基づく弁済金の支払がなされます。
 したがって、非付保預金の価額については、再生計画に基づく弁済金の金額により評価し、当該金額を超える部分の価額は、評価通達205(2)の切り捨てられる部分の債権の金額に該当し、非付保預金の元本の価額に算入しないことが相当と考えます。
 以上のことから、非付保預金の価額(相続税評価額)は弁済金の価額に相当する金額により評価することとなるものと考えます。

4 概算払を受けた個人預金者に再生計画認可の決定の日以後、精算払が行われるまでの間に相続が開始した場合
 上記U1(3)のとおり、概算払を受けた個人預金者は、精算払受領権を取得し、民事再生法等の倒産手続により破綻した金融機関の財産の状況に応じて行われる機構への弁済の金額が、概算払額と非担保債権の買取りに要した一定の費用の合計額を超える場合には、預保法第70条第2項ただし書に基づき、その超える部分の金額を精算払として受けることになります。
 このため、概算払を受けた個人預金者について、再生計画認可の決定の日以後、精算払が行われるまでの間に相続が開始した場合、精算払受領権は相続により承継されることから、精算払により支払を受けるべき金銭は未収金として相続財産となり、その価額(相続税評価額)は精算払により支払を受けるべき金額により評価することとなるものと考えます。
 なお、概算払額は上記2(2)に記載のとおり、破綻金融機関について破産手続が行われたならば弁済を受けることができると見込まれる額(破産配当見込額)等を考慮して算定された概算払率に基づき、非付保預金等を評価して算定される合理的な金額であり、その後の金融整理管財人である機構の回収努力等の結果として精算払額が生じることはありますが、概算払額の算定時における非付保預金等の評価額としても適正な金額と考えられます。このため、平成23年2月10日付文書回答の別紙のW2(2)ホにおいても精算払受領権の取得時(概算払時)の価額はゼロとされていることからすれば、再生計画認可の決定までの間は精算払受領権により実際に精算払を受領できるか明らかでないと認められるため、再生計画認可の決定の日の前日までの間における精算払受領権の価額は評価しないことが相当と考えます。